2016年10月31日月曜日

中国北京で繊細なスイーツを伝えるために頑張るパティシエから元気をもらう

流通マーケティング学科の丸谷です。14回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行っていくのか)を専門分野にしているので、海外に出張に行くことが多く、このブログでもインド、チリ、香港の出張の模様をこれまで取り上げてきました。

今回は中国小売現地取材のための出張(北京天津)の出張最終日に、日本帰国便までの合間の2時間で訪れたToshi Yorozuka BEIJINGについて取り上げてみたいと思います。今回取り上げるToshi Yoroizuka BEIJINGはまさに発展する中国の首都北京の現在の象徴ともいえます。

最初にこのお店を出店した鎧塚シュフについて簡単に説明します。鎧塚俊彦氏は日本を代表するパティシエです。故川島なお美さんの夫としても有名です。私の趣味はスイーツ店巡りなのですが、私は彼が川島さんと知り合う前に、彼が恵比寿でお店を始めた時から注目し続けていました。私は恵比寿には2回、六本木3回ほど訪れています。

また、最近では渋谷ヒカリエのケーキショップ(デザートカウンターはありませんが、椅子とテーブルの共有スペースがあるのでその場でケーキを味わえます)で彼がエクアドルで開設したカカオ農園でとれたカカオを使って作ったチョコを材料にしたスイーツを定期的に味わっていました(ちなみにヒカリエには赤坂のリベルターブルという注目のお店の支店もあります)。

先日来年始めにナカニシヤより出版予定の『国際社会学』のコラム作成の取材で、コーヒーハンターとして有名な川島良彰もお話されていたのですが、彼がこだわっているコーヒー同様、嗜好品であるケーキやチョコも、いくらよい技術があっても、良質の素材をしっかり確保できなければ、質の高さは出せないと実感させる味を、このお店でも提供しています。

そんな鎧塚氏が今回海外初出店したToshi Yoroizuka BEIJINGでは、彼の愛弟子で北京店シェフに指名された南里英伸さんが、鎧塚氏譲りのこだわりと情熱を感じることができました。


Toshi Yoroizuka BEIJINGシュフ南里氏

地下鉄10号線亮馬橋駅B出口の複合施設「官舎」3階にある400㎡のお店は、テイクアウト用販売スペース、飲食ができるテラスと、目の前でデザートを作り提供するデザートカウンターで構成されます。


               複合施設官舎              

私は飛行機の時間もあったので、開店直後の11時にお店に伺うと、南里シェフが暖かく対応いただきました。2種類のコース(前菜メイン飲み物300元、プラス中間に1皿の500元)について丁寧に説明して頂きました。私がお勧めを伺うと、中国産のお米の良さを活かしてアレンジしたリゾットと、それに合う飲み物としてシャンパンがいいのではと勧められたので、500元コースを注文しました。

             
前菜と飲み物

東京では最近神楽坂のコータ、等々力のデセールルコンタワールなどカウンターデザートのお店は人気がありますが、北京ではカウンターデザートどころか、レベルが高いケーキ店もほとんどないそうです。私もいくつか気になるお店を取材の合間に食べてみたのですが、香港や台湾のスイーツチェーンは一定のクオリティなのですが、駅から少し離れた場所にある高円寺のラブリゴチエや千石のトレカルム、蘆花公園のルラシオンのような個人店は根付いておらず、ケーキの見た目重視のお店ばかりでした。

そんなスイーツに関しては発展途上の中国、それも経済の中心地上海ではなく北京での出店は苦労も多いそうです。出店には2年以上かかり(最初は別の場所で出店予定でしたが、諸事情で断念したそうです)、出店が決まっても、素材の現地調達、現地スタッフ育成と海外ならではの苦労は並大抵ではないようでした。

特に、現地スタッフ育成は大変であり、台湾出身の助手の方を通じての言葉が通じにくい環境での時間をかけた現地スタッフとのやり取りや、しっかりと作業がダメな場合の理由の論理的説明や、育成後のスタッフの維持のための工夫といった取り組みについて伺うことができました。

そんなお話も伺いながら、作られるスイーツはどれも素晴らしく、特におすすめのリゾットは中国産のお米の触感を意識した工夫がなされており絶品でした。
          

           
 中国産米を使ったマンゴーリゾット

日本に比べても高価な、500元(1元は約15円)は高いような気もしますが、北京の状況や南里シェフの情熱混みの値段と考えれば、妥当と感じさせる味でした。実際、北京のお金持ちは良いものにはお金を支払うそうです。厳しい出張の最後に元気をもらう経験ができた貴重な時間となりました。                  
                            


文責 丸谷雄一郎(流通マーケティング学科 教授)