2018年11月26日月曜日

アルゼンチンで中南米最大のネット小売企業メルカードリブレを取材した後地方にも


流通マーケティング学科の丸谷です。27回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行っていくのか)を専門分野にしているので、海外に出張に行くことが多く、このブログでもインド、チリ、中国、ペルー、米国の出張の模様をこれまで取り上げてきました。

今回は2017年度より科学研究費を頂いて行っている「ネット小売普及以降の小売国際化現地化戦略モデル構築のための研究」というテーマで、ネット小売が今後小売業の国際展開の在り方にどのように影響を及ぼすのかという研究のために、アルゼンチンを取材したので報告いたします。 


ネット小売の取材になぜアルゼンチンと思う人もいるでしょうが、アルゼンチンからは中南米のネット小売を牽引する企業メルカードリブレ(スペイン語で「自由な市場」を意味する)が輩出されているのです。

ネット企業らしいメルカードリブレの社内の様子
メルカードリブレは1999年にブエノスアイレス出身のマルコス・ガルペリン(Marcos Galperin)氏によって設立されました。創業時彼は後にあのスティーブジョブス氏が今や伝説ともなった講演を行うことになるスタンフォード大学のビジネススクール在学中でした。スタンフォード大学はシリコンバレーの中心地にあり、IT起業家を多く輩出する名門校です。

メルカードリブレは1999年創業当初から積極的に海外に進出し、アルゼンチンだけではなく、ブラジル、メキシコにおいて事業を開始し、翌2000年にはコロンビア、ベネズエラ、チリへも事業を拡大しました。

2001年には世界最大のインターネットオークションサイトを運営するイーベイ社と戦略的提携を締結し、イーベイ社のブラジル支社を買収して基盤を固め、2002年にはブラジルでオンライン取引プラットフォームを展開するLokau.comを買収しました。

当時のブラジルは長期の経済的な不振からようやく復活の兆しを見せ始め、BRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)sという新興国の一角として世界に認知され始めていました。同社の成功は隣国でのブラジル市場での成功によるところが大きいのです。

   表 ラテンアメリカおよびアジア主要国及び日本のネット小売の現状
 (出所)丸谷雄一郎『ウォルマートのグローバル・マーケティング戦略(増補版)』創成社、118頁より。

2003年にはラテンアメリカ発祥の初の電子決済プラットフォームであるメルカード・パーゴ(Mercado Pago)を設立しました。2005年にはウルグアイにも進出しました。
2006年にはラテンアメリカ域内のライバルであったDeRemate.comのブラジル、コロンビア、エクアドル、メキシコ、ペルー、ウルグアイ及びベネズエラの事業を買収しました。

さらに、2006年には中米のコスタリカ、パナマ、カリブ海のドミニカ共和国へと事業を拡大し、2007年にはナスダックにIPOを行い、ラテンアメリカにおけるネット小売のリーダーとしての地位を確立しました。2010年にはポルトガルでも事業を開始しました。

今回のインタビューでは、発展の経緯や現状を伺った上で、今後の方向性についてもいろいろ取材させて頂きました。

メルカードリブレにて取材した際の様子
彼らによれば、現在メルカード・リブレに出店する多くの企業に提供する機能面での強化に注力しているそうです。具体的には、ネット取引及び広告(mercado libre)、フィンテック(mercado pago)、ロジスティックス(mercado envio)、ネットシステムの支援(mercado shops)といったネット小売全般のソリューション事業を行っているそうです。

アルゼンチンのネット小売の地方への普及に関しては、物流を担う運送業界などの労働組合の存在が障害になっており、大都市以外での普及やサービスの改善を難しくしているそうです。このことはアルゼンチンのネット小売関係者がみな語ることであり、労働組合が伝統的に強いアルゼンチンの特徴を如実に示しています。

さらに、地方の現状を確認するために、今回は南米のパリといわれるブエノスアイレスだけではなく、地方都市の実情も取材しました。

特に印象深かったのは、アルゼンチンの地方都市クロリンダでの取材でした。クロリンダはパラグアイとの国境近くの都市です。クロリンダ近くで一番大きな都市フォルモサの空港からチャーターしたタクシーで取材地に向かいましたが、その車窓はひたすら何もない風景が続きました。


フォルモサの空港にて

空港からほとんど何もない車窓の風景


到着したクロリンダはバイクが多く走り、東南アジアの田舎町のようでしたが、私が取材し続けてきたウォルマートが低所得階層向けに展開する倉庫型ディスカウントストアを少しでも用地が安く確保できる町外れに出店していました。


バスターミナルやホテルがある市街地には昔ながらの市場や地元スーパーと家電量販店がムシムンドが営業していました。


の取材では取り残されたネット普及とは程遠い地方の実態と地方にもビジネスチャンスを見つけるいくつかのたくましい企業の存在が確認できました。

(文責:丸谷雄一郎(流通マーケティング学科 教授)






























2018年11月19日月曜日

【学問のミカタ】あなたは予防にお金をかけますか?

