2023年9月25日月曜日

コロナ禍後初の海外出張イギリスのコストコなどを訪ねる

流通マーケティング学科の丸谷です。60回目の執筆です。私は「グローバル・マーケティング論」を専門としており、海外でどのようにマーケティングを行うかについて研究しています。大学の年2回ある長期休みに海外現地調査のために出張してきました。このブログでは、米国、インド、中国、チリ、ペルー、ブラジル、ケニア、ガーナなど、多くの国々での出張について取り上げてきました。今回は、20202-3月にガーナでの調査を行った後、コロナ禍開始後初めて海外に出張したので、イギリス出張についてお話ししようと思います。私の研究対象は、かつて日本では西友を傘下に持っていた世界最大の小売企業ウォルマートです。ウォルマートの世界中の店舗を調査してきました。最近では、ウォルマートに次ぐ第2位の売上高を誇るコストコについても研究しており、今回はコストコのイギリスの店舗とその競合他社について取材してきました。

 

コストコ・レディング店の外観

コストコがイギリスに進出したのは、日本に進出する5年前の1993年です。当時、イギリスでは小売業の出店に厳しい規制がなされるようになり、大手小売企業であるテスコやセインツベリーなどもその規制に従いながら、店舗をさらに増やそうとしていました。そのため、外資であるコストコの出店は容易ではないと考えられていました。しかし、コストコは会員制倉庫型店舗として進出を許可され、これが彼らの利点となりました。一般の小売業者が抱える都市計画に基づく規制が適用されないことが決定され、立地の制約が少なくて済んだのです。実際、ウォルマートがイギリスに参入した際に買収したテスコやセインツベリーのライバルであったアズダも規制に苦しんだため、買収された後も、イギリスでの成功が難しかったとされています。

イギリスのコストコ出店順、出店日及び出店地域

コストコは現地規制をうまく回避し、30年間で29の倉庫店を展開し、閉店することなく成長してきました。結果として、2021年までの時点でアメリカ、カナダ、メキシコに次ぐ第4位の倉庫店数を持つ小売企業となりました。将来についても、20238月の現地調査の間に14店舗の大規模な出店が報道されるなど、事業エリアを拡大する計画とみられます。

今回の現地調査でも、コストコが規制を回避するための工夫が見受けられました。コストコの会員カードは海外でも有効であり、イギリスでの利用も可能ですが、会員になる条件が厳しく(詳細は、https://www.costco.co.uk/membership-individual-questionsを参照)、書類の審査も厳格です。このようなチェックはコストコの競合他社である卸売企業でも行われており、私が訪れた店舗でも入店自体が難しかったです。今回の現地調査で実際に訪れたコストコ・レディング倉庫店では、入店時に店員の方よりいくつか質問があり、情報を手書きで記入するなど、日本やアメリカの店舗に比べて厳しく、普通の小売業とは異なる取り組みが見られました。このチェックはかつて日本に進出していたプロ向けの卸売企業マクロで行われていたものに似ていました。

コストコ・レディング倉庫店の立地

今回の訪れたコストコ・レディング倉庫店は2002年に開店し、ロンドンのパディントン駅から電車で25分の場所にあります。レディングは繊維産業が盛んで、大学もあります。この地域は交通が便利で、伝統的な産業や大学が立地しており、東京経済大学の立地する国分寺市に似た環境です。

コストコに隣接する場所に設置された風車

コストコ・レディング倉庫店は風力発電の風車が隣接してあり、周囲には大型ホームセンターや他の大手小売企業が多く出店しています。平日の朝にもかかわらず、コストコのガソリンスタンドには行列ができ、ガソリンはイギリスのコストコでも人気の商品であり、29の倉庫店のうち19店舗にガソリンスタンドが併設され、増加してきています。事前の調査で、コロナ禍の影響で他の企業が品揃えを減らした食料品の売り場を増やしているという情報を得ました。店内を確認すると、生鮮品の品揃えが充実しており、イギリス産の商品に重点を置いていることがわかりました。また、複数の国から商品を輸入し、多国籍企業からの仕入れにも力を入れていることが確認できました。これについては、現地調査を行わないと理解が難しい側面もあり、海外調査の価値を再認識しました。

テスコエクストラのカーブサイドピックアップ

今回はコロナ禍開始後最初の現地調査ということもあり、日本以上に進む非接触への取り組みも注目していました。レディング駅の反対の北側から少し離れた場所に立地したテスコでは、高齢者の方がクリックコレクト・グローサリー(ネット予約し店舗駐車場に設置された倉庫から出してもらい受け取る)の駐車スペースに次々に入ってきていました。日本でも少しずつ普及はしていますが、アルディ、リドルなど万引き防止を重視した厳しい取り組みを行っているディスカウントストアを除けば、コンビニに至るまで、セルフレジの普及状況は大手小売企業に関しては進んでいるように見えました。

(文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)