経営学部の三和雅史です。
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経営学部の三和雅史です。
みなさん、こんにちは。経営学部教員の金です。今回は、私が座長を務めている、経営学部アドバンストプログラムの会計プロフェッショナルプログラム(会計PP)を紹介します。
公認会計士、税理士、および国税専門官は会計専門職の代表的なものです。公認会計士は企業の財務諸表の監査保証業務を執行する人として、主に監査法人や会計事務所で働きます。税理士は税金に関する業務を行い、主に税理士法人や事務所で仕事をしています。また、国税専門官は納税に関する業務を行う国家公務員として税務署等で働きます。これらはいずれも難関の国家試験に合格し、資格を得る必要があります。
そこで、会計PPでは、これらの資格試験の合格を目指す学生をサポートしています。具体的には年2回学内選考試験を突破し会計PP生として所属できた、学生に対して専門学校の指定講座受講料を大学が全額負担します。なお、会計PP生は経営学部のプログラムではありますが、全学部生が本プログラムに所属できます。しかし、難関試験ということもあり、合格するまでに時間がかかることから、所属できるのは2年生までと限定されます。また、すでに日商簿記1級あるいは全商上級の取得者は面談等の特別選考を実施し、早い段階から専門学校に通える制度も設けています。早い段階から会計専門職を目指す学生にとっては、大学での学習を進めながら資格勉強に専念できるシステムを整えていると言えます。
このように会計PPは経済的な部分以外のサポートも充実しています。まずは、財務会計、管理会計、税務会計および監査論といった会計の各領域にわたって、専門教員による充実した会計関連科目を大学授業として提供しています。なお、専任教員の中には公認会計士試験の合格経験者もおり、会計専門職を目指す学生に寄り添った指導も行えるようになっています。また、会計PPに所属すると、大学と専門学校の両立が求められる、いわゆるダブルスクールになるのですが、そのサポートを意識したプログラムになっています。たとえば、公認会計士の短答式あるいは論文式合格、また税理士試験の科目合格等については単位認定制度があります。また、持続的な学習モニタリングと面談を実施することで、モチベーションを失わず学習を続けられるための教職員のサポートを意識しています。さらに、大倉公認会計士会や税理士葵会といった卒業生による講演や面談を定期的に開催したり、実績を出した学生を表彰するなど、大学全体をあげてサポートしています。
健全な資本市場を維持するためには会計情報は信頼できるものでなければなりません。その意味で、公認会計士は市場の番人と呼ばれることもあります。また、税金は我々の生活において欠かせない存在です。その意味で、税理士および国税専門官の仕事は我々の生活を支えるものであるといえます。これまで会計PPでは多くの合格者を輩出しています。彼らの仕事は社会にとって非常に重要な役割を果たしており、仕事を通じて社会貢献に繋がる職業であるといえます。
東経大の会計PPについてより詳しく知りたい人は下記のサイトも見てみてください。
経営戦略論担当の寺本です。
ブログ登場は2か月ぶり2回目となります。
前回は,ちょっと自己紹介をさせてもらい,その中で経営学と日常生活の接合点的な話を少しいたしました(https://tkubiz.blogspot.com/2024/05/blog-post.html)が,今回も似たような感じで経営と学生生活の考え方の接合点の話を一席。
7月に入りまして,気が付けば夏休み。大学生には,約1か月半にも及ぶ夏休みがあるわけですが,何をするか決まっていますか?何をしたいとか,ちゃんとありますか?
