2020年9月28日月曜日

西アフリカの資源輸出大国ガーナを訪れて

流通マーケティング学科の丸谷です。39回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、海外調査に頻繁に訪問します。このブログでもこれまでも海外調査で訪問した国について取り上げました。今回は20202月から3月にかけて訪れたガーナについて取り上げます(622日プログでも若干ふれています)。

 皆さんガーナといえばどのようなイメージでしょうか?多くの方がイメージするのはチョコレートではないでしょうか?ロッテのガーナチョコレートは非常に有名であり、私も実際最初のイメージはそうでした。実際ガーナにとってチョコレートの原材料であるカカオの重要性は高く、詳細は、ロッテHPhttps://www.lotte.co.jp/products/brand/ghana/kodawari/material/)に譲りますが、ガーナではチョコレートの主な原材料である高品質のカカオが取れることは事実です。

 

   ロッテガーナチョコレート

 1960年代にはガーナのカカオ生産は世界最大でした。現在でもGDPの約2割、雇用の約半数を占める農業において主要作物ではありますが、1957年の独立当初、資金不足であった政府はカカオ産業を統括し、生産者からの買い上げ価格を低く抑えすぎていたために、カカオ豆密輸出が横行し、ガーナ産カカオ豆の生産量減少を招いてしまいました。近年になり構造調整によって民営化をすることによって回復しつつある状況ですが、かつての繁栄はありません。

 現在ガーナの輸出を現在支えるのは鉱物と原油生産である。最大の輸出品目は南アフリカに次ぐ第2位の金です。ガーナの金鉱は南アの金鉱に比べて露天掘りであることもあり採掘掘コストが安価であり国際競争力が強力です。今回現地調査で訪れた内陸のクマシ近くの都市オブアシには世界第9の金山があります。金の交易を中心に内陸で栄えたアシャンティ王国は19世紀末から20世紀初頭の数次にわたり当時植民地化を進めていたイギリスと激戦を繰り広げました。そして、1901年にイギリスの植民地となった際にも 黄金海外を意味する 英領ゴールドコーストという名前となりました。


 


原油生産は2007年に発見されたギニア湾の油田が2010年から本格的に商業生産が開始され、Jubilee 油田、T.E.N.Tweneboa,Enyenra and Ntomm)油田に加えて、20185月にはSankofa Gye Nyame 油田の採掘が開始され、現在3つの油田で採掘がなされており、石油依存度が高まっています。

んな西アフリカの資源輸出大国ガーナですが、かつて金と並んで輸出していたのが奴隷でした。アシャンティ王国は、自分たちと他の部族の黒人を捕まえて、白人たちに売り利益をあげていたのです。今回白人を海外へ送り出す拠点となった場所を訪れることができました。

奴隷貿易の拠点となった場所は、ヴォルタ州、グレーター・アクラ州、セントラル州、ウェスタン州の城塞群として世界遺産となっています。今回訪れたのはケープコースト城とエルミナ城でした。

ケープコースト城は当初は金や木材の輸出拠点でしたが、18世紀頃には英国がアシャンティ王国から買い入れた奴隷を世界に送り出す拠点となりました。奴隷として待機させられていた黒人たちがいた牢屋は劣悪であるのに対して、城砦を管理する英国人側の居住場所は変え通しもよくその眺めも素晴らしく、コントラスは衝撃でした。

奴隷として世界へ送り出す城砦からの出口
風通しのよい居住場所

              活気のある城砦前の現状

エルミナ城も奴隷拠点となりましたが、こちらは大航海時代に繁栄を誇ったポルトガルの拠点となった場所で、サハラ砂漠より南のアフリカ(サブサハラアフリカという呼ぶ)で最古の欧州建築で、欧州による最初のギニア湾の拠点として有名です。このブログでもブラジルに関して取り上げた際に、ポルトガルの三角貿易については取り上げていますが、三角貿易について改めて考えさせられました。

               エルミナ城の外観

コロナ禍での渡航制限が厳しくなる直前でいくつかアポイントがキャンセルになることもありましたが、アフリカとラテンアメリカとの関係を振り返る意味でも貴重な機会となりました。西アフリカは遠いですが、コロナ禍が終わり再び自由な往来ができる日には機会があればぜひ訪れて欲しい場所です。

