2014年4月14日月曜日

「産業特論」―ビジネスの生々しさと実務家の生き様を知る講義―

流通マーケティング学科の北村です。今回で3回目の執筆です。今回は、私が担当している授業の1つ「産業特論I-ファッション・ビジネス論-」について紹介したいと思います。

この授業は以下の4つの意味で、他の授業とは大いに異なる様相を呈した、特徴のある授業となっています。
1.「現代産業論」として位置づけられる
2.現代産業の中でも、特定の産業を取り上げる
3.実務家のゲストが毎回講演を行う
4.将来的にファッション産業で活躍する人材の早期育成を図る

若干補足します。まず、12について。日本は官民一体となって、現代産業を世界各国に売り込み中です。皆さんも「クールジャパン」戦略という言葉をニュース等で見聞きしたことがあると思います。つい先日も、クールジャパン推進機構(官民ファンド)が投資する5つの分野が発表されましたが、「コンテンツ(アニメや音楽)」や「食文化」などと並んで「ファッション」が含められました。このようにファッションは、現代産業のうち、海外への情報発信や輸出にさらに注力すべきとされる産業であり、この授業はこれに焦点を当てています。

次に、34について。この授業では毎回、実務家のゲストをお招きします。先ほど「私が担当している」と書きましたが、実際の授業の目玉はゲストの講演なのです。もともとは、ファッション産業人材育成機構(IFI)という業界団体が、既に業界で働く社会人のために開講している学校で教えているような内容を、大学生、特に経済・経営系の学部生向けにアレンジした「大学講座」という位置づけになっています。全国で800弱ある大学のうち、本学を含む10大学ほどでしか開講されていません。

参考までに、今年度登壇予定のゲストは、次の各氏です。

奥谷 孝司 氏 : (株)良品計画 WEB事業部長 
秀一 氏 : JUKI(株) 縫製機器ユニット CS 推進部 縫製研究所 主査 
山本 道夫 氏 : 清原(株) アパレル商品開発課 開発マネジャー 
入川 秀人 氏 : 入川スタイル&ホールディングス(株) 代表取締役社長 
雑賀 氏 : (株)島精機製作所 営業統括部 アジアユニットリーダー 
小森 美穂子 氏 : エクリュ 代表(ファッション・コーディネーター) 
沼田 明美 氏 : (株)ヌマタデザイン・アソシエイツ 代表取締役 
重永 氏 : (株)生活の木 代表取締役社長
井上 隆太 氏 : (株)パル 代表取締役社長 
齊藤 孝浩 氏 : (有)ディマンドワークス 代表 
前田 裕司 氏 : (株)トゥモローランド 人事総務部長
濱田 博人 氏 : (株)TSIホールディングス 取締役 経営戦略本部 企画開発部長
宮崎 俊一 氏 : (株)松屋 特別専門職 バイヤー  

皆さんが知っている会社は、あまり多くないかもしれません。しかし、以上の各氏が運営したりアドバイスしたりしているブランドや商品は、必ずや皆さんの身近にあるはずです。よかったら、会社名や人名でネット検索してみて下さい。

ところで、皆さんは、なぜ今身に着けている服を買ったのですか?「何となく気に入ったから」、でしょうか?
服や靴や時計のようなファッション商品は、消費者が「何となく気に入って」買ってしまう商品だというのは、事実だと思います。だからこそ、ビジネスを展開する上で、企業側は以下のようなバランスを取るという難しい課題に直面しているのです。

1.商品要素のバランス

ファッション商品は、素材や縫製、機能性が優れているだけでは、売れません。自己表現のツールでもあるので、色やデザインなど消費者の感性にも訴えなければならないのです。さらに、時代の気分(例えばエコや景気)を反映するものでもあるので、社会性を帯びた商品だとも言えます。企業側は、以上の機能性・感性・社会性のバランスをうまく取らなければならないのです。

2.業態・販売時点ごとの利益のバランス

皆さんはファッション商品をどこで買いますか?あるいは、いつ買いますか?
百貨店、ファッションビル、ショッピングセンター、セレクトショップというように、お店のタイプ(業態)は多岐にわたります。近年はお店に行かず、インターネットやテレビ上の通信販売業者から、試着もせずに商品を買う人も多いですよね。
時期についても、シーズンに先駆けて買う人がいれば、セールでしか買わないという人もいるように、購入のタイミングもバラバラです。しかも、ファッションはシーズンごとにどんどん移り変わるので、売れ残りを翌年売るというのも難しいです。
これは企業側からすれば、どこで、いつ、どの商品を、いくつ売るかというバランスを計算しながら、時には値下げしてでも売り切り、それでも利益を確保しなければならないことを意味しています。

こうしたビジネス上のポイントについて考えてみると、ファッション産業の大変さと面白さがよく感じられますよね?

さらに、この授業では、講演後にゲストに直接質問できる時間もあります。ゲストは学生時代に何をしていたのか?なぜファッション・ビジネスに就こうと思ったのか。その後、具体的にどのような目標を立て、何をしたのか?――こうした質問を通して、ゲストの生き様に触れられるのも、ゲストを招く授業の1つの醍醐味です。一期一会というように、もう二度と会えない人との出会いを大切にしてほしいと思います。

なお、2学期には、金融業界や食品業界から毎回ゲストを招く「産業特論II」(加藤みどり教授担当)も開講されています。また、毎回というわけにはいきませんが、経営学部の多くの授業ではゲストをお招きしているはずです。ビジネスも、それを手掛けている人からも、生々しさを感じてほしいと思います。

文責:北村真琴(流通マーケティング学科 准教授)