2024年7月29日月曜日

メキシコなどで活躍する実務家による講演報告と大人気ユーチューバーOGの講演予告

  流通マーケティング学科の丸谷です。66回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論を専門とする教員です。本学には教員が自身の講義に実務家や外部の有識者を外部スピーカーとして招くことができる制度があります。今回はメキシコやコロンビアで活躍する株式会社Encounter Japan執行役員の生田 祐介をお招きしお話しいただいたので取り上げます。 

講演者 生田祐介氏

 同社は「ラテンアメリカと日本の間で新たな歴史を創造し、人々の生活を豊かにする」というミッションを掲げ、日本食レストラン経営(メキシコ3店舗とコロンビア1店舗)、 日本産のお米の精米、日本酒の輸入・販売、ホテル・レストラン向けコンサルティングサービス、マーケティング戦略の立案、動画制作、デザイン制作、ウェブ制作、 代理店業務、市場調査、 販売促進などを行っている企業です。

 生田氏は20代後半と年齢も履修者の皆様とも近く、その経歴と現在の活動は、総務省が掲げるグローバル人材の定義、すなわち「日本人としてのアイデンティティーや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・ 積極性、異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できる人材」といえるため、甲子園を目指してずっと野球をしていた高校生から大学時代の海外経験についてまずお話しいただきました。 

講演資料より

 メキシコでの日本食レストラン事業と日本食材の輸入など現在の活動についてもお話し頂きました。レストラン事業については、メキシコでは格差が固定されているため、同社のレストラン事業は安定したメキシコ富裕層のニーズに的確に対応するために、既に評価が定着している日本料理をそのまま影響することにこだわりすぎるのではなく、欧米の高級レストランに彼らが求めるような洗練された見せ方や、カトラリーの提供などに注力しているというお話をしていただき、メキシコの富裕層の豊かな食経験を踏まえたマーケティング戦略という視点は非常に興味深く、日本人が自国で求められる水準にこだわりすぎるという話は日本企業の過剰品質の追求やガラパゴス商品の提供による失敗につながる話であり、グローバル・マーケティングの観点からも示唆に富むエピソードです。

講義資料より

 日本食材の輸入に関しては、EPA(経済連携協定)など貿易を促進する制度の利用は授業でもかなり触れている部分なので、実際の事例の提示は実態理解につながったようです。事例としてとりあげていた三陸のホタテ事業に関しては、写真などを用いて具体的に何が重要なのかを指摘しており、概念の説明が多くなりがちな講義に具体的イメージを提供してくれました。

講義資料より


 
前期に招聘させて頂く外部スピーカーは日本から海外への展開を実行されている実務家の方でしたが、後期9月27日に招聘されて頂く予定の外部スピーカーは、インバウンド需要の拡大にも貢献する、本学OGで年300日旅するアラサー夫婦ユーチューバーとしてSNSフォロワー数250万人越えを誇るくぼたびさんを予定しています。『くぼたび流暮らす旅のしおり(株式会社KADOKAWA)』はベストセラーになっています。非常に貴重な機会と考えますので、もしご関心がある方は私の方までご一報ください。

(文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)

 

2024年7月22日月曜日

特別企画講義「鉄道で考える社会インフラ整備・管理の未来」のご紹介②


 経営学部の三和雅史です。

 今回のブログでは、5/20のブログで紹介した特別企画講義「鉄道で考える社会インフラ整備・管理の未来」について、講義の様子を報告します。

 特別企画講義「鉄道で考える社会インフラ整備・管理の未来」は、7/19に無事、最終回を迎えることができました。今回の講義では、鉄道会社,あるいは国の機関から計13人の講師をお招きしました。これが2年前なら「○○殿の13人」をモチーフとしたチーム名を付けたいところでしたが、今年の「光る〇」の世界観とはギャップが大きいので、諦めました。13人の講師は、多くが鉄道会社の鉄道部門の部長や課長という立場であるため、災害発生等の異常時に急遽職場を離れられなくなるような事態の発生を想定しながらの授業運営となりましたが、幸い、何事もなく予定通り終了できました。現在、受講生にアンケートへの回答を依頼しており、その結果については、別の機会にご紹介できればと思います。

