2014年9月1日月曜日

合同ゼミ報告―プロ野球の顧客満足向上策の重要性―

こんにちは。流通マーケティング学科の北村です。
今回は、つい先日、大阪で開催してきた合同ゼミについて紹介します。最後にクイズもあります。ぜひ挑戦してみて下さい。


私のゼミは毎年、専修大学・神原ゼミと、京都産業大学・福冨ゼミとともに、2日間の合同ゼミを開催しています。例年は、1日目に3ゼミ合同の少人数チームを作り、フィールドワーク(現場調査。詳しくはhttp://tkubiz.blogspot.jp/2014/06/blog-post_24.html参照)。2日目に各ゼミでの調査・研究プロジェクトの発表をしています。

しかし、今回は、京産大のゼミ生の一部が産学協同プロジェクトとして、プロ野球球団オリックスのファーム(2軍)の活性化策を考えているということもあり、1日目を京セラドーム大阪にて、特別講義付きのオリックス・バファローズ1軍戦観戦企画としました(福冨ゼミと共同研究している京産大・井村ゼミも特別参加)。試合前の講義は、球団職員の三上さんによるもの。関西人のノリと、バファローズ愛を存分に感じさせる方でした。

軽妙なトークの中に、年俸と勝率の相関など真面目な解説も。

三上さんによると、プロ野球の試合時間(大体3時間強です。http://www.npb.or.jp/gbp/2013time.html参照)のうち、ボールが実際に動いているのは、20分程度だそうです。つまり、その他の大半の時間では、ボールは投球前のピッチャーの手中にあったり、回や表裏の交代中のため死んだボールだったりするのです。

確かに、そこが野球ファン以外から「野球ってつまらない」「試合時間が長い」と思われる要因の1つでもありますよね。

そこで、球団は、既存のファンを維持し、新規ファンを獲得して、楽しんでもらおうと頑張っています。今回の試合中では、例えば「回や表裏の交代時に、大画面に映された観客とジャンケン」という企画がありました。

(ちなみに私が以前に観戦した米国メジャーリーグの試合では、「大画面に映された観客がキスをせねばならない」という企画がありました。カメラマンは見た目でカップルらしき人を選んでいるのでしょうが、日本人からすると、誰もが恥ずかしがらずにキスすることに、驚きと米国ならではのノリの良さを感じました)

チームの強化はもちろん、ボールが動いていない間もファンを楽しませる工夫も重要なのです。

というわけで、当日はこうした「観戦のポイント」をいくつか聴いた上で観戦したので、顧客満足を向上させるための球団による工夫や球場内での仕組みを多々発見できました。


では、お待ちかねのクイズです。これは私が個人的に三上さんから出されたものです。
試合終了後、その試合で活躍した選手に対して行われる「ヒーローインタビュー」を実施する5つの意図とは、何でしょうか?
5分間あげます。できるだけ多く考えてみて下さい。

いかがでしょうか?
ちなみに私が考えたのは、下記のとおりです。
1.選手の声をファンに直接届けるコミュニケーションの場を作る
2.活躍した選手が「また頑張ろう」とモチベーションを向上させるのを促す
3.スポーツニュースで取り上げられる素材(映像・写真)をマスコミ各社に提供する
4.選手の背後にあるパネルに広告を出していたり、選手への賞品を提供(食べ物1年分など)しているスポンサーの名を売る
5.選手の隣にいるインタビュアーやマスコットキャラクターの名を売る

ちなみに、三上さんによると、2と3はいずれも「選手の価値向上」で同じこと。5は、間違いではないが正解ではないそうです(確かに、無理やり考えたものでした)。
私はギブアップして、三上さんの言う「正解」を聞いたのですが、確かになるほどと思えました。

というわけで、皆さんはぜひギブアップせずに、「1.選手とファンのコミュニケーション」「2.選手の価値向上」「3.スポンサー対応」以外の、4つ目および5つ目の意図を考えてみて下さい!






・・・といっても、難しいですよね。では、第一ヒントです。以下は、当日撮った写真です。よく見てみると、気づくことがあると思います。
ヒーローインタビュー中。この中に正解も写っていますよ。






・・・どうですか?やはり分かりませんか?では、第二ヒントです。選手目線でも、スポンサー目線でもダメです。球団・球場運営目線で考えてみて下さい。






・・・ギブアップしますか?では、最後のヒントです。写真をよく見て下さい。ヒーローインタビューを間近で見ようとネット裏に集まっている人もいれば、背を向け帰ろうとしている人もいますよね。






・・・分かりましたか?正解は、

4.ヒーローインタビューまで残る観客とそうでない観客を作ることで、観客が球場を出るタイミングをずらし、出入り口や交通の混雑を減らす。
5.ヒーローインタビューを間近で見ようと、もともとの座席から移動していた観客が、ネット裏の座席の良さを知ることで、次回以降の席のプロモーションとなる。

だそうです。
5について補足です。指定席と自由席の間は、試合中には柵があり、係員もいるので移動できませんが、試合終了後は柵が撤去され、係員は別の場所に配備されます(恐らく出入り口や帰路誘導)。よって、値段の安い自由席で観ていたファンも、ネット裏など値段の高い席に移動でき、その席からの見え方を確認できるというのです(球団としては、次回は値段の高い席で観たい、と思わせられたらOK)。



納得できたでしょうか?なお、ここで私が言いたいのは、こうやって何かの意図を考えることは、すごく良いトレーニングになる、ということです。

皆さんは高校生だったり、大学生だったりして、自分の選択でお金を使う機会が増えてきている時期だと思います。あくまで本人としては、自分の意思でお金を使っていると思っているでしょう。しかしその背後には、皆さんに自然とそうさせる仕掛けがあるはずなのです。つまり皆さんは、仕掛けにまんまとハマっただけだとも言えるのです。

そこで、これから通学途中の道や、電車内や、コンビニの店頭で、考えてみて下さい。「なぜこの企業はここに広告を出したんだろう?」「どうしてこんな色でこんなメッセージにしたのかな?」「きっとこれは・・・をターゲットにしたんだろうな」「だとすると、私なら・・・というメッセージに替えた方がよいと思うのにな」など。こういうことを考えていくと、企業側の意図に気づくことも出てくると思います。

皆さんも数年後に社会に出たら、今度は他人にお金を使ってもらう機会を作ることを考える立場になります。これは、得意先企業との商談でも、最終消費者相手の店頭販売でも、基本的に同じです。こうしたトレーニングは、仕掛ける側になれるか、仕掛けられる側のままでいるかを分けるポイントになるという意識で、今後取り組んでほしいと思います。

2日目終了後、梅田駅での集合写真。すごい人数です!