2024年8月5日月曜日

高校数学は何に使うのか?

経営学部で企業金融論や経営統計を担当している木下です。

夏休みに入りましたが、受験生の皆さんは勉強を続けられていると思います。

今回は高校数学がどのように拡張、応用されていくのかをお話します。

誰しも一度は「こんなことを勉強して何の役に立つのか?」と思ったことがあるはずです。

私自身もそうでしたが、専門家になった後で振り返ってみると、高校数学が知識の土台として極めて厳選されたコンテンツになっていることが分かります。

今回はその中でも「二次関数」に焦点を当てます。

二次関数に確率論を導入したり、多変量に拡張することでリスク管理やデータ分析の技術が開発されています。二次関数の考え方を理解していると、細かい理論的なことは分からなくても「どうせこんな感じのことをやってるんだろ?」という直観を持つことができるようになります。研究者も自分の専門分野ど真ん中以外の内容に関しては、そういった直観で大枠を理解しているだけです。


以下のような問題を考えてみましょう。

これは二次関数を使って

を最小化する問題だとみなすことができます。
高校生1年生で習う方法で求めることができますが、もっと簡単な方法があります。
ABCDの平均値を取ると1/2となり、これが解となります。
このように統計学での平均値と二次関数がつながっていることが分かります。

ここまで理解すると、更なる発展を考えたくなりますね。上記の問題は数直線上で最適な点を求めるものでしたが、平面上で最適な直線を求めることもできます。
これが統計学の主要なツールである回帰分析であり、二次関数と平均値の拡張概念です。
これを使えば、従業員数が売上高に与える効果、投資が将来の利益に与える効果、金利が為替レートに与える効果等を測定することができます。例えば、以下の図は上場情報通信業の2023年度の従業員数と売上高の関係を表したものです(専門家が見るとツッコミどころがあると思いますが、あくまでも例ということでご容赦ください)。

このように二次関数だけを取り上げても、現実への応用につながっています。


大学と高校の両方に言えることですが、授業で与えられているコンテンツは「先に走っている専門家が最適だと考えたもの」です。当然これをしっかり身に着けておくことで発展的な内容を効率的に学習できます。先にも述べましたが、高度な手法でも雰囲気が分かるようになります。

逆に「その時点の専門家が考える最適プラン」でしかないことにも注意が必要です。
時代の移り変わりによって重要性の薄れるものもありますから、そういったものに対する取捨選択はむしろ若者のセンスが大事になることもあるでしょう。

最も伝えたいことは、高校での勉強は皆さんが考えている以上に未来につながっているということです。私が高校生に戻れるのならば、間違いなく勉強に時間を使います。

高校数学と統計学やファイナンスの関連性は語っても語りつくせないほどの内容がありますが、ご縁があれば東京経済大学でお話したいと思います。