               (文責 流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)

2020年8月30日日曜日

日経円ダービー 総合順位は全国5位(小木ゼミ通信vol.40)

 マーケティング論、ソーシャルマーケティング論、消費者問題を担当しています小木です。今回で40回目の投稿となりました。

 2020年 私の夏休み


 2020年の夏休みは、東京オリンピックに興じて、旅行や出張にも行って、夏休みを有効に使おう、と数か月前までは考えていましたが、すべて中止。今年の夏はしんどい夏となりました。コロナと暑さのWパンチで、家に籠り、後期の授業準備、教務、学会の仕事などをしていたら、夏休みがほぼなくなりました。

 昨日は、同時刻に、学会の理事会や全国大会開催準備の会議と、娘の某大会が重なり、2台のPCで両方ともZoomで参加・視聴という、まあなんとも行儀の悪い所業をやってのけました。娘はなんと優勝グランプリを獲得!そこからは、(自分の中では)理事会どころではなくなりました。学会のZoomのカメラオフを頻繁に繰り返しながら表彰式をじっくりと視聴していたら、ふと「こんな風に、何かをしながらZoom授業を聴いている学生は結構多いかも」と思い、妙に納得してしまいました(そうではないと思いますが)。

 また、今年の本学のオープンキャンパスは、昨年までとは異なってWebオープンキャンパスとなり、動画配信による各学部長のあいさつや各学部の先生による模擬講義と、Zoomによる相談会となりました。毎年、暑い中、校内は盛り上がりを見せていましたが、今年は一味違ったオープンキャンパスとなったようです。

 しかしながら、多くの高校生の皆さんが参加していただいたようで、ありがたい限りです。受験生の皆さんは、体調管理を万全にして受験頑張って下さい。 

 と、まあ、ここ数カ月で、明らかに従前の仕事や生活の様式が変化してきたことを、ひしひしと感じている次第です。


 円ダービーは総合全国5位!


 さて、小木ゼミの活動ですが、夏休みで充電期間とはいえ、夏合宿もなくなったため、ゼミ生はZoomを使って後期のスタートダッシュをすべく、頑張っている模様です。

 8月29日㈯の日本経済新聞に日経円ダービーの総合結果が掲載されました。小木ゼミの1チームが全国5位となりました。表彰状もいただけるようで、ゼミ生には素直におめでとうと言いたいです。特に、7月末の急激な円高を、6月末に予想するのは至難の業でしたが、よく頑張りました。

 後期は対面式授業も混ぜていく予定です。ゼミ生の皆さん頑張っていきましょう!

 

円ダービーの記事
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63009850V20C20A8PPD000/

2020年8月24日月曜日

コロナ禍で日本でも普及するかBOPIS

流通マーケティング学科の丸谷です。38回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、現地調査で頻繁に海外を訪問します。このブログでもこれまでも海外調査で訪問した国で普及する新たなサービスについて取り上げてきました。今回は数年前に米国で普及し始めたBOPISというサービスがコロナ禍で普及し始めたそうなのでとりあげてみます。


皆さんBOPISという言葉を知っていますか?


BOPISとはBuy Online Pick-up In Store(オンラインで注文し店舗で受け取る)ことです。お客さんは事前にスマホなどでイオンのオンラインサイトで食品などの商品を注文し、店員さんが店頭商品も含む在庫から注文された商品をピックアップし、店舗の駐車場の指定の場所まですべての商品をパッキングし、指定時間に持ってきてくれ車に積んでもらえます。

顧客側のメリットは配送なら一定料金以下ならかかる送料がかからないこと、いつ来るかわからない商品を自宅で待たなくていいこと、事前に決済まで終わりパッキングもしてくれるので車から降りず買い物ができることに加えて、コロナ禍という条件付きではありますが、入店しなくていいので感染リスクも低いことです。

私が長年研究対象とする日本では西友を展開する世界最大の小売業者ウォルマートでは、コロナ禍とは関係なく、2010年代半ばから都市部から郊外へ攻め込むアマゾンへの対抗策として普及し始め、既に米国店舗ではかなり浸透していました。海外の店舗への導入も進み、私が2018年に取材したアルゼンチンの首都ブエノスアイレスの店舗でも既に受け取り専用レーンが一部店舗に導入されているのを確認しました。

