2021年11月1日月曜日

ブルーボトルコーヒーによる前橋中心市街地での活性化に向けた新たな取り組み

流通マーケティング学科の丸谷です。46回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、海外に出張に行くことが多く、このブログでも米国、インド、中国、チリ、ペルー、ブラジル、ケニア、ガーナの出張の模様を取り上げてきました。しかし、コロナ禍で海外出張はしばらく難しそうなので、これまでやろうと考えていてできていなかった日本に進出している外国企業について取材しています。今回はブルーボトルコーヒーの日本における最近の新たな取り組みについて取り上げていきます。

ブルーボトルコーヒーに関しては、2016年に同文舘出版より出版した『小売&サービス業のフォーマットデザイン』という拙著において「カフェ業界」を取り上げて以降継続的に注目し取材してきました。ブルーボトルコーヒーはサードウエーブコーヒーのフロントランナーのカフェチェーンとして米国では有名であり、海外進出の最初の国として日本を選択し、201526日に東京都江東区清澄白河にロースタリー&カフェとして開店した。その後は同年36日には青山にカフェのみの店舗を、2016325日にはJR新宿駅新南口に開業するNEWoMan3号店を出店し、以降店舗網を拡大し、今回取材した前橋の白井屋カフェは24店目となります。

ブルーボトルコーヒー白井屋カフェの外観

今回わざわざ取材を行った理由は今回の店舗が初の地方都市前橋への出店だからです。ブルーボトルコーヒーの立地へのこだわりは強く、工場跡地の焙煎所付の1号店、表参道のブランドショップの2階という大都市中心部の単独店舗、新宿という巨大ターミナル駅直結の商業施設、六本木の緑豊かな美術館が多く立地する周辺の商業施設、ワークショップスペースを設置した中目黒、羽田ともつながる新幹線停車駅品川駅商業施設アトレといったように、都会の中のえりすぐりの場所にこだわってきた。関東の最近の店舗20号店も渋谷の中でも感度の高い顧客対象のアパレルショップが集まるエリア内にある北谷公園内の店舗です。

北谷公園内に立地するブルーボトルコーヒー渋谷カフェ

こうした傾向は関西出店を開始して以降も続いており、20183月の関西初出店は築100年を超える伝統的な京町家をリノベーションした店舗、神戸元町旧居留地、京都南禅寺近くのいけばな発祥の地六角堂といったように、立地を厳選しながら展開を進めてきた。

ブルーボトルコーヒー京都六角カフェ

こうした立地に応じた店舗展開は米国と同様の手法であり、コーヒーへのこだわりは変えないが、それ以外に関しては立地ごとにブルーボトルの価値観にあった意味のある出店を意識してきたと考えられる。結果的に従来は関東では東京、神奈川、関西では京都、神戸、大阪といった大都市に出店都市は限定されてきた。

今回出店した前橋はこれまでの立地とは全く異なる。前橋は群馬県の県庁所在地ではあるが、正直県内でも新幹線が止まらない取り残された感じの印象の街である。今回の取材においてもJR前橋駅前にはマクドナルドが鎮座し、少し離れた中心地市街地の商店街は昔ながらの感じで、地方都市のさびれた感じが漂う。郊外のショッピングモールに客を奪われたのだと容易に推測できた。ちょうど取材したのが週末だったこともあり、イベントを行い集客しているようだが、イベント参加者以外の人はまばらであった。

イベントで集客する商店街

前橋への出店が発表されて以降、都会の洗練されたイメージのブルーボトルコーヒーがなぜさびれた地方都市に出店するのかずっと気になっていた。出店場所は202012月に老舗旅館を再生したこだわりのデザイナーズホテルである白井屋ホテルの敷地内である。この再生事業には地元出身のジンズホールディングス社長の田中氏がかかわっているなど、調べると面白そうな情報が出てきた。だからといって納得できたわけではなかった。

