2017.06.21
経営学部の本藤です。
これまでは【学問のミカタ】は本藤が担当してきましたが、今年度からは色々な先生に書いて頂くことにしました。それが言い訳ではないのですが、ブログのアップが3日ほど遅れてしまいました・・・。申し訳ありません・・・m(__)m
最近のマーケティング系のニュースで驚いたのは「新ポイントカード、伊藤忠が導入検討 ファミマで利用可能に」というニュースです。
僕は、基本的にJALカード特約店でもあるファミリーマートを利用することが多いのですが、現在予備校生の僕の息子はTポイントカードのポイントコレクターという理由でファミリーマートを利用していました。
ファミリーマートが、今後Tポイントカードに関する方針は明言していないようですが、セブンが金融サービスに参入してから、日常生活として定着してきていることから、ファミマもコンビニエンスストア機能の拡張を考えても違和感がありません。
なぜファミリーマートがTポイントに代わる独自のポイントカードを検討しているのでしょうか?
Tポイントカードを運営しているのはカルチュアコンビニエンスクラブ(ファミマは大株主)です。本来であれば、自社チェーン店のデータを即時利用することが戦略的アジリティー(俊敏性)を強化するためにも必要不可欠です。しかも、コンビニエンスストアという地理的広範性を持つチェーンであれば尚更です。しかし、Tポイントカードで蓄積されたデータについては、この戦略的アジリティーを実現するための仕組みとしては使い勝手が悪いという話を聞いたことがあります。
Tポイントカードのカード保持者は6000万人を超えており、しかも物販系小売業のほかにガソリンスタンドや外食チェーンなどでの導入も実現していて、極めて価値のある消費者購買データと言えます。ですから、本来であれば、この大量にデータが蓄積され続けるビッグデータは、他社のデータも複合的に活用して優位性を確立すべきでした。
しかるに、あまりに巨大なデータベースなので、会員企業各社各部門がアクセスすると、サーバーへの負荷は実用に耐えられない可能性があります。そんな理由からかどうか定かではありませんが、いずれにしても自社のIDPOSデータでさえ使い勝手が悪いと感じても無理はありません。
そもそも小売業が自社のID-POSを収集するのは、適切な価格設定、適切な品揃え、適切な販売促進などを実現するためです。価格が下がれば売上があがる商品もあれば、価格を下げても売上があがらない商品もあります。ファミリーマートのように全国チェーンであれば、季節の変動によって、品揃えを北から変更していくケースがあったり、逆に南から変更していくケースがあったりして、その販売データは重要な指標になるのです。
いずれにしても、ファミリーマートが独自に収集し直す場合、再びゼロからカード会員を獲得していかなくてはならず、nanacoカード利用者が5000万人を超えたセブンイレブンとPONTAカード利用者が7000万人を超えたローソンに大きく出遅れてしまったた状況は否めません(ただし直近1年間で利用されているアクティブ会員は、おそらく半分程度かもしれませんが・・・)。
仮に、新カードを導入するとしたら、そのカードの発行業務は店頭作業も増えてきますから、ファミマアプリ会員からの移行になるような気がします。ポイントを100円分チャージ済みで、アプリでの利用者促進をしてアプリ会員として拡大していくなどの金銭的なインセンティブをしかけるかもしれません。
近年では、このようなビッグデータをAI(人工知能)で分析する研究も進んでいるので、社会的インフラになりつつあるコンビニエンスストア業界の進化は、研究者としても一生活者としてもとっても楽しみです。
文責:本藤貴康