アルゼンチンのBOPIS対応店舗

私はネット小売の普及に関して国内取材も続け、このブログでも2019129日に「福岡でスマートレジカートを実用化した店舗」を取材した内容を取り上げています。BOPISに関しても、私はコロナ禍直前の20202月初めに既に先行導入が開始されていた三重県の津市にあるイオンモール津南に取材に行っていました(導入したのは2019年11月)。

イオンモール津南のイオンスタイルに導入されたBOPIS用設備はそれなりに立派でしたが、取材した際には開店休業状態で、設備はつくってみたものの、利用はなされていないようでした。店員さんにインタビューしてみても「利用は週末に少しされているが・・・」という寂しい感じの回答で、取材にはつきものなのですが、「時間かけていってのに・・・」という感じでした。

            イオンモール津南BOPIS専用受け取り窓口

           イオンモール津南のBOPIS専用受け取りレーン

コロナ禍となり、イオンが細々と実験的に導入していたBOPISに急激が集まり始めています。コロナ禍でイオンが運営するネットスーパーの売上は3-7月に2割増加したことがきっかけでした。これまで食品のネット販売はあまり普及していませんでしたが、イオンもネット販売の利便性を知った顧客への対応を積極的に行う方向に一気に舵を切りました。BOPISの普及もこうした動きの一つであり、730日からは関東のイオン柏店でもBOPISが開始されたと経済ニュースなどでも大々的にとりあげられました。

イオン柏店ではまだイオン津南店のような専用レーンは設置されていないようですが(コロナ禍でなければすぐに取材に行くのですが直接見れていませんが)、イオンリテールも施設整備を積極的に行っていくことを検討しているようです。

こうした動きが進めばネット注文した商品を店頭でも受け取ることもできるという従来のレベルの対応から、ネットと店舗の継ぎ目がないシームレスな対応という一歩進んだレベルへネット対応が進む可能性が高まり、対応レベルが上がれば当然利用も促進されていくでしょう。

コロナ禍で都心部ではウーバーイーツが一気に普及し、東京経済大学の周りにもあの特徴的なかばんを担いだ自転車が多く走り回るようになりましたが、郊外のショッピングモールの風景も大きく変わるかもしれません。

                    (文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)


2020年7月25日土曜日

前期の遠隔授業を振り返って(小木ゼミ通信 vol.39 日経円ダービーの中間結果発表など)

マーケティング論、ソーシャルマーケティング論、消費者問題担当の小木です。今回で39回目の投稿になります。

前期の遠隔授業(特にオンライン授業)を振り返って

遠隔授業になって、学生も教員もある意味で大変でした。ストレスもかなり溜まっていますね。でも、明けない夜はない!皆さん頑張っていきましょう。

他大学も含め、前期にZoomでのオンライン講義をやってみて顕著に感じたことがあります(オンライン授業 他大学2コマ、本学3コマ / A・Bタイプ授業 1コマ)。

それは、学生が非常に授業をしっかり聞いているということです(お隣の友達としゃべることができないからかもしれませんが)。コメントペーパーなどみていると、それが如実によくわかりますし(書いてくる質・量ともに良い)、私が恥ずかしくなるくらいに授業に対してベタ褒めなのも、これまでにない状況です。しかも、Zoom講義の方が、これまで(対面式授業)に比して授業評価が明らかに高い!裏を返せば、これまでの通常授業がそれほどよくないのかなあと思ってしまいました。

オンラインと通常授業においては、それぞれメリットとデメリットがありますが、私の場合、オンラインの際は、テキスト、講義資料、画像・動画を全て使います。対面式の場合、テキストベースに、トークや学生を巻き込みながらの授業になります。私は、後者が良いと思っていたのですが、もしかしたら前者の方が時代に合っているのかもしれないとまじめに考え始めています。あとは、授業に対してかけた時間量は10倍ほど違って(オンライン授業の準備時間と毎週のコメントペーパー評価・フィードバック時間は半端なく多かったです)、時間をかけた分、授業評価も高かったのかもしれません。

