2024年12月16日月曜日

特別企画講義「鉄道で考える社会インフラ整備・管理の未来」の受講生アンケート結果から見える東京経済大学の学生(後編)

 経営学部の三和雅史です.

 今回は,10/7のブログに続いて,特別企画講義「鉄道で考える社会インフラ整備・管理の未来」の終了後に行った受講生アンケートの結果と,そこから見える東京経済大学の学生の姿を考察した結果の後編を紹介します.

 この特別企画講義では,鉄道会社や国の機関からお招きした講師の方々に社会インフラとしての鉄道の現状や課題,そして未来への展望について,様々な観点から紹介して頂きました.講義終了後,受講生に講義に関するアンケートへの協力を依頼したところ,全受講生(178人)の77%にあたる137人から回答を得られました. 10/7のブログでは,「受講状況(受講者数,受講率)」の他,「①受講の動機」,「②受講して発見したこと」,「③関心をもったキーワード」に関するアンケート結果を紹介しました.後編の今回は「④印象に残った講義」,「⑤社会インフラ業界の仕事への関心」,「⑥現場見学会,講師との直接的な意見交換会への参加希望」に関するアンケート結果を紹介します.


〇アンケート結果の概要と分析

④印象に残った講義

 幾つかの選択肢から選ぶ形(複数回答可)で回答してもらいました.回答者割合が高かった6つの講義を図に示します.どの講義も様々な話題に触れられており,講義内容をワンフレーズで表すことは難しいため,図中の各会社名の横に示した()内の説明は主な話題を表しています.なお,アンケートには印象に残った理由を記載する自由記述欄を設けたので,以下では,その内容を踏まえて考察しています.


 図から,「まちづくり」に関する講義への印象が深かった受講者が多いことが分かります.図中に示す広島電鉄,江ノ島電鉄,阪急電鉄の他,東急電鉄の講義にも「まちづくり」に関する内容が多く含まれていました.いずれの講義も,鉄道が「まちづくり」に果たしてきた役割や意義,「まちづくり」で重要な考え方等,「まちづくり」に関心のある受講生には大いに参考になる内容だったと思います.また,JR四国の講義も交通の利便性向上に関する話題が多く,「まちづくり」との関連性が強いものでした.特に,地方交通の今後の在り方を示唆するようなアイデアに富んだオリジナリティの高い内容は,受講生には大きな刺激になったようでした.
 JR東日本の割合が高いのは,身近で親近感がある鉄道会社であることに加え,特に保線(線路の維持管理)業務での課題に対し,様々な情報技術や新しいシステムの導入による解決事例,取り組みの紹介があり,将来の社会インフラの在り方を明確にイメージできたことが印象深かったようです.
 JR貨物については,走行する貨物列車しか見たことがない受講生には謎の会社だったようで,講義に大変多くの発見があったという感想が何件も見られました.何を,どこからどこへ運んでいるかという話から,各種輸送手段との連携による物流の効率化,高品質化,環境対策といった取り組みまで,どれも新鮮で印象深かったようです.

⑤社会インフラ業界の仕事への関心
 鉄道を例に社会インフラ業界の実情や未来を講義により知った上で,自らが将来仕事をする場としてどう捉えるか聞いてみました.
 まず,社会インフラ業界,鉄道業界の仕事を自分の将来の職業とすることへの考えを聞いた結果を表にまとめました.この表には,受講前後で関心に変化があったかを聞いており,「×」は将来の職業の検討対象として考えない,興味がないことを表しており,「〇」は将来の職業の検討対象になる,興味があることを表しています.「◎」については,受講前は「〇」であったのが,更に高まった場合を表しています.この表のデータを用いて受講前後の考えや興味,関心の変化を状態推移図としても示しました.


 受講前に将来の職業の検討対象分野でなかった受講生のうち,社会インフラ分野については約48%が,鉄道分野については約34%が,今後は検討対象にすると答えています.逆に,受講前には検討対象分野だったのが,受講後に対象外となったのは,社会インフラ分野では2.9%,鉄道分野では2.2%に過ぎませんでした.これらのことから,本講義は社会インフラや鉄道の仕事に関心をもち,将来の職業の対象として意識する機会になったと考えられます.また,技術の仕事への興味についても聞いたところ,受講前には興味がなかった受講生のうち,約45%が興味をもったと回答しました.社会が必要としている文理総合人材の育成という観点では,とても好ましいことだと思います.7/22のブログに書いたように,社会インフラのような技術と社会にまたがるシステムでの課題の解決や未来の創造には,技術開発だけでなく,開発された技術をどこでどのように運用するのか?といったように,多くの立場やアイデアが総合される必要があります.経営学部で学ぶ知識も勿論,社会インフラの持続可能性を向上するのに大きく貢献します.
 それでは,将来の仕事として検討する対象になった受講生は,どんなことに関心をもったのでしょうか?10/7のブログで全受講生を対象にして示したのと同じ図を,授業後に検討対象となった46人を対象に作成してみました.