白井屋ホテル外観

そんな中ようやく緊急事態制限も解除され、早速取材してみて少し納得できる部分もあった。点だけで見ていると実感できないのだが、前橋市は「水と緑の健康都市宣言」を行っていることにも表れているように、広瀬川の流域であり、ブルーボトルコーヒーの面する馬場川通りの横には水路があり、遊歩道として憩いの場になっている。       

馬場川通り横の遊歩道

この川沿いにはブルーボトルコーヒー以外にもカフェが立地しており、川沿いを歩いて散歩していくと商店街にぶつかる。商店街に入るとすぐに今回ブルーボトルコーヒーに限定スイーツを提供している地元で菓子店「和む菓子なか又前橋本店」があり、店頭には若者が数人訪れていた。

和む菓子なか又前橋本店

地元菓子店とコラボしたスイーツとそれに合うとお勧めされたコーヒー

ブルーボトルコーヒー自体は非常にこじんまりしており、イートインスペースも若干あるが、テイクアウト主体の店舗であることがわかった。店内を少し観察していると、地方ならではとも思える光景が目に入った。若い子供連れの親子に店員が積極的に話しかけ、コーヒーを入れる特徴的な部分を写真に収めようとする際には店員がピースサインで嬉しそうに応じていた。大部分の店員さんもとにかくお客さんとコミュニケーションをとろうとしており、多摩ニュータウンにあるスターバックスの郊外店の風景を思い出させた。 

こじんまりした店内の様子

店内と周辺取材後おなかもすいたので、こだわりのデザイナーホテルのラウンジで、ブルーボトルコーヒーとホテル内のフルーツタルト専門店がコラボで開発した10月まで期間限定のグレープフルーツとコーヒーのタルトを頂いた。

       

ホテル敷地内のタルト専門店とコラボで開発した限定タルトをホテルラウンジで

ラウンジ内の空間は独特の都会的な雰囲気で世界観が作りこまれており、この地域のランドマークとなる可能性は感じられた。今回の地域活性化に向けた新たな取り組みの成否によっては、ブルーボトルコーヒーの出店地域の拡大の可能性があるだけに今後も注目していきたい。                

                  文責 流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎 


2021年9月13日月曜日

タイトル通りとてもやさしいスパイが主人公の映画『83歳のやさしいスパイ』

 流通マーケティング学科の丸谷です。45回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、グローバル・マーケティングにおいて重要である海外事情について学習できる映画について紹介してきました。

今回は現在公開中のチリ映画『83歳のやさしいスパイ』について取り上げます。この映画は第93回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされました。今回取り上げる『83歳のやさしいスパイ』はドキュメンタリー作品でありながら、タイトル通り、やさしさの中に考えさせられる側面のある作品でした。

79日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
© 2021 Dogwoof Ltd - All Rights Reserved

作品の主人公セルヒオは妻を亡くしたばかりのやさしい83歳の男性です。彼は新聞広告の募集を見て、入居者の虐待を探るためにスパイとして、老人ホームに入居し、話は彼が伝える克明な報告に沿って進みます。当初、携帯電話の扱いにも苦労しますが、眼鏡型の隠しカメラを駆使し、暗号を使って老人ホームでの潜入捜査を続けますが、話を聞くうちに入居者たちの良き相談相手となっていくという内容です。

 

器具の扱いに苦労するスパイである主人公
© 2021 Dogwoof Ltd - All Rights Reserved

この映画の更なる魅力はある程度恵まれた環境にある老人たちのそれぞれの事情をやさしく包み込むような主人公のやさしさにあります。出てくる入居者の中に、私の亡くなった祖母と非常に似た感じの女性がいました。彼女は私の祖母同様認知症となり、記憶が徐々に抜け落ちていきます。自分の変化に戸惑い泣いてしまうシーンは祖母の晩年を想い出させ、沁みました。やさしいスパイである主人公は認知症が進む彼女に、スパイの利点を活かしつつ、彼女に寄り添った対応をします(詳細は作品をご覧になってください)。

