2023年3月20日月曜日

広島市、和歌山市、岩手市の顧客ニーズへ寄り添うコストコ商品取扱店の取り組み

 流通マーケティング学科の丸谷です。56回目の執筆です。私はグローバル・マーケティングを専門として研究を行ってきました。私は世界3位の小売売上高を誇る企業であるコストコから商品を仕入れ販売するコストコ商品再販店に注目し調査しています。

 コストコ商品再販店はコロナ禍で急拡大し、既にコストコが出店済みの東京都や大阪府といった大都市から未出店県であることにビジネスチャンスを見出した長崎、佐賀といった地方にまで急拡大しており、2023130日に公開したブログでは宮城の塩釜水産物仲卸市場内の店舗を取り上げました。

 前回はコストコ商品の再販を主な事業としている店舗を取り上げましたが、今回は自動車販売店にコストコ商品販売店を併設した広島市のアルプス・コーポレーションのセレクトショップと、コストコ商品の仕入れを一定程度行いつつも、その他の商品も同時に販売している店舗である和歌山市のフレアマーケット(fleamarket)について取り上げます。

 アルプス・コーポレーション(Instagram – alps corp. - アルプスコーポレーション)が運営するコストコ商品再販店(セレクトショップ)はコストコ広島倉庫店(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島に隣接)から近い広島市中心部と広島市郊外(広島修道大学や広島市立大学が立地)を結ぶ広島高速4号線の出口である広島ジャンクションからすぐのところに立地しています。東京でいえば東京都立大学の周辺に近い感じです。

 私は広島市中心部からバスに乗って取材に出向いたが、広島高速4号線は山の中をとにかく突っ切るようになっており、自動車で行き来する分には便利だが、気軽に行けるかという少し不便な立地であり、都市郊外の顧客ニーズに対応したといえるかもしれない。

アルプス・コーポレーションの外観(自動車販売店にコストコ商品再販店を併設)
 コストコ広島倉庫店は2013年3月13日とだいぶ以前に開業していますが、同社がコストコ商品再販店を開業したのは2021年10月18日であり、前回取り上げた宮城県の事例と同様に、東京下北沢に同年5月4日に開業したストックマートに影響を受けての開店だそうです。
 
冷蔵品を1個単位で小分け販売

 店舗内で印象的だったのは1個単位での小分け販売でした。上記写真のように、冷蔵品は家庭用冷蔵庫をうまく用い、必要な場合には顧客自身が明けて取り出す方法で販売していました。
フレアマーケットの外観

 2店舗目に紹介するフレアマーケットは、JR和歌山駅からバスで11分さらに徒歩10分(約800メートル)の場所に立地し、公共交通機関を使用してのアクセスは広島の店舗に比べても決して良いとは言えない場所です。しかし、幹線道路沿いに立地しており、仕入れ場所となっているコストコ和泉倉庫店からは約40キロの場所に立地しています。

  コストコ商品を相対的に小規模な店舗で取り扱う場合、宮城の店舗も、広島の店舗も当てはまるのですが、会員となって頻繁に通うのは大変ですが、仕入れ先として考えれば遠くはないというのが出店場所として成立しうる条件となっているようです。フレアマーケットはこの条件に当てはまっており、自動車での移動距離が40キロといのは絶妙の距離ということになります。

コストコ商品とともにアパレルも販売



ディナーロール1個20円で販売

 お店は姉妹で運営されており、コストコ商品の定番商品のディナーロール、マフィンなどの他に、アパレルや関西のコレアンタウン大阪鶴橋のキムチも取り扱っているそうです。ディナーロールは1個単位で小分け販売しており、半分など小分けしている事例は散見されますが、ディナーロールを1個単位で販売しているのは初めてみました。

 コストコ商品を品揃えの一部として組み込んでいるお店は全国規模で拡大中であり、コスコ(長野のドラッグストアチェーン)、グッディ(山口や九州に展開するホームセンター)、ビッグプロ(盛岡市中央卸売市場に隣接した会員制倉庫型スーパー)など増加しています。

盛岡市中央卸売市場に隣接するビックプロの外観

 上記の店舗はセレクトショップやフレアマーケットと比べると巨大な店舗であり、品揃えに関しては小規模なコストコ商品再販店に比べて多く、地域経済への影響といった意味ではコストコ商品の再販を主な事業とするコストコ商品再販店よりも大きいといえます。

