2019年7月9日火曜日

ゼミ合宿に向けて 〜なぜ、沖縄の平均収入は低いのか?〜

お久しぶりです。

経営学部の石黒です。
今回は、今年のゼミ合宿テーマについて書いていこうと思います。

唐突ですがみなさん、日本の平均賃金がいくらかご存知でしょうか?
厚生省の『平成29年賃金構造基本統計調査』によると、その平均は30万4300円です。
ちなみに都道府県別で見ると、もっとも高いのは東京で37万7500円です。
この数字を覚えておいてくださいね。


話を沖縄に向けてみましょう。
沖縄の主要産業は何と言っても観光業です。
沖縄県が公表している産業割合は以下の通りです。


https://www.pref.okinawa.jp/site/kodomo/sangyo/uchiwake.html

やはり観光業をはじめとする第3次産業の割合が非常に大きいのがわかると思います。
それもそのはず、沖縄への観光客の増加は眼を見張るものがあります。


https://www.pref.okinawa.jp/site/bunka-sports/kankoseisaku/kikaku/report/youran/documents/tourist_number_income_transition.pdf



こちらも沖縄県が公表しているデータですが、国内外からの観光客が増加し、観光収入が著しく伸びていることがわかると思います。
あの美しい海がある限り沖縄への観光客が減ることはないでしょう。


しかし、こんなに観光業で儲かっている沖縄。
その平均賃金は、、、、24万4400円・・・・・
全国平均よりも6万円も低いです。
順位で言えばワースト5・・・・
「えっ、なんでこんなに低いの??」と思うのではないでしょうか。
ちなみにこの数値は、前年度から見れば伸びてはいますが、それほど大きな伸びは見せていません。
なぜ、これだけ観光業での収入が伸びているにもかかわらず、沖縄の賃金は増加しないのでしょうか?

この疑問に対して、当ゼミはこんな仮説を立ててみました。
「沖縄の観光業で働いている人で沖縄県民少ない説」

当ゼミは、沖縄の観光業と自然保護の両立を実現するエコツーリズムを調査、体験するために毎年沖縄でゼミ合宿を行ってきました。
そこで感じたのは、意外なほどマリンレジャーをはじめとする観光業で働いている人が沖縄県民ではないことでした。
「よく言われるんだけどね〜。東京から来たんですよ。」
「僕は北海道ですよ。こんなに焼けてますけどね?」
いったい何回こんな返事を聞いたことか・・・


今回のゼミ合宿では、観光業で働く方々にインタビューして仮説の検証をしつつ、「なぜ、沖縄県の人たちは観光業で働いていないのか?」を分析してみようと思います。
調査結果は後日この場を借りて報告したいと思います。
と、いうことで
「晴れてくれ!沖縄!!」

文責:石黒督朗

2019年7月1日月曜日

1年生の「会社入門」の授業でビジネスゲームを行ないました。

 皆さんこんにちは、経営学部教員の柴田です。よろしくお願い致します。
 経営学部では1年生向けに専門分野の入門編となる、基礎的な知識を身につけるための授業をいくつか開講しています。その一つに「会社入門」という科目があります。経営学で学ぶ、おもな対象となるのは、会社(ほとんどの場合、株式会社)の事業活動です。会社は、私たちの日常生活の中ですぐ身近なところにたくさんあるのですが、残念ながら小学校から高校まで、これについて「学ぶ」という機会は、ほとんどありません。また、大学の新入生の中で「正社員として会社で働いた経験がある。」という学生は、きわめて少ないのが現状です。そこで、東京経済大学の経営学部では、2017年度よりカリキュラムを修正して、1年生のまず最初の学期に、会社というものがどのような存在か、会社を取り巻く産業・市場・業界とは何なのか、会社を構成する株主や経営者とはどのような存在なのか、会社の中で働く人はどのような仕事をどのように進めているのか、会社の事業をうまく進めていくには何が必要なのか、などの事柄をしっかり身につけてもらおうと、「会社入門」という科目を開講することにしたわけです。

 この「会社入門」では、通常の週は担当教員が説明を行う、ごく普通の授業形式なのですが、例年途中で2回、グループワーク形式によるビジネスゲームを行っています。これには日本証券業協会の証券知識普及プロジェクトから無償で提供して頂いている「ケーザイへの3つのトビラ」という教材を利用しているものです。今年の1回目のグループワークは、6月17日(月)の授業で、この中で最初に出てくる「ワールドトレジャーランド再生計画」というビジネスゲームを行いました。ここでは学生一人一人がテーマパーク「ワールドトレジャーランド」を経営する取締役の一人になったつもりで、経営者の意思決定のプロセスを学びます。近年、売上減少が続くこのテーマパークでは4人の担当社員が「設備投資を増やす」「スタッフの質を向上させる」「広告・宣伝を増やす」「無駄な費用を削減する」などの対応案を持ってきます。経営者の1人としては、まず4人の意見を分析して、その効果を自分なりに評価します。次に、3人から5人のグループを作り、これが「ワールドトレジャーランドを経営する取締役会のメンバーである」と想定して、各取締役の意見をもとに議論を行って会社としての一つの意見に集約する「取締役会」を開きます。以下の写真は、取締役会としてグループごとに話しをして、株主総会での発表を準備しているところです。



 各グループでは、自分たちが選択した案をもとに、それを具体的にどのように進めていけば業績を向上させることができるかを考え、発表資料にまとめます。この発表資料に基づき、実行案をそれぞれのグループごとに代表取締役社長を務めるリーダーが発表します。これは株主総会での会社側の事業計画の提案に相当します。学生の皆さんは、今度は各自が株主の1人になったつもりで、自分たち以外のグループの中では、どのグループの発表内容がいちばん優れているか、評価シートに記入していきます。以下の写真は、グループごとに発表している様子と作成した発表資料です。



 このようにして、会社における意思決定のプロセスを疑似体験してもらうわけです。終了後、学生の皆さんに感想を記入してもらうと、「経営をするのはとても難しく、話し合いが大変だったが、班のメンバー全員で考え、アイデアをだすということが楽しいとわかった。」とか「会社はたくさんの人から成り立っていて、株主がいて始めて事業できるとわかった。また会社の問題点から立て直す時、事業計画を一つに絞ってやっても必ずうまくいくとは限らず、一筋縄ではいかなくてとても難しいことだとわかった。」「一時期売り上げが伸びたからと言ってその案件がずっと有効とは限らない。お客さん側の欲求は目まぐるしく変わり、常にその欲求、要望に答えていかないと会社として生きてはいけないと分かった。」などの意見が集まりました。この場を通じて、教材を提供して頂いている日本証券業協会の皆様にも感謝の気持ちを述べたいと思いますし、新入生の皆さんも、ビジネスゲームを通じて会社というものの理解が進んだのではないかと思っています。
(文責:柴田 高)

2019年6月24日月曜日

ニューヨーク・ソーホーのアマゾンが展開する新型店舗を訪れて


流通マーケティング学科の丸谷です。30回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行っていくのか)を専門分野にしているので、海外に出張に行くことが多く、このブログでもインド、チリ、中国、ペルー、ブラジルの出張の模様をこれまで取り上げてきました。

