2026年1月26日月曜日

幸せの黄色い教科書

こんにちは 経営学部の吉田靖です。

1月下旬、受験生は入試、大学生は期末試験。まさに『冬の陣』の真っ最中ですね。皆さんの奮闘が伝わって来ますが、今が踏ん張りどころです。寒いので体調にも気をつけましょうね。

勉強の時に使うのが教科書・参考書・問題集ですね。小学校以来、みなさんはどのくらいの本で勉強しましたか?今がこれらを集大成する時ですね。

大学に入学するとさらに教科書が増えますが、高校の数学の教科書はこれからも是非身近においてください。特に経営学部ではきっと役に立ちます。 

さて、私は昨年、大学の授業でも教科書として使う本を共著で講談社から出すことができました。  『ExcelとRで学ぶビジネスデータサイエンス入門』です。高校生でExcelを使っている人は多いと思いますが、前半はExcelを使った株式等の分析方法をできるだけやさしく書いています。是非読んでみてください。表紙が黄色なのでこのブログのタイトルにしました。

ExcelとRで学ぶビジネスデータサイエンス入門 表紙 

この本の特徴としては、できるだけ現実の経済データを使って説明し、通常入手が難しいデータもファイルで提供していますので、読者は同じ分析をして実感できることです。 

公的に提供されていないデータをファイルで提供しようとすると、著作権などいろいろな問題が起きます。しかし本書では、それをクリアできるデータを読者向けサポートウェブサイト(ここをクリック)に掲載しています。例えば、米国の株価指数のS&P500なども利用可能です。大学以前の金融経済教育の重要性が叫ばれているのに、日本の株価指数ではこのようなことができないことはとても残念です。

なお、東京経済大学はデータベースが充実していますので、学生になればものすごくたくさんのデータを教育目的で利用することができますので、安心してください。 

この本の後半はRという誰でも無料で使える統計分析用のソフトウェアを紹介しています。このプログラムもサポートウェブサイトからダウンロード可能です。以前はこのようなプログラミング言語は少々敷居が高かったかもしれません。しかし、今は生成AIを使ってプログラムを作成することも可能で(本書ではAIの説明はしていませんが)、ずいぶん使いやすくなっていると思います。

データサイエンスの教科書といえば 『データ分析のための統計学入門』 (原著第4版、翻訳初版第4刷、原題: “OpenIntro Statistics Fourth Edition”、著者:David.M.Diaz, Mine Çetinkaya-Rundel,  Christopher D. Barr、翻訳:国友直人、小暮厚之、吉田靖)という本も出しています(詳しくはこちら(日本統計協会のウェブサイト))。この本は、問題を解くことを中心とした解説になっていて、日本の統計学の教科書にはあまりないパターンです。ページ数の割には安価ですが、原著のPDF版はなんと無料を含む任意の非負の金額でOpen Introのウェブサイトでダウンロードできます。日本語版も出版されているものとは少し違いがありますが、翻訳者のうちの1人のウェブサイトからダウンロード可能ですので検索してみてください。私のゼミではこの本を使っています。

   

 最後になりますが、日本証券アナリスト協会の第2次レベルのテキスト『証券分析とポートフォリオマネジメント』詳細は日本証券アナリスト協会のウェブサイト)も多くの著者と共に執筆しており、毎年改訂しています。このテキストはファイナンスを勉強するためにとてもよい本なのですが証券アナリスト資格試験の第1次レベルに合格してから第2次レベルの受講を申し込んだ人だけに送られていますので、書店では販売していません。大学でファイナンスの勉強をして、金融機関などに就職したら是非ともチャレンジしてください。

それでは、授業でお会いしましょう。 

吉田靖 (担当科目:経営財務論、ファイナンス論、ビジネスのためのデータサイエンス入門、ファイナンス・経営のための数理入門など) 


2026年1月12日月曜日

外部スピーカーから社会変革と国際支援の実態を学ぶ

 流通マーケティング学科の丸谷です。68回目の執筆です。私はグローバルマーケティング論を専門とする教員です。本学には教員が自身の講義に実務家や外部の有識者を外部スピーカーとして招くことができる制度があります。今回は2025年12月にお招きした2人の講師によるご講演について取り上げます。










お一人目は、世界的NPO法人のフェローとして茨城県の公立小学校教員として活躍した後、現在英国バーミンガムに大学院留学している下境大貴先生です。彼は本学OBであり、留学中の英国よりZoomで使って収録しました。

下境先生には、『グローバルマーケティング論』の授業の中で、『社会変革のグローバルマーケティング』というテーマで、ご自身の日本での教員としての経験と英国で行った教育NPOを取材した内容を踏まえてお話ししてもらいました。

グローバルマーケティングでは、標準化と現地化のバランスをとることが大事といわれています。アメリカに起源を持つNPO本部が構築した国際ネットワークを通じて、下境先生が日本で所属したNPOと今回英国で取材した英国のNPOは、教育格差という世界中にある共通課題に対処すべくノウハウを共有してきました。



下境先生によれば、教育の格差といっても、日本では教育機会は平等であるが、質を高める必要があり、英国では機会自体が不平等な状況にあるそうです。

異なる状況において対処策は当然異なっており、日本では質を高める工夫、英国では機会の不平等を減らす工夫がされているようです。例えば日本では質を高めるために、下境先生も日本の小学校で行ってきたアクティブラーニングに関する様々な取り組みを、英国では人材戦略として、最高ランクの大学で学位を得た学生を採用し、「恵まれない地域」に配属し、人材不足の学校にとって彼らの存在自体が変革の一歩となっているそうです。