コストココーナーは店舗の一部だが店舗規模が大きので、アイテム数は多数。

 コストコの店舗展開は私が研究してきたウォルマートやそのライバルのカルフールなどに比べて漸進的であり、買収などではなく1からの出店を地道に直実に行っており、日本でも同様です。

 コストコ商品を取り扱う多様な形態のお店は、漸進的展開を出店戦略のセオリーとするコストコが生み出した消費者のニーズやウォンツを自社の事業としてうまく取り組んで事業化し、コストコを補完する存在として定着しつつある事例といえます。

 これまでも他社のプライベートブランドを店舗がない地域で品揃えに組み込む事例は多く、最近では高級スーパー成城石井のプライベートブランドが地方において品揃えされているのを確認しましたし、私がコロナ禍になる直前に訪れたガーナの地元スーパーが英国の食品スーパーのプライベートブランドを販売しているのを確認しました。

 今回取り上げた事例は、コストコの高付加価値のプライベートブランド「カークランド」やコストコ向けに大手メーカーがパッケージングした1個当たりなら安い商品を、コストコの漸進的店舗展開戦略ゆえに十分に届けることができていない消費者に届ける補完的役割を果たす取り組みといえます。

 実際取材してみてコストコ商品再販店の多くは、自身の顧客とSNSを通じたきめ細かい情報のやり取りや店頭で集めた顧客の要望に、コストコ自身よりもきめ細かく対応しているように見えました。

 特に自身もコストコと同様に会員制であるビックプロが、1つ1つ集めた顧客の要望と、それにどのように対応したのかを伝えた店頭に置かれたノートには目を見張りました。今後も全国で開業が予定されているコストコ商品再販店やコストコ商品取り扱い店を利用してみてはいかがでしょうか?

(文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)

2023年1月30日月曜日

宮城県塩釜水産物仲卸市場内に開店したコストコ商品再販店

流通マーケティング学科の丸谷です。55回目の執筆です。私はグローバル・マーケティングを専門として研究を行ってきました。私の主な研究対象は世界最大の売上高を誇る小売企業ウォルマートですが、ウォルマートも苦戦した日本市場で継続的に成功しているのが世界でもウォルマート、アマゾンに次ぐ第3位の売上高を誇るコストコです。同社は20221027日現在世界13か国・地域(台湾を含む)に、店舗や売り場面積の差はあるもの標準化された1つのフォーマットで842店舗を展開しています。海外展開は北米、英国、東アジア(台湾、韓国、日本)への出店をゆっくりと進めた後、2009年のオーストラリア出店以降若干積極的となり、スペイン、フランス、アイスランド、中国、ニュージーランドと出店国を拡大し、202210月には北欧初のスウェーデンにも出店を果たしましたが、あくまでも出店は先進諸国にほぼ限定されています。

出所)コストコが提供するデータなどに基づいて作成。

 出店に際しては、同社の日本法人ホームページでは出店計画を明示し、物件情報が欲しいというメッセージとともに、高所得層マーケット、半径10kmの人口が50万人以上、企業が多い地域、敷地面積10,000坪以上(ガスステーション用敷地を含む)、建築面積約4,500坪、半径10km=人口50万人以上、用途地域=準工、商業、近隣商業(売り場面積1万㎡超)、駐車場収容台数800台以上、車のアクセスの良い物件、購入・定期借地(40年以上)・建貸といった明確な基準が提示しています。実際コストコの人気が高まるにつれて、多くの自治体が上記の条件を充たすために多様な取り組みを行っています。コストコ側がかなり有利な条件で出店交渉を行える状況になってきているようです。

 しかし、コストコは引く手数多の状況でも世界の同社の出店戦略同様に、日本においても現状では無理な出店を行っておらず、出店ペースは比較的ゆっくりです。そんな状況で2022年になり急激に増加しているのが、コストコ商品の再販店です。こうした動き自体はコストコの展開する業態が会員制のホールセールクラブ、すなわち卸売店舗というだけにコストコから仕入れて再販売すること自体は不思議ではなく、従来からコストコフェアといった催事の展開や売り場の限られた場所をコストコ商品の再販に利用する動きはありました。

 私が今回注目したのは2021年以降拡大し、2022年になりその地域が急激に拡大しているコストコ商品が売り上げの多くを占める再販店の拡大です。2021年までは一部の企業がコストコ未出店県や大都会の隙間に店舗を出す程度でしたが、出店地域が東北から鹿児島まで広域となり、複数店舗を展開する事例も散見されるようになりました。

