流通マーケティング学科の丸谷です。36回目の執筆です。私は流通マーケティング学科の必修科目であるケース・メソッドを担当しています。ケース・メソッドは、企業(非営利組織を含む)が行っているマーケティング活動の事例(ケース)に対して、既存の知識や理論を当てはめたり、新しい知識や戦略を生み出したりする教育方法(メソッド)です。
この科目では企業が実際に取り組むマーケティング活動の事例を取り上げる必要があり、私はマーケティングの中でも、専門がグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)なので、海外から日本に参入してきた企業のうちなるべく大学生にとって身近な題材を取り上げてきました。具体的にはマクドナルド、スターバックス、ネスレなどです。
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ムーミン・バレーパークの正門前にて |
ケースはなるべく新鮮な内容がいいと考え、数年に一度変更しています。ケースは自身で執筆する場合もありますし、販売されているケースを使用することもあります。今回は2019年5月に慶応ビジネス・スクールから出版されたアールト大学ビジネススクールのArto Lindblom教授と慶応ビジネス・スクール浅川和宏教授作の「日本でのムーミン・テーマパークの設立」を使用することにしました。
販売ケースを利用する場合には、事業を円滑に進めるために資料を収集したり、実際に商品を購入して使ってみたり、サービスを体感してみたりしています。今回は2020年度に新規ケースの題材となっている埼玉県飯能市宮沢にある「ムーミン・バレー」に取材に行ってきたので取り上げます。
「ムーミン・バレーパーク」は埼玉県飯能市宮沢327-6にあるフィンランドの著名画家トーベ・ヤンソンさんが生み出した有名人気キャラクターのムーミン一家を題材にしたテーマパークです。このテーマパークとともに北欧生活をテーマにしたショッピングモール「メッツァビレッジ」と呼ばれる郊外型レジャー施設も併設されてます。
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パークに併設されたメッツァビレッジ外観 |
今回の取材前にも多くの事前資料を読み現地取材を行ったのですが、実際現地調査をして理解できたことは多くありました。調査結果をすべて書いてしまうと、受講生の皆さんの授業課題作成に影響を与えてしまうので、今回は最初の立地選定に関して簡単に触れておきます。
立地選定に関してはテーマパークがある場所の地名ともなっている宮沢湖の存在が大きく、宮沢湖の自然にうまくムーミンの世界観を当てはめているということでした。
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ムーミンの世界観を表現するのに適した宮沢湖 |
しかし、ムーミンの生みの親であるトーベ・ヤンソンの自然を大事にする考えにも反するように感じました。私が「ムーミン・バレー」を訪れて最も感じたのは、愛・地球博の際に名古屋郊外長久手でジブリアニメ「となりのトトロ」の世界観が再現されたパブリオン「サツキとメイの家」の世界観と通じるものでした。
もちろん、パピリオンとテーマパークではコンセプトが異なるので、アトラクション、食事、展示など多少の商業主義は感じます。しかし、それらの商業主義は素朴であり、世界観を壊すほどのものではありません。
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ムーミンの世界観を示すために湖に建てられた小屋 |
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ムーミンの世界を再現した展示室 |
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ムーミンの世界を示した食事 |
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ムーミンの家に夜映し出されたプロジェクション・マッピング |
なお、新型コロナウィルス対応のために、「ムーミン・バレー」及び「メッツァビレッジ」はお休みしております。早くの再開ができることを個人的にも祈念しております。
(文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)