 全受講生を対象とした図と比べるとグラフの形が少し異なっています.そこで,図中には,全受講生を対象とした図に比べて回答者割合が増えた項目については「+」,減った項目については「-」を付けました.「安全,安心」,「まちづくり」,「労働力不足」の割合が他に比べて際立って大きくなり,「まちづくり」が最も高い割合になりました.労働力不足に大きな課題を抱えつつある鉄道業界に身を置き,安全,安心なまちづくりに携わることに,自分の将来の姿を見出せたのではないかと思います.また,「DX(デジタルトランスフォーメーション),ICT」の割合が増えたのは,先に考察したような技術に対する関心,興味の高まりが現れた可能性が考えられます.一方で,「組織,社員,働き方の変化」についても割合が増えたのは,実際に自分が働くとした場合を想定し,自らの職として向き合ったことが現れたのではないかと考えます.
 以上の結果を鉄道会社の方に見て頂いたところ,社員が「自己肯定感とやりがいを持ち,働きやすい職場」を実現することの重要性を再認識できる,極めて納得感のある結果だというコメントを頂きました.

⑥現場見学会,講師との直接的な意見交換会への参加希望
 今回は実施できませんでしたが,本科目で鉄道の現場の見学会を将来企画した際の参加希望の回答結果を表に示します.参加希望者は全回答者の半数を超えましたが,具体的な見学先を提示することで,希望者は更に増える可能性はあると思います.将来の活躍の場となる大学の外側の社会を見られる機会は貴重なので,こうした機会があれば,分野を問わず是非参加して欲しいところです.鉄道を将来の職業の検討対象にすると回答した70人については,その74%が参加希望という回答でした.実際の職場や働き方を見て体験することは,職業選択に大いに参考となると考えます.
 講師と直接話ができるような意見交換会を将来開催した際の参加希望の回答結果を表に示します.全回答者の約半数が希望し,魅力的な開催方法を具体的に示すことで,希望者は更に増える可能性はあると思います.ここでも,鉄道という分野で捉えるのではなく,社会の第一線で活躍する方々に様々な問いかけができ,自分の将来に役立つヒントを得られる機会だと考えて,積極的に参加してもらえるとよいと思います.鉄道を将来の職業の検討対象にすると回答した70人については,その60%弱が参加希望という回答でした.見学会と同様,職業選択に大いに参考になると思います.一方で,開催にあたっての課題として,各学生が多くの講師と話せるように運営方法を工夫する必要があると考えています.アンケートの自由意見の中に,もっと気軽に質問したいという意見があったことから,講師・学生間のコミュニケーションの方法については,よく検討したいと思います.
おわりに
 3回にわたり,第1期に開講した特別講義について,その内容,開講状況,そして受講生アンケート結果を紹介しました.多くの大学生にとって大学の次のステップは社会に出て仕事をする,貢献する,或いは自分のやりたいことを実現するということになります.今回の講義が,その社会を理解するきっかけとなり,受講生の皆さんに何か残せたものがあればと願っています.
 本講義では,鉄道関係各社,組織の皆様に多大なるご協力を頂きました.アンケートの自由意見にあった「今まで履修した科目の中で一番楽しかった」,「本当にためになった」,「また開講して欲しい」,「講師の方々の熱心な講義を聞いて,鉄道業界を就職先として考えるようになった」という言葉は,講師の方々に向けられた賛辞だと思います.ご多忙な中,ご協力頂いたことに,この場を借りて改めて心から感謝を申し上げます.
 最後に,2024年は間もなく暮れますが,今年は例年に増して鉄道の脱線事故が多かった印象があります.一般に,鉄道の事故は社会へ与える影響が大きいため,特に発生直後は色々な報道がなされます.その内容は様々であり,時として不正確な情報が発信されることもあるため,情報の受け手の姿勢が重要です.事故が起きたことをけしからんと言い続けるのではなく,発生の直接的,間接的原因を理解・想像して解決策を考える必要があり,今回の講義は,そのための知識にもなったのではないかと考えます.過去の経験に基づいて様々な安全対策や検査等の技術,方法が開発,導入され,鉄道の安全度は過去に比べて格段に高まりましたが,それでも事故は起きています.事故情報は鉄道会社どうしの横のつながりの中で共有され,業界全体での安全性の底上げが図られますが,5/20のブログに書いたように日本には200を超える鉄道会社があります.各社が抱える問題,課題には,個別の事情によるものもあれば,各社共通的なものもあります.本講義の中でも何度か話題になりましたが,競争から協調の時代になった今,監督する国も含め,関係者が一体となって安全で便利な鉄道を支えていく取り組みが,今後はますます重要になると思います.東京経済大学経営学部も,その一端を担えるよう,これからも活動していきたいと考えています.
