 今回は宮城県の塩釜水産物仲卸市場内に開店したコスト商品再販店である「グッドリテイル」について取り上げます。 

塩釜水産物仲卸市場の外観(入口付近にグッドリテイル開店を知らせる看板があります)

 

仲卸市場内の一番奥の14号売場に立地する店舗
 コストコ商品販売店はコストコに比べてアイテム数が限られる、単位当たり価格は高いといったデメリットはあるもの、利用者にとって店舗が近く小規模ゆえに買い物がし易い、会費支払いが不要、一部商品ではばら売りも行うなどの大きなメリットを与えています。出店の条件を厳しく管理しているコストコ側にとっても、商品自体の購入数は伸びますし、将来のファンを獲得する意味合いもありそうです。 

ジャパン交通代表横井氏

 今回快く取材に応じてくださった店舗の出店を行ったジャパン交通代表横井氏によれば、コロナ禍の行動制限で本業の貸切バス事業が厳しい折、店舗が立地する仲卸市場の前にキッチンカーを出店後、今回のコストコ再販店を出店した14番売場の横の7号売場でこだわりのコーヒーが人気の「アンダードックカフェ」を出店することになり、空いていた隣の敷地に当時以前このブログでも取り上げた東京下北沢で既に人気となっていたコストコ商品再販店を開店することになったそうです。

 今回取材させて頂いたグッドリテイルから仕入れ先であるコストコ富谷倉庫店は自動車で40分くらいの場所にあり、仕入れに毎日行くことは可能な距離ですが、なかなか個人で店舗に行くとなると大きな店舗での買い物やその後のレジ清算の時間も含めて考えると半日がかりになってしまうため、頻繁に行くことは難しいようです。そのため、開店後まだ時間がたってはいませんが、土日には平均250人程度の来店があるそうです。他の店舗同様コストコのオリジナル商品のパンなどが人気だそうですが、それ以外の商品でもコンビニより安く販売が可能なダノンのオイコスブランドのヨーグルト1個を買われていくお客様もいるようです。コロナ禍という厳しい状況の中で、コストコからの適度な距離を活用した地域活性化にもつながる地方のやる気のある経営者の新たな取り組みの話をうかがいとても励まされました。

 なお、同様のコストコ商品販売店として、東京経済大学の最寄駅国分寺駅からバスで1本の府中駅の近くにも、2022830日に2020年から既に下北沢で店舗を営業してきたストックマートが2号店を出店しました。こうした戦略はグローバル企業の展開をうまく利用した興味深い取り組みであり、機会があれば利用してみてはいかがでしょうか?

(文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)



2022年12月12日月曜日

日本一新大久保に詳しいもーちぃさんを外部スピーカーとして招聘

 流通マーケティング学科の丸谷です。54回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論を専門とする教員であり、専門科目としてグローバル・マーケティング論を半期2コマ担当すると同時に、2年生から4年生まで3年間履修できるゼミも担当しています。教員は講義に実際に実務を行っている起業家の方や外部の有識者を外部スピーカーとして招くことができる制度があります。

今回は現在各種メディアで「日本一新大久保に詳しい」としてご活躍されている丸谷ゼミOGでもあるもーちぃさんにグローバル・マーケティング論の授業内の外部スピーカーとしてお話しいただいたので取り上げます。

もーちぃさんが携わった書籍

新大久保は言わずと知れたコリアンタウンですが、韓流ブーム以降韓国の文化を日本国内で享受できる街として認知されています。もーちぃさんは地元出身ということを十分に活用し、書籍も発表しメディアに出るようになり、書籍も発表しています。

もーちぃさんの報告資料より抜粋

今回はグローバル・マーケティング論の授業内かつ本学OGという彼女の個性を活かして、彼女が韓国の制服を日本で受け入れられるようにアレンジして学生時代に起業した韓国制服のレンタル事業の話や新大久保の文化を幅広く発信する活動ととともに、起業経験やライターとしての活動や就職活動についてお話しいただきました。世代が近い先輩からのお話は興味深ったようで履修者の皆さんはいつも以上に真剣に授業を受け、リアクションペーパーにも多くの質問や意見が書かれていました。

もーちぃさん報告資料より

なかなかコロナ禍で外国に行くのは難しい状況ですが、彼女が情報を発信するコリアンタウン新大久保へは本学の最寄駅国分寺駅からは電車1本で行けます。機会があれば新大久保で、韓国にもともとあった「タッカルビチーズトッピング」を、当時流行していた“動画映え”にヒントを得てアレンジされた「チーズタッカルビ」(授業内で彼女に教わりましたが)など、海外文化に触れてみてはいかがだろうか?

