2024年5月13日月曜日

東経大と私


2024年度、東京経済大学経営学部に着任いたしました、鴇田彩夏(ときたさやか)です。
本学では、広告論やマーケティング論を担当しています。

東京経済大学では教員1年目の私ですが、実は東経大のことは以前からとてもよく知っていました。
なぜかというと……私が東京経済大学の卒業生だからです!

20xx年度卒業生として東経大を出てから、n年ぶりに母校に帰ってくることができました。笑
今日は自己紹介も兼ねて、私の東経大での4年間について書かせていただこうと思います。




なぜ経営学を選んだのか、なぜ東京経済大学を選んだのか


私が経営学部に入った理由は、「祖父と父が経営者だったから」「文系だけど数学が得意だったから」です。
会社を起こした祖父と現在ではその会社を継いだ父が毎日自宅近くで働くのを見たり、彼らの仕事の愚痴を聞いていたせいで、幼い頃から「経営」というものに興味がありました。
また、かろうじて数学の成績が良かったことから、なんとなく文系で数学を使いそうな「経営学部」に入ろう!と色々な大学を受験し、結果として東京経済大学経営学部流通マーケティング学科(当時は1年次から学科が決まっていました)に入学したのです。

また、マーケティング学科を選んだ理由は「とにかく楽しそう!」だったから。
元々、製品のパッケージや広告のデザインなどに興味があり、なぜこの企業はこの広告を作ったんだろう?このパッケージの色にはどんな意味があるんだろう?という疑問を持っていた私にとって、マーケティングという分野はとてもキラキラして見えていました。

余談ですが、実は、私が東京経済大学を初めて訪れたのは高校3年生の3月、後期入試の当日でした。
(大学受験の苦戦ぶりがわかるかと思います。)
残念な結果ばかりで落ち込む私に、1つ下の妹が「東京経済大学がいいらしいよ」と言ってくれたため、そのまま東経大を受験しました。笑
合格をもらえた時は大泣きしたのを覚えています。




経営学・マーケティングを学んでみて

東京経済大学での4年間で、経営学やマーケティングが私たちにとってとても身近な学問であるということを身を持って知りました。
大学の講義で習ったことや先生方が話してくれる多くのことが、実は私たち消費者の近くにあります。
「あ、この企業、この間の講義で話に出てたやつだ!」「この広告、授業で習った感情型訴求をしているかも!」など、学んだことを常に実生活で復習できるのが、経営学やマーケティングという学問でした。
また、経営学やマーケティングの知識をつけることで、「この会社がこの広告を出す理由は…」「この新製品の価格設定の理由は…」など、企業の活動について自分なりに考えて答えを出せるようになり、普段の生活の解像度が上がったと感じました。

加えて、特にマーケティングという分野が企業活動だけではなく、人間関係や就職活動などにも応用できるということを知ったことで、学ぶことが楽しい!と思えるように。
今では、就職活動や恋愛に関するトピックをマーケティングで解説するような書籍なども出てきています。
「大学教授がマッチングアプリに挑戦してみたら、経営学から経済学、マーケティングまで学べた件について(著:高橋勅徳)」は、経営学・経済学・マーケティングの知識をおもしろく学べ、その応用の仕方まで説明した1冊です。

大学で学んだことは社会に出て役に立たない、なんて言う方もいらっしゃいますが、(その人が活かそうと思えば)大学で学んだことの多くは私たちの生活に色々な気づきを与えてくれ、よりよい選択・活動をするためのツールになってくれるのです。
人間関係に悩むことの多かった私は、マーケティングを学んで得た知識をコミュニケーションに活かすようになるのですが…長くなってしまうので、割愛します。笑




なぜ大学院進学を決めたのか、なぜ大学の先生を志したのか

「トキティス(当時のあだ名)、大学院いけば?」


大学院に入るきっかけは、3年次に入ったゼミを担当してくださっていた森岡耕作先生の一言(↑)でした。

普通に就活をしていた当時の私にとって、「大学院進学」は今まで考えたこともない、思ってもいなかった選択肢。なんとなーく、大学院のイメージはあったものの、マーケティング研究を続けるくらいの認識しかありませんでした。
しかし、時間にして3秒くらいでしょうか?
「なんか楽しそう!!!」と思った私はすぐに両親に電話し「私、大学院行くから」と伝えていたのでした。

このように即決できた理由は、ゼミ活動をしている中で「研究」というものが非常に身近になっていたからです。
「卒論を書くための研究」ではない、「研究」の本質(のようなもの)を活動の中で学んでいたため、その世界に飛び込むことをすぐ決められました。
東経大には、それはもう多くのゼミがあります。そして、それぞれのゼミが全く違う活動をしていて、さまざまなゼミのカラーがあります。きっと、皆さんにピッタリのカラーのゼミもあるはずです。
企業とコラボして製品開発をしたり、海外に行って現地でマーケティングを学べたり、研究論文を書いて大会に出場したり…。
大学でのゼミ活動については、オープンキャンパスでも知ることができますし、X(旧Twitter)やinstgramを開設しているゼミもありますので、ぜひ覗いてみてください!

