2025年3月10日月曜日

欧州大陸でコストコの出店ペースが唯一早いスペイン

 流通マーケティング学科の丸谷です。68回目の執筆です。私は「グローバル・マーケティング論」を専門としており、海外でどのようにマーケティングを行うかについて研究しています。年2回ある授業休止期間を利用し、海外現地調査のために出張してきました。このブログでは、米国、インド、中国、チリ、ペルー、ブラジル、ケニア、ガーナ、英国など多くの国々での出張について取り上げてきました。今回は昨年8月にスペインにて現地調査してきたの取り上げます。

スペインマドリード郊外ラス・ローサス倉庫店の外観

コストコはアメリカ出身で会員制の倉庫型店舗を海外にも展開しています。同社の国際展開は他の企業に比べてゆっくりで、市場機会をどん欲に求めるというよりは、石橋を叩いてわたるペースです。私はこの進出ペースを、漸進的(ぜんしんてき)という表現で表しています。同社のヨーロッパの展開での展開は1993年にコストコの前身の会社が既に進出した母国アメリカの旧宗主国でつながり強いイギリス以外ではこれまでなく、2014年のスペイン進出が大陸出店ということでは初めてとなります。それ以降2017年アイスランドとフランス、2022年スウェーデンと少しずつヨーロッパでも出店国を拡大していますが、各国の出店ペースはゆっくりで、出店後の時間があまりたっていないこともありますが、フランスがパリ周辺に2店舗目を出店した以外は1店舗のみです。2014年進出のオーストリア19店舗、2019年進出の中国では7店舗なので、ヨーロッパの出店ペースがゆっくりといえるでしょう。

コストコのスペインにおける店舗

 スペインは出店ペースがゆっくりなヨーロッパの中では出店ペースが唯一早くなっています。1号店は2014510日にスペイン第4都市南部アンダルシア州セビリアでした。2-3号店は2015年と2000年に首都マドリードに、4号店は2021年にバスク州ビルバオに、5号店は20249月にアラゴン州サラゴサに開店し、今後2025年バレンシア州パレルナ、2026年アンダルシア州マラガに出店予定です。地元報道によればコロナ禍でこれでも少し遅れているようですが、上記出店が順調に進むと仮定すれば、スペインの主要7大都市であるマドリード、バルセロナ、バレンシア、セビリア、サラゴサ、マラガ、ビルバオのうち、バルセロナを除く6都市に出店することなります。

 今回はマドリード近郊の3号店ラス・ロハス店にうかがいました。基本的な品揃えは維持しつつも、食が豊かなスペインだけあり、同じヨーロッパのイギリスと比較しても、肉魚野菜の生鮮三品の充実は明らかでした。オレンジなど自国産の柑橘類やオリーブに関してはいうまでもなく、肉では大人気のイベリコ生ハム、魚ではスペイン出身のオルティス社のマグロなどを品揃えし 、日本の寿司に近い寿司を店内調理でちょうど大量に作っていました。 

食文化の豊かさをスペインの特徴に適用した店内

 ちなみに、スペイン小売で圧倒的シェア1位のメルカドーナは食品スーパーのみを展開する企業であり、1990年代の独自規制の影響もありますが、売り場を改めて細かく観察して、1次産業が強く、食文化が豊かなスペインの特徴を反映しているとも感じました。

(文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)