(文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)









2022年10月24日月曜日

コストコの東北初の店舗かみのやま倉庫店を訪れて

流通マーケティング学科の丸谷です。53回目の執筆です。私はグローバル・マーケティングを専門として研究を行ってきました。私の主な研究対象は世界最大の売上高を誇る小売企業ウォルマートですが、ウォルマートも苦戦した日本市場で継続的に成功しているのが世界でもウォルマート、アマゾンに次ぐ第3位の売上高を誇るコストコです。今回はコストコの東北地方初出店の店舗となった山形県のかみのやま倉庫店を訪れる機会を得たのでとりあげます。

コストコかみのやま倉庫店外観

コストコは19994月の福岡県糟屋郡久山町に1号店出店以降、10年程は年間1店舗というゆっくりとしたペースで大都市郊外を中心に出店していきました。20118月の10号店である前橋倉庫店出店以降、出店出典ペースが3倍程度に加速し、東北地方初の店舗かみのやま倉庫店は21号店ですが、この加速した時期に出店されました。同店舗開店日2015820日翌日の821日には、22号店野々市倉庫店が石川県金沢市郊外に、翌々日822日は23号店射水倉庫店が富山県の新たに開発された工業団地「小杉インターパーク」内に開店しました。コストコにとって3店舗の3日連続出店の経験はこれ以降もなく、北陸から東北南部の一帯を一気に商圏に取り込む新たな試みとして話題にもなりました。

2015年8月に3日間連続開店した北陸・東北でのコストコの店舗

3日連続出店の3店舗はいずれも高速道路インターチェンジ近くの立地であり、まとめ買いのための自動車での来店を基本とする同社にとっては好立地ではありました。しかし、従来の出店場所に比べると、周辺人口は明らかに少なく周辺県も含めた広域からの集客が必要とされます。しかし、この頃からコストコの集客力が地方自治体からも高く評価され始めたようです。

実際、2012年頃からコストコについて取り上げたムックが多く定期的に出版されるようになり(鳥羽(2020)、12頁)、2013年出版の中沢明子、古市憲寿著『遠足型消費の時代 なぜ妻はコストコに行きたがるのか?』朝日新聞出版において、コストコへの買い物は遠足のように適度な「非日常」を提供するともいわれるようになっていきました。今ではコストコでの買い物の模様はジャンクスポーツなどのゴールデンタイムの番組でも一般的なコンテンツとしても多く取り上げられるようになっています。

コストコかみのやま倉庫店の周辺の風景

かみのやま倉庫店出店に際しても、地元からの期待は当然大きかったようであり、今回の取材で周辺を歩いてみても歩道は数分歩いただけで砂利が靴に何回も入る状況であったが、歩道の横を走るコストコの前の道路は山形新幹線と比べても不釣り合いなくらいにしっかりと整備されていました。

今回平日である月曜日の開店直後に店舗を訪ねましたが、月曜日の開店直後から店内はかなり多くの家族ずれが来店しており、名物ともなっている店内試食を促す店員の周りにできる行列は店内に活気を生み出していました。飲食コーナーの横ではハロウィーンに向けて巨大な動く人形が展示販売され、東北の山の中に娯楽空間が設置されていました。

今回の現地調査のために前日かみのやま温泉に宿泊しましたが、温泉街のさびれた状況と、コストコやその周辺のジェネリック薬品工場などの活況はあまりにも対照的でした。あくまでも個人的な印象ではありますが、かなり物悲しく感じました。今や過疎に苦しむ地方の非日常空間を生み出す存在となった地方のコストコ、機会があれば訪れてみたはいかがだろうか。

(文責 流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)

