2019年3月25日月曜日

ブラジルサンパウロの目抜き通り周辺に乱立するコンビニ事情


流通マーケティング学科の丸谷です。29回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、海外に出張に行くことが多く、このブログでも米国、インド、中国、チリ、ペルーの出張の模様を取り上げてきました。

新興国のネット小売というテーマで文部科学省から2017年度から頂いている科学研究費による研究の関連取材で、ブラジルへ調査に行ったので、その内容の一部を紹介します。科学研究費での取材テーマはネット小売ですが(こちらに関しては後日公開予定)、ブラジルでも都市部を中心に、ネット小売は成長していますが、それと同時に利便性が高い近代的店舗を求めるニーズも着実に高まってきています。こうした状況はネットは同時ありませんでしたが、1970年代にコンビニが都市部で成長してきた状況に似ています。

ブラジルはBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)と呼ばれる5大新興国の1つであり、広大な国土に眠る多くの資源やそこに住む多くの人口ゆえに世界から常に注目される国です。人口の多さだけではなく、その多様性にも特徴があります。三角貿易(旧宗主国ポルトガル、ポルトガルが大航海時代先駆的に進出したアフリカの旧植民地、南米の唯一の植民地ブラジルをの間での貿易)によって、アフリカから多くの黒人が奴隷として輸出されました。

丸谷雄一郎『ウォルマートのグローバル・マーケティング戦略(増補版)』創成社、2018年より。
奴隷制度廃止後も、広大な国土を開拓する労働力として多くの人々が移民としてわたってきました。その中でも今回の取材地サンパウロには、ブラジルに150万人以上いるといわれる日系人の多くが住んでおり、特にリベルタージの東洋人街は世界最大の日系コミュニティを育んできた場所です。なお、その歴史に関しては、リベルタージの南で、下記の日系パレスから徒歩5分圏内に位置するサンパウロ日系移民資料館で詳しく見ることができます(映像や当時の状況がわかる展示物を用い、分かり易く日系移民の歴史を知ることができる上、図書室などもありおすすめのスポットです)。

ブラジル日系移民資料館の8階展示室前より
若干テーマから外れますが、リベルタージの日系人の皆さんは高齢化し、日本からの駐在員の多くはビジネス街のパウリスタ大通り近くに住むようになっていますが、どこか昔の沖縄の国際通りのような南国の古めかしい街並みを残すこの場所に魅力を感じ、私は定宿をリベルタージのランドマークの1つともいえる日系パレスホテルにしています。

少しレトロな日系パレスの外観
本論に話を戻しましょう。ブラジルの小売産業では、ネット小売の台頭とならんで、都市部での近代的な小型店舗の増加が注目されています(詳細は拙著『ウォルマートのグローバル・マーケティング戦略(増補版)、創成社、2018年)第11章に譲ります)。

ブラジルの小売産業を牽引してきた外資3社(フランス資本のカルフールとカジノと米国資本のウォルマート)を中心に、南米に勢力を拡大するハードディスカウンターヂアや日系人が営むニッチ企業ヒロタフーズも含めて勢力争いが行われています。特にサンパウロ中心部のパウリスタ大通り周辺では争いは激しく、数百メートルの中にカルフールが展開するカルフールエクスプレス、カジノ傘下のGPAグループが展開するミヌト・ポンジアスーカル、ヂア、ヒロタ・フーズが乱立しています。

パウリスタ大通り周辺の小型店舗乱立の様子
東京経済大学の近くにでもミニストップとセブンイレブンが近くにありますが、フランス資本の2強に関しては、カジノ系のミヌトが若干上の階層を狙っている感じがありますが、かなり標的もかぶっています。フランス系の特徴は店頭近くに野菜と果物専用のリン列棚を設置していることです。

落ち着いたカラーリングのカジノ系のミヌト
オレンジが少しビビットなカルフール・エクスプレス
上記の2強に対して、ヂアは世界的にはアルディとリドルという2強が有名なハードディスカウントストアが小型化したタイプであり、日本で似ているのはローソンストア100という生鮮も扱う100均に近い品揃えです。

残りのヒロタフーズは1972年に創業したファミリー企業であり、ヒロタ・フーズはファミリーマートに無印良品がおいてあったように、ブラジルでも店舗拡大を図っているダイソーから商品提供を受けると同時に、日本風おにぎりや弁当類やブラジルのパン類を豊富に取り揃え、店頭にイートインスペースを設けるなど工夫を行うことで独自の位置付けを狙っています。

ヒロタ・フーズ
近代的小型店舗の普及はネット小売の普及が急激に進む中でアルゼンチンのブエノスアイレスやチリのサンティアゴなど南米のその他の大都市でも同時に進んでいると現象であり、南米最大のビジネス街での風景を今回は具体的に報告してみました。皆さんも発展途上国に行く機会があればぜひ気をつけて街中を散策してほしい。
(文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)