2025年10月20日月曜日

フランスパリ近郊で試行錯誤するコストコ

 流通マーケティング学科の丸谷です。67回目の執筆です。私は「グローバル・マーケティング論」を専門としており、海外でどのようにマーケティングを行うかについて研究しています。年2回ある授業休止期間を利用し、海外現地調査のために出張し、このブログでも多くの国々での出張について取り上げてきました。今回は20258月にフランスで行ったコストコ現地調査を取り上げます。

 日本でも人気のコストコはアメリカ出身の企業ですが、会員制の倉庫型店舗を日本以外の国にも展開しています。同社の国際展開はこれまで日本に進出してきた流通企業に比べてもゆっくりであり、市場機会をどん欲に求めるというよりは、石橋を叩いてわたるペースです。私はこの進出ペースを、漸進的(ぜんしんてき)という表現で示してきました。

コストコのヨーロッパでの展開は1993年に同社の前身企業が既に進出していたアメリカの旧宗主国であるイギリス以外では2014年のスペイン進出までなされてきませんでした。スペイン進出以降2017年アイスランドとフランス、2022年スウェーデンと少しずつ進みましたが、各国での出店ペースはスペインでの展開に比べてゆっくりで、今回現地調査したフランスのみがパリ周辺に2店舗目を出店した以外は1店舗のみでした。この出店ペースは2014年進出のオーストラリアが15店舗、2019年進出の中国が7店舗と比較してもゆっくりとしたペースといえるでしょう。

フランスのコストコの出店場所

フランス2025年年末までにドイツとスイスとの国境近くのミュルーズに3店舗目を出店することが発表されており、英国、スペインに次ぐ出店ペースといえ、英国とスペインでは既に現地調査を行ったので(英国現地調査に関しては、https://tkubiz.blogspot.com/2023/09/blog-post.htmlを、スペイン現地調査に関してはhttps://tkubiz.blogspot.com/2025/03/を参照)、今回フランスで現地調査を行った。


リ到着翌日時差ボケが残る中でしたが、早速ホテルから相対的に近いコストコのフランス2号店(コストコポントー・コンボー倉庫店)に向かいました。宿泊したホテルの目の前のパリ市庁舎を意味するオテル・ド・ヴィル駅から地下鉄で2駅のリヨン駅でパリ近郊の大都市圏と郊外を結ぶ高速鉄道のネットワークであるエール・ウ・エールのA号線に乗り換え、9駅目のシャンピニー駅まで22分乗車しました。

パリ中心部からコストココポントー・コンボー倉庫店までの行程と周辺の店舗

 シャンピニー駅は中央線の各駅は停車するが、電車の乗り換えはない豊田駅や日野駅という感じの駅であり、駅前に数路線が走るバス停がありました。駅前のバス亭からレ 4 シェンヌ・ショッピング・センター(Ccial Les 4 Chênes)行きのバスの終点まで40分乗車すると、コストコポントー・コンボー倉庫店につきました。

 この店舗は2021815日に開店した店舗であり、物流が容易な郊外の幹線道路D4(県道4号線)沿いに立地し、巨大ショッピングモールの中核をなすテナントとなっていました。駅からコストコまでのバス沿線には郊外型の住宅が建設され、駅とコストコが入居する巨大モールの間には、フランス発祥で日本にもかつて進出したことがあるカルフールなどが出店する中規模モールも立地しており、バスの終点に立地するレ 4 シェンヌ・ショッピング・センターは近隣の住民向けというよりは、より広域からの集客を期待して建設されたモールのようでした。

閑散とした店内の様子

 広大なモールの外観を1周した後、世界共通の会員証を機械にかざして入店すると、会員はまばらで数えるほどしかおらず、英国、スペイン、オーストラリア、メキシコのどのコストコよりも売場に活気は正直全く感じられませんでした。当然会員が少ないので、配置された試食担当の店員さんも手持無沙汰であり、当然やる気も感じられず、非常に静かな店内でした。

駐車場が満杯のリドル

 平日昼間という時間帯のせいかなと考え、モールに入るその他のテナントもくまなく回ってみたところ人はまばらでしたが、隣接するハードディスカウントストアのリドルはコストコよりこじんまりした店内が多くの顧客で賑わい、駐車場もほぼ満杯であり、レジに人が多くならび、店内にも活気がありました。少なくともこうした郊外立地ではハードディスカウントストアの方があっていることが明らかでしたし、駐車場や併設されたガソリンスタンドの稼働状況をみても広域からの集客も少なくとも大成功しているとはいえなさそうでした。

フランス1号店ヴィルボン・シュル・イヴェットの一定の活気がある店内の様子

 数日現地競合店を現地調査した後、2017622日に開店したフランス1号店ヴィルボン・シュル・イヴェットも現地調査しました。1号店はホテルから10分ほど歩く地下鉄サン・ミッシェル・ノートルダム駅からエール・ウ・エールのC号線30分程乗車し、エピネイ・シュル・オルジュ駅で下車し、さらに駅前のバス停から30分程バスに乗り到着しました。1号店も2号店とパリ中心部からの方向は異なるが、エール・ウ・エール沿線からバスで30分程度という立地であり、幹線道路も近いことから広域集客を意識した立地であることはわかる。