2022年8月31日水曜日

日本で定着する外資コストコ最新店舗栃木県壬生倉庫店を訪れて

流通マーケティング学科の丸谷です。52回目の執筆です。私はグローバル・マーケティングを専門として研究を行ってきました。私の主な研究対象は世界最大の売上高を誇る小売企業ウォルマートですが、ウォルマートも苦戦した日本市場で継続的に成功しているのが世界でもウォルマート、アマゾンに次ぐ第3位の売上高を誇るコストコです。今回はコストコの最新店舗を訪れる機会を得たので、コストコについてとりあげます。

丸谷雄一郎(2022)『ウォルマートのグローバル・マーケティング戦略(第3版)』創成社、11頁。
 コストコの日本1号店は19994月に博多駅から自動車で30分ほどの福岡県糟屋郡久山町に開店しました。最初の10年程は年間1店舗というゆっくりとしたペースで大都市郊外を中心に出店していきました。2011810号店の前橋倉庫店出店以降、ペースを3倍程度に加速し、201511月には24号店の岐阜羽島倉庫店を出店しました。2016年以降は出店ペースはダウンし、20164月の25号店富山倉庫店、20179月の26号店浜松倉庫店出店以降出店は中止されました。
 
コストコの全国30店舗と31号店の壬生倉庫店
 しかし、20207月の木更津倉庫店出店以降出店を再開し、20214月に熊本御船倉庫店と北海道石狩倉庫店を、20217月名古屋守山倉庫店を開店しました。20226月に31号店として栃木県宇都宮郊外のベットタウン壬生町に壬生倉庫店を開店しました。ちなみに、コストコは当初関東への出店が多く、2013年7月の16号店つくば倉庫店出店までに栃木県以外には出店済みで唯一関東で未出店の県だったので、9年を経た今回の出店で関東は全ての都道府県に出店を果たしたことになります。

コストコ壬生倉庫店外観

 壬生倉庫店は宇都宮の旧市街にある東武鉄道宇都宮駅から約15分のおもちゃのまち駅からバスで8分ほどの場所にありました。そもそもバスで来る人はあまりいないロードサイド立地のためバスの本数は非常に少なかったです。コストコのとなりはホームセンターのカインズ、正面にはヤマダ電機があり、ダイソー、マクドナルドも隣接しており、典型的なロードサイド立地です。

コストコ壬生最寄りのバス停の時刻表

なお、おもちゃのまちの由来は現在タカラトミーとなったトミー工業の創業者富山栄市郎の働きかけで玩具製造関連会社が集積する工業団地「おもちゃのまち」が1965年に作られたことにあるようです。工場はその後多くが撤退したようですが、壬生町にはこの歴史を踏まえておもちゃ博物館が作られ、コストコのすぐ近くにもバンダイおもちゃミュージアムが移転してきており、おもちゃのまちの伝統は宇都宮のベットタウンとなった今も続いているようでした。

 コストコが展開する唯一の業態は会員制ホールセールクラブと呼ばれる業態なのですが、ホールセールとは本来卸売という意味なのです。しかし、私のような一般消費者も年間4000円少しの会費を払えば会員になれるので、日本では小売として広く認識されています。最近神戸物産が展開する業務スーパーが成長していますが、卸売とか業務とかいうと大容量で低価格のイメージがわきますし、少し似た印象を感じます。

 実際、今回の訪問でも大部分の顧客は一般消費者のようでした。平日午後の時間帯であったにもかかわらず、家族なら子供は入れるということで、多くの一般消費者とみられる家族ずれの皆さんがレジャー感覚で店舗を訪れているようでした。店頭のトレジャーと呼ばれる大型お買い得品の大型テレビなどの列を過ぎ進んでいくと一番目につく場所に栃木県の老舗メーカー米菓メーカー丸彦製菓のおかきが置かれていました。

 時間帯が夕方に近づくにつれて試食コーナーが店内のいたるところで即席に設置され、ワイン、パン、肉、スイーツ、シロップまでいたるところで試食できます。子供なら試食だけで満腹になるほどでした。試食も常に一定の場所で行っているわけではなく、突然始まり一定数の試食が終わると終了するようでした。商品の購入単位が大きいので試食の意味は大きく、名物となっているクロワッサンは試食した人の多くが購入していました。

 コストコは売り場面積10000㎡の大規模駐車場を備えた倉庫店で自社の会員に向けて各カテゴリーのアイテム数は厳選しながら、大容量低価格商品を販売し定着してきました。出店ペースは無理をしないペースを維持し、2020年以降再び出店ペースを少し上げてきています。近年では未出店地域をカバーするためにネットでの販売も活用し始めるだけではなく、コストコの商品を取り扱う別資本の店舗とも連携しています。