昨年の10月のブログでは、2017年度より科学研究費を頂いて行っている「ネット小売普及以降の小売国際化現地化戦略モデル構築のための研究」というテーマの研究のために訪れた、アマゾンの有人店舗のうち、シアトルで訪れた無人コンビニ『アマゾンゴー』とアマゾンサイトで評価が高い本を販売する書店『アマゾン・ブックス』についてとりあげて好評だったので、今回は3月のニューヨーク出張で訪れた別の2形態の店舗『アマゾン・4スター』と『アマゾン・ポップアップストア』について取り上げます。

世界のネット小売を牽引してきたアマゾン・ドットコムは1994年米国ワシントン州シアトルにて創業し、現在も本部を昨年取材したシアトルにおいています。同社は米国以外にも現在14カ国向けにネット小売を展開しており、今回取材したニューヨークは世界経済を牽引する都市というだけではなく、地元住民の反対で撤回されましたが、ニューヨーク市クイーンズ地区ロングアイランドシティに第2本社を置くことを一度は決めたほど重要な拠点の1つです。

ニューヨークの絶景(最新穴場絶景ポイント:ブルックリン橋前の1ホテルより)
アマゾン・4スター(Amazon 4-Star)は20189月にニューヨークのマンハッタン島の流行発信地区であるソーホー地区に初出店した業態です。店舗の周辺にはMOMA(ニューヨーク近代美術館)のデザインストアやベストセラー作家がイベントを行う有名ブックカフェがあり、世界最先端都市ニューヨークにおいてもトレンド発信基地になっている場所です。

ソーホーの隣ノリータの有名ブックカフェ
業態としての特徴は、ネーミング通り、アマゾンの顧客がネット上で示しているカスタマーレビューで星4つ以上を獲得した商品を選定して取り揃えることにあります。

出入口では満足度測定器がお出迎え
カスタマーレビューを利用するという点では、アマゾン・ブックスと同じですが、商品の種類が異なり、本も一部ありますが、同社が展開するアレクサなどのAIスピーカーやキンドルなどの電子書籍リーダー、ホームアンドキッチン商品及び玩具など実際に触れてみて良さがより伝わる商品を品揃えしています。

主要な商品であるホームアンドキッチン商品
主要な商品である玩具
特に重さが重要な鍋や調理家電、ちょっとした便利さを提供する調理器具などに関しては、いくら何キロと書かれていても、実際に現物を持たないと使い勝手が想像しにくいなと店舗で実際に展示されている商品をみて感じました。

また、実際の商品の使い勝手に関しては、微妙な声の反応が見たいスマートスピーカーやページのめくり心地が見たい電子書籍リーダーにもいえるので、こうした店舗はネット小売を補完する存在として今後も重要だといえます。ゾゾスーツが話題になった割にはうまくいっていないのも着心地といった微妙な感覚の問題があるといえ、ネット小売を中心に展開しているからこそ提案できる、実店舗(じつてんぽ) といえそうです。

微妙な感覚といえばヘッドホンも
今回新たな業態ということでもう1つ訪れた「アマゾン・ポップアップストア」は予想よりもこじんまりしていました。こちらは上記の実店舗の強みをアマゾンが自社ブランドで展開する商品販促に使ったお店であり、販売ではなく期間限定の宣伝ブースという感じでした。取材した店舗はニューヨークの中心のマンハッタン島ではなく島からでた郊外のクイーンズのクイーンズセンターモール(Queens Center mall)の中の人通りが多い場所にありました。

アマゾン・ポップアップストア
アマゾンも注目する世界の最先端都市ニューヨークには最新トレンドを反映したお店が多くあり、常に入れ替わっていきます。今回の取材は南米出張の時差調整もかねての短期間でのものでしたが、昨年9月に訪れた際に気になり、今回宿泊したブルックリンのウィルアムズバーグのホテル周辺にもスケッチブックプロジェクトと呼ばれノートサイズのスケッチブックを購入して、好きなデザインのスケッチブックを作り展示を頼めば展示してもらえるという参加型アートギャラリーやジーンと呼ばれるブルックリン・アート・ライブラリー、ジーン(ZINE)と呼ばれる小冊子を世界中から集めて販売するジーン専門書店、サクラブラマンジェなど和の要素を取り入れたデザートを出す専門店などが隣接してあり、とても刺激的な体験をできた。


ブルックリン・アート・ライブラリー
マンハッタンを一通り回ったら、次はブルックリンやクイーンズにも足を延ばしてみることをお勧めしたい。
(文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)



2019年6月17日月曜日

ドラッグストア業界が変わる?

2019.6.17

経営学部の本藤です。
梅雨の季節が始まりました。念のため傘を持ち歩かなくちゃいけなくて面倒な季節ですね。(でも今日は夏日(汗)。不思議な天候で体調不良です(+_+))

僕の大雑把な研究領域は、流通とかマーケティングという営業系に焦点をあてています。
このマーケティングというのも、メーカーが商品をつくって、卸売業が運んで、小売業が販売するという流通チャネルを戦略的にコーディネートするってことで、僕の研究データは、ドラッグストアの販売データを利用することが多く、この業界の動向には常にアンテナを張っています。


そこで最近気になってる経済ニュースが「ココカラファインをマツモトキヨシとスギ薬局が争奪戦を展開!」です。

実は、ドラッグストア業界は、この合従連衡が常態的に起きています。
先述のニュースで登場するココカラファインも、セガミメディクス、セイジョー、ジップドラッグ、ライフォート、スズラン薬局、メディカルインデックスなどのドラッグストア・チェーンの合併を起源としています。実は、この他にも中小チェーンを継続的に加え続けています。
昨会計年度まで業界トップのウエルシアについても、今会計年度でトップに躍り出たツルハについても同様です。地域密着型の中小チェーンが経営統合して今の売上高を飛躍的に拡大させてきています。

上場企業間では、マツモトキヨシがミドリ薬品を、ウエルシアが寺島薬局とCFSコーポレーションを経営統合や買収したというような経緯もありますが、近年では未上場企業の子会社化が基本的な業界再編の流れでした。

しかし、今回のココカラファイン争奪戦はレベルが違います。イメージとしては、コンビニ業界であればローソンとミニストップが一緒になるような話。あれ?分かりづらいですかね(笑)

基本的には、上場ドラッグチェーンは、食う側であって、ココカラファインのような大手チェーンを取り込めるなんて、業界各社は想定もしていなかったと思うのです。だから、「マツキヨとココカラが業務資本提携の相談を始めました」というニュースリリースが行われたら、即座にスギ薬局(スギHD)が「それがありなら私も手を挙げます」という展開になったようです。でもって、話をしていくうちにココカラ争奪戦だった話に3社が統合する話も選択肢に入ってきて、業界に甚大な再編をもたらす可能性も出てきたようです。


これまでのドラッグストアの業界再編は、足し算的な合従連衡が多かったんですよね。
どこかの地域チェーンを大手チェーンが組み込んでいくような。それで売上が加わって、仕入れ交渉力(バイイングパワー)を強化して、安く仕入れたり条件をよくしたりっていう感じです。

