2022年2月7日月曜日

こだわりのコーヒーをデパート屋上で~ブルーボトルコーヒーの自販機による展開の試み~

流通マーケティング学科の丸谷です。48回目の執筆です。今回は第46回に続いてサードウエーブコーヒーの代表的チェーンであるブルーボトルコーヒーの日本における取り組みについて取り上げます。同社は2015年に日本を最初の進出先として以降店舗網を拡大し現在までに大都市部を中心に24店を出店してきました。第46回では大都市以外への初の出店であった前橋への出店について取り上げましたが、今回はコロナ禍の自粛が続く中でユニークな接点を増やすために「クイックスタンド(正式にはBlue Bottle Coffee Quick Stand)」という名称で東京中心部のスキマ立地に展開を開始した同社製品専用自販機の展開のうち、初の屋内への設置事例について取り上げます。

クイックスタンド 東急百貨店 吉祥寺店
スッキリとした味わいのブルーボトルコーヒーの缶コーヒー

こだわりのコーヒー豆

コーヒーと意外とあう羊羹も

「クイックスタンド」1号機は新型コロナウィルス第2派の最中の202087日に渋谷駅近くの三井不動産リアルティが展開する時間貸駐車場である三井のリパーク内に設置されました(現在は運営会社が変更されエコロシティが展開するエコロパークとなっている)。この駐車場は駐車料金がなんと10600円で一部サイトでは日本一高い駐車代のパーキングと噂される程の超優良立地でした。

同社1号店は多くの海外出身飲食チェーンが展開する銀座や青山などの誰もが知る超一等地にではなく、カフェ通が愛する店が多い清澄白河にするなど立地にはこだわってきました。クイックスタンドの立地も同チェーンならではのこだわりを見せたといえます。立地へのこだわりは維持されており、1号機のパートナーであった三井不動産リアリティの数ある立地の中でも、六本木、白金台、二子玉川、駒沢公園、自由が丘とコーヒーへのこだわりが強い階層が多く利用する場所に厳選されている。クイックスタンドは東京の12機に加えて、クイックスタンド梅田茶屋町カフェとクイックスタンド京都カフェも設置され、現在14機を設置済みです(詳細は同社ホームページ(https://store.bluebottlecoffee.jp/pages/bluebottlecoffee-quickstand参照)。

 

クイックスタンド吉祥寺パルコ店

吉祥寺には現在クイックスタンドは2か所あり、屋外立地の「クイックスタンド吉祥寺パルコ店」は、吉祥寺の新たなランドマークとなりつつある吉祥寺に特化した地域密着型が売りでたびたびメディアにも取り上げている「ユニクロ吉祥寺店」の向かい側に立地するパルコ吉祥寺店の1階に面した場所に立地している。ここでの自販機設置は唯一の23区外の出店ではあるが、23区外では代表的な繁華街の好立地への展開であり、従来のこだわりの屋外立地とあまり変わらない特徴を持つ場所での展開といえる。

一番左がクリスベーカリーのオリジナルデザイン自販機

もう一台の「クイックスタンド 東急百貨店 吉祥寺店」は、屋内立地の先駆的事例として注目すべきです。ここでの補充オペレーション業務運営を行うのは株式会社スキマデパートです。「「小さなスペースから、世の中を面白くする。」それがわたしたち、スキマデパートです。」と代表取締役の芳屋昌治氏が述べるように、同社は都市にあるスキマ立地に、同社は自社が展開する自販機を、「世の中を面白くする商品を販売する機械」という意味で「自由販売機」と命名しいろいろなスキマ立地に展開してきました。今回の東急百貨店のブルーボトルコーヒーの自販機のすぐ近くにも、東急百貨店吉祥寺店の3階に初めて支店を出店した府中に本店のあるクリスベーカリーのオリジナルデザイン自販機を展開していました。この自販機ではクリスベーカリーのこだわりのパンを販売していたので、ブルーボトルコーヒーのこだわりのコーヒーと一緒に食べることもできます。

クイックスタンド東急百貨店吉祥寺店が設置されたのは20211月に「太陽の広場」と名付けられた昭和感あふれる遊戯コーナーとペットショップがあった屋上を整備したフリースペースの屋内部分です。屋外部分では床面の半分以上に敷かれた人工芝の上では子どもたちが走り回れ、天気が良い日には富士山も見えます。

東急百貨店吉祥寺店「屋上太陽の広場」の説明

自販機はコロナ禍で非接触かつ長時間販売できる特性が見直されています。かつてコカコーラが自販機チャネルを全国展開し日本市場を席巻しましたが、カフェの新規出店が容易でない中で、米国出身のブルーボトルコーヒーが自販機に目を付け、日本市場で現地化に向けた試行錯誤を行っている状況は興味深いです。

皆さんも機会があれば、640円と少しお高いですが、こだわりのコーヒーを気軽に味わってみてはいかがでしょうか。個人的にはサードウエーブコーヒーならではのすっきりとした味わいを楽しみながらぽかぽかした日差しを浴びながら見た富士山には癒されました。

文責 流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