流通マーケティング学科の丸谷です。61回目の執筆です。私は「グローバル・マーケティング論」を専門としており、海外でどのようにマーケティングを行うかについて研究しています。今回は前回(2023年9月25日公開)に続き、イギリス出張報告第2弾として、北部商業都市リーズについてとりあげます。イギリスはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つに分かれ、イングランドは9つのリージョン(地域)に、リージョンは州に分かれています。リーズが属するヨークシャー・アンド・ザ・ハンバー・リージョンも5州に分かれており、リーズは5州の1つであるウェスト・ヨークシャー州の州都です。首都からの距離や街の成り立ちを考えると、リーズは仙台くらいのイメージでしょうか?
ロンドンからリーズさらにアズダのスーパーマーケット事業発祥地への経路 |
リーズはイングランド北部ウェスト・ヨークシャー州の州都であり、産業革命後はイングランドの東西を結ぶリーズ・リヴァプール運河の東の起点として発達した都市です。中心部にあるリーズ駅へは、イギリスの首都ロンドンの北への玄関口であるキングスクロス駅から高速鉄道で北へ2時間半弱かかります。こうした地理的な特徴を活かしてプライベートブランドを販売するお店が日本にもたくさんあるマークスアンドスペンサーや私の研究してきたウォルマート傘下として小売第2位にもなったことがあるアズダという現在でもイギリスの主要小売企業の発祥地となりました。
マークスアンドスペンサー1号店(ペニーバザール店) |
マークスアンドスペンサーは1884年にリーズ市内中心部に現在もあるカークゲート・マーケットに、マイケル・マークスがペニーバザールという名の小さな店を開くことが発展の基盤を築きました。同社はプライベートブランドの質が高く、食品、衣料品、家庭用品などの高品質のプライベートブランドを幅広く提供し、日本でも北海道から鹿児島まで現在でも同社のプライベートブランドを販売する店舗があるほどです。
マークスアンドスペンサーが展開する高級スーパーフードホール |
運河沿いの本社アズダハウス |
サウス・エルムサル駅 |
アスキススーパーマーケット1号店 |
なお、ウォルマートは現地でガソリンスタンドチェーンなどを展開するEGグループに2021年2月にアズダの株式売却を完了し、英国市場から撤退済みです。私はグローバル・マーケティング研究において不十分と考える撤退や事業縮小の重要性を踏まえて、撤退や失敗した市場であるドイツ、韓国、日本、ブラジル、アルゼンチンなどの成功できなかった市場へも機会があれば訪問し、撤退戦略や事業縮小戦略についても検討しています。今回のリーズ訪問での経験は撤退や事業縮小を考えるために非常にいろいろなヒントを与えてくれました。
(文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)