ここに来て無視できない要素があるんです。
それがIOT(モノのインターネット)だったり、生活者のライフログ(生活全般のビッグデータ)だったりの収集・活用が、AI時代に不可欠な取り組みになってきています。
となると、商品開発、広告、物流、営業、販売など様々なシーンでビッグデータを活用することになり、小売業のデータの価値が飛躍的に高まっています。
つまり、より多くの店舗を保有するチェーン、より多くの顧客を持つチェーンの戦略的価値が、売上高や店舗数とともに急上昇することを意味するのです。


足し算だった統合や合併が、掛け算になるような環境変化が起きています。

文責:本藤貴康(流通論、流通マーケティング演習、アカデミックコンパス担当)

本藤ゼミブログ(http://hondo-seminar.blogspot.com/









2019年6月12日水曜日

「先生、この本に何が書いてあるかわかりません!」:ポイントをおさえつつ正確に内容を「要約」するための読書法

 経営組織論・ケース分析担当の山口です。
 6月に入り、山口ゼミでは6月30日に慶應義塾大学で行われるRIP中間報告会(慶応大学・青山学院大学・東洋大学・日本大学・千葉商科大学・東京経済大学(森岡ゼミ・山口ゼミ)の6大学7ゼミ合同報告会)に向けて、チームごとに研究テーマを考え始めたところです。
 研究テーマを考える際に、ゼミ生たちがぶつかる壁は二つあります。一つは、「先生、参考文献がありません!」というもの(→この解決策は、以前こちらのブログで説明しました)。もう一つは、「先生、参考文献はあったけれど、難しくて内容がわかりません!」(あるいは、なんとか読んだけれど、内容を誤解している)というものです。
 そこで、今回は、せっかく見つけた文献の内容を「正しく理解」するための読書のコツを解説します。(今回の記事の内容は、野矢(2017)を参考にしながら書いています)

1.本の内容を正しく理解するためのコツ:「問い」を意識して読む


 今回言いたいことは、「問いを意識して読む」、これだけです。
 東経大の学生は、「この本の第1章を読んで要約しなさい」と課題を出せば、「大変だ!」などと文句を言いつつも、「なんとなく重要そうなところ」を要領よく抜き書きしてまとめてきます。パッと見、感心するくらいよくできているものもあります。
 ところが、「で、この章にはどんなことが書かれているの?」と聞くと、答えられないのです。

東経大の教員になって以来10年以上、私は「なぜこういうことになるのか?」がわかりませんでした。「要約ができる=内容が理解できている」だと思っていたのです。ところが、一昨年から1年生向けの入門ゼミ「フレッシャーズ・セミナーb」の授業を担当するようになり、1年生15人の要約レポートを毎週添削しているうちに、あることに気づきました。

「この人たちは『問い』を気にせず読んでいる!」

「問い」というのは、その文章の出発点となる問いかけです。どのような文章でも、何か「こういう問題について書きたい」という問題意識が出発点となって、書かれています。それが、ここでいう「問い」です(この記事も、「東経大生に本を読めるようになってもらうにはどうしたらよいか?」という問題意識が出発点になっています)。
私のフレセミの受講生たちは、その「問い」を全く意識せずに(つまり、その文章がどんな問題を扱ったものか意識せずに)、重要な部分を抜き出そうとしていたのです!
これが、どんなに無謀なことか、わかっていただけるでしょうか?
よく、「要約というのは文章の枝葉を切り取り、幹=中心的主張を抜き出すことだ」と言われます。しかし、そもそも「幹」とは何でしょう? 
「幹(中心的主張)」とは、その文章の「問い」に対する筆者の「答え」です。問いが分からなければ、幹が何かなどわかりようがないのです。

出所:野矢(2017)145頁


2.「問いを意識して読む」とは?

 
 「問い」についてイメージを持ってもらうために、以下のクイズを考えてみましょう。

クイズ あなたが、友達Xから、自分の一番仲のいい友達Aについて、「Aさんってどんな人?」と聞かれたとします。XはAと会ったことがなく、どんな人であるかを全然知りません。あなたは、どう答えますか?


 さて、あなたは今どんなことを考えたでしょうか?
 まず、Xに、Aのどんな点について伝えようか、と考えませんでしたか?
 例えば、「XはAの外見について聞いているのだろうか?」「それともAの性格について聞いているのか?」「それとも外見・性格両方か?」「外見についてだとすれば、何を説明しよう?身長?髪の長さや色?顔が誰に似ているか?」「性格だとすれば、どんな特徴を説明すればいいだろう?」などなど。
 つまり、Xからの質問に対して、「Aのどんな点を伝えたらよいだろう?」という「問い」を立てて、それに答える形で「Aさんって、○○な人だよ」と伝えているわけです。

 このように、人は何かを伝えようとする時、まず「問い」を立て、その答えとして「中心的主張(一番伝えたいメッセージ)」を作っていきます。
 皆さんが大学で読むようなテキストや専門書を書く人も、同じです。例えば「経営学についての教科書を書く」というとき、著者は「何を伝えれば『経営学』について最もよく理解してもらえるか」という問いを立て、それに答える形で文章の内容を考えています。
 だからこそ、文章を読む時に、「その文章の『問い』は何か?どういう問題に答えようとしているのか?」を意識すると、その答えとしての「中心的主張」はどこなのかが特定しやすくなるわけです。

3.問いを意識した要約の例


 実際に、「問い」を意識した要約をやってみましょう。今回要約の題材として取り上げるのは、フレッシャーズ・セミナーaの私の担当クラスで1年生が読んでいる『影響力の武器』という本です。

 この本は、「人を意のままにコントロールする方法」について検討している社会心理学の本です。具体的には、「相手に『イエス』と言わせる要因とは何か?それをどのように活用すれば『イエス』と言わせられるのか?」という問いへの答えが書かれています(人をコントロールする方法などというと、なぜ経営学の授業でそんなヤバそうな(笑)本を読むのかと思うかもしれません。しかし、企業にとっては、「この商品を買ってください」と提案した時に、顧客に「イエス」と言わせられるかどうかは、売上を左右するとても重要な問題です。そのため、この本は経営や広告、マーケティングに携わる多くの人に読まれているのです)。
 この本では、「相手に『イエス』と言わせる要因」として、6つの心理学的ルールが取り上げられていますが、ここでは、その中の一つである「希少性の原理」について、「普通の」要約と、問いを意識してまとめた要約を比較してみましょう。どちらが内容を理解しやすいか、考えてみて下さい。

