2019年4月22日月曜日

大学の授業スタイルが多様化しています。

2019.04.22


東京経済大学経営学部の本藤です。

大学では、今年度の授業最初のシラバス授業も終わり、やっと本格的な授業がスタートしています。



今年の授業シラバス(授業概要の説明)に「実務経験」に関する表記が加わったのですが、カリキュラムを検討する大学生でも気付いた人は少ないかもしれません。これは、来年度から始まる「低所得世帯の学生を対象とした高等教育無償化」の対象となるための条件のひとつとして文部科学省から指示された変更になります。


その条件のひとつとして「卒業に修得が必要となる単位数の1割以上、実務経験のある教員による授業科目が配置され、学生がそれらを履修し得る環境が整っていること」という規定があります。それを受けて、今年度から授業内容の説明欄に「この授業は、担当教員の〇〇の実務経験を活かして行います」というような表記が追加されました。この場合、経営学部で正課授業として設置されているインターンシップ授業「企業研修プログラム」や実務家を招聘する「ファッションマーケティング」、起業家育成のための「ビジネス創造」なども、実務に直結する大学教育の対象になってきます。

これは、実際のビジネスにつながる大学教育、社会及び産業界における人材的ニーズに対応した大学教育が求められ始めたことを意味しています。とは言っても、本学経営学部の教員は、この実務家教員については新規採用などをしなくても十分に該当する教員が在籍しているので、大きなハードルにはなっていません。更に、経営学部という性質から、実務とかけ離れた授業というのはあまり見当たりません。


大学教員の中には、「自分は研究者だ」という意識が強い人と、「自分は教育者だ」という意識が強い人に分かれています。もちろん、十分な研究をしていないと十分な教育ができないですし、情熱をもって研究していないと情熱をもって講義ができないので、研究と教育は不可分の関係にあります。

僕は学部卒業後は、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)という外資系コンサルティング・ファームでコンサルタントとして勤務して、それから財団法人流通経済研究所という国内シンクタンクまで、10年以上の実務経験をへて大学教員に就いていますし、現在もマーケティング・ファームの取締役をしていたり、企業のコンサルティングをしたりしているので、研究者や教育者という意識よりもビジネスマンという意識の方が強かったりします(笑)


必然的に、大学院から大学教員になっている先生方と比較すると、授業やゼミでも学説や理論の説明からアプローチするよりも、事例からアプローチする方が好きですし、得意だと思います。高校時代の数学の授業をイメージすると、公式を説明してから問題を解くアプローチではなくて、問題を説明してから公式をあてはめていくアプローチと言えるかもしれません。個人的な印象としては、公式の理解を十分に促してからの方が、体系的に漏れなく学ぶには適しているアプローチのような気もします(隣の芝生はよく見えるだけなのかもしれませんが・・・)。


ただし、教育手法については、Active Learning(議論や提案を中心とした能動的授業)とかProject-baced Learning(課題解決型授業)は現代教育のトレンドになっていて、授業形態が多様化してきています。大切なことは、学生が自分にフィットした授業を多様な選択肢の中から選べる環境を提供することだと思います。

そこで文部科学省の規定した「卒業単位の1割以上」という数字に意味が出てくるのです。つまり、半分もの教員が実務経験者だったとしたら、もはや大学教育は社員研修になってしまいます。だから、そういう役割を担う人は1割から2割で十分ですという意味だと思います。


とは言っても、高校までの勉強は、多くの高校で大学入試のための受験勉強が主な内容になっています。これらは基本的に与えられた課題を解けるかどうかであって、問題や課題を発見するようなアプローチは極めて少ないのも事実です。これに対して、ビジネスの世界では様々な事実から、会社や組織の課題を抽出して解決していく能力が求められています。実は、その時に必要なスキルが、詳細な事実認識から緻密な検討を重ねていくロジカル・シンキングで培われるものであり、それは大学で全ての教員が教えられる考え方でもあるのです。学生諸君は、自分が邁進できるアプローチの選択肢が増えていると言えそうです。


文責:本藤貴康(流通論、流通マーケティング演習、アカデミックコンパス担当)
本藤ゼミブログ(http://hondo-seminar.blogspot.com/





2019年4月15日月曜日

特別企画講義「ビジネス創造」開講!