これほどまでに長く自由に使える時間は,大学生の特権だと思います。社会にでたら,大学生の1か月半の夏休みや,2か月にも及ぶ春休みのような,長くまとまった休みは取りにくくなります。その意味で,まさに長期休暇は大学生の「特権」なのです。
これから大学を目指そうという考えをお持ちの方にも,これは考えておいてほしいと思っています。大学に入ったら何をしたいか?は,もちろん講義・ゼミ・研究や部活・サークルはもちろんのこと,こういった長い長い休みをどのように過ごすのかということを考えることでもあるかもしれません。
逆に言うと,この長期休暇をなにも考えずにただ無計画に消費するのはあまりにもったいないとも言えます。
そこで,ここは経営戦略論の教員として,提言したい!「経営戦略的夏休み」を。
さて,ここでごくごく簡単に(経営)戦略なるものについて解説しておこう。
企業や組織は活動するにあたり,ただ闇雲に活動するのではなく,第1に目標や目的を設定し,それらを達成するために活動しています。一度,目標や目的が決定されると,次は現状の分析です。目標や目的が企業や組織にとっての「ありたい未来の姿」であるならば,現状の分析は,まさに企業や組織の「現在の姿」です。通常,この「ありたい未来の姿」と「現在の姿」にはGap(ギャップ)が存在するはずです。もしGapがない(=ありたい未来の姿をすでに達成している)ならば,そもそも頑張って経営活動を行う意味はないからです。そして,そのGapが明らかになると,そこからはそのGapを埋めることを考えなければなりません。企業や組織が持っている経営資源は有限ですから,その経営資源をどのように配分してくのかを考えたり,時系列的にいついつまでに何を達成するという風に,考えます。
この一連の流れを(経営)戦略という言葉で言い表すことが一般的でしょう。つまり,
①目標を定め
②その目標を達成するために道筋を決定し
③資源を適切に割り当てる
この3つの一連の活動を経営学では経営戦略と呼んでいます。
さて,夏休みに話を戻そう・
私が学生の時の夏休みの思い出に,住んでいる東京から実家のある大阪まで自転車旅行をしたという出来事があります。
ことの発端は,広島に実家がある高校来の友人から,誘われたことでした。その友人は,「自分は東京⇒広島を自転車で帰るつもりだが,大阪まで一緒に行かないか?」と誘ってきたのでした。たしか,それが6月の末くらい。いいね。と二つ返事し,決行は8月(二人の前期(1学期)の試験が終わったタイミング)と決まりました。
ここまでで,
夏休みの目標 東京⇒大阪を自転車で踏破する が決定しました。
そこからは,
・東京―大阪間は約500㎞ある。⇒ 夏の炎天下の自転車移動であれば,1日行けて100㎞だろう。
毎日毎日100km進むのも難しい可能性があるので,1週間(7日)を目標に大阪に到達しよう。
・基本的には,国道1号線沿いを西へと進もう
・宿泊は,できれば「道の駅」で野宿か,ユースホステル。なければ,カラオケボックスで寝泊まりしてみよう。
・ただの移動ではなく,道すがら寄りたいところには寄って,観光もしよう。
・水道があれば,洗濯しよう。
などということを決定していきます。
さらに,私は自転車を持っていなかったので,出発までには自転車を購入したり,1週間の旅行に耐えられるよう荷造りしたりというミッションも出てきました。
ただの自転車ではなく,1週間かけて500㎞走るわけだから,ある程度,丈夫で乗り心地がよく,最悪の場合,持ち運びもできるようにと,クロモリという材質でできたフレームのミニベロ(小径車=タイヤが小さい自転車)を選んだのを覚えています。
(そして,集合当日に現れた相方が,ママチャリであったので閉口したのも覚えています。)
さて,そんなこんなで準備をひとしきり楽しんだあと,出発当日,楽しくも苦しい一週間が始まるのでした。
ここまでの準備で忘れていたこと,それは「不測の事態」への対応です。
そして,それがなんと出発したその日に起こってしまいます。
50㎞ほど走ったところで,私の自転車がパンクしてしまったのです。しかし,私たちはパンク修理キットも持っていないし,そもそも修理の仕方も詳しくは知りませんでした。一日目にしていきなりストップがかかり,自転車屋を目指します。
相方も私も,パンクということは全く想定しておらず(今から考えたら想定が甘すぎる),修理キットやタイヤチューブを持っていなかったのです。
