2024年10月21日月曜日

高校数学は何に使うのか?(2)

 経営学部で企業金融論や経営統計を担当している木下です。

前回に引き続き、高校数学の大学あるいは社会での応用についてお話させていただきます。

高校での勉強のモチベーションの一つになれば幸いです。

前回の記事はこちらです。

https://tkubiz.blogspot.com/2024/08/blog-post.html

前回は「対数」というものを説明せずにデータ分析に使っていました。対数は高校2年生の内容ですが、少し説明します。

「2を3乗すると8です。」を数式で書くと

となります。逆に「2を何乗すると8になりますか?3です。」を数式で書くと

となります。

このように、対数は何乗したらxになるか?という数のことで、対数と指数は表裏一体です。詳しい説明は高校の数学の先生に聞いてみましょう。我々のような応用で数学を使っている人間よりも数学のプロに聞く方が間違いがありません。


さて、データ分析では「対数」そのものに興味があるわけではなく、「やりやすいから対数

スケールで分析を行って、後で元のスケールにも戻せばいい」という発想を取ることが頻繁にあります。どういうことか、応用例を見てみましょう。


左の図は、2024年度決算の小売業の上場企業の従業員数のヒストグラムです。

右の図が従業員数の対数値のヒストグラムです。対数を取った方が左右対称に近く、統計学で扱いやすそうですね。ここでの対数とは自然対数のことですが、すごく使いやすい数、ぐらいのイメージを持っておきましょう。

次に、一人当たり資産と一人当たり売上高の散布図を見てみましょう。

元のスケールでは左下にデータが集まっていて、かつ直線には見えません。

対数を取ることで直線に近くなります。直線での分析は高校の数学の教科書の「データ分析」でも紹介されています。そこで、対数スケールで分析を行ってから後で元に戻すような分析方法を使うわけです。そうすることで左の図でも当てはめ曲線を引くことができます。

これを拡張していけば、売上高、従業員数、総資産の3つの関係性も見ることができるようになります。


こういった分析を行うときに、「対数」を理解していれば、混乱することなく分析を行うことができます。


では、数学ができれば経済経営データ分析はできるのか?というと、答えは完全にNoです。データ分析の結果を活かして何をするか?ということを考えるのが経営学や経済学の役割です。また、人間行動の結果として集まってくるデータは、実験研究のような理想的な集まり方はせず、偏りのあるデータとなります。数学だけを武器に経済経営データ分析に挑むと多くの落とし穴にはまることになります。

経済経営の分析にはデータ分析だけでなく、損得計算を中心とした人間の行動原理を踏まえた分析が必要となります。これは簡単なものではなく、だからこそ高校生の間に汎用性のある知識を広く身に着け、大学で自分の領域の専門的な能力を身に着ける必要があると言えます。