こんにちは。経営学部の関口和代です。
先週4月11日から、特別企画講義「ビジネス創造」が
2年ぶりに履修者約30名でスタートしました。

「ビジネス創造」は、ビジネスや起業に興味がある学生に、
ビジネスの基礎知識やビジネスを肌で感じることができる機会を提供しようと、
中小企業基盤整備機構/中小企業大学校東京校内にある
BusiNest(ビジネスト)さんの全面協力のもと企画された講義です。

 東京経済大学は1900年に大倉喜八郎によって設立されました。
http://www.tku.ac.jp/tku/founder/okura/

西洋諸国とならぶ商業の知識・道徳を備える人材を育てることを目的として
赤坂葵町(現:虎ノ門)に設立された大倉商業学校は、
大倉高等商業学校(大倉高商)、大倉経済専門学校を経て、
第二次世界大戦後、東京経済大学となりました。
大倉喜八郎は、その生涯で200社余りを起業した実業家です。
http://www.taisei.co.jp/140th/ourfounder/challenge.html

特別企画講義「ビジネス創造」を受講することによって、
ベンチャー精神、アントレプレナーシップ(entrepreneurshipといった
創立者の思いや来し方を認識するとともに、ミッションとパッション溢れる
新たなビジネスが立ち上がることを期待しています。

講義目的

シラバスにも書きましたが、ベンチャー精神やアントレプレナーシップは、
起業家だけでなく、組織人にとっても必要なものです。

「AI導入で仕事消滅」などとも言われています。
確かに、定型的な仕事は、ある程度代替されるかもしれません。
ですが、想いとスキルを持った人でなければ
新たな商品・サービスはもちろんのこと、
社会にインパクトを与えるようなビジネスや
社会に貢献するビジネスは出てこないでしょう。

本講義を履修することによって、ビジネスを立ち上げるスキルなどを
獲得するとともに、熱い想いを持った先輩起業家との交流から、
多くのことを学んでほしいと思っています。

 起業は特別なものでも一部の選ばれた人だけのものではない。
 実社会においては、組織にぶら下がっていては生き抜くことすら難しく、
 起業を考えないこと自体がリスクとなる。
 将来どの方面に進むとしても、自ら考え、計画し、行動する力が求められる。


特別企画講義「ビジネス創造」のシラバスには、上記のような一文があります。
繰り返しになりますが、本講義をきっかけとして、
アントレプレナーシップ(entrepreneurship)やベンチャー精神といった
創立者である大倉喜八郎の想いや行動力を再認識するとともに、
新たなビジネスが立ち上がることを期待しています。
 

先輩起業家との交流

今期も、3名の先輩起業家をゲスト講師として招聘いたしました。
聴講も受け付ける予定ですので、
ご興味のある方は事前にお問い合わせください。
(教室のサイズによってはお断りする場合もあります。)
第一回の523日(木)は、東京経済大学OB・OGの方です。
国分寺でカフェLife Size Cribeを経営されている吉田一毅氏
フェアトレード・ビジネスをされている久保田優氏です。

Life Size Cribe (吉田一毅氏)
http://www.cafe-magazine.com/?p=21130
https://www.facebook.com/lifesizecribe
スリーパンズ(久保田優氏)
http://threepans.jp/company/
http://www.fragmentsmag.com/2016/01/three-pans-interview/

第二回の73日(木)は、
日本環境設計株式会社の岩元美智彦氏です。
http://www.jeplan.co.jp/ja/

            (左:久保田氏 右:吉田氏)

