2018年2月5日月曜日

「東日本大震災の被災地気仙沼市での取り組み」特別企画講義『インバウンドビジネスの理論と実践』より。


流通マーケティング学科の丸谷です。22回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行っていくのか)を専門分野にしているのですが、履修者の方々からインバウンドや爆買いについても取り上げて欲しいという要望がここ数年増加していました(私の授業では基本的にはインバウンドとは反対の、日本企業が海外に向けて行うマーケティングであるアウトバウンドを中心に授業を行ってきました)。



懸案解決のために企画した『インバウンドビジネスの理論と実践』の開始と図書館の展示については、20171016経営学部ブログにおいて取り上げました。



今回は企画者である私が見ていて、特に感銘を受けた20171219日にご講演頂いた東日本大震災の被災地でインバウンドビジネスの実務に携わってこられてきた有限責任監査法人トーマツアドバイザリ-事業本部パブリックセクターアドバイザリーPRプランナーの百瀬旬先生の講義に関して取り上げてみます。



百瀬先生は、広報、マーケティング領域で15年の実績がある方で、対外イベントの運営ディレクターも複数回経験された後、気仙沼市における地域DMO設立に貢献なされ、水産事業の商品開発やプロモーション支援を官民連携で推進、観光等の情報発信プロジェクトのアドバイザーリング業務及び産業人材の育成(経営未来塾の運営)を行ってこられた方です。


                  百瀬旬先生


皆さんダークツーリズムという言葉をご存じでしょうか?

ダークツーリズムとは、災害被災跡地、戦争跡地など、人類の死や悲しみを対象にした観光のことです。オバマ大統領も訪問された広島の原爆ドームや、のんさんの声が世界観とマッチしていて私も何度も泣いてしまった『この世界の片隅に』で描かれた呉市や彼女が訪ねた広島市などが有名ですが、東北地方では、今回の講義でも気仙沼市と連携した取り組みの中で取り上げられた陸前高田市の奇跡の一本松も非常に注目を集めました。


東日本大震災の被災地である気仙沼市の取り組みは、日本のダークツーリズムのリアルタイムな実践例です。

百瀬先生の講義は以下の流れで進みました。

1.東日本大震災について
・被災状況
69か月経った今の暮らし
・阪神淡路大震災や熊本地震との違い
・復旧から復興へ
2.気仙沼市の挑戦新しい基幹産業としての「観光業」
・水産業に頼らないまちづくり
DMO設立に向けたステップ
・インバウンドへの取り組み
3.質疑応答

1.東日本大震災についてでは、実際の震災の被害や百瀬先生が実際に被災地である気仙沼で居住されていた仮設住宅などについて多くの画像を使って解説頂き、被災地の現実を理解できました。


2.気仙沼市の挑戦新しい基幹産業としての「観光業」では、被災地であることを活用して行う観光業について、水産業を中心とした現地の産業構造を踏まえた上で、地域の観光業の司令塔DMODestination Management Organization)の設立から設立後5年間の取り組みについて具体的に講義して頂きました。








3.質疑応答に関しては、その場の質疑だけではなく、毎回取っていた意見質問カードに頂いた全ての質問にしっかり回答いただきました。



私が初めて企画した特別企画講義であったため調整に手間取ることも多かったのですが、なんとか掲げたテーマ通り、前半ではこの分野の専門家である野口晃一先生に、理論を解説頂き、後半では実際にインバウンドビジネスの現場で実務にかかわられている皆様にご講演頂きました。



受講者の皆さんに毎回提出してもらった意見や質問のレベルも回を追うごとに上がっていき、最後に提出してもらったインバウンド映像作成の課題についても、今回は映像の制作のやり方まではそれほど踏み込めなかったのにもかかわらず、一定の内容のものが提出されました。



今回の好評を受けて、東京オリンピックに向けて映像制作などより具体的な企画の立案も組み入れた企画も進行中です。更なる企画のレベルアップに向けてご意見なども随時募集中です。

(文責:丸谷雄一郎(流通マーケティング学科教授))