映画をご覧になれば多くの方が、入居者の中に自分の祖父母や親戚に似た境遇の方を見つけられるのではないでしょうか。日経BPヒット総合研究所上席研究員品田英雄氏が指摘されているように(日経MJ202172日付)、宮藤官九郎さん脚本で最近話題となった『俺の家の話』と世界観はかなり似ています。宮藤さんは演劇出身ということもあり、上記作品も描かれるテーマに社会性があり、主役だけでないキャストの個性に加えて、プロレスと能との対比を組み入れる一工夫のバランスが秀逸でした。このドキュメンタリーも老人ホームというテーマに社会性があり、出てくる入居者の方々は皆個性にあふれ、スパイでの侵入という一工夫が重くなりがちな雰囲気を和らげています。
入居者に寄り添う主人公
© 2021 Dogwoof Ltd - All Rights Reserved
緊急事態が延長され、コロナ禍映画館に行くのは難しいですが、鑑賞できる状況になったら感染対策を行った上で、タイトル通りとてもやさしいスパイが主人公の映画『83歳のやさしいスパイ』をご覧になられてはいかがでしょうか?

文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎

2021年7月26日月曜日

ブログをきっかけにオンライン講演会で講演

流通マーケティング学科の丸谷です。44回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、海外特にラテンアメリカに関する情報を得るために普段から映画をよく見に行っており、このブログ(2020127日月曜日「2つの映画祭でラテンアメリカ映画三昧」)でも映画祭を訪れた際の出来事を紹介しました。今回はこのブログがきっかけで頂いたオファーに対応した講演会について紹介します。

私はメキシコで生まれ、ラテンアメリカ地域を対象に研究を行っていることもあり、ラテンアメリカ関係の講演会のお仕事なども頂くのですが、今回は上記のブログをご覧になった京都外国語大学のラテンアメリカ研究所(IELAK)の方からの講演会の依頼でした。

京都外国語大学は学内に在京都メキシコ名誉領事館、在京都ニカラグア名誉総領事館、在京都グアテマラ名誉領事館、京都ラテンアメリカ文化協会といったラテンアメリカ関連の組織を置くなど、ラテンアメリカとの交流には積極的な大学として有名です。

ラテンアメリカ研究所は1980年に設立された京都外国語大学メキシコ研究センターを前身とし2001年には「京都ラテンアメリカ研究所」(2016年「京都外国語大学ラテンアメリカ研究所」に改称)として設立され、ラテンアメリカを対象に調査研究を行うと同時に、成果を研究者や市民に情報発信され続けています(第18回は上記のラテンアメリカの楽器に関するテーマでの講座でした)。


今回オファーを頂いた講演会も研究成果の情報発信の一環であり、今年度の第19回ラテンアメリカ教養講座「いま「ラ米映画」が面白い ~映画でひも解くラテンアメリカ世界~」で19回目の取り組みです。本来なら昨年度に行われる予定でしたが、新型コロナウィルス蔓延に伴い延期となり、オンラインでの開催となりました。

私は全5回のうち第2回担当「ネット配信普及でアクセスしやすくなったメキシコ・中米映画」というタイトルで以下のような概要の講演をしました。

1.はじめに                  

2.ネット配信でアクセス可能な代表的メキシコ・中米映画

3.ネットフリックスの代表的成功作となった『ローマ』

4.グアテマラ映画『ラ・ヨローナ伝説』

5.結びに変えて

「はじめに」では、ネットフリックス、アマゾンプライム、Huluといったネット配信が普及したことにより、従来よりも簡単にアクセスできるようになった現状をお話した上で、「ネット配信でアクセス可能な代表的メキシコ・中米映画」として人気がが高いネットフリックス作品である『1994 権力、反乱、犯罪、メキシコ激動の年』『ナルコスメキシコ編』『いつか君と』などを紹介しました。

さらに、ネットフリックスの代表的成功作となった『ローマ』では、上記潮流の契機となったネットフリックスの代表的成功作『ローマ』を取り上げ、その前提となった2010年代米国アカデミー賞監督賞を2013年~2018年の間に3人で5回受賞し世界の映画界を席巻したメキシカンニューシネマ(El Nuevo Cine Mexicano)についても解説した。