  今回の講義で対象とした社会インフラを支える仕事は、大きく「インフラをつくる仕事」,「つくったインフラによりサービスを提供する仕事」,「インフラを守る仕事」の3つに分けられます。13人の講師による講義の内容は、各々が多岐にわたるものでしたが、主なキーワードを当てはめて以下の図のように整理しました。 


インフラをつくる
 鉄道・運輸機構では新幹線や都市鉄道の建設が進められ、また東京メトロでも地下鉄延伸の他、駅改良や新駅設置が進められています。一方、地方での新しい路線の建設は、近年では殆どありません。「つくる」には、まちづくりや、これと一体になった鉄道整備も含まれ、阪急,東急の講師からは、まちづくりと鉄道整備への投資が住民,来街者,鉄道利用者を増やし、その収益が更にまちづくりに生かされるという好循環による地域,鉄道の発展の歴史が紹介されました。まちづくりの考え方は時代と共に変わり、東急と広島電鉄の講師からは、現代では単に便利になればよいのではなく、幸福感の向上、well-beingといった人間中心の観点が重要だという話がありました。「移動」が「幸福感」をもたらすという新しい考え方は、鉄道の価値の再定義につながるかもしれません。

つくったインフラによりサービスを提供する
 鉄道会社が線路に列車を走らせてお客さんや荷物を運ぶという最も基本的なサービスに「安全」,「安定」,「快適」,「便利」といった価値が合わせて提供されます。全ての講師が講義の中で触れた「安全」は鉄道輸送において最も優先される価値です。JR四国の講師からは利用しやすいダイヤの導入や他交通機関との連携について、また江ノ島電鉄の講師からは混雑緩和のための工夫等が、「快適」,「便利」といった価値を高める取組みとして紹介されました。大きな投資をしなくても既存インフラの有効活用により価値を高める手段がまだまだあるというのは、大変興味深いことです。物流を担うJR貨物においても、トラック,海運といった他輸送モードとの連携が進んでいます。社内,業界,地域との連携,協調によって構築した新しい枠組みに、新技術を組み合わせた相乗効果により、サービスレベルを一段も二段も上げていこう、というのが最近の流れのようです。

インフラをまもる
 設備老朽化,労働力不足,収入減少,災害激甚化という近年の課題との関係が特に深いのが、「まもる」仕事です。13人の講師の半分以上が土木,線路関係の方だったこともあり、「まもる」に関する様々な現状,課題,取組みが紹介されました。最も現場に近い目線で紹介下さった京阪電鉄の講師からは、「切れ目なくまもる」をキーワードに、線路の管理を社員が24時間,365日リレーして「切れ目なくまもる」こと、また夜間の線路内作業では徹底した時間管理と作業中に起きる様々なトラブルを想定した準備により、翌朝の始発列車から始まる毎日の運行を「切れ目なくまもる」こと、災害発生時には被災現場を速やかに復旧して鉄道事業の継続を「切れ目なくまもる」こと等が、現場社員の使命感や仕事のやりがい、達成感と共に語られました。また、どの会社からも「鉄道をまもる」、更に「鉄道をまもる社員をまもる」ために、新技術の開発,導入を進めていることが紹介されました。

 そして、これら3つの仕事を国として監督すると共に、各社の現状や社会動向を踏まえ、より実効性の高いルール(基準)を策定,更新してインフラの維持,発展を支えているのが、国土交通省です。

 3つの仕事は、いずれもインフラの維持,発展に欠くことができませんが、各々で様々な課題を抱えています。これを解決するために、講義では「新技術」,「協調,連携(社内,業界,地域)」,「職業の魅力と働きやすさ」,「制度,仕組みの見直し」,「価値創造(低環境負荷,幸福感)」といったキーワードが挙げられました。私は、これらのキーワードと東京経済大学の4学部での学び,知識とは、大いに関係があると考えます。
 例えば、「新技術をどこに導入するとよいか?」という問いには、費用対効果の分析が必要ですから、経済や経営の知識が有効です。「社内,業界,地域との協調,連携をどのように進めるとよいか?」、また「職場の魅力,働きやすさをどのように発信するとよいか?」という問いには、コミュニケーションに関する知見が重要です。「鉄道の新しい価値を創造するには?」という問いには、新たな価値の可視化,数値化,言語化が必要なので、全4学部の知識が活用できそうです。更に、これら全てに関係する様々な制度,仕組みの構築には、法学の知識も必要になるでしょう。このように、東京経済大学での学びや研究の成果は、社会インフラのような技術と社会にまたがるシステムにおける課題の解決、そして未来の創造に大いに生かされる可能性が高いというのが、計13人の講師による講義から導かれた1つの結論です。
 本ブログは経営学部のブログなので、改めて経営学部の観点でまとめます。
 以上では社会インフラを対象として話をしてきましたが、人類が解かなくてはならない課題のほとんどは、例えば環境問題にしても、多様な知識を動員し、融合させないと解くことができないものばかりです。学生の皆さんには、経営学部で学ぶ知識も、多様な分野の知識と重なり合うことで、問題解決やイノベーションの発生につながるという世界観やアイデンティティを是非持ち続けて欲しいと思います。