2018.11.19

経営学部の本藤です。
高校3年生は、いよいよ追い込み時期ですね。今月3日と4日にも今年度最後のオープンキャンパスが開催されましたが、想像よりも多くの方々が来場してくださり、ありがとうございました。推薦入試を控えた高校3年生が目立ちましたが、推薦入試だろうと一般入試だろうと直前期ですね。
少しずつ秋から冬へと季節が変わってきて、体調を崩しやすい季節になるので、栄養も睡眠時間も確保して、悔いのないように励んでください。


ところで、風邪の予防にしていることはどんなことでしょうか?
帰宅後の手洗い・うがいをしている人は多いかもしれません。
近年では、真夏でもマスクをしている人が増えてきたような気がします。
ビタミンCをとると抵抗力が強まるとか言われてますね。
入浴剤を入れて温浴効果を高めたりする人もいそうです。
インフルエンザの予防接種もこの時期に受ける人が多いですよね。
葛根湯は風邪の初期症状だけではなく予防効果があると聞いたことがあります。


思いつくままに並べてみると、ハンドソープ、うがい薬、マスク、ビタミンサプリ、入浴剤、漢方薬・・・、インフルエンザの予防接種以外はドラッグストアで販売されているものばかりです(ちなみに、アメリカでは薬剤師がインフルエンザの予防接種できます。日本では、医師会が既得権を手放さないので、なかなか難しいようです)。
これまでは「治療」のための薬の需要が中心だったのですが、最近は「予防」の需要が拡大してきています。

これからのドラッグストアが開拓していこうとしているマーケットが、この「予防」市場なのです。


メタボリックシンドロームにならないように防風通聖散などの漢方薬がありますし、ロコモティブシンドロームにならないようにプロテインなどのサプリメントがあります。

よく考えてみると、歯磨き粉や歯ブラシなどのオーラルケアも予防市場ですが、これは既に一般に定着しているマーケットです。これも、最近ではホワイトニング、知覚過敏、歯周病など、虫歯以外の予防にもお金が使われるようになってきています。歯磨き粉や歯ブラシ以外にも、洗口液、液体歯磨、歯間ブラシ、フロスとサブカテゴリーは拡大の一途をたどっています。


これらは、主にパーソナル・ソリューションで、実はプライシング(価格設定)の影響はそれほど大きな商品ではありません。むしろ自分の悩みを解決してくれそうな商品に対しては、価格訴求商品を避ける傾向すら見られます。
少し考えてみてください。どこのブランドか分からない半年くらい使えそうな大容量の歯磨き粉と、白い歯にしてくれそうな高めの歯磨き粉があったら、簡単に価格だけで判断できませんよね?
仮に、一時的に安い商品を購入しても、気になり続けている人が多ければ、次には購入してくれる人も多くなります。
そこがスーパーマーケットとドラッグストアの大きな違いになってきます。やっぱりキャベツは10円でも安い方がいいと考えますし、牛乳や飲み物も同じような傾向が見られます。


そこで、超高齢社会になってきた日本でのチャンスは、生活習慣病の予防市場は無限のチャンスがありますし、無限の需要が眠っているのです。筋肉減少などの問題であるロコモティブシンドローム、肥満などの問題につながるメタボリックシンドロームの他にも、糖尿病、高血圧など様々な生活習慣病などは治療市場でさえ急増していますが、予防市場はケタが違うのです。特に、この予防市場は、ファミリー・ユースではなく、パーソナル・ユースなので、家庭のニーズではなく個々人のニーズによって牽引されます。
だから、その市場を開拓することは、大きな需要創造への取り組みとも言えるのです。

文責:本藤貴康(担当科目:流通論、流通マーケティング演習)
本藤ゼミナールBLOG http://hondo-seminar.blogspot.jp/



【学問のミカタ】
東京経済大学では、各学部で高校生向けに分かり易く専門分野の教員がブログを公開しています。是非、お立ちよりください。

コミュニケーション学部ブログ「カニバリズムについて
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