コストコ商品販売店であるstockmart下北沢の外観と店内の様子

 今回改めて店舗を訪れて会員を強く意識し、無理して成長しない姿勢を垣間見ることができた。ウォルマートですら撤退した日本においてしっかり定着するための工夫に関しても今後さらに注目していきたい。

(文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)


2022年7月4日月曜日

コロンビアの庶民に尽くした偉大な父に翻弄されながら成長する息子の物語

流通マーケティング学科の丸谷です。51回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、グローバル・マーケティングにおいて重要である海外事情について学習できる映画について紹介してきました。

若き日のコロンビアの庶民に尽くした偉大な父

今回は2022720日に東京都写真美術館ホールやイオン日の出、イオンシネマ春日部などイオン系列全国9館で公開される南米コロンビアを舞台にした映画『あなたと過ごした日に』について取り上げます。この映画はコロンビアで人権擁護家として知られるゴメス博士とその息子エクトルの物語であり、息子エクトルが父との思い出を描いた小説が原作となっている。

物語の舞台はネットフリックスで放映されてドラマ『ナルコス』で麻薬カルテルの本拠となったコロンビア第2の都市メデジンである。このように聞くと何かバイオレンスな映画と勘違いされてしまいそうだが、この映画は『ナルコス』で描かれた時代の少しの前の語り手でもあるエクトルの幼少期に当たる1970年代初頭から始まり、最後の部分で1980年代半ばにひどくなった少し暴力的な描写もあるが、大部分はコロンビアの山岳地帯の地方都市の日常の描写に充てられている。

コロンビアの地方エリートである家族

保守的な地方都市のエリートして育った博士は医師や大学教授として活躍するだけではなく、コロンビア国立公衆衛生学校を設立した人権指導者となり、取り残された庶民のために実用的な公衆衛生プログラムの開発に尽力したが、彼のこうした行動は地方エリートの利権に抵触するために自身と同じ出自の保守派に嫌われ、保守派が支配する大学を追われたりしながらも、庶民のために尽くす姿勢を貫いている。

父を尊敬する息子

 特に息子の視点で進むエピソードのうち印象的なのは博士の正義感が現れたシーンである。エクトルが周りに流されてユダヤ人の家の窓に石を投げて壊すシーンへの対応に表われており、博士は溺愛する息子をユダヤ人の家に連れていき、しっかりと謝罪させている。

 この映画の魅力は多くのコロンビアを扱った映画で描かれる部分とは異なる。コロンビアを扱った多くの映画が、同国において命が軽く扱われる状況について描いてきた。この映画はそれに対し、軽視されてきた庶民のために尽力する父を単なる偉人として描くのではなく、個性的ゆえに欠落した部分に翻弄される息子の視点からユーモラスに描いたところにある。専門家は私も含め欠落した部分があるが、息子の視点から欠落した部分も愛情をもって描くことで、どこか憎めない側面が垣間見え物語に厚みが出ている。バイオレンスイメージが強いこれまで公開されたコロンビア映画とは異なる側面を繊細に描いた作品として、ぜひご覧いただきたいコロンビア映画である。

(文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)

2022年5月16日月曜日

ウォルマートから楽天主導に変わる西友

  流通マーケティング学科の丸谷です。50回目の執筆です。経営の主導権が外資であるウォルマートからネット大手楽天に段階的に変化している西友について書きます。私は1970年代から最寄り駅の西友を利用し続け、大学院に入学した1994年以降、ウォルマートの研究をしてきました。愛知大学での8年間の勤務を経て東京に戻ってきた後も最寄りには西友があり、今でも週1くらいでは通う身近なお店です。

最寄りの西友外観(ウォルマート傘下時2019年11月時点)

西友は1980年代までは子会社無印良品を生み出すなど新たな取り組みにも積極的でありながら、新たに開発された住宅街の駅前に店舗を増やし、順調に成長してきました。しかし、バブル経済崩壊後同じ総合スーパーであるダイエーなどとともに経営不振に陥り、2008年に世界最大の売上高を誇る小売業者ウォルマートの完全子会社となりました。