また、大学院進学を決めてから大学教員を志すようになるのですが、それは東京経済大学の先生方の影響が大きかったと思います。
私がイメージしていた大学の先生は「専門的な知識を持っていて・威厳があってちょっと怖い・高校の先生とは違い、学生とあまり話さない」、そんな人物でした。
このイメージを最初に変えてくださったのは、大学1年生の時の経営学入門を担当していた長岡克行先生(2013年にご退職しています)です。
長岡先生の講義は毎回やわらかい口調で進み、質問に行くと丁寧に聞いて詳しく答えてくれたり、授業外ですれ違った際に挨拶を返してくれたり……私の持っていた大学の先生像を変えてくださったのが長岡先生でした。
他にもたくさんの魅力ある先生方が東経大にいらっしゃいますが、全員分書くとすごい量になってしまいそうなので、ここまでに。



おわりに

私が自信を持って1つ言えることは、東京経済大学とそこでの学び、そこで出会った人々がいなければ今の私はなかったということです。
おそらく、東経大に進学していなければ、大学院にも進学していなかったでしょう。今こうして、母校のブログにつらつらと自己紹介を書くこともなかったはず…。
そのため、私と同じように「東経大を選んでよかった〜」とたくさんの学生に思ってもらう!「大学での知識は社会で役に立たなかった」なんて、自分の後輩に言わせないようにする!というのが今の目標です。

私の自己紹介が高校生の皆さんの役に立つかはわかりませんが、東経大の卒業生の1人は今こんなことになっているぞ、こんな目標を持って先生をしてるぞ、「楽しそう!!」という直感で意思決定することも大切かもよ、ということを知っていただけたら嬉しいです。


(文責:流通マーケティング学科 鴇田彩夏)

2024年5月7日火曜日

経営学と日常と

 今回のブログは,本年度,東京経済大学経営学部に着任したての新米教員 寺本直城(てらもとなおき)が担当します。

本学では主に経営戦略論を担当しています。

新米教員とはいっても,大学の教員になって今年で10年目なので,正直あんまり若くないですし,フレッシュ感はありません。アラフォーのおじさんです。


で,着任早々にブログの担当を言い渡されまして,いやいや東京経済大学のこと,まだあんまり知らないし,などと思いながら…。

まあ,東京経済大学のいいところなんかは,ほかの先輩教員たちにお任せして,とりあえず自己紹介でも,と思い立ってみました。しかしながらですよ,アラフォーのおじさんの自己紹介に興味を持ってくれる人なんて,そうそういないような気もするわけで…。今回は,経営学の面白い(と私が勝手に思っている)ところを,私の経験談を交えながら書いてみる,そんな記事にしてみようかと思います。そうすれば,なんとなく,私という人間についても語れるし,経営学部の面白いところも語れますしね。うん一石二鳥。



「経営」との出会い,そして「経営学」との出会い

「経営学の研究をやっている」「大学で経営学を教えている」と言うと,かなりの頻度で「自分で起業しないんですか?」とか「自分で会社経営しないんですか?」と聞かれます。

高校生だった寺本青年は,ちゃんと会社の経営者になるつもりでいました。起業も考えてみましたし,いやいや大企業に入って出世していつかは経営者になってやろうというのも考えてみましたし,実家が自営業だったのでそこを継ぐのはどうだろか?とも考えてみました。この青年が高校生だった当時,「カリスマ経営者」という言葉が流行し,「カリスマ経営者」と呼ばれる人々が一世を風靡していました。例えば,楽天の三木谷社長や,ソフトバンクの孫社長などは今でもおなじみでしょうか。ほかにも,当時はライブドアの堀江社長という方もカリスマ経営者なんて呼ばれていましたね(遠い目)。


そんな華々しい人々をマスコミを通してみて,自分もあんな存在になれるのだろうか?という憧れがあり,そんな存在になるためには,何をしなければならないのか?ああ,会社を経営すればよいのか!というあまりにも浅薄な高校生らしい考えから,「経営」という概念に出会いました。そして,同時に,実家が自営業であったことから,「経営」という言葉をリアルに考えるようにもなりました。ならば,大学で勉強すべきは経営学だろうと,青年が大学で専攻する分野が見定まった瞬間でした。


そして,大学に入学し,青年は「経営学」に出会います。さて,ここで困ったことが起きます。経営学が思ってたんと全然違うのです。青年はもっと技術的なこと,つまり「会社を作るにはどうしたらいいか?」とか「成功する経営手法」みたいなものが学べると思っていたのに…。実際の経営学の講義は,「そもそも経営とはどのような概念か?」とか「経営理論がどのように発展してきたのか?」とか,そんなんばっかりだったのです。思ってたんと違うのもあるし,わけわからんわけです。まあ,浅はかな高校生・大学生の考えそうなことですね。