自転車に行っても,さらに問題が…。私の自転車,ちょっと特殊だったようで,修理はできてもチューブは在庫がない…とかなんとか。一日目にして,大阪目指すどころか,神奈川の藤沢周辺で自転車屋巡りをしているというグダグダっぷり。書いていて,情けなくなってきました。
戦略って完全なものはないんですよ。かならず,不測の事態が起こるし,環境も変化する。だから,常に見直すってことも大切なんだということを,今からなら考えられたでしゅう。
そんなこんなで,ある神社で野宿させてもらおうと思ったら断られたり,途中で道を間違えたり,膝が痛くなって自転車が漕げなくなったり,あれやこれやトラブルがありつつ,それをその場その場で何とかしのぎ,最終的には道を間違え1日早く大阪に到着するという,なんともいえないオチまでついて…。
まあ,こんなことを真似する必要はないのですが,折角の長期休暇,折角の時間。
是非とも,なんの目的もなくバイトに明け暮れたり,なんの目標もなく無為に過ごすよりは,戦略的に,つまり
・目標/目的をつくり
・そのためになすべきことを考え
・そして自分ができることをやる(資源を配分する)
を意識しながらやってみてください。
そして,いろいろと冒険してみてください。
文責:寺本直城
2024.07.01
経営学部で流通論を担当している本藤です。
ボクの主な研究領域はドラッグストアなのですが、近年ドラッグストアの新規出店が止まりません。大型店出店する際には大店立地法の届出が必要になるのですが、毎月更新される届出情報を見ると、ドラッグストア業態が目立ちます。
なぜドラッグストアはこんなに新規出店するのでしょうか?
小売業態には最寄型小売業態としてグルーピングされているお店があります。
コンビニエンスストア、ドラッグストア、スーパーマーケットあたりです。
それぞれ商圏規模は違うんですよね。
各社の営業努力によって、必要な商圏人口は小さくなってきています。
コンビニエンスとアは4,000人、ドラッグストアは10,000人、スーパーマーケットは25,000人くらいまで小さくなってきているんです。逆に言うと、最低限これだけの人口を確保しないと商売が成り立ちません。
これらの小売業態は、最も近い店舗が利用される傾向にあります(だから「最寄型」なんですけどね)。多くの人にとって「最も近い店舗」というのは「最も多い店舗」を有するチェーンが利用されるということになります。だから「近さ」を追い求めて「多く」なってます。
このようなことを前提として、これらの最寄型小売業はエリア・ドミナント戦略として、特定地域に集中的に出店攻勢をかける企業があります。「地域一番店」を目指すことが競争優位につながるからです。
食品を拡充したメガドラッグストアとして、南九州エリアではコスモス薬品、浜松エリアでは杏林堂薬局、愛知・岐阜エリアではゲンキーが強固な地盤をつくっていますし、中規模サイズの店舗としては、門司エリアのサンキュードラッグ、いわきエリアのマルトなど地方都市ではエリア・ドミナントを築いているチェーンは多いのです。
最寄型小売業の業界では、コンビニエンスストアは上位集中が進み、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンなど超巨大企業になっていますが、ドラッグストアとスーパーマーケットはローカルチェーンがドミナント戦略を展開しながら存立基盤を形成している状態です。
しかし、この春に業界一位のウエルシアと二位のツルハが経営統合するというニュースが発表されました。ローカル主導だったドラッグストア業界とスーパーマーケット業界が今後どのような展開を見せるのか注視していきたいと思います。
文責:本藤貴康(東京経済大学教授)
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経営組織論やケース分析(実際の企業がどのような戦略で高業績を獲得したのかを分析する授業)を担当している山口です。
4月に入学した1年生も、授業が始まって2カ月たち、大学生活に慣れてきたことと思います。ただ、この時期そろそろ気になってくるのが、7月の期末試験(定期試験)や、期末レポートではないでしょうか。
そこで今回は、よいレポートを書くためには何が必要なのか、「ビジネスの現場で活かせるような」レポート執筆スキルを身につけるには、何に気を付ければよいか、について解説したいと思います。
