流通マーケティング学科の丸谷です。38回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、現地調査で頻繁に海外を訪問します。このブログでもこれまでも海外調査で訪問した国で普及する新たなサービスについて取り上げてきました。今回は数年前に米国で普及し始めたBOPISというサービスがコロナ禍で普及し始めたそうなのでとりあげてみます。
皆さんBOPISという言葉を知っていますか?
BOPISとはBuy Online Pick-up In Store(オンラインで注文し店舗で受け取る)ことです。お客さんは事前にスマホなどでイオンのオンラインサイトで食品などの商品を注文し、店員さんが店頭商品も含む在庫から注文された商品をピックアップし、店舗の駐車場の指定の場所まですべての商品をパッキングし、指定時間に持ってきてくれ車に積んでもらえます。
顧客側のメリットは①配送なら一定料金以下ならかかる送料がかからないこと、②いつ来るかわからない商品を自宅で待たなくていいこと、③事前に決済まで終わりパッキングもしてくれるので車から降りず買い物ができることに加えて、コロナ禍という条件付きではありますが、④入店しなくていいので感染リスクも低いことです。
私が長年研究対象とする日本では西友を展開する世界最大の小売業者ウォルマートでは、コロナ禍とは関係なく、2010年代半ばから都市部から郊外へ攻め込むアマゾンへの対抗策として普及し始め、既に米国店舗ではかなり浸透していました。海外の店舗への導入も進み、私が2018年に取材したアルゼンチンの首都ブエノスアイレスの店舗でも既に受け取り専用レーンが一部店舗に導入されているのを確認しました。
私はネット小売の普及に関して国内取材も続け、このブログでも2019年12月9日に「福岡でスマートレジカートを実用化した店舗」を取材した内容を取り上げています。BOPISに関しても、私はコロナ禍直前の2020年2月初めに既に先行導入が開始されていた三重県の津市にあるイオンモール津南に取材に行っていました(導入したのは2019年11月)。
イオンモール津南のイオンスタイルに導入されたBOPIS用設備はそれなりに立派でしたが、取材した際には開店休業状態で、設備はつくってみたものの、利用はなされていないようでした。店員さんにインタビューしてみても「利用は週末に少しされているが・・・」という寂しい感じの回答で、取材にはつきものなのですが、「時間かけていってのに・・・」という感じでした。
コロナ禍となり、イオンが細々と実験的に導入していたBOPISに急激が集まり始めています。コロナ禍でイオンが運営するネットスーパーの売上は3-7月に2割増加したことがきっかけでした。これまで食品のネット販売はあまり普及していませんでしたが、イオンもネット販売の利便性を知った顧客への対応を積極的に行う方向に一気に舵を切りました。BOPISの普及もこうした動きの一つであり、7月30日からは関東のイオン柏店でもBOPISが開始されたと経済ニュースなどでも大々的にとりあげられました。
イオン柏店ではまだイオン津南店のような専用レーンは設置されていないようですが(コロナ禍でなければすぐに取材に行くのですが直接見れていませんが)、イオンリテールも施設整備を積極的に行っていくことを検討しているようです。
こうした動きが進めばネット注文した商品を店頭でも受け取ることもできるという従来のレベルの対応から、ネットと店舗の継ぎ目がないシームレスな対応という一歩進んだレベルへネット対応が進む可能性が高まり、対応レベルが上がれば当然利用も促進されていくでしょう。
コロナ禍で都心部ではウーバーイーツが一気に普及し、東京経済大学の周りにもあの特徴的なかばんを担いだ自転車が多く走り回るようになりましたが、郊外のショッピングモールの風景も大きく変わるかもしれません。
(文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)