今後は、オンライン時は今回同様に進め、対面式授業に戻った際は少し授業形態を見直していった方が良いかなと思っています。

ただし、やはりゼミだけは、対面式の方が良いかもしれません。ゼミ生もかなりフラストレーションが溜まっていそうです。早く、授業や合宿で思いっきりディスカッションしたいと思う今日この頃です。


ゼミ活動報告

前期のゼミ活動は、Zoomで個人研究(30本弱)を粛々とやっておりました。資料などを集めるのも大変だったのでしょうが、ゼミ生はしっかりとやっていました。安心したとともに、ゼミ生を誇らしくさえ思いました。良いようにとらえれば、いまのゼミ生は就活でのオンライン面接も十分耐えられるレベルになったと思います。

企業コラボは止まっているのですが、それに代わって3年生中心に、幾つかのコンテストに積極的に参加することになりそうです。私自身、ゼミ生にこれ以上時間を取らせたくなかったのですが、3年生らはやる気満々で、それをダメだともいえず、許可した次第です。やるからには、しっかりとやって下さい。

また、日経学生対抗円ダービーの中間結果(第1回目)が出ました。小木ゼミは、全国12位、22位にランクインしました。その他にも、良い位置についているチームがありますので、最終結果(6月末・7月末の合計)が楽しみです。少々驚いたのは、1位の愛知学院大学のチームの指導教員が、私のゼミ生であったこと。彼も私のゼミ生の時に円ダービーに参加していたことを考えれば、円ダービーの歴史を感じます。双方の大学が1・2位をとることを願っております。

日経学生対抗円ダービーの中間結果(日経新聞 2020.7.25)






2020年6月22日月曜日

フランス発スポーツ製造小売の巨人デカトロン関東出店


 流通マーケティング学科の丸谷です。37回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、海外に出張に行くことが多く、このブログでも米国、インド、中国、チリ、ペルー、ブラジル、ケニアの出張の模様を取り上げてきました。
 海外出張では小売業者の店舗調査を行うためにショッピングモールをよく訪れます。そんな時に日本ではあまり見かけないけれど海外では頻繁に見かける店舗があります。その代表例が今回取り上げる「デカトロン」です。
201910月のブログでも取り上げたケニアでも、20202月末から3月初めに初めて行ったガーナでも、デカトロンはショッピングモールの目玉店舗の1つとして出店しており、人気があるようでした。
ケニア首都ナイロビでは卓球を店内で楽しむ姿がありました。

ガーナ首都アクラのショッピングモールの主要テナントして出店
日本のスポーツ用品を扱う量販店の多くはスポーツオーソリティ、ゼビオのようにナショナルブランドメーカーの商品を取り扱う巨大店舗をチェーン展開することによって値ごろ感を出して販売し利益を出すタイプか、ナイキ、アディダスのように世界的有名な自社ブランドが自社のブランドをある程度の高価格で販売するタイプが主流です。 

 デカトロンはフランス発祥の製造小売業者であり、世界61か国に約1,700店舗(20202月現在)を展開し、スポーツごとにオリジナルブランドを立ち上げ、80種類以上のスポーツの製品を取り揃え、それらの多くは低価格から中価格の自社ブランドであり、ユニクロのスポーツ用品版ともいえます。
 デカトロンのスポーツ用品店ならではの特徴としては、商品に触れる場としての店舗という位置づけが徹底されていることです。ケニアの首都ナイロビの店舗の写真にもあるように、店舗内に実際に商品を試してみるスペースが大きくとられています。初心者向けの安価な商品を試してもらうことによって、スポーツ愛好者を増やし、相談に来たらさらに上級のものを進めることによって顧客を育成しているようでした。お店ではレジで会計させることを促すのではなく、商品に示される四次元バーコードを読み取られせることによってオンライン販売を促し、手ぶらでの帰宅を促していました。

ガーナではウエイトトレーニングが人気のようでした。
そんなデカトロンが2019329日に日本で上陸しました。1号店は関西の二子玉川ともいえる西宮の西宮ガーデンズ内です。私も201910月に現地調査しましたが、西宮というトレンドに敏感な家族連れが多く住む好立地ということもあり、平日であったにもかかわらず、多くの家族連れでにぎわっていました。デカトロン出店の際には黒船的存在としてワークマンプラスとともにマスコミでも連日取り上げられ、話題にもなりました。
サッカーボールを試す親子