2024年12月9日月曜日

ゼミ活動紹介:関東学生マーケティング大会に参加しました!


広告論を担当している鴇田です。
鴇田ゼミでは、関東学生マーケティング大会に参加するため、グループで研究論文を執筆することを活動の大きな目標としています。

関東学生マーケティング大会とは、関東圏にある大学の学生がチームを組み、約半年間にわたり研究・プレゼンテーションを重ね競い合う大会です。
2024年度大会には、慶應義塾大学、嘉悦大学、早稲田大学、専修大学、中央大学、東洋大学、日本大学、明治大学、立教大学、千葉商科大学、埼玉大学の計13大学から19ゼミナールが参加しました。
ちなみに、同じ東京経済大学の森岡ゼミも同大会に参加しており、私自身も学生時代に森岡ゼミの一員としてこの大会に参加した経験があります。

6月に開会式を行い、9月に中間発表、10月に論文提出、11月に2回のプレゼン審査が開催されます。
学生たちはそれぞれの締切に合わせて、論文を執筆したり、発表用のプレゼンテーション資料を作ります。
鴇田ゼミは今年新しくできたばかりのゼミなので、経験者の先輩もおらず、研究の進め方やプレゼンテーションの方法にゼミ生たちが苦労している様子が伺えました。

各グループの発表タイトルは以下の通りです。
バンドリングという販売手法が持つ魅力ーカスタムバンドリングと固定バンドリングの視点からー
ご褒美消費が満足感に与える影響とその要因の解明
動画配信サブスクリプションサービスを利用する阻害要因の解明―マイリスト登録に着目して―
服のサブスクリプションサービスの利用を阻害する要因の解明

残念ながら4グループとも11月30日に行われた最終審査に進むことはできませんでしたが、やはり最終審査に進むグループは研究内容もプレゼンテーションも非常に優れており、納得の結果です。


↓当日の発表の様子



半年間頑張ってきた研究に最終的な順位がついてしまうことに対して、「酷だ」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、どこに改善点があったのか、何が足りなかったのかに気づくことができるこのような大会に参加することは、学生たちにとって非常に良い成長の機会となります。
さらに、自分たちが将来「就職活動」という場でライバルとなる他大学の学生たちの能力や取り組みを知ることは、就職活動に向けた意識を変えるきっかけにもなるでしょう。

↓大会終了後の立教大学にて


文責:鴇田彩夏

2024年12月2日月曜日

寺本ゼミ 北海道での活動報告

 


【外の世界へ】

経営学を勉強・研究していると,多くの場合,理論の世界と実務の世界を行き来することが重要になります。

いわゆる講義や大学内でゼミ活動をする場合,経営学やその他専門分野の理論の世界に深く入っていくことになります。

私自身は理論の世界が大好きなので,ややもするとこの理論の世界に留まってしまうのですが,本来それはよくありません。

自戒をこめて言うと,経営学は企業などの組織や事業を対象とした学問であるので,組織や事業の実務とは不可分です。

しかし,講義や大学内でのゼミ活動でそのような実務を触れ合うのは容易ではありません。

その意味で,経営学の勉強や研究を進めていくうえで,大学を飛び出して実務の世界をみてみるというのも非常に重要となります。


そんなわけで,寺本ゼミでも,ただ単に教室内で議論をするだけではなく,教室内で勉強したり自分たちが調べたりしたことを実地に出てみるという試みをできる限り行うようにしています。