(1)普通の要約
 私(著者)はかつて、それまで全く興味がなかったモルモン教の教会堂を、急に見学したくなったことがある。ある新聞記事で、その教会堂には普段は信者以外立ち入り禁止の区域があるが、教会堂改築後の今だけは、信者でなくてもその区域を見学可能になると書かれていたのを見たときである。
 私(著者)が、それまで全く興味のなかった教会堂を急に見学したくなった理由は、「数日後には入ることができなくなってしまう区域に今行かなければ、二度と立ち入るチャンスはない」という点にあった。もうすぐ見ることができなくなってしまうために、ほとんど興味がなかったものが、どうしようもなく魅力的に思えてしまったのである。
 手に入りにくくなるとその機会がより貴重なものに思えてくるという原理を、希少性の原理という。私たちが物事の価値を判断するときには、希少性のルールが強力に作用する。そのため、「イエス」を引き出す承諾誘導のプロたちも、当然この力を利用している。中でもおそらく一番簡単な使い方は数量限定のテクニックである。ある製品の供給が不足していて、いつまで残っているか保証できないと消費者に知らせるのである。数が限られているという情報は、本当のこともあればでたらめの場合もあった。しかしいずれの場合も、消費者にその製品が希少であると信じ込ませ、それによって目の前にある商品の現時点での価値を高く見せることができた。
 数量限定と同じようなテクニックに、「最終期限」戦術もある。「独占・特別・公開・終了・間近!」という映画の宣伝のように、販売促進のプロは、客に対して最終期限を設定し、それを公にする形で、以前はだれも興味を示さなかったものに興味を覚えさせることができる。
 承諾誘導のプロたちは、希少性の原理を巧みに利用し、頻繁かつ広範に、さまざまな形で私たちに影響を及ぼしている。希少性の原理の力の源は、主に2つある。1つはおなじみのもので、私たちが近道に弱いという点につけこむものだ。たいていの場合、入手しにくいものは簡単に手に入るものより良いものだということを私たちは知っている。そのため、入手しやすさを手がかりにすれば、商品の品質を迅速かつ正確に判断できる。もう一つは、何かを手にできるチャンスが減ると、自由も失われるが、私たちは既に得ていた自由を失うのが我慢できないということだ。

(2)問いとそれへの答えを意識した要約
 希少性の原理とは何か?希少性の原理とは、手に入りにくくなるとその機会がより貴重なものに思えてくるという原理である。一般に、ある品物の数が少ないか、少なくなりつつあるなら、それだけその品には価値があることになる。例えば、これまで全く興味がなく、訪れようという気になったことがない教会堂でも、普段は立ち入り禁止の区域が一般開放され、その期間があと数日で終わるとなると、見学する価値を感じ、行ってみたくなったりする。極端な場合、不鮮明な切手や二度打ちされた硬貨など、通常は廃棄される理由となる欠陥が、希少性と結びつくと、価値を生む美点となる。
 では、「イエス」を引き出すプロである承諾誘導の専門家たちは、どのように希少性の原理を使っているのだろうか?代表的な方法は2つある。第1に、数量限定戦略である。これは、もっとも明瞭に希少性の原理が使われているもので、ある製品の供給が不足していて、いつまで残っているか保証できないと消費者に知らせるものである。この戦略では、数に限りがあるという情報が本当であってもでたらめであっても、消費者にその製品が希少であると信じ込ませ、それによって目の前にある商品の現時点での価値を高くみせることができる。
 第2に、数量限定に関連した「最終期限」戦術である。これは、それができる時間が無くなりつつとあるというだけで大して関心もないことを行ってしまうという人間の傾向を利用したものだ。「独占・特別・公開・終了・間近!」という映画の宣伝のように、販売促進のプロは、客に対して最終期限を設定し、それを公にする形で、以前はだれも興味を示さなかったものに興味を覚えさせることができる。
 なぜ人は、こうした希少性の原理に従ってしまうのか?希少性の力の源は主に2つある。第1に、それに従えば、通常効率的かつ正確な判断が下せるからだ。たいていの場合、入手しにくいものは簡単に手に入るものより良いものだということを私たちは知っている。そのため、入手しやすさを手掛かりにすれば、商品の品質を迅速かつ正確に判断できる。第2に、人は自由を失うことが我慢できないからだ。手に入れる機会が減少するということは、私たちが自由を失うということだ。そうなると、人は何とかして自由を保持できるように行動する。


 どうでしょうか?両方とも、同じ本の同じ部分を同じ分量で要約したものなのですが、「問い」を意識してまとめた要約のほうが、「著者が何を言いたいか」が頭に入ってきやすかったのではないでしょうか?(ちなみに、下線を引いた部分が「問い」です)

4.「問い」を意識した要約のメリット

 
 このような要約をすると、
木を見て森を見ず(なんとなく重要そうな部分はわかるけれども、結局何を言いたいかはわからない)」ではなく、
木を見ることで森の全体像を理解できる(重要な部分の理解を通じて著者が言いたいことがわかる)」読み方ができるようになります。
 
 その理由は以下の3つです。
・文章のそれぞれの部分で、なぜその話をしているのか(どんな問いについて検討しているか)が見えやすくなる
・問いがわかるので、「中心的主張」が何かを特定しやすくなり、本の重要な部分とそうでない部分のメリハリをつけて読めるようになる
・ある問いから次の問いへのつながりが可視化され、文章の各部分の間の関係も見えてくる→文章の構成(全体像)が捉えやすくなる

 もちろん、本には、必ずしも「問い」が疑問文の形で明示されているわけではありません。したがって、問いを意識した読み方をするためには、「ここで取り上げられている問題(トピック)は、さっきまでと同じだろうか?」「もし違うとすれば、ここではどんな問題について議論しているのか?」と、常に考えながら読んでいく必要があります。
 ただ、問いが疑問文で明示されているかどうかに関わらず、著者は必ずどんな問題をどのような順番で取り上げるかを考えて書いているので、それを読み手のほうも意識して読んであげればいいわけです。

5.「具体例は要約に入れない」など、要約のハウツーは役に立つか?


 さて、ここで書いてきたことは、いわゆる要約のハウツーとは全然違います。
 確かに、要約のハウツーでは、「具体例は削除しなさい」など、「よい要約」をするための細かなルールが列挙されており、一つ一つはわかりやすいです。
 しかし、私はあまりそうしたルールは気にしなくていいと考えています。というのは、後で自分が要約を読み返した時に、具体例がないために何の話をしているのか理解できなかったら、要約した意味がないと思うからです。
 重要なのは、自分がその文章の内容を理解できるように要約することです。
 そもそも、大学で要約など「本を読むトレーニング」をするのは、自分が研究したいテーマについて、必要な文献を、自分で読んで理解できるようにするためです。自分の好きなことを自由に追求するための「武器」を身につけてもらうのが目的なのです。
 であるならば、単に「手っ取り早く点数をとるために、要約ルールに従って、内容はよくわからないけれども要約レポートは完成させる」という「点数をとる=他人に評価される」ためだけの勉強はあまり意味がありません。
 どうせ要約するなら、本の内容について知識を深めたり、自分の読解スキルを向上させたり、後から本の内容を手早く思い出せるようにまとめておくなど、「自分のため」になるような方法でやってもらいたい、というのが、教員としての希望です。(恐らくそのほうが、やる意味を感じられるでしょうし、結果的に評価も高くなるでしょう)

6.まとめ:フレッシャーズ・セミナーaは「武器」の宝庫!