プレイグランドでバドミントン

そんなデカトロン出店から一年満を持して、2020424日にイオン幕張店1階にオープンするという情報が入ってきました(新型コロナウィルス対応を経て5月22日に開店)。
ホームページの告知によれば、

「デカトロン幕張店は、約2,500㎡の店内で、キャンプ・ハイキング、サイクリング、ゴルフ、ランニングなど約40種類のスポーツ、13,000点以上のアイテムをご提供します。
また、店外(テラス)に設置される約400㎡の体験ゾーンはまさに「もっとスポーツに気軽に触れていただきたい」という気持ちがこめられた場所です。この広いスペースで自転車の試乗やテントの設置・撤収など実際に製品に触って試していただけるだけでなく、インラインスケート教室やヨガクラスなど定期的にスポーツイベントも開催していく予定です。
また、スポーツに触れ、スポーツの魅力をもっと知っていただけるように、Decathlon club(デカトロンクラブ)を設立し店舗周辺のスポーツパートナーと提携、スポーツコミュニティの構築と拡大を図っていく予定です。パートナーの方は、スポーツイベント会場として、デカトロン店舗のプレイグランドをご利用いただけます。
さらに、デカトロン幕張店内に、お客様と交流するコミュニティエリア、自転車の修理を請け負うワークショップ、各種キャンプテントのディスプレイコーナー、クロスフィット体験エリアなど、スポーツや製品について知り、実際に体験していただけるコーナーを豊富にご用意しています。」とのことです。
1年間の周到な準備をした上での関東上陸は流通業界にとっては大きなトピックといえます。ようやく自粛期間も終わりましたし、新型コロナウィルス対策をしっかり行った上で、フランス発の新たな形態のスポーツ量販店を訪れてみてはいかがでしょうか。
(文責 流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)

2020年5月11日月曜日

 大学教育とオンライン化

 税務会計論、簿記会計、会計プロフェッショナル入門を担当している板橋です。
   今年は、緊急事態の中、多くの大学で対面型の講義が全面的に中止され、オンライン型の講義への移行が進んでいますね。皆さんの中には、大学の講義のオンライン化について不安や心配もあると思います。
 そこで今回は、大学の教育とオンライン化について話をしたいと思います。ただ、アンケート調査をしたわけではなくあくまで私の事例の紹介ですので、その点は承知しておいてください。

 もともと、オンライン化への移行というのは大学ではかなり前から進んでいまして、おそらく一番一般的なのは、学習支援システムの導入だと思います。

 学習支援システムは、講義資料の配布、小テスト、レポート、プロジェクト(複数の学生でチームを作り課題を提出する)などを通しての学生一人ひとりの予習・復習・講義への参加状況を分析することが出来るシステムです。また、いわゆる掲示板機能がついているシステムでは、それを通じて、教員への質問や、講義へのコメントが出来、教員側からもそれに対して返答をすることが出来ます。本学でもmanabaという学習支援システムが、数年前から導入されています。
 この支援システムを活用することで、教材の配布、各回の課題の提出、採点、学生の学習状況の把握が出来ます。
 
 この学習支援システムは、 動画ファイルなどもアップできるものだったのですが、残念ながら今回の事態では、急激なシステム利用者の増加にシステムの増強が追い付かず、容量制限がかかってしまい、現在は、動画は外部にアップして、リンクを貼る形式にすることが勧められています。
 その他にも、利用者の増加によって、学習支援システムの反応が遅くなる事例が他大学では発生していますし、これが著しい場合には、システムが落ちてしまう(動かなくなる)危険性も指摘されています。