その後、「グアテマラ映画『ラ・ヨローナ伝説』」ではグアテマラ映画『ラ・ヨローナ伝説』が注目されるハイロ・ブスタマンテ監督についても取り上げ、「結びに変えて」では、コロナ禍で報告が1年延びたことを踏まえて、最近の注目作として、2020年メキシコアカデミー賞(アリエル賞)最優秀作品賞受賞『そして、俺はここにいない(Ya no estoy aquí)』、2019年アリエル賞4部門受賞作『グッド・ワイフ』などについて取り上げた。

オンラインでの開催ということもあり、全国からラテンアメリカ映画に関心がある方だけではなく、ラテンアメリカ地域の様々な領域の研究者の方々から、ラテンアメリカ文化に関心がある方々やマイナー映画に関心がある方まで多様な皆様が参加頂き、講演中に募集したチャットからの質問をみても、かなり多様な視点を提示して頂いた。


こういった機会を頂くと、自身の関連研究分野について改めて振り返る機会にもなり大変ありがたいのだが、今回も見ようと考えてなかなか見れていなかった多くの秀作を鑑賞できた。なかなか不自由な状況ではあるが、触れる機会が秀作も多く生み出されるメキシコ・中米映画について鑑賞してもらえればと思います。
(文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)


2021年4月19日月曜日

メキシコ現代史の一端を見せるメキシコ映画『グッド・ワイフ』

 流通マーケティング学科の丸谷です。43回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、グローバル・マーケティングにおいて重要である海外事情について学習できる映画について紹介してきました。今回はDVDソフトが2021年2月3日発売されたメキシコ映画『グッド・ワイフ』について取り上げます。
 この映画のあらすじは以下の通りです。「1982年、メキシコシティの高級地区ラスロマス。実業家の夫との間に3人の子供に恵まれたソフィアは、高級住宅街にある美しい豪邸で満ち足りた生活を送っていた。セレブ妻たちのコミュニティに女王のごとく君臨していた彼女は、証券会社の社長を夫に持つ、垢抜けない“新入り”アナ・パウラの出現が気に入らない。だが、歴史的なメキシコの経済危機が到来し、富裕層を直撃。突如として、ソフィアの完璧な世界は崩壊し始める…」(今回画像など素材を提供いただいた同映画の配給元ミモザフィルムのホームページより抜粋)。
 
生まれながらのセレブのソフィア

 
新興セレブのアナ・パウラ

 この映画は一見すると、日本語タイトルである『グッド・ワイフ』、メキシコ版アカデミー賞アリエル賞4部門(主演女優賞、衣装デザイン賞、メイクアップ賞、音楽賞)受賞、宣伝に用いられているセレブ奥様を写したキービジュアルゆえに、単なる新興国のセレブ映画とも受け取れます。私も2020年7月の公開当時コロナ禍でのオンライン対応に追われ、公開されたことはわかっていたのですが、見に行くことがなく公開が終わってしまっていました。
 しかし、ソフトが発売され鑑賞してみると、強く押し出している側面と異なる部分に目が行き、少し異なる印象の映画でした。映画が描く当時のメキシコの状況を理解していたからだと考えられます。簡単にでもメキシコ現代史の転換期となった1980年代のメキシコ経済危機について理解し、そのことを踏まえて見てみてください。
 私は1970年この映画の舞台であるメキシコシティに生まれ、この映画の背景にあるメキシコ経済危機の直前に当たる1981年の時期にメキシコを訪れたことがあります。私が生まれた時期の状況に関しては、ネットフリックス作品でありながら、第91回米国アカデミー賞10部門にノミネートされ、外国語映画賞、監督賞、撮影賞を受賞した当時のメキシコ中流家庭とその家政婦の日常が描かれた『ローマ』に描かれています。合わせてみるとメキシコの現代史を理解するのに非常に有益です。
 この映画はメキシコ経済危機を、『ローマ』で描かれた伝統的メキシコセレブにとっては安定の時代の没落という視点から描いています。日本で見られている多くのメキシコ映画やドラマは、どうしてもメキシコから米国への移民や麻薬組織との関わりについて描かれたものが多く、『ボーダーライン』『カルテルランド』『ノー・エスケイプ』がその代表ですし(詳細は以下で示す拙著参照)、ネットフリックスのドラマシリーズの『ナルコス』はエンターテインメントとしても面白いため、イタリアのマフィアを題材にした映画や、日本でかつて仁侠映画が流行ったのと同様に理解できます。
 