まずは、以下の2つのレポートの、どちらがより優れたレポートか、考えてみて下さい(※今回は、2つの解答例の対比を明確にするため、レポートの字数をかなり少なくしていますが、実際のレポート課題の字数はもっと多いです)。
レポート課題:以下の課題文を読み、あなたの考えを400字以内でまとめなさい。
課題文:社会人になるまでに、日本人全員が実用英語を使いこなせるようにしなければいけない。その背景の一つは、情報技術(IT)革命の爆発的な進行である。国際的にインターネットを利用するには英語が不可欠になっており、英語ができないということは、国際的な情報社会における孤立を意味している。それゆえ、日本の経済が衰退しないためには、日常的な英語の使用が必要なのである。例えば、英語を公用語としたシンガポールの経済発展がそのことを例証している。したがって、日本もまた、英語を第二公用語とする方向に向かわなければならない。
(出典:野矢(2001)140-141ページ)
解答例①
私は、この課題文の著者の意見に反対である。
その理由は2つある。第1に、英語を第二公用語とすると、日本の文化が失われる危険があるからである。言語は単なる情報伝達の手段ではなく文化であり、日本語には、日本人のものの見方や世界観が織り込まれている。したがって、日本人にとって、英語は決して日本語と対等のものにはならないし、そのようなことを目指すべきでもない。
第2に、現在のような国際社会でも、仕事によっては、英語をほとんど使わない者もいるからである。私の兄は、大学までは英語の学習に力を入れており、就職活動では履歴書にTOEICの点数も記載したが、企業に就職してから英語を使う仕事は全くしていないといっていた。
以上から、私はこの課題文の著者の意見には反対である。(40字×10行=400字)
解答例②
私は、この課題文の著者の意見に反対である。
その理由は、著者の挙げる理由に2つの問題があるからである。第1に「IT革命が進行する中では、英語ができないと国際的な情報社会において孤立し、日本経済が衰退する」という理由は成り立たない。日本人「全員」が英語ができないと国際的な情報社会で孤立するのであれば、現在も日本は孤立しているはずであるが、そうはなっていないからである。また、それがどのように日本経済の衰退につながるのかも明確ではない。
第2に、シンガポールの経済発展が、英語を公用語としたことによるものかどうかが明確でない。もし別の要因で経済が発展したのであれば、日本が英語を第二公用語としても、シンガポールのようには経済発展しないだろう。
以上から、私はこの課題文の著者の意見には反対である。(40字×10行=400字)
もしかしたら、「どちらもそれぞれに優れている」と迷ってしまった人もいるかもしれません。しかし、実は、このレポート課題の出題意図を考えてみることで、この2つのうちどちらかは全く評価されないものだということがわかります。
以下では、その点について解説しましょう。
まず、このレポート課題では、「以下の課題文を読み」とあるので、課題文に関する自分の考えを述べなければならないことがわかります。さて、このとき、課題文に対する自分の考えをきちんと述べているのは、どちらでしょうか?
そうです、解答例②なんですね。
解答例①は、課題文をほとんど読まなくても(第一文だけ読めば)書けます。単に、英語第二公用語化に対する自分の意見を書いているだけだからです。
それに対し、解答例②は、課題文全体をよく読んで、「課題文は、どのような理由・根拠に基づいて、英語を第二公用語化しなければならないと言っているのか」を読み取り、それを分析して、課題文の問題点を述べています。
要するに、解答例②のほうが、課題文の分析の精度が圧倒的に高く、その点で課題の趣旨に沿った優れたレポートといえるのです。
ちなみに、解答例①のように、ある主張と対立するような主張を立論することを、「異論」といいます。
解答例②のように、ある立論の論証部(根拠や理由)に対して反論すること(対立する主張までは出していない)を「批判」といいます。
大学、特に経営学部で重視されるのは、実は「批判」の能力です。なぜなら、社会に出てからは、「批判」を通じて、主張の根拠が正しいかどうかをしっかり吟味できる能力が重要になるからです。
例えば、ある企業における「今後、我が社の業績をより向上させるために、戦略Aと戦略Bのどちらをとればよいか」という問題について考えてみましょう。戦略AとBのどちらが正解かは、究極的にはやってみないとわかりません。しかし、どちらの戦略をとるかは、やってみる前に決めないといけないわけです。