2024年7月15日月曜日

会計プロフェッショナルプログラム(会計PP)

 みなさん、こんにちは。経営学部教員の金です。今回は、私が座長を務めている、経営学部アドバンストプログラムの会計プロフェッショナルプログラム(会計PP)を紹介します。

 

公認会計士、税理士、および国税専門官は会計専門職の代表的なものです。公認会計士は企業の財務諸表の監査保証業務を執行する人として、主に監査法人や会計事務所で働きます。税理士は税金に関する業務を行い、主に税理士法人や事務所で仕事をしています。また、国税専門官は納税に関する業務を行う国家公務員として税務署等で働きます。これらはいずれも難関の国家試験に合格し、資格を得る必要があります。

 

そこで、会計PPでは、これらの資格試験の合格を目指す学生をサポートしています。具体的には年2回学内選考試験を突破し会計PP生として所属できた、学生に対して専門学校の指定講座受講料を大学が全額負担します。なお、会計PP生は経営学部のプログラムではありますが、全学部生が本プログラムに所属できます。しかし、難関試験ということもあり、合格するまでに時間がかかることから、所属できるのは2年生までと限定されます。また、すでに日商簿記1級あるいは全商上級の取得者は面談等の特別選考を実施し、早い段階から専門学校に通える制度も設けています。早い段階から会計専門職を目指す学生にとっては、大学での学習を進めながら資格勉強に専念できるシステムを整えていると言えます。

 


このように会計PPは経済的な部分以外のサポートも充実しています。まずは、財務会計、管理会計、税務会計および監査論といった会計の各領域にわたって、専門教員による充実した会計関連科目を大学授業として提供しています。なお、専任教員の中には公認会計士試験の合格経験者もおり、会計専門職を目指す学生に寄り添った指導も行えるようになっています。また、会計PPに所属すると、大学と専門学校の両立が求められる、いわゆるダブルスクールになるのですが、そのサポートを意識したプログラムになっています。たとえば、公認会計士の短答式あるいは論文式合格、また税理士試験の科目合格等については単位認定制度があります。また、持続的な学習モニタリングと面談を実施することで、モチベーションを失わず学習を続けられるための教職員のサポートを意識しています。さらに、大倉公認会計士会や税理士葵会といった卒業生による講演や面談を定期的に開催したり、実績を出した学生を表彰するなど、大学全体をあげてサポートしています。

 


              

健全な資本市場を維持するためには会計情報は信頼できるものでなければなりません。その意味で、公認会計士は市場の番人と呼ばれることもあります。また、税金は我々の生活において欠かせない存在です。その意味で、税理士および国税専門官の仕事は我々の生活を支えるものであるといえます。これまで会計PPでは多くの合格者を輩出しています。彼らの仕事は社会にとって非常に重要な役割を果たしており、仕事を通じて社会貢献に繋がる職業であるといえます。

 

東経大の会計PPについてより詳しく知りたい人は下記のサイトも見てみてください。

https://www.tku.ac.jp/department/tku-c-sys/advanced/kaikeipro.html

2024年7月8日月曜日

「戦略的」な夏休みを。

 経営戦略論担当の寺本です。

ブログ登場は2か月ぶり2回目となります。

前回は,ちょっと自己紹介をさせてもらい,その中で経営学と日常生活の接合点的な話を少しいたしました(https://tkubiz.blogspot.com/2024/05/blog-post.html)が,今回も似たような感じで経営と学生生活の考え方の接合点の話を一席。


   さて夏休み   

7月に入りまして,気が付けば夏休み。大学生には,約1か月半にも及ぶ夏休みがあるわけですが,何をするか決まっていますか?何をしたいとか,ちゃんとありますか?