プロによる講義・支援

「ビジネス創造」は中小企業基盤整備機構/中小企業大学校東京校内にある
BusiNest(ビジネスト)さんの全面協力により行われています。
BusiNestさんは、新規事業の立ち上げや既存事業の活性化、
異業種・異分野の交流を応援することを目的に、
20154月にスタートしたプロジェクトで、
オフィス・スペース、専属サポーターによる支援、
起業家・起業希望者の視野とネットワークを拡げるイベントの開催、
ビジネスを基礎から学べるプログラムなど、さまざまに支援活動を行っています。
http://businest.smrj.go.jp/


中小企業大学校・東京校は、東京経済大学からも近い東大和市にあります。
中小企業大学校は「中小企業基盤整備機構が、国の中小企業施策の
実施機関として、中小企業の人材育成を支援することを目的に
全国9箇所に設置・運営」されています。
東京校は、緑豊かな素敵な環境の中にあります。
http://www.smrj.go.jp/inst/tokyo/index.html

図書館での告知


図書館1階のブックウォールで、「ビジネス創造」を履修する上で
役立つような関連書籍や資料を展示しています。
ゲスト講師の方々のご紹介もしていますし、寄せられた感想の一覧も
展示する予定です。是非ご覧ください。

キャンパスベンチャーグランプリ


日刊工業新聞社などが主催する学生による新事業ビジネスコンテスト
「第14回キャンパスベンチャーグランプリ東京大会」(2017年度)に
おいて、2017年度1期の履修生チームが奨励賞を受賞しました。
受賞チームは、1期の履修終了後も引き続き、
BusiNestで本講義講師の馬込氏よりご指導をいただき、
ビジネスプランをブラッシュアップして臨んだ成果です。
彼等に続く学生起業家がたくさん出ることを期待しています。
https://www.tku.ac.jp/news/020248.html



(文責:関口和代)

2019年4月4日木曜日

春は新しい時代の始まり

皆さんこんにちは。経営学部教員の柴田です。
4月に入り、大学でも新しい年度、新しい学年が始まります。東京周辺では3月下旬の卒業式の頃には、ようやく咲き始めた桜が、4月の入学式の頃には、美しい桜吹雪となります。下の写真は3月29日(金)に撮影した、本学の国分寺キャンパスの様子です。年度末のため、閑散としたキャンパスに、桜が八分咲きとなっていますが、4月2日の入学式からは、満開の桜のもとに大勢の学生が集まることになります。


4月1日には、5月からの新しい年号の「令和」が発表されました。この「令和」は『万葉集』の中にある、大伴旅人の梅の花の歌の序文の「初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、」から採られた、ということです。『万葉集』の時代、というか、だいたい奈良時代までは、唐の影響から、桜よりも梅の花の方が好まれていたようです。『万葉集』の中で桜を詠んだ歌が43首だったのに対して、梅を詠んだ歌は110首もある、とのことです。ところが平安時代になると、桜が好まれるように変化します。平安時代前期に編纂された『古今和歌集』では、桜を詠んだ歌が70首であるのに対して、梅を詠んだ歌は18首程度に減っています。奈良時代には「お花見」というと観梅であったのに対して、平安時代から、現在のような桜の花を楽しむ行事に変化したと言われています。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、「令和」の時代にはさまざまな面でグローバル化が進んでいく時代となると考えられます。海外との交流もどんどんと進んでくると思います。「桜舞い散る中での入学式」あるいは「桜舞い散る中での入社式」さらには「新人歓迎のお花見会」というのは、私たち日本人の心象風景の中に深くなじんでいるものと思いますが、世界的に見ると、「4月一斉入学」とか「4月一斉入社」という仕組みはきわめて少数派に過ぎません。世界的には9月入学の国々が多く、また「必要に応じて随時採用の企業」が多いのが実情です。「令和」の時代には、多様性がさらに求められるようになるでしょう。
(文責:柴田 高)