2017年12月17日日曜日

ゼミする東経大の集大成-経営学部ゼミ研究報告会

皆さんこんにちは、経営学部教員の柴田高です。
今回は12月9日に開催された経営学部ゼミ研究報告会についてご紹介しましょう。
今年の経営学部ゼミ研究報告会は、12月9日(土)午後、本学国分寺キャンパスの1号館の6つの教室を会場として50以上の発表が行われました。柴田ゼミの学生も3つのグループに分かれて、本年度のゼミ活動を通じで調査・研究してきた成果の発表を行いました。いわば「ゼミする東経大」の集大成のようなものです。



東京経済大学の制度では、経営学部と経済学部は「相互乗り入れ」していて、経営学部の学生が経済学部の教員のゼミを履修したり、経済学部の学生が経営学部の教員のゼミを履修することもできます。また、両学部の学生は、全学共通教育センターのゼミを履修することもできますし、さらに時間帯が重ならなければ、経済・経営の専門科目の担当の教員のゼミと全学共通教育センターの教員のゼミの両方を履修することも可能です。12月9日には、経済学部や全学共通教育センターのゼミも研究報告会を同時開催して、多様な分野の発表をいろいろ聞いて回ることも可能としていました。昨年までは、私のゼミにも全学共通教育センターの先生のゼミと両方履修している学生も在籍していましたので、そのような場合はゼミ研究報告会で「自分の出番」が2回あることになります。
経済学部のゼミ研究報告会の様子はこちら
全学共通教育センターのゼミ研究報告会の様子はこちらを参照してください。

振り返ってみると、複数のゼミで開催した研究報告会は、2001年に加藤みどり先生のゼミと柴田ゼミで行った合同発表会がきっかけになっていると思います。その時は、ほんのささやかな試みでしたが、2003年には、経営学科の加藤先生や私のゼミだけでなく、流通マーケティング学科の木村立夫先生(現・名誉教授)、岸志津江先生、田島博和先生のゼミも一緒になって開催し、旧5号館の3つの教室を会場として、来場者が会場の間を往来して、さまざまな発表を聞いて回れるという、現在の研究報告会の原型ができあがりました。

現在では、4つの学部と全学共通教育センターのすべてでゼミ研究報告会が行われており、ゼミ生にとっても報告会で大勢の聴衆の前で発表することが、一つの到達目標になっているようです。私たちが2002年度から経営学部の中で始めた授業公開の試みとともに、「社会に開かれた大学」として、「学生が大学でどのような学びを実践しているか」を世の中に広く伝える機会になっていることと思います。そのため、来場者を見ていると、ゼミ生だけでなく、ゼミ生OB・OGに加え、ご父母など保護者の方、受験希望の高校生やそのご父母の方、高校の進路指導の先生方など多岐にわたっているようです。

私たちの世代の人間から見ると、大学のゼミ活動こそが、「学生生活の華」であるというのが常識だったかと思います。ゼミ活動は、少人数で行われ、教員と学生がきわめて近い関係であり、むしろ学生が中心となって主体的に活動することが期待されており、教員はその助言役、道案内役を務めるにすぎないと思っているわけです。だからこそゼミは学生がもっとも成長する場であり、ゼミでの活動を通してプレゼンテーション能力やリーダーシップが培われます。就職活動では、入社希望の学生に対して人事部の担当者が必ず「ゼミではどのような活動をしてきましたか?」と聞くものですが、その答えを聞いて「この学生は主体性があるかな?プレゼンテーション能力があるかな?、リーダーシップがあるな?」という点を判断しているはずです。また、経営学部ゼミ研究報告会では、写真をご覧になれば分かる通り、ほんのささやかな試みであった時代からずっと、壇上で発表する学生の皆さんにスーツの着用を義務付けています。「人前で自分たちの成果を発表する」というフォーマルな場であれば、それにふさわしい、きちんとした格好で発表を行ってほしい、という思いからです。最近では入学式の段階からスーツ姿の新入生が非常に多く、またスーツは3年生の終わり頃から始まる就職活動の必需品でもありますので、この際ぜひ着慣れておいてほしいと思っています。「ゼミとは大人になる場である。」わけです。その点、ぜひご理解ください。

(文責:経営学部教員 柴田高)

2017年12月11日月曜日

小売店に入ったら、何を目指しますか?