 今回は、「ポイントをおさえつつ正確に内容を要約するための読書法」について解説しました。東経大では、「フレッシャーズ・セミナーa」という1年生向け授業があり、1クラス15~19人程度の少人数で、こうした本の読み方や、わかりやすい文章の書き方など、大学で経営学を学ぶのに必要な「基礎的スキル」を先生にみっちりトレーニングしてもらえる環境が整えられています(ちなみに、もし今回解説した要約のトレーニングに興味がある場合、1年生なら2期に履修できる「フレッシャーズ・セミナーb」の私の担当クラスや、2年生以降なら私のゼミで、こうしたトレーニングを受けることができます)。
 
 このような本の読み方や文章の書き方のトレーニングは意外と効果があるようで、フレセミの最初と最後では、受講生が書く文章の形式・内容が見違えるように変わります。私のクラスの場合、「難しい!」と文句を言われつつも(笑)このトレーニングをきちんと行った年は、20人足らずのフレセミのメンバーの中から、ほぼ必ず1~2人の成績優秀者(その学年の成績TOP20)が出るほどです(もちろん、たまたま優秀な人が私のクラスに来てくれたおかげなのですが、彼らも最初から要約や文章の書き方がきちんとできたわけではありません)。

 確かに、「大学生にもなって本の読み方?文章の書き方?」と思う人もいるでしょう。しかし、高校までは、ほとんどの人が経営学の専門書など読んでいませんし、論文・レポートを書いたり研究発表のプレゼンをしたことがある人だってほとんどいないわけです。私がこれまで見てきた限りでは、最初からビジネスプランの作成などの「実践的」な内容に取り組もうとした人よりも、1年生の時にしっかり基礎的スキルを身に着けた人ほど、自分の入りたいゼミに入り、自分の好きな研究をしています
 考えてみれば、どんなプロフェッショナル(経営者や公認会計士や税理士など経営学に関するものだけでなく、プロスポーツ選手やプロの音楽家などを含む)でも、基礎的なスキルのトレーニングを軽視する人はいません。彼らは、基礎的なスキルを無意識に実行できるくらいまで完璧に習得しているからこそ、実戦でより高度な戦術に集中でき、高い業績を上げられるのです。
 皆さんが、大学で経営学を学ぶ最終目的は、「経営学を使って社会のさまざまな問題を解決できるプロフェッショナル」となることです(東京経済大学経営学部のディプロマポリシー参照)。そのための基礎的なスキルのトレーニングを、大学入学後の早い段階でしっかり行い、社会で活躍するためのさまざまな「武器」を身につけられるようにしていきましょう!

参考文献
チャルディーニ(2014)『影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか 第三版』誠信
  書房.
野矢茂樹(2017)『大人のための国語ゼミ』山川出版社.

(東京経済大学経営学部准教授 山口みどり)

2019年6月2日日曜日

海外でシティポップがきてます!(小木ゼミ通信 vol.32 TFT健康ランチ発売!、成績優秀賞など)

 マーケティング論、ソーシャルマーケティング論担当の小木です。32回目の投稿です。

 ◆海外でシティポップがきてる!


 先日、古くからの友人で、レコード針で世界独占の㈱NAGAOKAの長岡香江社長と話していた時に、「小木さん、いま世界を中心に、中古のアナログ(円盤)レコードの人気が高まって、あるいは昔のレコードを懐かしむ層がレコード針を購入するようになっているんですよ」と言っておりましたので、ここ最近の中古レコードの売上状況を調べてみることにしました。

 確かに中古レコードはぐーんと売上が伸び、しかも購入している人は、主に外国の方で、とりわけ1980年代の日本の「シティポップ(City pop)」がお気に入りで購入していることがわかりました。シティポップはいまや世界中で大ブレイクしているのです。

 そもそもシティポップとは、洋楽に多大な影響を受け、都会的なイメージ(大人の恋など)と、洗練されたおしゃれなサウンドを前面に押し出した、日本で独自に進化した音楽です。具体的には、私の大好きな山下達郎、竹内まりや、荒井由実(松任谷由美)、大瀧詠一、大貫妙子、寺尾聰、来生たかお、杉山清貴、角松敏生などなどがその代表格にあたります。

 私は、こうしたシティポップのメインストリームの中にあった1980年代の音楽シーンを彩る、林哲司・作曲の数々がとても好きです(「SEPTEMBER」、「悲しい色やね」、「悲しみが止まらない」、「思い出のビーチクラブ」、「セプテンバー物語」、「北ウイング」、「ふたりの夏物語」、「雪に書いたラブレター」など)。「おっ、これ好き」と思った曲は、調べてみると、はずれなく林哲司さんの曲です。

 その後、シティポップは定番化し埋もれる形になりましたが、2010年頃から、海外で再評価の動きが高まってきたのです。そして現在では、日本のシティポップのレコードをコレクションするマニアが世界中に増え始め、ネットオークションなどの取引だけでなく、レコードを買うためだけに、東京や大阪までやってくる外国人も現れているようです。『Youは何しに日本に?』(テレビ東京)でも、日本で80年代のシティポップのレコードを探す外国人旅行客が紹介されていたのは、記憶に新しいところです。特に、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」はネット上で数千万回を超えて視聴されていますし、大貫妙子の「SUNSHOWER」や大瀧詠一の「A LONG VACATION」などのアルバムは、海外で超人気のレア商品となっています。

 こうしたシティポップ再評価の動きは、いまや国境を越えて、レコード針の売上にも波及し、音楽ムーブメントとして成長を続けており、クールジャパンの一角を担っているのですね。


 さて、今回の小木ゼミの活動は次の通りです。

◆2019年夏 TFT(Table For Two)健康ランチ やります!

2019年夏も、小木ゼミ×TFT×東経大生協による、TFT健康ランチを発売します!

 TFTとは、先進国の肥満と開発途上国の飢餓を同時に解決しようとするNPO法人・Table For Twoの取り組みです。TFT健康ランチを購入していただくと、寄付額20円が開発途上国の子供たち給食一食分として寄付されます。

 2019年夏のメニューは、何回かの試食会を経て、次のものに決まりました!


2019年6月24日~28日 「選べるトッピング!豚キムチ丼」400円(380円+寄付額20円)
2019年7月 1日~ 5日  「とろたま!ネギトロ丼」430円(410円+寄付額20円)

 試食会でいただきましたが、とってもおいしかったです。
 ぜひ、ご購入ください!

 小木ゼミ生は、6月末の発売時期に向けて、POPなどの作成、宣伝活動に忙しくなりそうです。


◆小木ゼミから2名の成績優秀者選出

今年も小木ゼミから、成績優秀者が2名出ました。これで、ゼミ創設以来、12年連続の成績優秀者の選出です。受賞者の皆さん、おめでとうございます!小木ゼミをやりがら、成績優秀賞とは、うーん本当に立派!これからも頑張ってください。


◆その他(ゼミスタート、国分寺物語など)

4月より新生小木ゼミはスタートしています。今年は、4年生13名、3年生13名、2年生11名でのスタートです。2年生は戸惑いながらですが、懸命に食らいついているようです。3年生はゼミ運営と個人研究で大変そうですがしっかりやっています。4年生は就活も終盤戦でよい成果報告も届き、多くの学生が就活を終えています。それぞれ頑張ってほしいと思っています。

 「国分寺物語」班(他のブログを参照のこと)では、何やら大きな動きがあったようです!今後、こちらでも紹介していきますが、秋に実りある成果が出るように頑張っているようです。乞うご期待!応援よろしくお願いします。

                            小木

2019年5月20日月曜日

ファイナンスって何?