これほどまでに長く自由に使える時間は,大学生の特権だと思います。社会にでたら,大学生の1か月半の夏休みや,2か月にも及ぶ春休みのような,長くまとまった休みは取りにくくなります。その意味で,まさに長期休暇は大学生の「特権」なのです。

これから大学を目指そうという考えをお持ちの方にも,これは考えておいてほしいと思っています。大学に入ったら何をしたいか?は,もちろん講義・ゼミ・研究や部活・サークルはもちろんのこと,こういった長い長い休みをどのように過ごすのかということを考えることでもあるかもしれません。


逆に言うと,この長期休暇をなにも考えずにただ無計画に消費するのはあまりにもったいないとも言えます。

そこで,ここは経営戦略論の教員として,提言したい!「経営戦略的夏休み」を。


   戦略?  

さて,ここでごくごく簡単に(経営)戦略なるものについて解説しておこう。

企業や組織は活動するにあたり,ただ闇雲に活動するのではなく,第1に目標や目的を設定し,それらを達成するために活動しています。一度,目標や目的が決定されると,次は現状の分析です。目標や目的が企業や組織にとっての「ありたい未来の姿」であるならば,現状の分析は,まさに企業や組織の「現在の姿」です。通常,この「ありたい未来の姿」と「現在の姿」にはGap(ギャップ)が存在するはずです。もしGapがない(=ありたい未来の姿をすでに達成している)ならば,そもそも頑張って経営活動を行う意味はないからです。そして,そのGapが明らかになると,そこからはそのGapを埋めることを考えなければなりません。企業や組織が持っている経営資源は有限ですから,その経営資源をどのように配分してくのかを考えたり,時系列的にいついつまでに何を達成するという風に,考えます。


この一連の流れを(経営)戦略という言葉で言い表すことが一般的でしょう。つまり,

①目標を定め

②その目標を達成するために道筋を決定し

③資源を適切に割り当てる

この3つの一連の活動を経営学では経営戦略と呼んでいます。


 戦略的夏休み? 

さて,夏休みに話を戻そう・

私が学生の時の夏休みの思い出に,住んでいる東京から実家のある大阪まで自転車旅行をしたという出来事があります。

ことの発端は,広島に実家がある高校来の友人から,誘われたことでした。その友人は,「自分は東京⇒広島を自転車で帰るつもりだが,大阪まで一緒に行かないか?」と誘ってきたのでした。たしか,それが6月の末くらい。いいね。と二つ返事し,決行は8月(二人の前期(1学期)の試験が終わったタイミング)と決まりました。


ここまでで,

夏休みの目標 東京⇒大阪を自転車で踏破する が決定しました。


そこからは,

・東京―大阪間は約500㎞ある。⇒ 夏の炎天下の自転車移動であれば,1日行けて100㎞だろう。

 毎日毎日100km進むのも難しい可能性があるので,1週間(7日)を目標に大阪に到達しよう。

・基本的には,国道1号線沿いを西へと進もう

・宿泊は,できれば「道の駅」で野宿か,ユースホステル。なければ,カラオケボックスで寝泊まりしてみよう。

・ただの移動ではなく,道すがら寄りたいところには寄って,観光もしよう。

・水道があれば,洗濯しよう。


などということを決定していきます。


さらに,私は自転車を持っていなかったので,出発までには自転車を購入したり,1週間の旅行に耐えられるよう荷造りしたりというミッションも出てきました。

ただの自転車ではなく,1週間かけて500㎞走るわけだから,ある程度,丈夫で乗り心地がよく,最悪の場合,持ち運びもできるようにと,クロモリという材質でできたフレームのミニベロ(小径車=タイヤが小さい自転車)を選んだのを覚えています。

(そして,集合当日に現れた相方が,ママチャリであったので閉口したのも覚えています。)