ウォルマートは赤字体質であった西友の経営再建を行っていきましたが、期待ほどの成果をあげられず、2021 3 月にウォルマートが持つ全株式のうち、米国発投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に65%を、楽天の子会社DXソリューションに 20%を売却しました。ウォルマートは15%の株式を引き続き保有していますが、経営陣も大幅に変わり、20213 1日付で新 CEO に大久保恒夫氏が就任しました。KKRは投資ファンドであり、投資が目的で小売業者でもないですから、西友の経営主導権はウォルマートから楽天に移りました。

 なお、西友の経営主導権移転の経緯について詳細は東京経済大学紀要の東京経大学会誌 経営学312号(https://repository.tku.ac.jp/dspace/bitstream/11150/11667/1/keiei312-05.pdf)をご覧ください。

 ちなみに、紀要は出版する大学に所属する先生が研究成果を発表する機関誌のことです。普段なかなか大学の先生の研究成果に実際に触れることは少ないでしょうが、紀要には皆さんが今後教わるあるいは今教わっている先生のかなり最近行っている研究が多く発表されており、先生の関心や考え方を知るのにいい資料となります。最近の研究に関しては、ホームページにも原則公開されているので、履修を検討する前にみてみるといいかもしれません。

楽天主導に変わっても重視されるプライベートブランド「みなさまのお墨付き」

 私の専門のグローバル・マーケティングでは、世界中で同じことを行う標準化と現地に合わせる現地化のバランスが重要といわれています。楽天以前に主導権を握っていたウォルマートは世界最大の小売業者であるにかかわらず、お店の名前に関してはこれまで愛されてきた西友というブランド名を維持し、消費者に実際に商品への満足度を調査して商品導入の可否を決める「みなさまのお墨付き」というプライベートブランドを積極的に転嫁したことは現地に合わせるという意味では現地化といえるでしょう。

ウォルマートは現地化と同時に同社の強みである低コストや多様性を実現する世界中で採用されているノウハウ導入を行う標準化も行ってきました。例えば、ウォルマートの世界最大の売上高を利用した規模の経済性を活かした安価なプライベートブランドの導入、世界中に拠点があることを活かした仕入れ先の多様化、社員やアルバイトがいろいろな仕事をこなせるようにするマルチタスク化といったことです。

 西友の経営主導権の移転から約1年経ち、西友の変化が消費者にも具体的に見えるようになってきました。分かりやすいのは推奨カードの変更です。

 

ウォルマートセゾンカードから楽天カード西友デザインへ

 ウォルマート主導時代推奨されてきたウォルマートセゾンカードは日本ではVISAなどと比べるとそれほどメジャーとは言えないアメリカン・エキスプレスが付帯し、カード利用での低コストを前面に打ち出してきましたが、楽天カード西友デザインでは電子化を意識し、基本的にはポイント付与などをアピールすることで手続きも消費者自身にネットで行わせています。私が実際カードの入会をしようと店舗の案内の方にどうすれば聞くと、イオンなど多くの量販店が行っている店頭での手続きの支援などはほとんど行っておらず、とにかくネットでできるのでという一点張りでQRコードが書かれた紙を渡そうとしてきました。カードを利用してみようと店舗を訪れると、とにかくセルフレジが大部分となった店内で、店員の方が戸惑う高齢者の方に楽天カードを作ったほうが得ですよという声かけを行っていました。

店員さんに聞いてなんとか発見したウォルマートが世界展開するプライベートブランドジョージ


楽天との連携を強く打ち出すPOP

コロナ禍でなかなか細かく見れなかった食品以外のフロアもくまなく歩いてみたのですが、ウォルマート主導時代あれほどあった全世界で販売されてきたウォルマートのプライベートは一部の例外はあるもののほとんど影を潜め、現地化の方策として導入された「みなさまのお墨付き」が前面に打ち出されていました。目立っていたのは従来より価格重視から品質重視が目出つPOPと楽天との連携を強く打ち出す表示でした。売り場の改編の過渡期のようで食品以外のフロアは在庫処分が非常に多く、ウォルマート主導時代コスト削減のため店員はほとんどいなかったのですが、顧客はあまりいない階にも作業をする店員が多くみられました。

ウォルマートは日本だけではなく、英国、ブラジルも株式の大部分を売却し少数保有としています。コロナ禍でなかなか海外調査に行けないのですが、今後もウォルマートの株式の少数保有を継続しつつ、楽天というネット小売大手主導で経営改革を行う西友に関して、どのように変化していくのか注目していきたいです。

(文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)