お二人目JICA(国際協力機構)からパナマ共和国に派遣され、国際協力の実務を担当された武井優薫先生です。


武井先生には、今年初めて担当した『英語で学ぶ経営学』の授業において、『パナマでの2年間』というテーマで、外国語を用いて海外で国際支援活動をすることについて具体的にお話し頂きました。武井先生は大学院にて文化人類学を学ばれた後実際にパナマに赴任し2年間国際支援活動をされたとのことで、この科目の深い理解の前提となる文化という部分について、パナマの先住民コミュニティでの生活の実態を含めて講義頂きました。

特に印象深かったのは、「ムラ」を研究するのではなく、「ムラ」で研究するという文化の品質的な理解に関する手法である参与観察についての説明であり、効率性を重視する経営学とは真逆のアプローチでの活動は、現在主流のタイパといった考えとは真逆であり、刺激的でした。

なお、武井先生と知り合ったきっかけは、日本・パナマ友好協会(日本とパナマの間の友好関係を促進する団体)による交流イベントでした。同協会は長年にわたり、両国の国際交流で重要な役割を果たしており、長年発行されてきた機関誌は両国の交流の歴史やパナマの事情について日本語でわかりやすく示した貴重な資料であり、ラテンアメリカ協会事務局のホームページ(https://latin-america.jp/wp-content/uploads/2025/06/%E4%BC%9A%E5%A0%B1PANAMA38%E5%8F%B7.pdf)より、最新号などはみられるようです。パナマに関心のある方はぜひアクセスしてみてください。

(流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)

2026年1月5日月曜日

先生も実は同じように悪戦苦闘しています:教員個人の研究活動とゼミ探求

 あけましておめでとうございます。経営学部講師の岩田です。

なかなか教員の研究活動や,普段そこで感じていることは学生さんからは見えづらいかもしれません。旧年中の振り返りも兼ねて,普段の研究生活をチラ見せしてみます。


「査読」

研究と一言で表現しても,スタイルは人それぞれです(例:論文執筆重視,社会実装重視)。とはいえ,学部を卒業して研究を突き詰める人たちが通う大学院では,まず研究の手法や考え方を学ぶために「論文を書く」というところからスタートすることが一般的です。


論文執筆の最終的な出口は学術的な雑誌への掲載というのが一般的ですが,これにはしばしば「査読」というプロセスがあります。

査読というのは,近い専門領域の研究者が他の研究者の書いた論文を審査して,「この論文はこの雑誌に掲載してもよいか?」というのを評価するシステムです。

その厳正な審査を突破することで,科学的な批判に一定程度耐えた成果物として学術誌に論文を掲載することができます。


この「査読」というのが審査する側もされる側も非常に大変nやりがいのあるプロセスで,ある研究を始めてから査読付学術誌への掲載に至るまでのほとんどの時間はこの「査読」への対応に投入されることになります。


ゼミでの探求は教員もしている「研究活動」そのもの

大学の先生というと,沢山のことを知っている専門家,あるいは授業で「正しい知識」を教える存在と認知されているかもしれません。

東経大では少人数のゼミで研究活動をし,教員は指導的な役割を果たしています。僕も,ゼミ生に毎週「こういう分析の仕方もありますよ」などとアドバイスすることはよくあります。


ですが,自分の研究活動となると,姿は少し変わります。査読では「ここの議論には問題がある」「分析方法に改善の余地がある」など,専門の同業者からの手厳しいツッコミを沢山受けます。

国際的に著名な学術誌ともなると採択は極めてハードルが高く,審査継続の通知よりもrejection(不採択)の通知を受け取ることのほうが圧倒的に多いです。

そうした学術誌は,「重要だけど皆が分かっていないことを,厳密に解明・分析する」ことを求めてきます。シンプルに難しいですよね。

2025年はこれまで進めてきた研究のいくつかが実った年でした。それと同時に,「We regret to inform you ...(訳:残念なお知らせですが…)」から始まるメールも10件近く受け取った記憶があります。


そういった意味では,ゼミで普段教えている教員も,「何でも知ってる先生」というよりは,「研究活動についてちょっと前を走っている先輩」と表現するほうがいいのかもしれません。

(注)今の僕の所感です。20年後くらいには違うこと言ってるかもしれません。色々な先生の話を聞いてみてください。

いざ探求を進めてみると,教科書で読んだことと実際の現場にズレを感じたり,そもそも「教科書に書けるほど厳密に実証された証拠が見当たらない」こともあったりします。ゼミ生からの成果報告を聞いて「こんな感じなんだな」と知識がアップデートされたことも沢山あります。


研究は,知識を覚えるというよりも,「まだ誰もはっきりと分かっていない問い」に向き合い続けることが求められます。ゆえに,査読というプロセスは(時に掲載を諦めたくなるほど)大変です。しかし同時に,他者からの批判を通じて自分の考えが少しずつ磨かれてまとまっていく,創造的な時間でもあります。

ゼミでの探求も,あるいは実務家として未知の経営状況に向き合うことも,本質的にはこうした研究活動と地続きに思えます。もし将来,アカデミックな道に進むことがなくても,分からないものに耐えながら考え続ける経験や,それと格闘するための科学的思考の訓練は,きっとどこかで役に立つと思います。


ぜひ,一緒にゼミで研究しましょう!(宣伝)


(文責:岩田聖徳)