 そのため、私の場合は個人的にサーバーを設置し、moodleという学習支援システムをバックアップ用に準備しています。こちらでは、ファイルのアップ容量は1ファイル2GBまで、全体としてのアップ容量が50GBまで対応可能にしています。750kbpsであれば、90分の講義をフルに動画にしても0.5GB強ですから、一人の教員の半期のファイル容量としては十分な準備をしています。
 さて、このような学習支援システムですが、大学の学びというのは、「一方向」だけのものではありません。教員からの講義によって、知識を蓄えることと同時に、学生からのフィードバックや、学生相互の議論を通じて、多面的な物の見方を学び、自分自身の意見というものを構築することが重要です。しかし、学習支援システムでは、細かいグループ分けがしにくく、発言が全参加メンバーに見えてしまうことで、発言を避ける傾向が出てしまう場合があります。(学習支援システムの種類によっては、細かくグループ分けをすることが出来るものもあります。)

 そこで、私の場合は、少人数のゼミなどでは、chatworkというビジネス向けのコミュニケーションツールを使っています。これは、グループ分けが各参加メンバーで設定できるので、研究テーマごとに班を設定する作業や、その班の中で更に、小さいテーマごとに参加メンバーを設定することが簡単にできる特徴があります。ファイルも送信できるので、現在はプレゼンテーションの動画をアップして、それに対して参加者がコメントをチャットで送るということをしています。
 
 このプレゼンを動画で行い、コメントをチャットでというのは、比較的珍しいかもしれません。うちのゼミの場合は以前から、せっかくいいコメントをしてもらっても、記録がとれていない結果、忘れ去られてしまうという残念なことが起こっていまして、せっかくオンライン化するなら、その対策もちょうどいい機会なのでやってみようということで試行しています。
 他大学も含めて、ゼミでのディスカッション部分では、Zoom(リアルタイムメッセージングとコンテンツ共有が可能なビデオ会議システム)などを使うケースが、多いのかもしれません。

 このビデオ会議システムも注目されていますね。このシステムを使うと諸外国の大学との協働講義なども可能で、本学では2016年度に「スカイプを使用してタイの大学と協働授業」というものを行いました。
 タイ・バンコクの泰日工業大学と相互交流を行いながら異文化コミュニケーション能力を高め、自らのグローバルキャリアへの意識を高めることを目的に開講された特別講義「グローバルキャリア入門」では、来日前の4月にスカイプを使い、泰日工業大学(タイ・バンコク)と繋ぎ、顔合わせを成功させました。その後、実際に来日した段階では、スカイプでの直接対話を通じて親密な関係になっていたこともあり、合同研究作業は非常にスムーズに進行していました。

 そのほか、フレッシャーズセミナーという新入生向けの演習講義(ゼミ形式の少人数講義)では、Wordpressというホームページ作成システムを利用してもらい、実践的にオンラインでの情報発信スキルの育成にも取り組んでもらっています。今年は動画で行う予定ですが、図書の利用方法、プレゼン技法を実践的に学ぶためのビブリオバトルという書籍紹介の演習などもしています。

 このように、大学での学びは、オンライン化への対応が比較的進んでいますし、むしろオンライン化することによって、「情報として残り、学習効果が上がる」という面や、「諸外国の大学とつながることでより多様性のある学習ができる」というポジティブな面があります。

 その他、ここですべては挙げられませんが、本学では、教員相談員によるWEB学習相談(Zoomを使用)や英語学習アドバイザーへのWEB英語なんでも相談(Zoom使用)も在校生向けに5月11日(月)からスタートするなど、オンラインでも出来る限り学習を進めることの出来る取り組みもどんどんはじめています。

 今回の緊急事態がどこまで続くのか中々先が見通せない中で、心配なことも多いかと思いますが、その中でも各教員それぞれ出来るだけ良い講義、良い学習環境を提供できるように心がけています。 
 この記事が、大学でのオンライン教育の学びがどのように行われているかの一例として、参考になれば幸いです。

(文責:経営学科 板橋雄大)
 

 
  

2020年5月4日月曜日

ケース・メソッドで取り上げる「ムーミン・バレーパーク」を現地調査


流通マーケティング学科の丸谷です。36回目の執筆です。私は流通マーケティング学科の必修科目であるケース・メソッドを担当しています。ケース・メソッドは、企業(非営利組織を含む)が行っているマーケティング活動の事例(ケース)に対して、既存の知識や理論を当てはめたり、新しい知識や戦略を生み出したりする教育方法(メソッド)です。