さて,そんなこんなで準備をひとしきり楽しんだあと,出発当日,楽しくも苦しい一週間が始まるのでした。


ここまでの準備で忘れていたこと,それは「不測の事態」への対応です。

そして,それがなんと出発したその日に起こってしまいます。

50㎞ほど走ったところで,私の自転車がパンクしてしまったのです。しかし,私たちはパンク修理キットも持っていないし,そもそも修理の仕方も詳しくは知りませんでした。一日目にしていきなりストップがかかり,自転車屋を目指します。


相方も私も,パンクということは全く想定しておらず(今から考えたら想定が甘すぎる),修理キットやタイヤチューブを持っていなかったのです。


自転車に行っても,さらに問題が…。私の自転車,ちょっと特殊だったようで,修理はできてもチューブは在庫がない…とかなんとか。一日目にして,大阪目指すどころか,神奈川の藤沢周辺で自転車屋巡りをしているというグダグダっぷり。書いていて,情けなくなってきました。


戦略って完全なものはないんですよ。かならず,不測の事態が起こるし,環境も変化する。だから,常に見直すってことも大切なんだということを,今からなら考えられたでしゅう。


そんなこんなで,ある神社で野宿させてもらおうと思ったら断られたり,途中で道を間違えたり,膝が痛くなって自転車が漕げなくなったり,あれやこれやトラブルがありつつ,それをその場その場で何とかしのぎ,最終的には道を間違え1日早く大阪に到着するという,なんともいえないオチまでついて…。


 まとめ 

まあ,こんなことを真似する必要はないのですが,折角の長期休暇,折角の時間。

是非とも,なんの目的もなくバイトに明け暮れたり,なんの目標もなく無為に過ごすよりは,戦略的に,つまり

・目標/目的をつくり

・そのためになすべきことを考え

・そして自分ができることをやる(資源を配分する)

を意識しながらやってみてください。


そして,いろいろと冒険してみてください。

文責:寺本直城

2024年7月1日月曜日

なんでドラッグストアは新規出店が多いのか?

 2024.07.01

経営学部で流通論を担当している本藤です。
ボクの主な研究領域はドラッグストアなのですが、近年ドラッグストアの新規出店が止まりません。大型店出店する際には大店立地法の届出が必要になるのですが、毎月更新される届出情報を見ると、ドラッグストア業態が目立ちます。

なぜドラッグストアはこんなに新規出店するのでしょうか?

小売業態には最寄型小売業態としてグルーピングされているお店があります。
コンビニエンスストア、ドラッグストア、スーパーマーケットあたりです。
それぞれ商圏規模は違うんですよね。
各社の営業努力によって、必要な商圏人口は小さくなってきています。
コンビニエンスとアは4,000人、ドラッグストアは10,000人、スーパーマーケットは25,000人くらいまで小さくなってきているんです。逆に言うと、最低限これだけの人口を確保しないと商売が成り立ちません。

これらの小売業態は、最も近い店舗が利用される傾向にあります(だから「最寄型」なんですけどね)。多くの人にとって「最も近い店舗」というのは「最も多い店舗」を有するチェーンが利用されるということになります。だから「近さ」を追い求めて「多く」なってます。

このようなことを前提として、これらの最寄型小売業はエリア・ドミナント戦略として、特定地域に集中的に出店攻勢をかける企業があります。「地域一番店」を目指すことが競争優位につながるからです。

食品を拡充したメガドラッグストアとして、南九州エリアではコスモス薬品、浜松エリアでは杏林堂薬局、愛知・岐阜エリアではゲンキーが強固な地盤をつくっていますし、中規模サイズの店舗としては、門司エリアのサンキュードラッグ、いわきエリアのマルトなど地方都市ではエリア・ドミナントを築いているチェーンは多いのです。

最寄型小売業の業界では、コンビニエンスストアは上位集中が進み、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンなど超巨大企業になっていますが、ドラッグストアとスーパーマーケットはローカルチェーンがドミナント戦略を展開しながら存立基盤を形成している状態です。

しかし、この春に業界一位のウエルシアと二位のツルハが経営統合するというニュースが発表されました。ローカル主導だったドラッグストア業界とスーパーマーケット業界が今後どのような展開を見せるのか注視していきたいと思います。


文責:本藤貴康(東京経済大学教授)

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東京経済大学 本藤貴康ゼミナール (hondo-seminar.blogspot.com)