2019年5月20日月曜日

ファイナンスって何?

経営学部で企業金融論を担当している木下です。
東京経済大学では2020年度以降の入学生を対象として、ファイナンスコースが設置されます。そこで、今回は金融・ファイナンスの仕組みと役割について簡単にお話しようと思います。

金融とは、資金の貸し借りをする仕組みのことです。以下の状況を考えましょう。
・Aさんは、ビジネスのアイデアと実行する能力を持っていますが、資金がありません。
・Bさんは、ビジネスのアイデア等はありませんが、資金が余っています。
このとき、AさんとBさんが出会うことができれば、AさんはBさんから資金を借りてビジネスを行うことができます。金融という仕組みが無ければ、社会にとって有益なビジネスが発生しないかもしれません。金融は能力のある人材や資産を有意義に活用するための根幹であるとも言えます。AさんとBさんが出会うための仲介を行っているのが、銀行や証券会社等の金融機関です。銀行は預金者の代わりに企業を探して融資を行い、証券会社は投資家に企業の株式等を紹介してくれます。
資金が余っているといっても、長期で運用したい人もいれば、短期で運用したい人もいます。同様にリスクの許容量に関しても個人差があります。また、リスクある投資を行うときには、その分高い収益を期待するでしょう投資家が適切な投資を実現したり、企業が適切に資金を調達するためには、時間やリスクの価値を正しく測定する必要があります。これらの仕組みを考えるのがファイナンス理論であり、実証ファイナンスでは理論に合わせた統計手法を考えます。もう少し話を進めると、企業と銀行等の間の駆け引きについての話題があります。例えば、企業は業績が上手くいっているように見せて、銀行から資金を借りようとするかもしれません。すると、銀行はそれを見越して金利を高く設定してしまいます。どのようにして優良な企業を見抜くか?優良な企業はどのようにして銀行を信用させるか?という議論に発展していきます。

今回の話は金融市場に関するものですが、市場の役割、物事の数値化、駆け引きについては、他の分野でも同様の考え方が使われることも少なくありません。ファインナンスを学ぶことで、広く応用可能な考え方を身に着けることができます。
東京経済大学のファイナンスコースでは、上記のテーマ等について効率的に学べる科目と環境が用意し、意欲のある学生の皆さんをお待ちしています。

                         文責:木下 亮

2019年5月13日月曜日

【学問のミカタ】安い服の増加は良いこと?!

経営学部でマーケティング論などを担当する北村です。私の担当科目の1つに「ファッション・ビジネス論」があるのですが、今回はこれに関連する話です。


皆さんは自分の着ている服がどこで作られているか、考えてみたことがありますか?

今年度、ファッション・ビジネス論の初回授業で、受講者に服の生産地を確認してもらいました。服の左側に、白いタグがついており、洗濯表記などとともに生産地が記されています。

今回、生産地が「日本」だった人を挙手してもらったところ、当日出席していた300名ほどの学生のうち、手が挙がったのは10名いませんでした。これが日本の現状です。

日本では、1991年にはアパレル(衣服)の約半数が輸入品で、残りの約半数が日本製でした。しかし、この比率はみるみる減っていき、2017年には輸入品が数量(点数)ベースで97.6%に達しました。いまや服が100枚あったら、そのうち日本製は2枚か3枚しかない、ということです。



出所:経済産業省「工業統計」/総務省「経済センサス」、財務省「貿易統計」、日本繊維輸入組合「日本のアパレル 市場と輸入品概況」
(経済産業省製造産業局生活製品課「繊維産業の課題と経済産業省の取組」に掲載)

この背景は、服の生産コストを下げようと、1980年代後半、特に1990年代以降、中国など人件費の安い国の工場で縫製してもらい、完成した服を輸入する動きが加速したことにあります。1985年のプラザ合意により、1ドル250円ほどだった為替が1988年には1ドル120円ほどまで円高が進んだこと、その後やってきたバブル経済とその崩壊後の不景気などが理由です(なお、かつて輸入先の大半は中国でしたが、経済成長に伴い中国の人件費もどんどん上昇したので、今はベトナムやインドネシア、ミャンマーなど東南アジアでの生産が増えています)。


こうして服の生産コストが下がる、ひいては服の値段が下がるのと同時に、国内で出回る服(輸入品と国内生産の合計)の数は、同じ1991年に約13億点だったのが、2017年には約28億点と、2倍以上に増えています(下図の棒グラフと左軸)。日本の人口は約1億3千万人ですので、1991年には1人が10枚買うほどの量が出回っていたのが、いまや1人が21枚か22枚買うほどの量が出回っているということです。


出所:小島ファッションマーケティング
(『販売革新』2019年2月号に掲載)

この背景は、少子化による人口減少のため、日本市場だけで売上を維持するためには、1人の人にそれまでより多くの服を買ってもらう必要が生じたことにあります。トップス1枚とボトムス1枚でコーディネートを完結させず、重ね着や小物を使うのがおしゃれな着こなしだと、アイテムを増やしたのです。

また、同時期に、郊外にショッピングモールがどんどん増え、そのテナントとしてアパレルブランドが必要になったことも関係しています。それまで百貨店やファッションビルなどが主要な販路だったアパレル企業が、それと同じブランドをショッピングモールに出店すると、ブランドイメージが下がりかねません。また、ショッピングモールの客層にとっても、値段が割高に感じられたりします。そこで、ショッピングモール向けに、既存ブランドのサブブランド(価格帯をやや下げた妹ブランド)を立ち上げたりしたのです。

しかし、こうして生産コストが下がったことで服の値段が多少下がったとしても、欲しくない服は買わないですよね。実際、消費数量は、1991年の約11億から、2017年の約13億へと、わずかに増えただけでした。アイテムやブランドの追加により、出回っている服は増えたのに、消費は微増にとどまったのです。先ほどと同じ図の折れ線グラフと右軸を見て下さい。1991年に約90%だった消化率は、2017年に約48%にまで減少したと推定されています。いまや国内の服の2枚に1枚しか買われていない、ということです。


では、売れ残った服はどうなるのでしょうか?

