流通マーケティング学科の丸谷です。56回目の執筆です。私はグローバル・マーケティングを専門として研究を行ってきました。私は世界3位の小売売上高を誇る企業であるコストコから商品を仕入れ販売するコストコ商品再販店に注目し調査しています。
コストコ商品再販店はコロナ禍で急拡大し、既にコストコが出店済みの東京都や大阪府といった大都市から未出店県であることにビジネスチャンスを見出した長崎、佐賀といった地方にまで急拡大しており、2023年1月30日に公開したブログでは宮城の塩釜水産物仲卸市場内の店舗を取り上げました。
前回はコストコ商品の再販を主な事業としている店舗を取り上げましたが、今回は自動車販売店にコストコ商品販売店を併設した広島市のアルプス・コーポレーションのセレクトショップと、コストコ商品の仕入れを一定程度行いつつも、その他の商品も同時に販売している店舗である和歌山市のフレアマーケット(fleamarket)について取り上げます。
アルプス・コーポレーション(Instagram – alps corp. - アルプスコーポレーション)が運営するコストコ商品再販店(セレクトショップ)はコストコ広島倉庫店(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島に隣接)から近い広島市中心部と広島市郊外(広島修道大学や広島市立大学が立地)を結ぶ広島高速4号線の出口である広島ジャンクションからすぐのところに立地しています。東京でいえば東京都立大学の周辺に近い感じです。
私は広島市中心部からバスに乗って取材に出向いたが、広島高速4号線は山の中をとにかく突っ切るようになっており、自動車で行き来する分には便利だが、気軽に行けるかという少し不便な立地であり、都市郊外の顧客ニーズに対応したといえるかもしれない。
アルプス・コーポレーションの外観(自動車販売店にコストコ商品再販店を併設) |
冷蔵品を1個単位で小分け販売 |
店舗内で印象的だったのは1個単位での小分け販売でした。上記写真のように、冷蔵品は家庭用冷蔵庫をうまく用い、必要な場合には顧客自身が明けて取り出す方法で販売していました。
フレアマーケットの外観 |
2店舗目に紹介するフレアマーケットは、JR和歌山駅からバスで11分さらに徒歩10分(約800メートル)の場所に立地し、公共交通機関を使用してのアクセスは広島の店舗に比べても決して良いとは言えない場所です。しかし、幹線道路沿いに立地しており、仕入れ場所となっているコストコ和泉倉庫店からは約40キロの場所に立地しています。
コストコ商品を相対的に小規模な店舗で取り扱う場合、宮城の店舗も、広島の店舗も当てはまるのですが、会員となって頻繁に通うのは大変ですが、仕入れ先として考えれば遠くはないというのが出店場所として成立しうる条件となっているようです。フレアマーケットはこの条件に当てはまっており、自動車での移動距離が40キロといのは絶妙の距離ということになります。
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ディナーロール1個20円で販売 |
お店は姉妹で運営されており、コストコ商品の定番商品のディナーロール、マフィンなどの他に、アパレルや関西のコレアンタウン大阪鶴橋のキムチも取り扱っているそうです。ディナーロールは1個単位で小分け販売しており、半分など小分けしている事例は散見されますが、ディナーロールを1個単位で販売しているのは初めてみました。
コストコ商品を品揃えの一部として組み込んでいるお店は全国規模で拡大中であり、コスコ(長野のドラッグストアチェーン)、グッディ(山口や九州に展開するホームセンター)、ビッグプロ(盛岡市中央卸売市場に隣接した会員制倉庫型スーパー)など増加しています。
盛岡市中央卸売市場に隣接するビックプロの外観 |
上記の店舗はセレクトショップやフレアマーケットと比べると巨大な店舗であり、品揃えに関しては小規模なコストコ商品再販店に比べて多く、地域経済への影響といった意味ではコストコ商品の再販を主な事業とするコストコ商品再販店よりも大きいといえます。
コストココーナーは店舗の一部だが店舗規模が大きので、アイテム数は多数。 |
コストコの店舗展開は私が研究してきたウォルマートやそのライバルのカルフールなどに比べて漸進的であり、買収などではなく1からの出店を地道に直実に行っており、日本でも同様です。
コストコ商品を取り扱う多様な形態のお店は、漸進的展開を出店戦略のセオリーとするコストコが生み出した消費者のニーズやウォンツを自社の事業としてうまく取り組んで事業化し、コストコを補完する存在として定着しつつある事例といえます。
これまでも他社のプライベートブランドを店舗がない地域で品揃えに組み込む事例は多く、最近では高級スーパー成城石井のプライベートブランドが地方において品揃えされているのを確認しましたし、私がコロナ禍になる直前に訪れたガーナの地元スーパーが英国の食品スーパーのプライベートブランドを販売しているのを確認しました。
今回取り上げた事例は、コストコの高付加価値のプライベートブランド「カークランド」やコストコ向けに大手メーカーがパッケージングした1個当たりなら安い商品を、コストコの漸進的店舗展開戦略ゆえに十分に届けることができていない消費者に届ける補完的役割を果たす取り組みといえます。
実際取材してみてコストコ商品再販店の多くは、自身の顧客とSNSを通じたきめ細かい情報のやり取りや店頭で集めた顧客の要望に、コストコ自身よりもきめ細かく対応しているように見えました。
特に自身もコストコと同様に会員制であるビックプロが、1つ1つ集めた顧客の要望と、それにどのように対応したのかを伝えた店頭に置かれたノートには目を見張りました。今後も全国で開業が予定されているコストコ商品再販店やコストコ商品取り扱い店を利用してみてはいかがでしょうか?
(文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)