「物流論」・「流通情報システム論」を担当する宮武です。
前回は「物流」ってこんなイメージ、ということで、
参考となる動画や映画を簡単に紹介しましたが、
今回はインターネット通信販売(ネット通販)の物流について簡単に紹介していきます。
ネット通販といっても、色々な商品が取り扱われていますが、
今回はその中で、「アパレル(衣類)」を例にしてお話していきます。
1.アパレルがネット通販で購入される割合
経済産業省は毎年夏ごろに「電子商取引に関する市場調査」という報告書を公表しています。
2025年8月に公表された結果によると、
日本における2024年の「全ての商取引金額に対する、電子商取引市場規模の割合」(これを「EC化率」と呼んでいます)は、9.78%と推計されています。
だいたい、すべての買い物金額の10分の1がネット通販での買い物金額ということです。
さらに「衣類・服飾雑貨等」に限れば、23.38%
と全体に比べると高くなっています。
(ちなみに最も高いのは、「書籍、映像・音楽ソフト」の56.45%です。
経産省統計では、電子書籍や音楽・動画配信はここに含まれていないので、
このカテゴリーは実店舗で本やソフトを買うという人の割合は下がっていると言えるでしょう)
2.服を買うならどんなところで?
サブタイトルは縞野やえ先生の『服を着るならこんなふうに』を少し意識しました。
さて、みなさんはネット通販で服を買いますか?
買うとしたら、どんなサイトで買っていますか?
180cm弱、100kg強の私はもっぱらUNIQLOの通販です。
UNIQLOの場合、店頭在庫のサイズはだいたいXLまでなので、
私のような体型の人間はそもそもネット通販がメインです。
ちなみに、GAPであれば海外サイズ基準なので、XLでOKなのですが、
買いに行くこと自体が面倒で定番のオックスフォードシャツをやはりネット通販でポチってます。
このように、もはやオシャレをしたい、なんて考えがない消費者だと、
同じような服を同じサイトで買う、という行動をとりがちです。
サイズ感、色合い、質感、店員さんとの情報交換などなど、
趣味としてファッションを楽しみたい人には、物足りない買い物スタイルかもしれません。
しかし、最近ではット通販の特徴である安さと商品の豊富さ(+探しやすさ)も活かしつつ、
ファッション性が高い、たくさんの新作が出る、掘り出し物がある、
などの若い世代に手が届く(いわゆる「プチプラ」)、
トレンドも押さえた商品を販売するネット通販サイトも一般的なようです。
(自分が上記のような消費者なので、情報として知っていても伝聞系になるのはお許しください。)
みなさんの中にも、
Amazonや楽天市場、前述のUNIQLOなどだけでなく、
ZOZOTOWNで複数のショップからお気に入りブランドの新作をチェックしたり、
GRL(グレイル)で手頃な価格帯の商品を探したり、
という人もいるかもしれません。
また、SHEINなどの中国系のネット通販サイトで海外から服を取り寄せたり、
着なくなった服をメルカリに出品したことがある人もいるでしょう。
3.商品はどこから送られる?
アパレル商品の製造から小売店までの物流は、
物流を勉強するうえでは教科書的な題材なのですが、
ここではまず小売店(ネット通販事業者)から消費者までの物流を見ていきます。
まずネット通販サイトには、
「自社で仕入れた商品を販売しているサイト(自社型)」
と
「いろいろなお店が出店しているオンライン上のショッピングモールを運営しているサイト(モール型)」
に分けることができます。
Amazonは元々自社型から展開していき、
最近では「Amazonマーケットプレイス」にみられるようなモール型の特徴が強くなっているサイトです。
アパレル商品などは、特にAmazonに出店している通販事業者が販売している割合が多い印象があります。
楽天市場はその逆で、モール型として展開している一方、
一部で「Rakuten Fashion」などでは自社型を採用しています。
また、ZOZOTOWNも基本は複数のショップがサイト内に展開するモール型です。
モール型の場合、実際に商品を発送するのは、
基本的にはモールを運営しているネット通販事業者ではなく、
モールに出店している販売事業者です。
ただし、Amazonも楽天も自分たちが管理する物流センターに出店者の商品を保管し、
注文が入れば段ボールなどに入れて発送するという物流業務を代行するサービスを実施しています。
これを「フルフィルメントサービス」と呼んだりしています。
(正確には、フルフィルメントサービスの範囲は物流に限らないのですが。)
一方、UNIQLO、GAP、GRL、SHEINなどは自社で製造した商品を自社で販売している、
SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)という製造小売業です。
(実際に製造しているのは委託工場なのですが、そこからの物流などはまた別でお話できれば)
当然、商品の保管や発送なども自社での責任で、物流事業者などに委託しながら行っています。
特に、UNIQLOの持つ有明の倉庫は、自動化が進み24時間体制で注文を受けての出荷体制を整えています。
なので条件が揃えば、夜に注文した商品が数時間後の翌朝には届くといった利便性があります。
4.商品は誰が運ぶ?
日本のネット通販の配送の多くは、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便などの宅配便事業者が支えています。
しかし、Amazonのように自社で配送も管理するネット通販事業者も出てきています。
(正確には、Amazonが個人の配送員に直接配送を委託したり、
宅配便以外の物流事業者などを通してやはり個人の配送員に委託している形です。)
先ほど紹介したフルフィルメントサービスを利用して、
Amazonの物流センターから商品を送り出す場合、
このAmazon独自の配送サービスで商品を消費者に届けることができます。
一方、モールの出店者が自ら発送をおこなう場合は、
大手の宅配便事業者に配送を任せることが一般的です。
また大手のネット通販事業者でも、商品の保管や管理などは自ら主体で行っていても、
配送だけは宅配便事業者に任せることが多いです。
これは、それだけ配送がネット通販物流のコストとして大きいことの表れでもあります。
なお、SHEINは中国の物流センターから日本に航空便で輸送されていますが、
日本での配送は日本の宅配便事業者に任せている場合が多いようです。
今回はアパレル商品のネット通販での管理や配送について見ていきましたが、
なぜこれらの商品が、ましてやSHEINのように国外から運ばれているにも関わらず安いのか、
ということについて機会があればお話できれば、と思っています。
(文責:宮武宏輔)