拙著『現代メキシコを知るための70章(第2版)』明石書店、2019年より。

 メキシコ現代史の側面を切り取った傑作『ローマ』と同年の公開であったこともこの映画にとって少し不運だったのかもしれません。メキシコ版アカデミー賞では『ローマ』が主要賞の多くを獲得し、『グッド・ワイフ』も健闘したものの、『ローマ』と同じ年でなければ、もっと評価されたかもしれません。結果的に、『ローマ』よりも評価された主演女優や彼女の衣装やメイクアップをアピールすることにつながったのかもしれません。
 この映画が描いた1980年代後半冷戦構造が崩壊後始まった経済のグローバル化も約40年を経てコロナ禍で一段落しつつある現在、経済のグローバル化の起点となった冷戦構造崩壊を日本ではあまり注目されてこなかった側面から見つめ直すことができるこの映画を見つつ、当時の状況を学習してみるのもいいかもしれません。 
                  (文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)

2021年3月22日月曜日

スターバックス・コーヒー・ジャパンの多摩地区における新たな取り組み

 流通マーケティング学科の丸谷です。42回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、海外に出張に行くことが多く、このブログでも米国、インド、中国、チリ、ペルー、ブラジル、ケニア、ガーナの出張の模様を取り上げてきました。しかし、コロナ禍で海外出張はしばらく難しそうなので、これまでやろうと考えていてできていなかった日本に進出している外国企業について取材しています。今回はスターバックスコーヒーの日本における最近の取り組みのうち、大学に立地する多摩地区で行われている工夫について取り上げていきます。

 スターバックスに関しては、2016年に同文舘出版より出版した『小売&サービス業のフォーマットデザイン』という拙著において「カフェ業界」を取り上げた際に、今やサードウエーブコーヒーの日米の代名詞となった丸山珈琲(過去の丸山珈琲取材に関してはhttp://tkubiz.blogspot.com/2017/12/blog-post.htmlを参照)とブルーボトルコーヒーを取材した際に取り上げて以降継続的に注目し取材してきました。

スターバックス・コーヒーの日本進出は1995年で北米以外初の海外進出であり、アフターヌーン・ティーやキハチ(KIHACHI)の展開で飲食での実績があるサザビー(現サザビーリーグ)社と合弁で参入しましたが、2014年にはサザビーリーグ社との合弁を解消し、スターバックス・コーポレーションの完全所有子会社となっています。完全子会社後は米国本社との一体感をさらに強めながら、20155月には最後の未出店県鳥取県に出店を果たしています。

 1つ目にとりあげるのは、スターバックスコーヒーnonowa国立店での取り組みです。このお店は聴覚に障がいのある従業員を中心に、主なコミュニケーション手段として手話を採用したサイニングストアで、この国立店が5店舗となるそうです(その他にマレーシア2店舗、アメリカ1店舗、中国1店舗)。

スターバックスコーヒージャパンnonowa国立店の外観

 店内に入ると、すぐに目に入ったのが多くの手話での会話を促す工夫と実際に手話で会話する顧客の姿でした。注文しようとレジに向かうとレジ前に手話での会話を促すPOPがあり、レジにも実際にどのように手話で注文するか書かれたPOPがありました。