経営学部で企業金融論を担当している木下です。
東京経済大学では2020年度以降の入学生を対象として、ファイナンスコースが設置されます。そこで、今回は金融・ファイナンスの仕組みと役割について簡単にお話しようと思います。

金融とは、資金の貸し借りをする仕組みのことです。以下の状況を考えましょう。
・Aさんは、ビジネスのアイデアと実行する能力を持っていますが、資金がありません。
・Bさんは、ビジネスのアイデア等はありませんが、資金が余っています。
このとき、AさんとBさんが出会うことができれば、AさんはBさんから資金を借りてビジネスを行うことができます。金融という仕組みが無ければ、社会にとって有益なビジネスが発生しないかもしれません。金融は能力のある人材や資産を有意義に活用するための根幹であるとも言えます。AさんとBさんが出会うための仲介を行っているのが、銀行や証券会社等の金融機関です。銀行は預金者の代わりに企業を探して融資を行い、証券会社は投資家に企業の株式等を紹介してくれます。
資金が余っているといっても、長期で運用したい人もいれば、短期で運用したい人もいます。同様にリスクの許容量に関しても個人差があります。また、リスクある投資を行うときには、その分高い収益を期待するでしょう投資家が適切な投資を実現したり、企業が適切に資金を調達するためには、時間やリスクの価値を正しく測定する必要があります。これらの仕組みを考えるのがファイナンス理論であり、実証ファイナンスでは理論に合わせた統計手法を考えます。もう少し話を進めると、企業と銀行等の間の駆け引きについての話題があります。例えば、企業は業績が上手くいっているように見せて、銀行から資金を借りようとするかもしれません。すると、銀行はそれを見越して金利を高く設定してしまいます。どのようにして優良な企業を見抜くか?優良な企業はどのようにして銀行を信用させるか?という議論に発展していきます。

今回の話は金融市場に関するものですが、市場の役割、物事の数値化、駆け引きについては、他の分野でも同様の考え方が使われることも少なくありません。ファインナンスを学ぶことで、広く応用可能な考え方を身に着けることができます。
東京経済大学のファイナンスコースでは、上記のテーマ等について効率的に学べる科目と環境が用意し、意欲のある学生の皆さんをお待ちしています。

                         文責:木下 亮

2019年5月13日月曜日

【学問のミカタ】安い服の増加は良いこと?!

経営学部でマーケティング論などを担当する北村です。私の担当科目の1つに「ファッション・ビジネス論」があるのですが、今回はこれに関連する話です。


皆さんは自分の着ている服がどこで作られているか、考えてみたことがありますか?

今年度、ファッション・ビジネス論の初回授業で、受講者に服の生産地を確認してもらいました。服の左側に、白いタグがついており、洗濯表記などとともに生産地が記されています。

今回、生産地が「日本」だった人を挙手してもらったところ、当日出席していた300名ほどの学生のうち、手が挙がったのは10名いませんでした。これが日本の現状です。

日本では、1991年にはアパレル(衣服)の約半数が輸入品で、残りの約半数が日本製でした。しかし、この比率はみるみる減っていき、2017年には輸入品が数量(点数)ベースで97.6%に達しました。いまや服が100枚あったら、そのうち日本製は2枚か3枚しかない、ということです。



出所:経済産業省「工業統計」/総務省「経済センサス」、財務省「貿易統計」、日本繊維輸入組合「日本のアパレル 市場と輸入品概況」
(経済産業省製造産業局生活製品課「繊維産業の課題と経済産業省の取組」に掲載)

この背景は、服の生産コストを下げようと、1980年代後半、特に1990年代以降、中国など人件費の安い国の工場で縫製してもらい、完成した服を輸入する動きが加速したことにあります。1985年のプラザ合意により、1ドル250円ほどだった為替が1988年には1ドル120円ほどまで円高が進んだこと、その後やってきたバブル経済とその崩壊後の不景気などが理由です(なお、かつて輸入先の大半は中国でしたが、経済成長に伴い中国の人件費もどんどん上昇したので、今はベトナムやインドネシア、ミャンマーなど東南アジアでの生産が増えています)。


こうして服の生産コストが下がる、ひいては服の値段が下がるのと同時に、国内で出回る服(輸入品と国内生産の合計)の数は、同じ1991年に約13億点だったのが、2017年には約28億点と、2倍以上に増えています(下図の棒グラフと左軸)。日本の人口は約1億3千万人ですので、1991年には1人が10枚買うほどの量が出回っていたのが、いまや1人が21枚か22枚買うほどの量が出回っているということです。


出所:小島ファッションマーケティング
(『販売革新』2019年2月号に掲載)

この背景は、少子化による人口減少のため、日本市場だけで売上を維持するためには、1人の人にそれまでより多くの服を買ってもらう必要が生じたことにあります。トップス1枚とボトムス1枚でコーディネートを完結させず、重ね着や小物を使うのがおしゃれな着こなしだと、アイテムを増やしたのです。

また、同時期に、郊外にショッピングモールがどんどん増え、そのテナントとしてアパレルブランドが必要になったことも関係しています。それまで百貨店やファッションビルなどが主要な販路だったアパレル企業が、それと同じブランドをショッピングモールに出店すると、ブランドイメージが下がりかねません。また、ショッピングモールの客層にとっても、値段が割高に感じられたりします。そこで、ショッピングモール向けに、既存ブランドのサブブランド(価格帯をやや下げた妹ブランド)を立ち上げたりしたのです。

しかし、こうして生産コストが下がったことで服の値段が多少下がったとしても、欲しくない服は買わないですよね。実際、消費数量は、1991年の約11億から、2017年の約13億へと、わずかに増えただけでした。アイテムやブランドの追加により、出回っている服は増えたのに、消費は微増にとどまったのです。先ほどと同じ図の折れ線グラフと右軸を見て下さい。1991年に約90%だった消化率は、2017年に約48%にまで減少したと推定されています。いまや国内の服の2枚に1枚しか買われていない、ということです。


では、売れ残った服はどうなるのでしょうか?

良くも悪くも、日本には四季があります。いまは店頭に夏物が出回っていますよね。1月のセールや2月の追加セールでも売れ残った冬物は、いま店頭に並べても、買う人はいません。

かといって、翌年の同じ時期に売ればよいかというと、そうもいきません。服には流行があるからです。1つの流行は大体3年だと言われています(兆し、ピーク、落ち目が1年ずつです)。近年だと2015年にガウチョパンツ(裾に向かって幅が広がった、7分丈のパンツ)がブームになりましたが、今それを履くと、時代遅れです。服は食べ物のように腐らないのに、翌年は売れない、いわば「生もの」なのです。

よって、アパレル企業は、値下げセールをしてでも、できるだけ当該シーズン内に在庫を売り切ろうとします。すると、消費者は定価で買うのがばからしくなるので、セールを待ちます。結果、なおさら服が売れなくなり、余るのです。余った服は、廃棄するしかありません。同じ流行が続いているならば、少しは翌年の同じ時期に売れるかもしれませんが、1年分在庫を保管しておくにもコストはかかるので、捨てた方がよいのです(なお、最近では、英バーバリーが2017年度に42億円相当の商品を焼却処分していたことが発覚し、非難を浴びました。これはセールをしてブランドイメージが下がるのを避けたためです)。


以上、いまアパレル業界で起きていることは、次のようにまとめられます。

・消費者からすると、価格帯が下がるのは良いことだが、企業からすると、売上も市場規模も下がるので悪いことになる(高校生の皆さんも、数年後には社会人になります。消費者として嬉しかったことは、就職後、嬉しくないことになるわけです)。