2017.12.11

経営学部の本藤です。
寒くなってきましたね・・・( ;´Д`)
昨日(12月10日)に、配偶者と一緒にいつものスーパーマーケットに行ってきたのですが、いつも以上にお客さんが入っていて盛況でした。
小売業にとっての12月は、文字通りの「書き入れ時」です。購買データからも間違いなく12月が最も売上金額も来店客数もピークになります。
これはスーパーマーケットでもドラッグストアでも同様の傾向が見られます。


ドラッグストアのPOSデータを見てみると、年末に特に売れているものは、「飲酒とおつまみ」類が最上位にあり、年末年始のお餅や和惣菜といった「年末年始の御馳走」系がつづいて、それから使い捨て紙クリーナーなどの「大掃除」関連商品が売れます。
ドラッグストアで年末年始の惣菜が買われているんですから、スーパーマーケットとドラッグストアの競争は熾烈を極めるはずですね。

一般的に、食品カテゴリーが好調なドラッグストアは業績も安定しています。これは食品カテゴリーは来店頻度が多くなり、結果として店舗と顧客のタッチポイントが増えることが理由として挙げられます。とりあえず店舗に行けば、統計的には「予定外のもの」を75%も購入してしまうという購買行動研究について様々な報告が発表されています。したがって、なにはともあれ来店させることが戦略的に重要になっています。ですから、「大掃除用品を買いにドラッグストアに行ったけど、お惣菜もついでに買っちゃった」というパターンは、ドラッグストアが求める展開になります。


ただし、お店に入って、目的の「大掃除用品」を買いに、日用品売場に直行して、必要なものを買ったら、すぐにレジに直帰されてしまうと、店舗の目論見ははずれてしまいます。

そこで、店舗では、売場を戦略的にレイアウトしています。
最初は、エントランスから正面の突き当りに仕掛ける「第1マグネット」と呼ばれる売場です。これによってエントランスから、まずは突き当りまで来店客を誘導します。
そして、「第2マグネットと呼ばれる売場が、そこから横に曲がった突き当りに仕掛けます。ここまで引き入れられれば、来店客はエントランスから最も奥の売場まで誘導されたことになりますから、そこに行くまでに店内の売場全体で必要なものを想起しやすくなります。

先週、見学に行ったサンキュードラッグ中井店は、6年前くらいに行った時に、第1マグネットが「シャンプー」売場でした。そこから第2マグネットが「食品」だったのですが、大きく様変わりしていました。
何と第1マグネットに「ビール」売場を持ってきていました。これは、素人には思いつかないマグネットです。でも、このレイアウト変更によって、売上が明らかに伸びた(来店頻度前年比108%、買上点数前年比105%)という話を聞いて、やってみないと分からないことが多いとつくづく感じました。そもそも好調だった店舗で、更に上乗せできることがあるんですよね。

このエントランスの季節棚の突き当りが「ビール」!

ビジネス全般に言えることですが、このような最適解を模索していく上で、常識を超えた仮説構築が、革新的なアプローチを発掘することがあります。この仮説構築のためにデータは検証ツールとして重要な役割を果たしています。


文責:本藤貴康(流通論、流通マーケティング入門、地域インターンシップ担当)
本藤ゼミナールBLOG http://hondo-seminar.blogspot.jp/





2017年12月4日月曜日

丸山珈琲本店に追加取材


流通マーケティング学科の丸谷です。21回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行っていくのか)を専門分野にしているのですが、海外取材を行ううちに、海外で生産した商品を日本へ輸入し提供する企業に関しても研究するようになりました。


コーヒーもそうした商品の1つです。18回目のブログで紹介した2013年に明石書店から出版された『ドミニカ共和国を知るための60章』を執筆する際の取材では、ドミニカ共和国におけるフェアトレードコーヒーに関して、輸入を行うアタベイコーヒー(http://www.atabey.jp/)に全面協力を頂き、生産の現場を取材する機会も得て、以降コーヒーに関しては機会を見て取材を続けています。

                    ドミニカ共和国アタベイコーヒー取材時の写真

2016年に同文舘出版より出版された『小売&サービス業のフォーマットデザイン』において「カフェ業界」について執筆する機会を得て、スターバックスコーヒー、ブルーボトルコーヒーという新旧黒船2社と、日本における新興勢力である丸山珈琲について取材して以降、カフェ業界も継続的に研究する分野の1つとなりました。


