流通マーケティング学科の丸谷です。52回目の執筆です。私はグローバル・マーケティングを専門として研究を行ってきました。私の主な研究対象は世界最大の売上高を誇る小売企業ウォルマートですが、ウォルマートも苦戦した日本市場で継続的に成功しているのが世界でもウォルマート、アマゾンに次ぐ第3位の売上高を誇るコストコです。今回はコストコの最新店舗を訪れる機会を得たので、コストコについてとりあげます。
丸谷雄一郎(2022)『ウォルマートのグローバル・マーケティング戦略(第3版)』創成社、11頁。 |
コストコの全国30店舗と31号店の壬生倉庫店 |
コストコ壬生倉庫店外観 |
壬生倉庫店は宇都宮の旧市街にある東武鉄道宇都宮駅から約15分のおもちゃのまち駅からバスで8分ほどの場所にありました。そもそもバスで来る人はあまりいないロードサイド立地のためバスの本数は非常に少なかったです。コストコのとなりはホームセンターのカインズ、正面にはヤマダ電機があり、ダイソー、マクドナルドも隣接しており、典型的なロードサイド立地です。
コストコ壬生最寄りのバス停の時刻表 |
なお、おもちゃのまちの由来は現在タカラトミーとなったトミー工業の創業者富山栄市郎の働きかけで玩具製造関連会社が集積する工業団地「おもちゃのまち」が1965年に作られたことにあるようです。工場はその後多くが撤退したようですが、壬生町にはこの歴史を踏まえておもちゃ博物館が作られ、コストコのすぐ近くにもバンダイおもちゃミュージアムが移転してきており、おもちゃのまちの伝統は宇都宮のベットタウンとなった今も続いているようでした。
コストコが展開する唯一の業態は会員制ホールセールクラブと呼ばれる業態なのですが、ホールセールとは本来卸売という意味なのです。しかし、私のような一般消費者も年間4000円少しの会費を払えば会員になれるので、日本では小売として広く認識されています。最近神戸物産が展開する業務スーパーが成長していますが、卸売とか業務とかいうと大容量で低価格のイメージがわきますし、少し似た印象を感じます。
実際、今回の訪問でも大部分の顧客は一般消費者のようでした。平日午後の時間帯であったにもかかわらず、家族なら子供は入れるということで、多くの一般消費者とみられる家族ずれの皆さんがレジャー感覚で店舗を訪れているようでした。店頭のトレジャーと呼ばれる大型お買い得品の大型テレビなどの列を過ぎ進んでいくと一番目につく場所に栃木県の老舗メーカー米菓メーカー丸彦製菓のおかきが置かれていました。
時間帯が夕方に近づくにつれて試食コーナーが店内のいたるところで即席に設置され、ワイン、パン、肉、スイーツ、シロップまでいたるところで試食できます。子供なら試食だけで満腹になるほどでした。試食も常に一定の場所で行っているわけではなく、突然始まり一定数の試食が終わると終了するようでした。商品の購入単位が大きいので試食の意味は大きく、名物となっているクロワッサンは試食した人の多くが購入していました。
コストコは売り場面積10000㎡の大規模駐車場を備えた倉庫店で自社の会員に向けて各カテゴリーのアイテム数は厳選しながら、大容量低価格商品を販売し定着してきました。出店ペースは無理をしないペースを維持し、2020年以降再び出店ペースを少し上げてきています。近年では未出店地域をカバーするためにネットでの販売も活用し始めるだけではなく、コストコの商品を取り扱う別資本の店舗とも連携しています。
コストコ商品販売店であるstockmart下北沢の外観と店内の様子 |
今回改めて店舗を訪れて会員を強く意識し、無理して成長しない姿勢を垣間見ることができた。ウォルマートですら撤退した日本においてしっかり定着するための工夫に関しても今後さらに注目していきたい。
(文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)