・価格帯が下がったからといって、消費者は欲しくないものまで買うわけではない。それなのに値段を下げようとすると、品質を下げざるを得ない(流行りものは、品質が悪くても1シーズン着れば捨てていいや、という消費者も増える)。また、値下げすれば買ってくれると思いセールをすると、かえって定価で買う消費者も減る。

・こうして不良在庫が増えると、廃棄や焼却も増える。売れた場合でも、品質が悪く、消費者にとって思い入れもないので、1シーズンで捨てられる服が増える。作ってくれた労働者や、商品企画をした人にとって、ゴミになるのは悲しいこと。また地球環境にとっても、ゴミの増加は良くないこと。

果たして、この悪循環を抜け出すには、どうしたらよいでしょうか?いま世界中のアパレル企業が改革に取り組んでいるところです。皆さんもどうすればよいか、考えてみてください。


文責:北村 真琴

2019年5月8日水曜日

ゼミの新しい試み


かなり久しぶりの投稿になります。
経営環境論担当の石黒です。

今年度最初の投稿ということで、今回はゼミの活動報告をしたいと思います。
本年度のゼミは26名。
そのうち新規生は11名です。
本年度のゼミが始まり早くも1ヶ月。
徐々に仲良くなれてきたでしょうか。

本年度から新しく導入した物があります。
それが、「アイスブレイク」。
アイスブレイクは、初対面同士が議論をする際に、最初に簡単なゲームなどを行い、緊張をほぐすことです。
当ゼミでは、授業開始時にランダムにグループを組んでもらい、簡単なお題について話し合ってもらいます。

例えば、こんな感じ。。。
「石黒先生がギリギリで怒らないイタズラを考えてください」
「○○さん(ゼミ生)が思わず照れてしまう一言を言ってください」
主にゼミをネタにしたお題を出しています。
それなりの盛り上がりです。
お題を考えるのがなかなか難しいのですが・・・

導入した理由は2つあります。
1つ目は、議論の活発化です。
これまでのゼミでは、ゼミ生同士でなかなか意見を言えない状況にありました。
当ゼミは個人研究であるため、相手の研究分野に詳しくなく、遠慮している場面が多かったように思います。
しかし、その分野に詳しくないからこそ別の視点での考えが見出せることもあります。
アイスブレイクを通じて、もっと遠慮なく、自由な発想で意見交換をしてもらえればと思います。

2つ目は、新規生の壁をなくすためです。
お題はゼミに関することなので、必然的に新規生はお題になった人(例えば、私)の人柄、趣味などを継続生から教えてもらうことになります。
そうすることでいち早くお互いの人物像をつかみ、仲良くなるきっかけをつかんでほしいです。
後期には、逆に新規生をお題にしていこうと思います。


まだ効果は出ていないかな・・・?

BBQも企画中のようです。
みんなで楽しく議論して、今年も楽しいゼミにしていきたいですね。

経営学部 石黒督朗

2019年4月22日月曜日

大学の授業スタイルが多様化しています。

2019.04.22


東京経済大学経営学部の本藤です。

大学では、今年度の授業最初のシラバス授業も終わり、やっと本格的な授業がスタートしています。



今年の授業シラバス(授業概要の説明)に「実務経験」に関する表記が加わったのですが、カリキュラムを検討する大学生でも気付いた人は少ないかもしれません。これは、来年度から始まる「低所得世帯の学生を対象とした高等教育無償化」の対象となるための条件のひとつとして文部科学省から指示された変更になります。


その条件のひとつとして「卒業に修得が必要となる単位数の1割以上、実務経験のある教員による授業科目が配置され、学生がそれらを履修し得る環境が整っていること」という規定があります。それを受けて、今年度から授業内容の説明欄に「この授業は、担当教員の〇〇の実務経験を活かして行います」というような表記が追加されました。この場合、経営学部で正課授業として設置されているインターンシップ授業「企業研修プログラム」や実務家を招聘する「ファッションマーケティング」、起業家育成のための「ビジネス創造」なども、実務に直結する大学教育の対象になってきます。

これは、実際のビジネスにつながる大学教育、社会及び産業界における人材的ニーズに対応した大学教育が求められ始めたことを意味しています。とは言っても、本学経営学部の教員は、この実務家教員については新規採用などをしなくても十分に該当する教員が在籍しているので、大きなハードルにはなっていません。更に、経営学部という性質から、実務とかけ離れた授業というのはあまり見当たりません。


大学教員の中には、「自分は研究者だ」という意識が強い人と、「自分は教育者だ」という意識が強い人に分かれています。もちろん、十分な研究をしていないと十分な教育ができないですし、情熱をもって研究していないと情熱をもって講義ができないので、研究と教育は不可分の関係にあります。

僕は学部卒業後は、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)という外資系コンサルティング・ファームでコンサルタントとして勤務して、それから財団法人流通経済研究所という国内シンクタンクまで、10年以上の実務経験をへて大学教員に就いていますし、現在もマーケティング・ファームの取締役をしていたり、企業のコンサルティングをしたりしているので、研究者や教育者という意識よりもビジネスマンという意識の方が強かったりします(笑)


必然的に、大学院から大学教員になっている先生方と比較すると、授業やゼミでも学説や理論の説明からアプローチするよりも、事例からアプローチする方が好きですし、得意だと思います。高校時代の数学の授業をイメージすると、公式を説明してから問題を解くアプローチではなくて、問題を説明してから公式をあてはめていくアプローチと言えるかもしれません。個人的な印象としては、公式の理解を十分に促してからの方が、体系的に漏れなく学ぶには適しているアプローチのような気もします(隣の芝生はよく見えるだけなのかもしれませんが・・・)。


ただし、教育手法については、Active Learning(議論や提案を中心とした能動的授業)とかProject-baced Learning(課題解決型授業)は現代教育のトレンドになっていて、授業形態が多様化してきています。大切なことは、学生が自分にフィットした授業を多様な選択肢の中から選べる環境を提供することだと思います。

そこで文部科学省の規定した「卒業単位の1割以上」という数字に意味が出てくるのです。つまり、半分もの教員が実務経験者だったとしたら、もはや大学教育は社員研修になってしまいます。だから、そういう役割を担う人は1割から2割で十分ですという意味だと思います。


とは言っても、高校までの勉強は、多くの高校で大学入試のための受験勉強が主な内容になっています。これらは基本的に与えられた課題を解けるかどうかであって、問題や課題を発見するようなアプローチは極めて少ないのも事実です。これに対して、ビジネスの世界では様々な事実から、会社や組織の課題を抽出して解決していく能力が求められています。実は、その時に必要なスキルが、詳細な事実認識から緻密な検討を重ねていくロジカル・シンキングで培われるものであり、それは大学で全ての教員が教えられる考え方でもあるのです。学生諸君は、自分が邁進できるアプローチの選択肢が増えていると言えそうです。


文責:本藤貴康(流通論、流通マーケティング演習、アカデミックコンパス担当)
本藤ゼミブログ(http://hondo-seminar.blogspot.com/





2019年4月15日月曜日

特別企画講義「ビジネス創造」開講!


