2019年8月14日水曜日

「先生、夏休みの有意義な過ごし方がわかりません!」:大学での学習を効果的にするための夏休みの過ごし方

 経営組織論・ケース分析などの講義を担当している山口です。
 定期試験が終わって約2週間たち、夏休みも残り1か月ほどとなりました。
 大学教員にとっての夏休みは、ひたすら「自分の能力向上」に取り組む時期です。論文を書いたり、自分の研究にとって最適な研究の方法論について考え直したり、学会や研究会に参加したりして、少しでも自分の研究能力が向上するように努力しています。
 授業期間中に、講義やゼミなどで「他者(学生)の能力向上」に関わる以上、自分がより成長し、能力を向上させておく必要があるからです。

 では、大学生にとっての理想的な夏休みの過ごし方は、どのようなものでしょうか?
 もちろん、最近の大学生は忙しく、資格試験の勉強に集中的に取り組んだり、アルバイトをしたり、夏休みにしなければならないことが多々あるのは承知しています。しかし、大学教員としては、大学生には、夏休みを「1期にインプットしたことを定着させ、2期の研究のアウトプットのための土台を作る『橋渡し』の時期」として、ぜひ活用してほしいのです。

 あえてこのようなことをいう理由は、大学生、特にゼミに入っている学生にとって、2期は「知識のインプット」中心の学習から、「知識のアウトプット」中心の学習へと切り替えなければならない、一番大変かつ重要な時期だからです。
 例えば、2~3年生は、12月に行なわれる経営学部ゼミ合同報告会や他大学との合同ゼミに向けて、研究報告のプレゼンを作ったり、その内容をゼミ論文にまとめたりしなければなりません。レポートなどをまとめて各種のコンテストに応募するゼミもあります。4年生の中には、1月の締め切りに向けて、研究論文(卒論)を書く人もいるでしょう。

他大学との合同ゼミ報告会で、報告後に他のゼミの先生からコメントをいただき、議論するゼミ生
(報告をまとめるだけでなく、質疑応答にも、高い「論理的思考力」が必要になります)

 このような、2期における「知識のインプットからアウトプットへの切り替え」をスムーズに行えるようにするには、夏休みに何をしておけばよいでしょうか?

 私のおすすめは、「1日3問ずつ、論理的思考力を鍛えるドリルを解いてみること」です。具体的には、野矢茂樹著『論理トレーニング101題』(産業図書)をおすすめします。

 これを勧める理由は3つあります。
(1)研究に必要な「文章を読む力・書く力」の維持・向上
 上記で紹介した野矢先生の本の最初にもあるように、「論理の力とは、思考を表現する力、あるいは表現された思考をきちんと読み解く力」です。プレゼンや論文作成には、文章を正確に読んだり書いたりすることが不可欠なので、論理的思考力を夏休みにつけておけばスムーズに2期の学習が始められます。

(2)問題の答えをノートに書くことによる「アウトプット」の練習
 一般的には、独学は、1人で本を読むなど「インプット中心の勉強」になりがちです。しかし、ドリルだったら、問題の答えを書き出すことにより、インプットだけでなく、アウトプットの練習もできます。まずは短い語句・文章でいいので、アウトプットの練習をしておくと、2期にアウトプット中心の学習が始まったときに、対応しやすくなるでしょう。

(3)短時間でも毎日継続して学習に取り組む習慣をつける
 ゼミ論文は、1万字以上など、結構な分量があるので、「明日まとめて書こう」と思っても書けません。毎日少しずつでも取り組むことが重要です。このドリルは101問あるので、1日で全問解くことは困難ですが、1日3問ずつやれば、1回あたり30分もかからないでしょう。例えば、朝起きたら、まず3問解く。これを夏休みの間継続し、毎日少しずつ学習する習慣をつけておくことで、2期の論文やプレゼン作成が計画的に行えるようになるでしょう。
ついでに言うと、仕事で忙しくなる就職後も、語学や仕事に必要な資格の勉強などを続けるのに、こうした習慣をつけておくことは非常に重要です

 大学生の夏休み、いろいろしたいことがあって忙しいとは思いますが、朝の30分、1日3問だけ、論理トレーニングを一緒に続けてみませんか?

文献情報
野矢茂樹(2001)『論理トレーニング101題』産業図書.(定価2000円+税)

(文責:東京経済大学経営学部准教授 山口みどり)