2019年8月26日月曜日

かつて8年間住んだ名古屋郊外赤池駅近くに巨大商業施設開店



  流通マーケティング学科の丸谷です。31回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、海外に出張に行くことが多く、このブログでも米国、インド、中国、チリ、ペルー、ブラジルの出張の模様を取り上げてきました。

 しかし、私は大学時代から国内の小売企業についても研究を継続しています。私の大学時代の卒業論文は、1980年代当時急成長していたテナントの巧みな入れ替えで成功していた専門店ビルのパルコや建設会社という異業種から参入だからこそできた仕入れと販売を同じ人が行う東急ハンズについて取り上げました。

大学院の修士論文でも1990年代のバブル経済の崩壊まで日本の小売を牽引していた5大総合スーパー(ダイエー(イオンに吸収)、イトーヨーカ堂、ジャスコ(現イオン)、マイカル(現イオン傘下)、西友(元ウォルマート傘下)の研究でした。こうした研究は小売の本質的理解を深める意味でもサブテーマとして継続しており、「グローバル・マーケティング」とともに本学で担当している講義「流通マーケティング入門」でも「ロードサイド」と呼ばれる郊外における小売業の発展や集団立地の主要形態としてのショッピングモールの事例として活用しています。


 少し前置きが長くなりましたが、今回は前任校の愛知大学の教員時代に8年間住んだ名古屋郊外赤池駅近くに2018年にできた大型商業施設とその周辺の状況に関して取材してきたので、そのことについて取り上げます。
今回取材した地域(地下鉄鶴舞線赤池駅周辺)
 今回の取材対象である大型商業施設の最寄駅である赤池駅は、名古屋市南東部の天白区に隣接する日進市にある名古屋の地下鉄鶴舞線の終点駅であり、ここからトヨタ自動車のおひざ元である豊田市をつなぐ名鉄豊田線が相互乗り入れしています。

 私の前任校の愛知大学は愛知県では南山大学、名城大学、中京大学と並ぶ有名私大であり、本部は愛知県豊橋市にありますが、私の採用された経営学部は名古屋校舎にあり、当時名古屋校舎が名鉄豊田線で赤池駅から2つ目の黒笹駅にあったため(現在名古屋校舎は名古屋駅近くの笹島に移転)、地下鉄路線上で名古屋駅中心部へのアクセスもよく、大学にも自動車で通い易く(トヨタがあるだけであり、中京圏はほんの一部の中心部を除いて車社会であり、教員をしていた当時の大学生は大学進学が決まると免許取得に動いていました)、家賃も安い赤池駅に住むことになりました。

かつて住んでいたアパート(今も前の畑の状況は当時と変わらず、風が強いとほこりが大変そう)
当時の赤池駅は地下鉄の終点駅とはいえ、駅の前にロータリーがあるだけの寂しい駅でした。駅前のバス停も1時間に1本程度しか来ない路線があるだけ、食事場所もマクドナルドとシフォンケーキがおいしい喫茶店が一軒あるだけでした。

赤池駅を今回取材しようと考えたのは赤池駅近くにシネコンが入った大型商業施設ができたという記事を流通の専門業界誌『販売革新』20181月号記事「プライムツリー赤池 イトーヨーカドー赤池店 : 新挑戦ちりばめた食品改革モデル店 その取り組みはGMS改革まで届くか」にて発見したからでした。

2月にも九州の典型的な地方都市の小売事情を取材するために、福岡県、熊本県、宮崎県で現地を訪れました。しかし、一度の取材では発展経緯の理解や継続的な調査の困難さといった限界もあります(鹿児島県阿久根市の店舗は3度目でしたので、時系列での変化が確認できましたが)。赤池での大型商業施設の開店は私にとっては上記の限界を乗り越える機会になりました。8年住んでいた場所なら現地の消費事情にも精通していますし、現在の状況も当時知り合った同僚などから容易に確認できます。こうしたタイミングでゴールデンウイークが10連休となり、さらに愛知大学時代のゼミのOBOG会へのお誘いもあったので、調査を行いました。


 赤池に着くと、早速大型商業施設プライムツリー赤池(施設詳細については、http://www.prime-tree.jp/web/を参照)に向かいました。セブン&アイグループが運営するこのモールは駅からバス停1つ分歩く距離に立地しています。地下鉄と名鉄豊田線の連結駅という立地ゆえに電車利用も意識しつつも、幹線道路へのアクセスのしやすさを意識した巨大駐車場の配置から、自動車社会である名古屋郊外という立地を重視していることがわかりました。



赤池プライムツリーの外観
 赤池駅前は私が在住していた頃にはあまりなかった、高層マンションが多く建設されており、これらのマンションに入居する子育て世代を意識したテナント構成や商品の品揃えがなされていました。
赤池駅から国道153号線の間にできたマンション群
 このモールの目玉は商品販売だけでない体験であり、その象徴が東宝が運営するシネコン「TOHOシネマズ赤池」です。10スクリーンという数だけではなく、MX4Dといった最新設備を装備し、訪れた当日もMX4Dのスクリーンではハリウッド大作「アベンジャーズ・エンドゲーム」が上映されていました。
 また、ちょうど近くで中京圏最大のプロゴルフのイベントである中日クラウンズが開催されていたこともあり、もう1つの目玉である階段状になっている座席を有するステージでは中日クラウンズに関連するゴルフイベントが行われていました。



ゴルフイベントの様子


階段状になっているステージの座席
  駅周辺についても状況を確認するため、駅から以前に住んでいたアパートまで15分ほど歩いてみました。駅を少し離れると状況は依然とほとんど変わりありませんでしたが、変わりなく建つアパートの近くの交差点横に愛知岐阜三重の東海三県に店舗展開する地元食品スーパーのカネスエが営業しており、少しずつは利便性が向上していることが確認できました。

 
カネスエ浅田店外観

 今回は時間の制約もあり短時間での簡単な訪問調査となりましたが、地方の郊外立地の商業施設の典型事例として今後とも継続的に取材していきたいと考えてます。流通やマーケティングを理解するためには、実際の現場に行って継続取材することは非常に重要です。時間にある時期にぜひ関心を持って流通やマーケティングの現場を継続的に訪れてみてください。
(文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)