2025年11月3日月曜日

葵祭にいってきました

経営学部の木下です。

葵祭にいってきました。

ゼミの学生のものを中心に、色々な企画と模擬店を回ってきました。学生のサークルだけではなく、ゼミでの出店もあり今年は特に経営学部からの出店が多いようでした。展示企画を回ってスタンプを集めたり、アンケートに回答するだけで記念のタオルが貰えました。最後のビンゴ大会ではまったく当たる気配もありませんでしたが、なんだかんだで結構面白かったです。学園祭とはそういう趣旨のものではないでしょうが、市場や経営学的な観点から少し考えてみようと思います。

まず気になるのは模擬店はちゃんと利益を回収できているのか、ということですね。個別の模擬店の来客数や売上の予測はかなり難しいでしょう。価格を固定していては売れ残りが生じて在庫の処分コストもありますから、赤字になる可能性はあると思います。しかし、学園祭の多くの模擬店では、終わりが近づくにつれて値引きして販売します。実際のビジネスでは、安売りをするとそれを待つ客が増えてしまうため安易に行うことはできません。動学モデルやゲーム理論のテーマです。学園祭ではそういった駆け引きを行う必要がないため、最後は純粋な損得計算だけで動くことができるのです。少なくとも原価ギリギリの価格でも売り切ることができればいいので、赤字になっている模擬店はほとんどないと思います。ということで、学園祭のようなケースでは諸々の短期の理論をそのまま適用できると予想します。現実では厳密な最適価格や戦略等は分かるはずもありませんが、多めに仕入れて最初は強気の価格で攻める、という方向の戦略になるでしょう。実際にそうしているのではないでしょうか。

普段現金をあまり使わないので財布にあるかどうか不安でしたが、この日はたまたま数千円入っていました。キャッシュレスを導入してはどうかと思いましたが、それはやはり無理な話でしょう。キャッシュレスを導入することのコストの変化と集客力の増加の比較でやるべきかどうかは決まりますが、後者の効果があるとはとても思えません。「キャッシュレス決済できるなら葵祭に行こう!」となるような層は、ほとんどいないような気がするのです。もっとも、キャッシュレスを導入してみた世界も観測できませんから「気がする」としか言えません。キャッシュレスを導入して会計担当の人員を削減して商品開発等に回して品質を高める、というのも学園祭では何か変な気がします。キャッシュレスの手数料を払ってまでやる価値があるか、ということです。ということを考えていたら他大学の学園祭に行ったゼミ生からPayPayで支払い可能な模擬店があったと教えてもらいました。主流にはならないと予想していますが、これは日本全体のキャッシュレスの動向次第ですね。

実際のビジネスでは、リスク管理の話が追加されてきます。例えば、個別の予測は難しくても全体の来客数は例年と大きく変わらないはずです。そこでファイナンス論や保険論では、全体で管理して分配した方がリスクを少なくできる、という発想を持ちます。分散投資というやつですね。一方で、そんなことをしたら各模擬店が頑張る意欲を失ってしまう、という経営組織論的な発想もあります。モラルハザードというやつです。

もちろん利益を追求するのが学園祭の目的ではないと思います。販売して終わり、だとまるでビジネスライクで学園祭の趣旨ではないはずで、知り合いの企画や模擬店に行ってみてつながりを増やしたり、自分達のやっていることを知ってもらったりするのが本来の目的だと思います。

と、色々考えつつもこれは実際に出店せずに理屈を語っているだけですね。やってみなければ分からないことはたくさんあります。それが経営や経営学の難しくかつ面白いところではないでしょうか。え?じゃあ木下ゼミも出店してみろって?うーんそれはどうでしょうか。検討します。


                             木下 亮