前置きが少し長くなりましたが、今回は軽井沢の丸山珈琲本店の追加取材を行ったので、そのことについて書きたいと思います。

丸山珈琲の創業者丸山健太郎氏は、1991年に自家焙煎を始めるとストイックに「コーヒー道」に邁進していった 。おいしいコーヒーは「豆の選択、焙煎、抽出、提供」の4段階を経て提供されるが、当初焙煎のみを一途に突き詰めていたのです。
20014月にそんな丸山氏に転機が訪れます。彼はブラジルのスペシャリティコーヒー協会が主催するパーティーに参加し、そこで焙煎を究めるだけではなく、豆の選択の重要性に気が付きます。このパーティーにおいて豆の選択を突き詰めるには、コンテナ買いできる販売規模を確保する必要があることを認識しました。そして、パーティー後の帰国前にスターバックスの源流となったピーツコーヒーをマイスター・ロースターのジム・レイノルズ氏の案内で訪問した。日本からは時代が早すぎて撤退したビーツコーヒーは、カリフォルニア州バークレーで規模と質の両立を果たしており、規模の必要性への認識が確信に代わり、飛行機の中で事業計画書を書き始めたそうである。

帰国後上質のスペシャリティコーヒー を販売するために、100グラム500円で販売し少量を大切に飲んでもらうモデルから、500グラム1500円で日常的に飲んでもらうモデルへと戦略を転換した そのために、スペシャリティコーヒーの魅力を普及していくために振る舞い、全国でミニコーヒーセミナーを開催し、このセミナーは現在丸山珈琲の一事業となり、2011年には東京セミナールームとなっている。
              コーヒーの品質による分類
                  
2002年にはブラジルのカップ・オブ・エクセレンス(以下COE)「アグア・リンパ」を当時の史上最高価格で落札し、その後も世界のCOE豆の落札を続けていった。丸山は2002年のブラジルCOEの当時最高価格での入札を契機に日本におけるCOE伝道者となり、各国のCOE豆の買い付けを行いつつ、スペシャリティコーヒーの普及を進めている。丸山自身は年間150日スペシャリティコーヒーの産地を飛び回り現地情報を収集し、丸山珈琲倶楽部という独自のコミュニティの構築や東京セミナーハウス設置などにより、情報発信を行っている。ACEの理事や一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会の副会長兼広報委員会委員長としても普及活動に従事している
また、同社はおいしいコーヒーの条件である抽出、提供においてもレベルを向上させるために、国際的に通用する人材の獲得や育成にも注力しており、2014年には小諸店の井崎英典バリスタがアジア人初バリスタ世界チャンピオンとなった  。丸山珈琲は日本の喫茶店文化を批判的に検討し、COEに代表される究極の「豆の選択」 、日本の喫茶店文化を継承した高水準の「焙煎」によってスペシャリティコーヒーの伝道師となりつつある
今回軽井沢での丸山珈琲本店を訪れる機会を得た。私はこれまで関東を中心に取材で10店舗のうち半数の5店舗を訪れてきた。しかし、趣のあるクラシックな本店を訪れて、洗練された西麻布、尾山台、鎌倉などのお店とは異なる軽井沢ならではの落ち着いた空間、コーヒー豆とともに重要な原料である水の素晴らしさと、器へのこだわりも感じられた。

               趣あるクラシックな本店
丸山珈琲のブレンド・クラシック1991とチョコレートケーキ

開店当初から出されているチョコレートケーキや本店限定の開店当初のブレンドを再現したブレンド・クラシックは、西麻布店で出される碑文谷のケーキ店ジュン・ウジタや蘆花公園のケーキ店Relationのケーキや日々変わるスペシャリティコーヒーの数々と比べると、今味わうと個人的には好みではないが、同社の変化を実感しイメージできる有意義な取材となった。

         西麻布店にて(COEコーヒーとジュン・ウジタのケーキ)

本店は軽井沢らしい緑に囲まれた空間であり、軽井沢気分を満喫するといった意味でも軽井沢に行かれる際には、訪れてみてはいかがだろうか?
 (文責:丸谷雄一郎(流通マーケティング学科 教授)