2016年12月19日月曜日

【学問のミカタ】ノーベル賞のプロモーション効果

21016.12.19

経営学部の本藤です。
今月の【学問のミカタ】の共通テーマは「ノーベル賞」。
アルフレッド・ノーベルは、言わずと知れたダイナマイトに代表される様々な爆薬を発明して、それによって莫大な資産を残した発明家でもあり、科学者でもあります。
ノーベルは、多くの人から批判され、きっと科学者としての探求心から研究開発した爆薬が戦争における人命を奪う事態に至らしめたことに胸を痛めていたのだと思います。
彼の遺言にしたがって、人類に貢献した世界中の人々にノーベル賞が贈られるようになりました。
そう考えると、ノーベル賞で最も重要な賞はノーベル平和賞なのかもしれません。


今年のノーベル賞受賞者で最も話題を集めたのが文学賞受賞のボブ・ディランですね。(※ずっと僕は「ボブ・デュラン」だと間違えて記憶していました・・・)
日本人の文学賞受賞者川端康成は、たしかに(日本語として)美しい情景描写が評価されたことは分かるのですが、大江健三郎は小難しい日本語でピンときませんでした(ただ、どうやら外国語に訳しやすい文体だったとか・・・)。これに対して、ボブ・ディランの歌詞も小難しい表現のような印象ではあるのですが、平和を求める気持ちや反体制的マインドに満ち溢れているところが評価されたようです。


もはや世界の潮流としての音楽としては忘れ去られていた感のあるボブ・ディランの歌が、再び巷に流れるようになり、ここに来てヒットチャートの上位にランクインしてくることを考えると、ノーベル賞のプロモーション効果は凄いと再認識しました。


これは、マーケティング的に考えると、リブランディングですね。あるいはリポジショニングと言えるのかもしれません。本人の音楽が変わったわけでもなければ、あらたに新曲を出したわけでもないのですが、オーソライズされた結果、人々の中にあるボブ・ディランのポジションが設定し直されたんですよね。
音楽界に格というものがあるのかどうか分かりませんが、ボブ・ディランの音楽が、この受賞によって普遍的なポジションに引き上げられたわけで、そのマーケティング効果は凄まじかったと言えそうです。


このリポジショニングというのは、僕が尊敬するマーケターのひとりジャック・トラウトによって提唱されたアプローチですが、ターゲット・セグメントを変えたり、プロモーション・メッセージを変えたりして、顧客の頭の中にあるブランドの序列を描き替えることを言います。
今回のボブ・ディランの音楽を聴く主なセグメントは、おそらく彼の年齢を考えるとシニア層だったはずですが、世界的権威であるノーベル賞受賞をきっかけとして、これまで彼の音楽を聴いたことのなかったミドル層以下を獲得したことで再び注目されたということになりそうです。



文責:本藤貴康(流通マーケティング入門、流通論、地域インターンシップ担当)
本藤ゼミナールBLOG http://hondo-seminar.blogspot.jp/


【学問のミカタ】
他学部やセンターからも、同じ「ノーベル賞」をテーマとしたブログがアップされています。
高校生の皆さんは、他学部の【学問のミカタ】に是非ともお立ち寄りください。

・経済学部ブログ : 「取引費用とノーベル経済学賞
・コミュニケーション学部ブログ : 「ディランのノーベル賞騒動で思ったこと
・現代法学部ブログ : 「奥山ゼミの北欧ゼミ研修
・センターブログ : 「日本人がノーベル賞を受賞してよかった!