2023年11月13日月曜日

イギリス北部商都リーズ近郊のアズダのスーパーマーケット事業発祥地を訪ねて

流通マーケティング学科の丸谷です。61回目の執筆です。私は「グローバル・マーケティング論」を専門としており、海外でどのようにマーケティングを行うかについて研究しています。今回は前回(2023925日公開)に続き、イギリス出張報告第2弾として、北部商業都市リーズについてとりあげます。イギリスはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つに分かれ、イングランドは9つのリージョン(地域)に、リージョンは州に分かれています。リーズが属するヨークシャー・アンド・ザ・ハンバー・リージョンも5州に分かれており、リーズは5州の1つであるウェスト・ヨークシャー州の州都です。首都からの距離や街の成り立ちを考えると、リーズは仙台くらいのイメージでしょうか?

ロンドンからリーズさらにアズダのスーパーマーケット事業発祥地への経路

リーズはイングランド北部ウェスト・ヨークシャー州の州都であり、産業革命後はイングランドの東西を結ぶリーズ・リヴァプール運河の東の起点として発達した都市です。中心部にあるリーズ駅へは、イギリスの首都ロンドンの北への玄関口であるキングスクロス駅から高速鉄道で北へ2時間半弱かかります。こうした地理的な特徴を活かしてプライベートブランドを販売するお店が日本にもたくさんあるマークスアンドスペンサーや私の研究してきたウォルマート傘下として小売第2位にもなったことがあるアズダという現在でもイギリスの主要小売企業の発祥地となりました。

マークスアンドスペンサー1号店(ペニーバザール店)

マークスアンドスペンサーは1884年にリーズ市内中心部に現在もあるカークゲート・マーケットに、マイケル・マークスがペニーバザールという名の小さな店を開くことが発展の基盤を築きました。同社はプライベートブランドの質が高く、食品、衣料品、家庭用品などの高品質のプライベートブランドを幅広く提供し、日本でも北海道から鹿児島まで現在でも同社のプライベートブランドを販売する店舗があるほどです。

マークスアンドスペンサーが展開する高級スーパーフードホール
同社は総合的な品揃えの大型店とともに、イギリスの主要都市に日本でいえば成城石井のような高級スーパーを大型店の2倍以上の600店以上展開しています。イギリスの物価は現在非常に高く、日本円の安さもあって、私もマークスアンドスペンサーの食品には何度もお世話になりました。ネットにも注力していて日本でもイオンと提携し話題のネットスーパーであるオカドのイギリス法人の50%の株式を2019年に取得しました。
運河沿いの本社アズダハウス
アズダはリーズ駅の南にある運河を渡って徒歩5分の場所に本社アズダハウスを現在も構えています。
サウス・エルムサル駅
同社はライフワークとして研究しているウォルマートが1999年から2020年まで株式を保有してきた企業です。ウォルマートに買収された頃にはテスコに次ぐ第2位の小売チェーンでしたが、セインツベリーとアマゾンに逆転され第4位となっています。当初牛乳生産や流通の事業を営んでいましたが、1958年にアスキス(Asquith)スーパーマーケットをリーズから電車で30分のサウス・エルムサル(South Elmsall)駅から徒歩8分くらいのポンテクラクト(Pontefract)に出店し、後にイングランド北部から全国チェーンを構築していきました。
アスキススーパーマーケット1号店
現在では1号店の跡地はホームバーゲンズ(Home Bargains)というディスカウントストアチェーンが店舗を構えています。ホームセンターの横の図書館の隣には現在イギリスでシェアを伸ばしているハードディスカウントストアのアルディが店舗を構え、道を挟んだ正面にはアズダのスーパーマーケット(Moorthorpe店)が営業していました。 

なお、ウォルマートは現地でガソリンスタンドチェーンなどを展開するEGグループに20212月にアズダの株式売却を完了し、英国市場から撤退済みです。私はグローバル・マーケティング研究において不十分と考える撤退や事業縮小の重要性を踏まえて、撤退や失敗した市場であるドイツ、韓国、日本、ブラジル、アルゼンチンなどの成功できなかった市場へも機会があれば訪問し、撤退戦略や事業縮小戦略についても検討しています。今回のリーズ訪問での経験は撤退や事業縮小を考えるために非常にいろいろなヒントを与えてくれました。

(文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)