手話での会話を促す手書きPOP

 今回の注文では、注文カウンター担当者はたまたま健常者、受け取りカウンター担当者は、視覚障害者だったのですが、商品受け渡しの際には店内に整備された番号が出る電光ボードを使うのかなと思いレシートの番号を確認して待っていたのですが、お客さんが並んでいなかったこともあるのか、1つ1つ商品を掲げて示し商品を渡した上で、私が返すのを忘れそうになっていたソイラテ注文用者を確認するための小さなボードを、小さな箱に戻してください指示を分かりやすく身振りで行ってもらいました。

受け取りを容易にする電光ボード

 店内にも聴覚を使わずに視覚で確認できる様々な工夫がなされており、このお店の位置づけを示し、自社の取り組みをアピールするための工夫がなされていました。

並ぶ際の足元の店内サイン

取材も多いので人権配慮の注意のためのPOP

2つ目にとりあげるのはスターバックスコーヒー西東京新町店での取り組みです。この店舗の取り組みは地域に愛されてきた老舗「珈琲館 くすの樹」にあった樹齢約300年のクスノキ(西東京市保存樹木)を保存し、伝統を意識しつつ新たなコミュニティの中核となるための工夫です。

スターバックスコーヒー西東京新町店の外観

「珈琲館 くすの樹」は食べログでも3.5越えの高評価(3.56)を獲得する老舗喫茶店であり、2019415日に閉店するまで、昭和、平成の40年間地元で愛されていました。老舗喫茶店の閉店に関しては、20203月のこのブログでもゼミでの相談などで協力して頂いていた吉祥寺のナローケーズ、moi、近江屋の老舗三店舗についてかつて取り上げました。こうした老舗喫茶店はお店の雰囲気を構成する空気自体がお客さんのそれぞれの想い出、例えば私の場合には就活やその前後の不安や悩みを語る学生さんの姿とつながっており、かけがえのない場所として記憶されています。

今回の取り組みはこうした想い出の場所をリニューアルしつつも維持したことに強い意味があり、スターバックスが掲げるサードプレイス(自宅と職場以外にくつろげる第3の場所)というコンセプトにも合致した取り組みといえます。

くすのきの説明

訪れて最初に目がいくのが「珈琲館 くすの樹」の象徴ともいえる樹齢約300年の「クスノキ」であり、このクスノキにインスパイアされて建築された店舗は、ドライブスルーやペットとの来店といった現代的ニーズに対応しつつも、スターバックスが2017年の『京都二寧坂ヤサカ茶屋店』開店以降進める現地へのより強いリスペクトが現れる店舗の建築の流れに即したものでした。店内の天井は高く、内装も木の温かみを強く打ち出した雰囲気でした。

 

しっかり整備されたドライブスルー・レーン

 
愛犬との散歩に対応した外の席の様子

 グローバル・マーケティングでは、世界中で同様の取り組みをすることによって効率性を求める標準化(世界的標準化)と各市場にきめ細かく対応することによって現地での顧客満足を追求する現地化(現地適応化あるいは適合化)をいかにして両立するのかということと、世界に展開するからこそ獲得できる知識やノウハウをいかに活用するのか(知識やノウハウの相互移転)が重要です。

今回取り上げたスターバックスコーヒー・ジャパンの2つの店舗での取り組みは標準化された店舗の全都道府県出店完了と日本進出を支えたきた日本企業との合弁解消後の取り組みであり、nonowa国立店の取り組みは、世界中に展開するチェーンだからこそ可能である外国の先行ノウハウの導入事例ですし、西東京新町店の取り組みは、標準化の後に重要視している現地化の取り組みです。

緊急事態宣言が解除されたタイミングで感染対策をしっかり行いつつ、大学からもそう遠くない多摩地区でのグローバル・マーケティングの2つの新たな取り組みの場所に足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

                (文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)




