2025年11月21日金曜日

市場規模を考えながら生活需要を開拓する

 2025.11.21

経営学部の本藤です。
高校3年生はいよいよ追い込み時期ですね。今週末の日曜日は指定校推薦選抜当日です。年内入試選抜が終わると、徐々に入試選抜本番の冬に突入します。今シーズンはインフルエンザがだいぶ早く流行しているようです。ボクの授業でも、ここ数週間は何人もの履修生からインフルエンザによる欠席連絡が入ります。体調管理には十分に注意しましょうね。


みなさんは風邪の予防にしていることはどんなことでしょうか?
外出中のマスク、帰宅後の手洗い・うがいをしている人は多いかもしれません。
ビタミンCをとると抵抗力が強まるとも言われてます。
入浴剤を入れて温浴効果を高めたりする人もいそうです。
インフルエンザの予防接種もこの時期に受ける人が多いですね。
葛根湯は風邪の初期症状だけではなく予防効果があると聞いたことがあります。
最近は、免疫力強化の乳酸菌飲料が何種類も売場で見かけるようになりました。

風邪やインフルエンザの予防にかかわる一般的な商品として、ハンドソープ、うがい薬、マスク、ビタミンサプリ、入浴剤、漢方薬・・・、インフルエンザの予防接種以外はドラッグストアで販売されているものばかりです(ちなみに、アメリカでは薬剤師がインフルエンザの予防接種できます。日本では、医師会が既得権を手放さないので、なかなか難しいようです)。
これまでは「治療」のための薬の需要が中心だったのですが、最近は「予防」の需要が拡大してきています。

これからのドラッグストアが開拓していこうとしているマーケットが、この「予防」市場なのです。


メタボリックシンドロームにならないように防風通聖散などの漢方薬がありますし、ロコモティブシンドロームにならないようにプロテインなどのサプリメントがあります。

考えてみると、歯磨き粉や歯ブラシなどのオーラルケアも予防市場ですが、これは既に一般に定着しているマーケットです。これも、最近ではホワイトニング、知覚過敏、歯周病など、虫歯以外の予防にもお金が使われるようになってきています。歯磨き粉や歯ブラシ以外にも、洗口液、液体歯磨、歯間ブラシ、フロスとサブカテゴリーは拡大の一途をたどっています。


これらは、主にパーソナル・ソリューションで、実はプライシング(価格設定)の影響はそれほど大きな商品ではありません。むしろ自分の悩みを解決してくれそうな商品に対しては、価格訴求商品を避ける傾向すら見られます。少し考えてみてください。どこのブランドか分からない半年くらい使えそうな大容量の歯磨き粉と、白い歯にしてくれそうな高めの歯磨き粉があったら、簡単に価格だけで判断できませんよね?
仮に、一時的に安い商品を購入しても、気になり続けている人が多ければ、次には購入してくれる人も多くなります。そこがスーパーマーケットとドラッグストアの大きな違いになってきます。やっぱりキャベツは10円でも安い方がいいと考えますし、牛乳や飲み物も同じような傾向が見られます。



そこで、超高齢社会になってきた日本でのチャンスは、生活習慣病の予防市場は無限のチャンスがありますし、無限の需要が眠っているのです。筋肉減少などの問題であるロコモティブシンドローム、肥満などの問題につながるメタボリックシンドロームの他にも、糖尿病、高血圧など様々な生活習慣病などは治療市場でさえ急増していますが、予防市場はケタが違うのです。特に、この予防市場は、ファミリー・ユースではなく、パーソナル・ユースなので、家庭のニーズではなく個々人のニーズによって牽引されます。
だから、その市場を開拓することは、大きな需要創造への取り組みとも言えるのです。


文責:本藤貴康(担当科目:流通論、ケースメソッド)
本藤ゼミナールブログはこちら⇒東京経済大学 本藤貴康ゼミナール







2025年11月3日月曜日

葵祭にいってきました

経営学部の木下です。

葵祭にいってきました。

ゼミの学生のものを中心に、色々な企画と模擬店を回ってきました。学生のサークルだけではなく、ゼミでの出店もあり今年は特に経営学部からの出店が多いようでした。展示企画を回ってスタンプを集めたり、アンケートに回答するだけで記念のタオルが貰えました。最後のビンゴ大会ではまったく当たる気配もありませんでしたが、なんだかんだで結構面白かったです。学園祭とはそういう趣旨のものではないでしょうが、市場や経営学的な観点から少し考えてみようと思います。

まず気になるのは模擬店はちゃんと利益を回収できているのか、ということですね。個別の模擬店の来客数や売上の予測はかなり難しいでしょう。価格を固定していては売れ残りが生じて在庫の処分コストもありますから、赤字になる可能性はあると思います。しかし、学園祭の多くの模擬店では、終わりが近づくにつれて値引きして販売します。実際のビジネスでは、安売りをするとそれを待つ客が増えてしまうため安易に行うことはできません。動学モデルやゲーム理論のテーマです。学園祭ではそういった駆け引きを行う必要がないため、最後は純粋な損得計算だけで動くことができるのです。少なくとも原価ギリギリの価格でも売り切ることができればいいので、赤字になっている模擬店はほとんどないと思います。ということで、学園祭のようなケースでは諸々の短期の理論をそのまま適用できると予想します。現実では厳密な最適価格や戦略等は分かるはずもありませんが、多めに仕入れて最初は強気の価格で攻める、という方向の戦略になるでしょう。実際にそうしているのではないでしょうか。

普段現金をあまり使わないので財布にあるかどうか不安でしたが、この日はたまたま数千円入っていました。キャッシュレスを導入してはどうかと思いましたが、それはやはり無理な話でしょう。キャッシュレスを導入することのコストの変化と集客力の増加の比較でやるべきかどうかは決まりますが、後者の効果があるとはとても思えません。「キャッシュレス決済できるなら葵祭に行こう!」となるような層は、ほとんどいないような気がするのです。もっとも、キャッシュレスを導入してみた世界も観測できませんから「気がする」としか言えません。キャッシュレスを導入して会計担当の人員を削減して商品開発等に回して品質を高める、というのも学園祭では何か変な気がします。キャッシュレスの手数料を払ってまでやる価値があるか、ということです。ということを考えていたら他大学の学園祭に行ったゼミ生からPayPayで支払い可能な模擬店があったと教えてもらいました。主流にはならないと予想していますが、これは日本全体のキャッシュレスの動向次第ですね。

実際のビジネスでは、リスク管理の話が追加されてきます。例えば、個別の予測は難しくても全体の来客数は例年と大きく変わらないはずです。そこでファイナンス論や保険論では、全体で管理して分配した方がリスクを少なくできる、という発想を持ちます。分散投資というやつですね。一方で、そんなことをしたら各模擬店が頑張る意欲を失ってしまう、という経営組織論的な発想もあります。モラルハザードというやつです。

もちろん利益を追求するのが学園祭の目的ではないと思います。販売して終わり、だとまるでビジネスライクで学園祭の趣旨ではないはずで、知り合いの企画や模擬店に行ってみてつながりを増やしたり、自分達のやっていることを知ってもらったりするのが本来の目的だと思います。

と、色々考えつつもこれは実際に出店せずに理屈を語っているだけですね。やってみなければ分からないことはたくさんあります。それが経営や経営学の難しくかつ面白いところではないでしょうか。え?じゃあ木下ゼミも出店してみろって?うーんそれはどうでしょうか。検討します。


                             木下 亮