こんにちは。経営学部の関口和代です。
先週4月11日から、特別企画講義「ビジネス創造」が
2年ぶりに履修者約30名でスタートしました。

「ビジネス創造」は、ビジネスや起業に興味がある学生に、
ビジネスの基礎知識やビジネスを肌で感じることができる機会を提供しようと、
中小企業基盤整備機構/中小企業大学校東京校内にある
BusiNest(ビジネスト)さんの全面協力のもと企画された講義です。

 東京経済大学は1900年に大倉喜八郎によって設立されました。
http://www.tku.ac.jp/tku/founder/okura/

西洋諸国とならぶ商業の知識・道徳を備える人材を育てることを目的として
赤坂葵町(現:虎ノ門)に設立された大倉商業学校は、
大倉高等商業学校(大倉高商)、大倉経済専門学校を経て、
第二次世界大戦後、東京経済大学となりました。
大倉喜八郎は、その生涯で200社余りを起業した実業家です。
http://www.taisei.co.jp/140th/ourfounder/challenge.html

特別企画講義「ビジネス創造」を受講することによって、
ベンチャー精神、アントレプレナーシップ(entrepreneurshipといった
創立者の思いや来し方を認識するとともに、ミッションとパッション溢れる
新たなビジネスが立ち上がることを期待しています。

講義目的

シラバスにも書きましたが、ベンチャー精神やアントレプレナーシップは、
起業家だけでなく、組織人にとっても必要なものです。

「AI導入で仕事消滅」などとも言われています。
確かに、定型的な仕事は、ある程度代替されるかもしれません。
ですが、想いとスキルを持った人でなければ
新たな商品・サービスはもちろんのこと、
社会にインパクトを与えるようなビジネスや
社会に貢献するビジネスは出てこないでしょう。

本講義を履修することによって、ビジネスを立ち上げるスキルなどを
獲得するとともに、熱い想いを持った先輩起業家との交流から、
多くのことを学んでほしいと思っています。

 起業は特別なものでも一部の選ばれた人だけのものではない。
 実社会においては、組織にぶら下がっていては生き抜くことすら難しく、
 起業を考えないこと自体がリスクとなる。
 将来どの方面に進むとしても、自ら考え、計画し、行動する力が求められる。


特別企画講義「ビジネス創造」のシラバスには、上記のような一文があります。
繰り返しになりますが、本講義をきっかけとして、
アントレプレナーシップ(entrepreneurship)やベンチャー精神といった
創立者である大倉喜八郎の想いや行動力を再認識するとともに、
新たなビジネスが立ち上がることを期待しています。
 

先輩起業家との交流

今期も、3名の先輩起業家をゲスト講師として招聘いたしました。
聴講も受け付ける予定ですので、
ご興味のある方は事前にお問い合わせください。
(教室のサイズによってはお断りする場合もあります。)
第一回の523日(木)は、東京経済大学OB・OGの方です。
国分寺でカフェLife Size Cribeを経営されている吉田一毅氏
フェアトレード・ビジネスをされている久保田優氏です。

Life Size Cribe (吉田一毅氏)
http://www.cafe-magazine.com/?p=21130
https://www.facebook.com/lifesizecribe
スリーパンズ(久保田優氏)
http://threepans.jp/company/
http://www.fragmentsmag.com/2016/01/three-pans-interview/

第二回の73日(木)は、
日本環境設計株式会社の岩元美智彦氏です。
http://www.jeplan.co.jp/ja/

            (左:久保田氏 右:吉田氏)

プロによる講義・支援

「ビジネス創造」は中小企業基盤整備機構/中小企業大学校東京校内にある
BusiNest(ビジネスト)さんの全面協力により行われています。
BusiNestさんは、新規事業の立ち上げや既存事業の活性化、
異業種・異分野の交流を応援することを目的に、
20154月にスタートしたプロジェクトで、
オフィス・スペース、専属サポーターによる支援、
起業家・起業希望者の視野とネットワークを拡げるイベントの開催、
ビジネスを基礎から学べるプログラムなど、さまざまに支援活動を行っています。
http://businest.smrj.go.jp/


中小企業大学校・東京校は、東京経済大学からも近い東大和市にあります。
中小企業大学校は「中小企業基盤整備機構が、国の中小企業施策の
実施機関として、中小企業の人材育成を支援することを目的に
全国9箇所に設置・運営」されています。
東京校は、緑豊かな素敵な環境の中にあります。
http://www.smrj.go.jp/inst/tokyo/index.html

図書館での告知


図書館1階のブックウォールで、「ビジネス創造」を履修する上で
役立つような関連書籍や資料を展示しています。
ゲスト講師の方々のご紹介もしていますし、寄せられた感想の一覧も
展示する予定です。是非ご覧ください。

キャンパスベンチャーグランプリ


日刊工業新聞社などが主催する学生による新事業ビジネスコンテスト
「第14回キャンパスベンチャーグランプリ東京大会」(2017年度)に
おいて、2017年度1期の履修生チームが奨励賞を受賞しました。
受賞チームは、1期の履修終了後も引き続き、
BusiNestで本講義講師の馬込氏よりご指導をいただき、
ビジネスプランをブラッシュアップして臨んだ成果です。
彼等に続く学生起業家がたくさん出ることを期待しています。
https://www.tku.ac.jp/news/020248.html



(文責:関口和代)

2019年4月4日木曜日

春は新しい時代の始まり

皆さんこんにちは。経営学部教員の柴田です。
4月に入り、大学でも新しい年度、新しい学年が始まります。東京周辺では3月下旬の卒業式の頃には、ようやく咲き始めた桜が、4月の入学式の頃には、美しい桜吹雪となります。下の写真は3月29日(金)に撮影した、本学の国分寺キャンパスの様子です。年度末のため、閑散としたキャンパスに、桜が八分咲きとなっていますが、4月2日の入学式からは、満開の桜のもとに大勢の学生が集まることになります。


4月1日には、5月からの新しい年号の「令和」が発表されました。この「令和」は『万葉集』の中にある、大伴旅人の梅の花の歌の序文の「初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、」から採られた、ということです。『万葉集』の時代、というか、だいたい奈良時代までは、唐の影響から、桜よりも梅の花の方が好まれていたようです。『万葉集』の中で桜を詠んだ歌が43首だったのに対して、梅を詠んだ歌は110首もある、とのことです。ところが平安時代になると、桜が好まれるように変化します。平安時代前期に編纂された『古今和歌集』では、桜を詠んだ歌が70首であるのに対して、梅を詠んだ歌は18首程度に減っています。奈良時代には「お花見」というと観梅であったのに対して、平安時代から、現在のような桜の花を楽しむ行事に変化したと言われています。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、「令和」の時代にはさまざまな面でグローバル化が進んでいく時代となると考えられます。海外との交流もどんどんと進んでくると思います。「桜舞い散る中での入学式」あるいは「桜舞い散る中での入社式」さらには「新人歓迎のお花見会」というのは、私たち日本人の心象風景の中に深くなじんでいるものと思いますが、世界的に見ると、「4月一斉入学」とか「4月一斉入社」という仕組みはきわめて少数派に過ぎません。世界的には9月入学の国々が多く、また「必要に応じて随時採用の企業」が多いのが実情です。「令和」の時代には、多様性がさらに求められるようになるでしょう。
(文責:柴田 高)