良くも悪くも、日本には四季があります。いまは店頭に夏物が出回っていますよね。1月のセールや2月の追加セールでも売れ残った冬物は、いま店頭に並べても、買う人はいません。

かといって、翌年の同じ時期に売ればよいかというと、そうもいきません。服には流行があるからです。1つの流行は大体3年だと言われています(兆し、ピーク、落ち目が1年ずつです)。近年だと2015年にガウチョパンツ(裾に向かって幅が広がった、7分丈のパンツ)がブームになりましたが、今それを履くと、時代遅れです。服は食べ物のように腐らないのに、翌年は売れない、いわば「生もの」なのです。

よって、アパレル企業は、値下げセールをしてでも、できるだけ当該シーズン内に在庫を売り切ろうとします。すると、消費者は定価で買うのがばからしくなるので、セールを待ちます。結果、なおさら服が売れなくなり、余るのです。余った服は、廃棄するしかありません。同じ流行が続いているならば、少しは翌年の同じ時期に売れるかもしれませんが、1年分在庫を保管しておくにもコストはかかるので、捨てた方がよいのです(なお、最近では、英バーバリーが2017年度に42億円相当の商品を焼却処分していたことが発覚し、非難を浴びました。これはセールをしてブランドイメージが下がるのを避けたためです)。


以上、いまアパレル業界で起きていることは、次のようにまとめられます。

・消費者からすると、価格帯が下がるのは良いことだが、企業からすると、売上も市場規模も下がるので悪いことになる(高校生の皆さんも、数年後には社会人になります。消費者として嬉しかったことは、就職後、嬉しくないことになるわけです)。

・価格帯が下がったからといって、消費者は欲しくないものまで買うわけではない。それなのに値段を下げようとすると、品質を下げざるを得ない(流行りものは、品質が悪くても1シーズン着れば捨てていいや、という消費者も増える)。また、値下げすれば買ってくれると思いセールをすると、かえって定価で買う消費者も減る。

・こうして不良在庫が増えると、廃棄や焼却も増える。売れた場合でも、品質が悪く、消費者にとって思い入れもないので、1シーズンで捨てられる服が増える。作ってくれた労働者や、商品企画をした人にとって、ゴミになるのは悲しいこと。また地球環境にとっても、ゴミの増加は良くないこと。

果たして、この悪循環を抜け出すには、どうしたらよいでしょうか?いま世界中のアパレル企業が改革に取り組んでいるところです。皆さんもどうすればよいか、考えてみてください。


文責:北村 真琴

2019年5月8日水曜日

ゼミの新しい試み


かなり久しぶりの投稿になります。
経営環境論担当の石黒です。

今年度最初の投稿ということで、今回はゼミの活動報告をしたいと思います。
本年度のゼミは26名。
そのうち新規生は11名です。
本年度のゼミが始まり早くも1ヶ月。
徐々に仲良くなれてきたでしょうか。

本年度から新しく導入した物があります。
それが、「アイスブレイク」。
アイスブレイクは、初対面同士が議論をする際に、最初に簡単なゲームなどを行い、緊張をほぐすことです。
当ゼミでは、授業開始時にランダムにグループを組んでもらい、簡単なお題について話し合ってもらいます。

例えば、こんな感じ。。。
「石黒先生がギリギリで怒らないイタズラを考えてください」
「○○さん(ゼミ生)が思わず照れてしまう一言を言ってください」
主にゼミをネタにしたお題を出しています。
それなりの盛り上がりです。
お題を考えるのがなかなか難しいのですが・・・

導入した理由は2つあります。
1つ目は、議論の活発化です。
これまでのゼミでは、ゼミ生同士でなかなか意見を言えない状況にありました。
当ゼミは個人研究であるため、相手の研究分野に詳しくなく、遠慮している場面が多かったように思います。
しかし、その分野に詳しくないからこそ別の視点での考えが見出せることもあります。
アイスブレイクを通じて、もっと遠慮なく、自由な発想で意見交換をしてもらえればと思います。

2つ目は、新規生の壁をなくすためです。
お題はゼミに関することなので、必然的に新規生はお題になった人(例えば、私)の人柄、趣味などを継続生から教えてもらうことになります。
そうすることでいち早くお互いの人物像をつかみ、仲良くなるきっかけをつかんでほしいです。
後期には、逆に新規生をお題にしていこうと思います。


まだ効果は出ていないかな・・・?

BBQも企画中のようです。
みんなで楽しく議論して、今年も楽しいゼミにしていきたいですね。

経営学部 石黒督朗