この場合、「戦略Aと戦略Bがどのような根拠に基づいて提案されたのか?」を検討し、より適切な根拠に基づく戦略を採用するしかありません。
判断の根拠となる情報やデータが間違っていたら、正しい判断はできないからです。
この時、重要になるのが、「批判的思考力」=それぞれの立論の論証部(根拠・理由)について反論すべき部分を見つける能力です。
企業組織のメンバーが、この能力をしっかり身につけていれば、以下の4段階のプロセスを通じて、皆で協力しながら、適切な根拠に基づくよりよい決定ができるようになります。
(1)戦略Aと戦略Bのそれぞれについて、その戦略を採るべきだと主張する根拠を提示してもらい、それぞれの根拠について、皆で「批判」を行う
(2)「批判」を通じて明らかになったそれぞれの根拠の問題点をカバーできるような、より説得的な根拠を皆で考える
(3)新たな根拠について、また皆で「批判」を行う(これを必要なだけ繰り返す)
(4)より説得的な根拠に基づいて提示された戦略案を採用する
上記のレポート課題も同様で、「英語を第二公用語化すべきだ」という主張に対し、解答例①のように、「そんなことはすべきではない」と言ってみても、話はすれ違うばかりで議論になりません。
しかし、解答例②のように、「英語を第二公用語化するべきだという意見の根拠2つには、○○、××という問題がある。だからあなたの意見は採用できない」と、相手の根拠の問題点を指摘してやれば、相手はそれに対してより説得的な根拠を考えることもできます。
逆に、「批判」をした側が、「英語を第二公用語化すべきではない」という主張を、根拠も併せて提示してくれれば、相手はそれに対して「批判」をすることもできるようになります。
こうした「批判」ができるようになると、組織的に(=メンバー全員の叡智を結集しながら)、一人では考えつかなかったような説得的な根拠に基づいて、よりよいアイデアを選べるようになるわけです。
これは、一人では考えつかないようなイノベーションのアイデアを生み出すことにもつながります。
一般的には、「批判」をすると、相手と「対立してしまう」と思っている人が多いのですが、こうしてみると、「批判」は「対立」ではなく、むしろ相手の「援護」にもなっていることがわかるでしょう。なぜなら、「批判」によって相手は自分の根拠をより良いものにするきっかけを得ることができるからです。
むしろ、相手と、解決できないほど深刻な「対立」を生むのは、「異論」だけを主張して相手の意見を聞かない姿勢のほうなのです。
以上で見てきたように、大学で、「課題文を読み、あなたの考えをまとめなさい」というような課題が出されるのは、皆さんに、主張が正当な根拠に基づいたものかを的確に判断する能力やスキルを身につけてもらうためです。
したがって、解答例①のように、ある意見の根拠をしっかり吟味することなく、自分の意見だけを(根拠も明確にせずに)ただ書いただけのレポートが、優れたレポートと評価されることはありません。
企業経営については、「この企業が儲かっているのは○○だからだ!」などと、インターネットを検索すればさまざまな分析記事が出てきます。ゼミの研究で行き詰ったときなど、そうした分析記事の内容を鵜呑みにしたくなることもあるかもしれません。
しかし、大学のゼミや卒業論文で研究をする意義は、
①大学の授業で身につけた批判的思考を使って、これまで言われてきたことが、適切な根拠に基づく信頼できる内容かどうかを吟味し、
②もしそれに問題があった場合には、授業で学んだ経営学の専門知識を使ってより適切な説明を考えられるようにすること
にあります。
こうした学習を通じて、批判的思考力、経営学の専門知識をしっかり身につければ、就職活動でも、「これからはこの業界がいい!」などの怪しげな情報を鵜呑みにすることなく、自分にとってどのような企業がよいのかを自信をもって選択することができますし、入社してからも、仕事でどのような判断をすればよいのかを、自分一人で、あるいは皆で協力し合って考えていくことができるでしょう。
是非、レポート課題を、社会に出てから必要な「批判的思考力」を身につけるトレーニングの場ととらえて、1つ1つ大事に活用していただければと思います。
文責:東京経済大学経営学部准教授 山口みどり
参考文献:野矢茂樹(2001)『論理トレーニング101題』産業図書.