2021年1月18日月曜日

フランス発外資の巨人再び幕張に

 流通マーケティング学科の丸谷です。41回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、海外に出張に行くことが多く、このブログでも米国、インド、中国、チリ、ペルー、ブラジル、ケニア、ガーナの出張の模様を取り上げてきました。  
 海外出張では小売業者の店舗調査を行うためにショッピングモールをよく訪れます。そんな時に日本ではあまり見かけないけれど海外では頻繁に見かける店舗として「デカトロン」について取り上げ、最後に関東初出店をしたという情報を紹介しました。情報を紹介しておきながらコロナ禍で遠方への取材は自粛していたこともあり、約半年間現地取材に行けていなかったのです。しかし、ようやく現地取材に行けるようになったので取材した内容の一部を紹介します(なお、今回の現地取材は2020年10月に行っています)。
デカトロン関東1号店周辺の地図
 デカトロン関東1号店は「イオン幕張店」が入るショッピングモール内にあります。イオンの幕張といえば、「イオンモール幕張新都心グランドモール」が日本有数の小売業者総本山としてあまりにも有名であり、私が1年生対象として担当する「流通マーケティング入門」でも日本を代表するショッピングモールとして取り上げているほどです。ちなみに、イオングループの本社は海浜幕張駅の目の前にあり、本社近くの大規模モールということでイオングループの新たな試みの多くがこのモールを使ってなされてきたようです。
デカトロン関東一号店が入居するイオン幕張店外観
 イオン幕張店は「イオン幕張新都市店」に併設する巨大モールの近くに立地し、今や地味な存在に見えますが、私はかつてここを取材したことがあります。イオン幕張店は2000年にフランス出身の巨大小売業者として鳴り物入りで出店したカルフール日本1号店の跡地にイオンが出店した店舗なのです。
 カルフールは私が研究してきた世界最大の小売業者ウォルマートの長年のライバルであり、ウォルマートが西友を買収し参入したのと近い時期に、コストコなどともに参入した世界の小売業界の巨人です。フランス発の世界的スポーツ専門店デカトロンはなんと同じフランス出身小売の巨人が日本1号店を出店したモールに関東1号店を出店していたのです。
 私も情報を確認していてデカトロンの出店場所が「イオン幕張新都市店」が入るモールではない近くのモールであることは理解していたのですが、カルフール日本1号店の跡地であることに気が付いていませんでした。思い込みとは怖いもので改めて現地取材の大切さを感じると同時に、自粛中に鈍ってしまっている部分がだいぶあると感じた瞬間でした。
 
カルフール時代からあるスロープ

デカトロン1号店はイオン幕張店が入るモールの1階部分の大部分を占有していました。

1階の大部分を占有しているがわかる店内図


デカトロン関東一号店レイアウト

平日の昼間ということもあり店内はすいており、多く配置されている店員の皆さんはウインターシーズンに向けての準備や多く配置された体験ゾーンのメンテナンスを行いつつも、ゆったりと店内で歓談する姿が多くみられました。何人かに話しかけてみると明るくフレンドリーであり、雰囲気はアップルストアと少し似ている感じました。

体験するスペースが充実

しばらく観察しているとファミリー層が多い立地ということもあり、小さな子供が店内に置かれたキャンプのテントに入る姿や、最近はやりの子供用のキックボードを店内で試す姿が散見されました。店員さんによるとイベントもようやく行えるようになってきたそうで、「こんなイベントがあるんで」とチラシとともに紹介されました。

頂いたイベントのチラシ

店から直接つながる屋外スペースでも週末などにはでられるとのことで、かなり巨大な店舗をゆったりと使っているようでした。

日本への対応がかなと考えられる野球のティーバッティング体験などもあり、試行錯誤しながら日本市場を学習している状況が垣間見えて興味深かったです。

(文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)


2020年12月14日月曜日

クリスマスなんてなければ♪いつも通~りの~♪(小木ゼミ通信vol.42 経営学部ゼミ研究報告会、ゼミ活動報告など)