ムーミン・バレーパークの正門前にて
この科目では企業が実際に取り組むマーケティング活動の事例を取り上げる必要があり、私はマーケティングの中でも、専門がグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)なので、海外から日本に参入してきた企業のうちなるべく大学生にとって身近な題材を取り上げてきました。具体的にはマクドナルド、スターバックス、ネスレなどです。

ケースはなるべく新鮮な内容がいいと考え、数年に一度変更しています。ケースは自身で執筆する場合もありますし、販売されているケースを使用することもあります。今回は20195月に慶応ビジネス・スクールから出版されたアールト大学ビジネススクールのArto Lindblom教授と慶応ビジネス・スクール浅川和宏教授作の「日本でのムーミン・テーマパークの設立」を使用することにしました。

販売ケースを利用する場合には、事業を円滑に進めるために資料を収集したり、実際に商品を購入して使ってみたり、サービスを体感してみたりしています。今回は2020年度に新規ケースの題材となっている埼玉県飯能市宮沢にある「ムーミン・バレー」に取材に行ってきたので取り上げます。

「ムーミン・バレーパーク」は埼玉県飯能市宮沢327-6にあるフィンランドの著名画家トーベ・ヤンソンさんが生み出した有名人気キャラクターのムーミン一家を題材にしたテーマパークです。このテーマパークとともに北欧生活をテーマにしたショッピングモール「メッツァビレッジ」と呼ばれる郊外型レジャー施設も併設されてます。

パークに併設されたメッツァビレッジ外観
今回授業で取り上げるケースでは主に立地選定、日本での現地適応、ターゲット市場設定、価格戦略、競合への対応、日本市場参入の是非といった幅広い内容が取り上げられています。ムーミン自体はケースの中でも「日本は第二の故郷ともいわれている(ケース5頁)」と示しているように、非常に有名であり人気もあるため、多くの情報が示され、多くの考察もなされています。

今回の取材前にも多くの事前資料を読み現地取材を行ったのですが、実際現地調査をして理解できたことは多くありました。調査結果をすべて書いてしまうと、受講生の皆さんの授業課題作成に影響を与えてしまうので、今回は最初の立地選定に関して簡単に触れておきます。

立地選定に関してはテーマパークがある場所の地名ともなっている宮沢湖の存在が大きく、宮沢湖の自然にうまくムーミンの世界観を当てはめているということでした。

ムーミンの世界観を表現するのに適した宮沢湖
ムーミンの魅力のうち彼らが暮らす北欧の大自然での彼らの生活があります。1つの考え方としては、この世界観を完全再現する方法もあります。例えば、ディズニーのキャラクターを題材にしたテーマパークのように莫大な金額をかけてかなりの精度で再現することは可能かもしれません。

しかし、ムーミンの生みの親であるトーベ・ヤンソンの自然を大事にする考えにも反するように感じました。私が「ムーミン・バレー」を訪れて最も感じたのは、愛・地球博の際に名古屋郊外長久手でジブリアニメ「となりのトトロ」の世界観が再現されたパブリオン「サツキとメイの家」の世界観と通じるものでした。

ジブリの打ち出す世界観と「ムーミン・バレー」の世界観は類似しており、「三鷹の森ジブリ美術館」よりもかなり郊外にあり敷地も広大であることから「サツキとメイの家」を思い起こさせたのではと思います。

もちろん、パピリオンとテーマパークではコンセプトが異なるので、アトラクション、食事、展示など多少の商業主義は感じます。しかし、それらの商業主義は素朴であり、世界観を壊すほどのものではありません。

ムーミンの世界観を示すために湖に建てられた小屋
ムーミンの世界を再現した展示室
ムーミンの世界を示した食事
ムーミンの家に夜映し出されたプロジェクション・マッピング
2022年秋には、愛知の愛・地球博記念公園内「ジブリパーク」がオープンする予定ですし、テーマパークの新潮流を関東で感じられる「ムーミン・バレー」を訪れてみてはいかがでしょうか。

なお、新型コロナウィルス対応のために、「ムーミン・バレー」及び「メッツァビレッジ」はお休みしております。早くの再開ができることを個人的にも祈念しております。
(文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)