2024年3月25日月曜日

メキシコ都市部で急成長するハードディスカウンター・ティエンダス3B

流通マーケティング学科の丸谷です。64回目の執筆です。私は「グローバル・マーケティング論」を専門としており、海外でどのようにマーケティングを行うかについて研究しています。年2回ある授業休止期間を利用し、海外現地調査のために出張してきました。このブログでは、米国、インド、中国、チリ、ペルー、ブラジル、ケニア、ガーナ、英国など、多くの国々での出張について取り上げてきました。前回メキシコのコストコ現地調査について取り上げましたが、今回はメキシコでコロナ禍にも成長し続け、202427日にニューヨーク証券取引所にIPOし、注目されるハードディスカウントストアのティエンダス3B(トレス・ベ)について取り上げます。

アメリカで急成長するリドルと外観と店内(リッチモンド店)

ハードディスカウントストアは従来のディスカウントストアよりも低価格で商品を販売する小売業態です。格差が拡大する先進国や未だに低所得階層の比率が高い新興国の双方において成長しています。ドイツ出身のアルディとリドルが代表例です。両社はデロイトトーマツ社による世界小売ランキングでもトップ10に入っており、リドルを世界中に展開するシュバルツ社が第4位、アルディが第9位です(ちなみに、シュバルツより上位企業のトップ3はウォルマート、アマゾン、コストコです)。

メキシコの地方に展開するミ・ボデーガ・アウレラ(カルキニ店)

メキシコでは従来ウォルマートがかなりの地方にまで倉庫型ディスカウントストアであるボデーガを展開し、低価格の恩恵をもたらすと同時に、海外送金の受け取りやネット販売などの受け取りなど、地方のインフラとして定着し、2022年には2,021店舗を展開しています。

ティエンダス3Bの外観 (Río Danubio通り店)

ティエンダス3Bは、トルコ発のハードディスカウントストアチェーンBIMの取締役アンソニー・ハトゥム氏がメキシコで創業しました。BIMはトルコ国内だけではなく、北アフリカにも店舗網を拡大し一定の成功をしています。

メキシコの大手経済誌エルフィナンシエロの2019年のインタビューによれば、ハトゥム氏はメキシコで創業した経緯について、「私は『どこで別のBIMを実現できるのか?』と自問しました。フィリピン、インドネシア、ウクライナ、ペルーも調べたが、メキシコは重要な条件を持っていた」と述べています。彼は2004年にメキシコで創業し、2005年に出店を開始しました。

ティエンダス3Bのメキシコにおける出店地域

同社は前述のウォルマートが展開してきた倉庫型ディスカウントストアであるボデーガが地方出店を住してきたのとは対照的に、メキシコシティとその周辺を中心に店舗網を拡大してきました。メキシコの首都圏であるメキシコシティ大都市圏に店舗網を拡大し、2008年には100店舗を達成し、2012年にはケレタロ州、モレロス州及びプエブラ州、2014年にはトラスカラ州とメキシコシティ大都市圏周辺の諸州へ出店地域を拡大しました。日本でいえば、メキシコシティ大都市圏が東京都+さいたま市、千葉市くらいまで、その後の周辺諸州は関東全域といったイメージです。

2016年にはグアナファト州、2017年ゲレーロ州、ミチョアカン州と首都圏以外の中西部や南部への出店も開始しました。これらの地域は古くからのリゾートアカプルコや近年自動車産業が米墨国境沿いから移転してきた地域であり、静岡、名古屋といった感じの広がりです。

店舗数も地域拡大に合わせて急増し、2013560店舗、2014590店舗、2015615店舗、2016675店舗、2017750店舗となり、2018年には1,000店舗に到達しました。コロナ禍で20191,180店舗から20201,200店舗と若干増加ペースが落ちました。しかし、反動で20211,350店舗、20221390店舗とさらに店舗数を拡大し続けています。

メキシコシティの店舗を今回いくつか現地調査したのですが、その品揃えはかなり工夫されていました。ただ安いプライベートブランドを並べているわけではなく、ペプシ、ネスレ、ケロッグなどグローバル展開するメーカー、メキシコではおなじみのヤクルトや世界的パンメーカーとなりつつあるビンボまでナショナルブランドの商品と自社が独自展開するVaca Blanca MayorelaImpekMilenaBest RaceBurstといったプライベートブランド商品を並列させ、同社のコンセプトである3つのBであるBueno(良質)、Bonito(見た目がよく)、Barato(安い)を達成していました。お客さんを見てもある程度こだわりのある商品はナショナルブランドを、こだわりがない商品はプライベートブランドをといった感じの使い分けがなされていました。

BIMEU加盟によりアウトソーシング先として発展したトルコから周辺の北アフリカに展開し、同社の創業者が当初からメキシコ以外の地域も候補に挙げていたことを考えれば、ティエンダス3Bもメキシコ国内での出店地域拡大に加えて、中米地峡諸国、カリブ海諸国さらには南米に展開する可能性はかなりあるとみられます。 南米に先駆的に展開するハードディスカンターとしては、南米のアルゼンチンやブラジルにはスペイン発祥のヂア(DIA)があげられます。私も展開当初から注目し、アルゼンチンの店舗に関しては拙著で、ブラジルの店舗に関してはこのブログでかつて取り上げたことがあります(https://tkubiz.blogspot.com/2019/03/blog-post_25.htmlを参照)。

2019年に英米で出版されたハードディスカンターの急成長とその影響について取り扱ったRetail DisruptorsKogan Page、未訳)でも、ヂアはアルディ、リドルなどと並んで取り上げられています。ヂア・グループの最高マーケティング担当責任者のホセ・アントニオ・ロンバルディア氏によれば、同社はproximity(店舗の近接性)、Private Brand(プライベートブランド)、Franchiseの頭文字をとって2PFモデルで展開しているそうです。同社の主要なプライベートブランドはヂアという店舗名と同様の名称です。

ティエンダス3Bも店舗数が増加するにつれ近接性は高まってきてはいえますが、すべて直営で多様な名称のプライベートブランドを武器に展開するといった点では異なる戦略を採用しています。今後の成長を考えれば、イケアが南米の展開ではチリ出身の南米におけるリージョナル・リテイラーファラベラと組んだように、進出先での有力パートナーとの連携も選択肢にあるとみられ、同社の今後の海外展開についても注目していきたいです。

(文責:流通マーケティン学科教授 丸谷雄一郎)