 1号店も訪ねたのは平日午前中でしたが、2号店に比べると会員が店内に多くおり、英国やスペインの店舗ほどではないが、2号店ではみられなかった、カートに大量の同社のプライベートブランドであるカークランドのPB商品を積む顧客が散見され、店員も手持無沙汰ということもなく、自身の仕事をもくもくとこなしていた。

 コストコのフランスでの出店ペースは1号店から2号店出店まで約4年、さらに3号店出店予定まで約4年である。今回の現地調査で確認できたように、1号店と2号店を比較すれば明らかに1号店の方がにぎわっているし、オペレーションもしっかり構築されているようであった。1号店での一定の成果を踏まえて2号店も出店したがあまりうまくいってない状況を踏まえると、パリ近郊へのこれ以上の出店は厳しいと考えるのは合理的判断といえよう。3号店は大都市パリの近郊とは全く異なる初の地方出店であるだけに、フランスで一定程度蓄積した経営資源をいかに地方で活用するかにも注目し、機会を見つけて現地調査してみたい。

(文責 流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)

2025年10月6日月曜日

教員の研究生活:学会ってどんなことするの?

こんにちは,経営学部講師の岩田聖徳です。
前回はゼミ教育のお話をいたしましたが,今回は教員の研究生活をチラ見するブログ記事にしてみようと思います。

学生から見て,大学の先生=授業をする人,という認識が強いと思いますし,まして学外の方や受験生からみるといっそう教員の普段の生活が想像しにくいかもしれません。
ちょうど,8月に自分の研究を報告するために米国に出張してまいりましたので,どんなことをしていたのかを紹介してみようと思います。


学会に行ってきました!

今回は,American Accounting Associationという,会計学関連の国際学会に出てきました。「学会って何?」と思われる方のために軽くご説明すると,学会というのは似た専門の研究者たちが集まって,研究を報告してコメントし合ったり,交流をしたりするための組織のことです。

今回は米国イリノイ州,シカゴで学会が開かれました。米国は大学院生の時以来で2回目だったのですが,シカゴに着いたときの第一の感想は「高層ビル多っ」でした。

全米でも有数の大都市ということで,その経済力を見せつけられた感じがしました。写真は学会会場に向かう道の風景です。生トランプタワー,初めて見ました。




















今回はハイアット・リージェンシーというホテルの会議場での開催でした。初日は,学会に多大な貢献をした著名な教授陣によるスピーチがあり,多くの参加者が真剣な眼差しで聞き入っていました。

普段の学会に参加するときは大学の大講義室で行われることも多いのですが,ホテルの会議場だと雰囲気がまるでライブ?のようでした。
















大ホールでの講演が終わったあとは,3日間にわたり参加者による怒涛の研究報告が行われます。毎日,朝から夕方まで30分ずつ違う発表を聞く,という感じだったので,夕方になるころには頭がクラクラする程度には知的体力を使います。
この研究報告の風景は,さすがに個人の顔や発表内容が映ってしまうので,ブログには載せないようにします。(一番雰囲気が伝わるのはその写真なんですがね…笑)

岩田も2日目に自分の研究を報告して,他の参加者に研究を改善するためのアドバイスを貰ったり,他の発表者の研究にコメントをしたりしていました。

個人的に,こうした学会に参加して一番よかったなあと思う瞬間は,他の参加者から「君の発表面白かったよ!」とか,「君のコメント参考になったよ!」と言ってもらえて,発表後に交流ができたりしたときです。

研究は最終的な成果物になるまで長い時間のかかる地道な作業なので,良い「仕事仲間」のような関係を世界の色々な国の研究者と築けると,大きなモチベーションになります。こうした刺激があるのも,研究活動の良いところだなと思います。

今回は,現地の大学からの参加者の方と学会中の議論を通じて仲良くなり,休み時間に一緒に会場近くのお店でランチをしました。ちょっと量が多いけど,名物のパンケーキが良いとのことでしたので,それにしました。

後で,米国での「ちょっと量が多いパンケーキ」の意味を一旦考えてから注文すればよかったな,と思いました(※味は美味しかったです。次の日の朝ごはんにしました)。

ちなみに,彼から聞いた豆知識なのですが,シカゴは建築で有名なのだそうです。確かに,街にそびえ立つ高層ビル群をよく見てみると,それぞれが独特な形をしていました。

学会期間は3日間でしたが,たくさんの知的刺激があり,非常に濃い時間でした。大学での研究が楽しそうだなと思った方は,関心のある分野の「学会」を調べてみても面白いかもしれません。興味深い研究や活動に出会えるかもしれません。

(文責:経営学部専任講師 岩田聖德)