寺本ゼミでは基本的に自分たちの好きな・興味関心のあるテーマに基づいてグループで研究してもらいます。

ただ,私自身,北海道仁木町のワイン産業や地域活性化をテーマに研究しており,同じく北海道やワイン産業に興味関心がある学生は,そのテーマについて扱うことも歓迎しています。


本年度は3グループ10名が北海道のワイン産業や仁木町の地域活性化にむけた研究に参加してくれました。

ただ,座学や図書館・インターネットでの調査に留まらず,実際に北海道仁木町に行って,研究に協力してくださっているワイナリーで活動を行いましたので,このブログで活動報告を行います。



【概要】

・北海道仁木町のワイン産業や地域活性化の振興施策を考える

・寺本が所属している研究チームのメンバーが勤める他の大学との共同プロジェクトです。

・具体的には,本年度は拓殖大学・東京経済大学・東京理科大学・北海学園大学・明治大学・目白大学(大学はアイウエオ順)の学生が参加しました。



【活動期間】

10/5(土)から10/6(日)


【仁木町のワイン産業について】

北海道仁木町は北海道の西部,海鮮や運河で有名な小樽や,ニッカウヰスキーの蒸留所があることで有名な余市のすぐ近くに位置します。

仁木町はサクランボやリンゴ,そしてブドウなどの果樹栽培が古くから盛んな町です。

日本では,特にワイン用のブドウの栽培は長野県や山梨県で盛んでしたが,ここ数年,北海道でもワイン用のブドウの栽培が増加しています。

そして同様に,ワイン産業自体も,日本国内では長野県・山梨県で盛んでしたが,最近では北海道で新規ワイナリーの設立が相次いでいます。

1970年代,当時アメリカで主流であったそこそこの品質のワインを大規模生産するという動きから,ワイナリーが管理可能な分だけ葡萄の生産を抑え,その代わり高品質のワインを追求するという,カリフォルニアを中心に始まった「ブティックワイナリー」という考え方があります。

北海道仁木町でも最近増えつつあるワイナリーはこういった「ブティックワイナリー」を模した形となっています。


北海度の活動では,ワイナリーの葡萄の収穫を体験したり,実際にワイナリー(醸造所)を見学させてもらったりします。




10月は各ワイナリーで葡萄の収穫がピークを迎えます。

いくら「ブティックワイナリー」といっても,特にこの収穫期は人手がいくらあってもよいくらいに忙しい時期となります。


ワイン産業というと,あたかも優雅なイメージがあるかもしれませんが,その本質は農業であり,この忙しい収穫作業を学生たちに体験してもらうことによって,机上の空論を超えたワイナリー経営の現実を体験してもらいます。

本来,この忙しい時期に作業に不慣れな学生が参加することは賛否が分かれるところですが,学生を受け入れてくださっているワイナリーの皆様には本当に感謝申し上げます。



こうやって文字にすれば当たり前のことですが,圃場(農地)ですから,

・虫もいます

・天気にも左右されます(今年は非常に天気には恵まれましたが,雨などでも作業は行われます)

・体力的にもきついです

・もちろん汚れます(土・泥・そしてブドウの果汁)


さらに,ワイナリーによって作業方法やこだわりのポイントが違います。



そんなことをただ机上で議論するのではなく,実際に体験しながら,そして学生同士で情報共有しながら,ワイナリー経営について身をもって知識を蓄えていきます。


【仁木町の地域活性化】

ただ個別のワイナリーについて知るだけでなく,仁木町を盛り上げるためにはどのようなことができるのか。

この北海道での活動では,ワイナリーを手伝うということと同時に,仁木町やその周辺地域にある地域活性化に使えそうな資源の発掘を行うということを行います。

仁木町のフィールドスタディ―です。


これは全くもって偶然なのですが,今年は仁木町内にあるフルーツパークにき で「しりべしの食祭りat農村公園フルーツパークにき」が開催されており,そういった催し物に実際に訪れたり,

 参考)https://www.shiribeshi.pref.hokkaido.lg.jp/ss/srk/kankou/200083.html


その他,仁木町のキャンプ場を訪れたり,さらには余市や小樽を散策する学生もいました。



このような実地での活動は,それ自体が楽しく,それだけで満足してしまうことが多いですが,それだけで終わってしまっては意味がありません。

この経験を次は教室に持って帰り,自分事として捉え,言語化することが重要です。

そして,そこからもともとの目的「北海道仁木町のワイン産業や地域活性化の振興施策を考える」を高いレベルで達成できると良いと考えています。