専門を選ぶ(=ゼミを選ぶ)段になって,経営組織論の専門とする先生のゼミを選びました。会社に就職するにしても,自分で会社を作るにしても,組織については勉強しといたほうがいいだろうと考えたからです。また,そこでも,わけがわからないことの連続でした。


こんな感じで,青年は「経営学」に出会ったわけですが,つまり経営学とのファーストコンタクトの印象は「わけわからん学問」だったわけです。しかし,これが青年の将来を変えてしまいました。「わけわからん」と思い続け,何とかわかろうと勉強と研究を続けていたら,いつのまにか大学院まで出て,研究者になっていたのでした。めでたしめでたし?



大学生活と経営

上の部分を読むとさぞや真面目な学生であったと勘違いされそうなので,ちゃんと書いておくと,この青年は勉強や研究にものすごく真面目というわけではありませんでした。青年の大学生活は,部活とアルバイトとちょっと勉強・研究くらいで占められていました。全体を10とすると,部活4,バイト4,勉強/研究2 くらいな感じでしょうか。とはいっても,単位を落としたことはほとんどありませんし,その意味で,部活やアルバイトにかまけて勉強しないというほど不真面目でもなかったのですが…。青年の大学生活の大半を占めていた部活動やバイトでの出来事も,また経営学(経営戦略論や経営組織論)をしっかりと研究しようと思うようになった契機になりました。


まず,部活動から。大学の部活動は,少なくとも私が所属していたところは,日々の練習から,後輩への指導までかなり学生の主体性に任されていました。つまり,クラブという組織の運営の多くを学生が主導していたといえます。しかし,まあうまくいかない。誰かが遅刻すると,ただでさえ厳しい練習がさらに厳しくなるというのに,それでも遅刻してくる常習犯,なかなか集まらない新入部員,集まってもすぐ辞めていく新入部員,たくさん練習しているのに結果がでない大会 などなどなどなど。これらは全部,組織運営の方法,つまり経営組織の在り方や経営戦略の作り方がおかしいが故に起こる諸問題であったのです。そんなことを考えながら,あー経営(学)って面白いなーとなんとなく考えていたそんな学生時代でした。


次にバイト。青年は塾講師のバイトをしていました。教材は塾から配布されるし,生徒への勉強の教え方もある程度教えてもらえるので,自分自身そんなに問題のある先生ではなかったと勝手に思っています。ただ,不思議に思っていたことがありました。講義が終わると,報告書を書かないといけないのですが,それが先生によって完成にかかる時間も質も違いすぎるということでした。授業終了後,早々に書き終わって,終わりのミーティングを待っている先生もいれば,いつまでも報告書が書きあがらない先生もいました。ついには,終わりのミーティングを待っている先生の圧に負けて,塾長が報告書を書き終わってない先生に一旦作業を中断させミーティングをする,なんてことが日常茶飯事でした。問題はこの報告書。非常にわかりやすい報告書を書いて,引継ぎを潤滑にできる先生もいれば,要領を得ないものを書いて,周りを困らせる先生もいたのです。よくよく考えてみれば,授業の仕方は研修などで教えてもらっても,報告書の書き方なんてほとんど教えてもらったことがなかったのです。そこは先生たちの個人的な経験と知識とちょっとした才能によって左右される代物でした。授業のやり方も,塾にとっては大切ですが,報告書の書き方も,塾の経営には大切なはずで,なんでこれが経営上重要な問題なのに無視されているんだろうと,ずーっと腑に落ちないまま,結局なにもいいださずやめてしまいました。



この二つの話,もしかしたら,ん?と思う方もいらっしゃるかもしれません。経営や経営学という言葉はどうしても企業に限定されるもののように勘違いされている場合が多いのです。が,実はそんなことはなく,日常における組織の運営や生活にも関係する学問分野であるともいえるのです。私たちの生活やこの現代社会は,企業ふくめ多くの組織によって成り立っているのであり,この組織の仕組みを理解することが私たちの生活をよりよいものにするためには非常に役に立ちます。別に,企業や起業に興味がなくても,社会の仕組みを知って,自分の人生をよりよいものにしたいとなんとなく思っている方には,是非,「経営学を学ぶ」という選択肢を検討してもらえると嬉しいなあと思います。


終わりに

まあ,まだ書きたいことはたくさんあるのですが,ここで全部書いてしまうと,今後ネタ切れを起こしそうなので(というメタい理由から)今回はここまでにしたいと思います。進路に迷っている高校生や,大学生活にまよっている学生に,ちょっとでも参考になれば幸いです。

そして,こんなことを考えながら生きてきたのが,今回のブログ執筆の担当者 寺本直城という人間でした。

以後,お見知りおきをー。


文責:寺本直城