 マーケティング論、ソーシャルマーケティング論、消費者問題担当の小木です。 42回目のブログになります。 前回(10月)は「鬼滅の刃」ネタから入りましたが、煉獄を300億円の男にするとの掛け声よろしく、12月14日リリースでは302億円の興行収入を突破した模様です。よもやよもやだ。歴代1位の「千と千尋の神隠し」(308億円)を年内中に抜くのが、いよいよ現実味を帯びてきました。

 さて、ハッと気づけば、年の瀬が近づいてきました。私の家の前の百貨店では大きなツリーが建てられており、街はクリスマスモードに突入ですが、今年のこの環境下では少し盛り上がりに欠けそうです。
 
 いつもこの時期になると、クリスマスソングをかけながらの仕事になりますが、いつも定番の曲ばかりなので、なんか新しい良い曲はないのかなと、ここ数年ずっと思っておりました。しかし、きました、ついにきました。セカオワの『silent』を聞いて、ビビッときました。いまエンドレスで『silent』かけながらのBlog書きですが、本当にとっても良い曲。。。「聖なる旋律は雪にと~けて♪」これは定番のクリスマスソングになりそう。

  本日のラインナップは次の感じです。
 1.経営学部ゼミ研究報告会 
 2.小木ゼミの活動報告
  などなどです。

  1.経営学部 ゼミ研究報告会
 
 12月12日㈯午後に経営学部ゼミ研究報告会がZoomで開催されました。今年は経営学部の17ゼミから54もの研究報告が8会場で発表されました。
 私は第1会場を管理担当していましたが、研究報告会では初めてのZoomによる発表にもかかわらず、各ゼミの皆さんは本当に上手に発表していました(司会等もとても良かったと思います)。これから就職活動もリモートを使った面談があるはずなので、Zoomなどの遠隔ソフトを活用できることが強みになるかもしれません。特に、1年生の皆さんは今年は遠隔授業ばかりだったので、このあたりのスキルはぐーんと上がっているのでないでしょうか。
  全体として研究発表の内容もとても良かったですし(小木ゼミ生の発表も良かった)、なんといっても例年に比べて参加者が多かったことが良かったかもしれません。もちろん対面での研究発表はそれはそれでいいのですが、リモートによる発表もメリットは大きかったようです。
 同日には、経済学部や全学共通教育センターのゼミの研究報告会も開催されていたので、なんか大学が久々に賑わっていた感じで嬉しかったです。懇親会がなかったことだけが残念でした。


   2.小木ゼミの活動報告 
  
 ①.西武信金主催の知的財産を活用したアイディアコンテストの決勝戦
 12月12日㈯午後に、ゼミ研究報告会と並行して開催されたのが、西武信金主催の知的財産を活用したアイディアコンテストの決勝戦です。こちらにも、小木ゼミは出場しました。上記、ゼミ研究発表と被っているゼミ学生が2名おり、彼らは行ったり来たりで大変そうでしたが、無事に両方に参加することができました。残念ながら、最優秀賞、優秀賞を獲得することはできませんでしたが、良い経験になったと思います。ゼミからは初めての参加でしたが、後輩にバトンタッチしていってほしいと思っています。私も複数のPCを使って参加したのですが、とても勉強になりました。もう少ししっかりと指導してあげれば良かったなと反省しております。

 ②.多摩大学アクティブラーニング祭への招待ゼミとしての参加
 12月12日㈯午前に、3年連続で、多摩大学のアクティブラーニング祭への招待ゼミとして、ゼミの企業とのコラボ活動の発表を行いました。こちらも、我々小木ゼミはZoomでの参加でしたが、現地会場はたくさんの来場者がいたようです。
 今年はコロナの影響であまりコラボ活動がしっかりできなかったのですが、活動した部分をしっかり報告してきました。

 ③.「国分寺物語」活動報告及びニッポニアニッポン代表による講演(オープンゼミ)
 12月16日㈬10:40~は、Zoom開催による「国分寺物語」活動報告及びニッポニアニッポン代表による講演会が開催されます。当日は、オープンゼミにもなっていますので、特に1年生の皆さんは見に来てください。講演会後~お昼休みに、ゼミ生と1年生との懇談会もあります。