2019年8月19日月曜日

ロボットで仕事が変わる!

2019.08.19

東京経済大学の本藤です。
残暑が厳しいですね(もはやお盆明けなので夏休み真っ只中でも残暑です)。

ビジネスマンは、そろそろお盆休みも明ける頃でしょうか。
でも、社員がお休みをとっている最中でもビジネスは動き続けています(海外ではお盆休みじゃありませんから(笑))。休みなく動き続けるビジネスの世界では、会社でロボットが働き続けている会社が増えてきています。
ロボットと言っても、工作機械など工場で活躍するロボットではありません(工場のロボットも働き続けているかもしれませんが・・・(笑))。
今回紹介するのは、パソコンの中で働き続けるRPA(Robotic Process Automation)です。


いまビジネスの世界ではRPA(PC作業を代行するロボット)の導入による人時削減が注目を集めているのを知っていますか?
少し前まで、AI(人口知能)が人間の働く場所を奪い取ってしまうという話が議論されていたのですが、AIの本格的な普及の前に、パソコン作業を中心とした業務がRPAに取って代わられつつあります。


既に、メガバンクでは年間で何十万時間ものマンパワーを削減しているというニュースが数年前からリリースされています。仮に20万時間としても、1日8時間換算で25000人日ですから、年間労働日数が概ね250日と多めに見積もっても、年間100人の仕事がRPAによって代替されることになります。


このRPAと呼ばれるロボットは、パソコンで様々なネット情報を集めてリスト化するとか、それを適切なグラフを選択して、エクセル上で一覧表とグラフを作成して、そのファイルを定期的に担当者に送るとか、会議の前の案内を一斉に送るとか、分散しているデータを一定の法則にしたがってまとめるとか、逆に総括されているデータを分解して各部署にデータを送信するとか、定型的な判断が可能であれば、たいていのデスクワークはRPAが代行してくれます。

これによってオフィスのワークスタイルが大きく変わります。
当然のことながらRPAには労働基準法は適用されませんから、定型化できるパソコン作業であればミスなく24時間働き続けてくれます。むしろ人間であればミスをしてしまいそうな「複雑で膨大な定型作業」(そんな事務作業は世の中多かったりします)を文句ひとつ言わずにやり遂げてくれます。そんな仕事を、社員が退社してから出社するまでの間に完了してくれたりするのです(素晴らしい!)
そうなると、人間でなくてはできない仕事にマンパワーをシフトすることができるのです。


近年(近年というよりも結構昔からの傾向ですが)、オープンキャンパスなどで高校生の相談などを受けていても、あるいは大学生のキャリア相談にのっていても、企画の仕事がしたいというような志向を持っている若者が多いのですが、RPAの普及とともに、人間がやらなければならない定型作業は激減して、問題点の洗い出しや解決策の検討など非定型業務(考える仕事)の時間が格段に増えてくることになりそうです。この問題点の洗い出しなどでも、検討のための基礎資料をRPAが準備してくれますから、人が担うべき仕事の大変動が起き始めていると言えます。別の見方をすれば、これからの仕事では個人差が表面化しやすくなると言い換えられそうです。


日本を含めた人件費の高い国においては(日本の時給水準は世界トップ10にも入っていませんが)、社員がどれだけ会社に利益貢献したかが問われます。規定された時間、働いているジェスチャーだけで給与をもらえるようなことは絶滅します。特に、事務作業が多い官公庁や自治体、銀行や金融などのワークスタイルもパラダイムシフトされていくはずです。

実は、大学機能には教育と研究のほかに学生支援があるのですが、それぞれに膨大な事務作業を抱えています。
RPAの導入によって、学生対応を中心とした個別サービスに人員を増やすこともできますし、他大学や受験生に関する情報収集などのリスト化や学内書類整理といった事務作業をカットして企画業務にパワーシフトできたりします。
研究においてもデータ処理からデータ加工など複雑で膨大な定型作業があるのですが、これも省力化できます。


複雑で膨大な定型作業(膨大じゃなくてもいいんですけどね)がなくなっていく潮流は、ここ数年のうちに基本的な潮流になってくると思われます。
そして、以前は専門家しか業務規定できなかったRPAですが、最近は業務担当者が考えて規定できるような商品まで出てきています。ボクがお付き合いのあるメーカー数社で、数年前からRPA導入のプロジェクトチームが矢継ぎ早に設立されて導入を急いでいます。


このような潮流は、学生の就職活動の形も変えてきそうです。
個人面接の前に実施されるグループディスカッションも、以前は60分程度のフリー討論が主流だったのですが、近年は3日間に渡って協働作業を課す企業が増えてきました。しかも、実際の営業課題などを考えさせたりしているのです。
事務能力よりも企画能力、個人業務よりもグループワークへと求める人材は変わってきているように感じます。



文責:本藤貴康(流通論、流通マーケティング演習、アカデミックコンパス担当)
本藤ゼミブログ(http://hondo-seminar.blogspot.com/