2025年2月17日月曜日

先生、起業したいけれど何から始めていいかわかりません!:経営学を活用したビジネスのつくり方

 経営組織論担当の山口です。今回は、私が研究している新規事業創造の話をしたいと思います。

 最近、東経大でも「起業したい」という学生が増えてきました。しかし、起業したいという人に「どんなビジネスをしたいの?」と聞くと、「それはまだ決まっていません」といわれることも多いのです。

 では、どんなビジネスをするかをどうやって決めればよいのでしょうか?

 ここで問題になるのは、「事業の新規性」です。つまり、誰もがすぐ思いつくようなビジネスは、事業計画自体は立てやすいのですが、既にどこかの企業が手掛けていることが多いため、競争に巻き込まれやすく、利益が上がる状態を作るのが難しくなります。

 他方で、まだ誰もやったことのない新規性の高いビジネス(イノベーションなど)は、競争もないので利益は獲得しやすいかもしれませんが、誰に何をどのように売ればよいかを0から考えなければなりませんし、実際にどれだけ売れるかの見通しも立たないので、事業計画が立てづらくなります。

 このような問題の解決策は、経営学のアントレプレナーシップ研究(起業家研究)やイノベーション研究という領域で検討されてきました。その中で最近注目されているのが、ヴァージニア大学ダーデンスクールのサラスバシー教授による「エフェクチュエーション」の研究です。これは、「新市場創造のような、何から手を付けてよいかわからない不確実性の高いビジネスをいくつも実現してきた起業家は、どのような思考パターンで起業しているのか?」を明らかにしようとしたものです。

 そこで今回は、エフェクチュエーションの研究が、「起業したいけれども、何をしたいかわからない。何から始めていいかもわからない」という人たちに対して、どのような示唆を与えてくれるかを、みていきたいと思います。


1.エフェクチュエーションとは何か?

 従来のアントレプレナーシップ研究では、「全く新しい事業や市場のようなイノベーションを生み出せるのは、特別な資質を持っている人や、特別な機会に恵まれた人だ」と考えられてきました。サラスバシー教授は、これに対して「本当か?」と疑問を持ち、アメリカで何社も起業している起業家27人の調査を通じて、彼らの起業の意思決定には共通のパターンがあることを発見しました。

 つまり、将棋に定跡があるように、起業のための思考にも定跡があることを明らかにしたのです。この起業の定跡のことを、サラスバシーは「エフェクチュエーション」と名付け、この定跡を学べば、誰でも新しい市場を創造できると主張しました。

 エフェクチュエーションの特徴は「高い不確実性に対して予測ではなくコントロールによって対処する」点にあります。

 簡単に言えば、これまでにないイノベーティブな製品・サービスを売ろうとしたときに、それを誰が買ってどのように使ってくれるかを事前に正しく予測するのは不可能です。そこで、起業家たちは、買ってくれそうな人を予測するのではなく、むしろ今できること(=自分がコントロールできること)や今協力を頼める人との関係を積み重ねることを通じて徐々に顧客を増やしていき、その結果、当初予想もしなかったような新しい市場を作りだしている、というわけです。

 エフェクチュエーションの主な内容は、以下の5つです。

起業の定跡:エフェクチュエーションの5原則


手中の鳥の原則:目的に合わせて手段を選ぶのではなく、今とれる手段に合わせて目的を作る


許容可能な損失の原則:利益最大化の方法がわからないときは、損失が許容範囲におさまる行動を選ぶ 


レモネードの原則:予期せぬ事態が起きたら、それをうまく活用してチャンスにする


クレイジーキルトの原則:関与してくれる人を増やし、それらをつなぎ合わせてビジネスを作る


飛行機のパイロットの原則:将来を予測できないときも、その状況でできることを積み重ねて望ましい状態を作る


2.エフェクチュエーションによる新市場創造の事例

 エフェクチュエーションの5原則が起業とどうかかわるのか、イメージしづらいと思いますので、ここでは、実際に新市場を創造して起業した事例を通じて、5原則が起業プロセスでどう使われているかを説明しましょう。

 取り上げるのは、ピアノメーカーの調律師から転身して起業し、新しい市場を創造した、ピアノクリニックヨコヤマの横山彼得さんの事例です。

(以下の事例は、Youtubeの横山さんのインタビュー動画「良い音が音楽好きな子供を育む~調律師・横山彼得~」に基づいています。起業に興味がある人にはこちらの動画もおすすめなので、是非検索してみて下さい。)


(1)横山さんがピアノショップを開業した経緯(レモネードの原則・飛行機のパイロットの原則・許容可能な損失の原則・クレイジーキルトの原則)

 横山彼得さんは、ピアノメーカーに勤務する調律師でした。メーカーの調律師は、1日に何件ものお客さんをまわってピアノの調律を行います。しかし、「もっと時間をかけて1台1台をしっかりメンテナンスしたい」と考えた横山さんは、27歳で独立しました。

 ところが、ピアノのメンテナンスをしっかり行うには、高度な調律技術が必要です。そこで横山さんは、当時はお客さんも少なかったため、一流の調律師の仕事方法を学ぼうとコンサート会場の楽屋口などに張り込み、ホールのピアノの調律に来た調律師さんに「仕事のやり方を見せてください」とお願いしたりして、調律技術を高めていきました。

 そうして技術を高めていくうちに、横山さんの顧客にもピアノ教室の先生が増えていき、その先生たちから「生徒さんのピアノがいい音になるように調律してほしい」と頼まれるようになりました。そこで生徒さんの家に行ってみたところ、「なんでこんなピアノを買ってしまったんだろう」と思うような、非常に良くない状態のピアノに立て続けに出会うことになりました。

 「調律だけではいい音にするのが難しいピアノを使っている人が多い」という予期せぬ事態に直面した横山さんでしたが、こうした調律の限界にめげず、むしろ「調律のもっと前の段階で、良い音のするピアノを提供できないか」と考え、神奈川でピアノショップを開業することにしました(→レモネードの原則・飛行機のパイロットの原則)

 さらに「ショップを出すからには、いいものを置きたい」と、ヨーロッパのピアノをメインに仕入れることにしました。ところが、当時の横山さんにはそれを仕入れるだけの財力がありません。そこで、色々なピアノ輸入元にかけあって、一定期間ピアノを貸し出してもらって売り出すことにしました(→許容可能な損失の原則・クレイジーキルトの原則)


(2)ピアノ教室を構想した経緯(手中の鳥の原則)

 こうしてピアノショップを開業した横山さんでしたが、しばらくたつと、また新たな問題が出てきました。せっかくピアノを購入してピアノを習い始めたのに、数年ですぐやめてしまう子供たちにたくさん出会うことになったのです。「どうしてすぐにやめてしまうのか?せっかく習い始めたなら、一生涯楽しく続けてほしい」と考えた横山さんは、調律の仕事をする中で、生徒さんと先生を注意深くみていくことにしました。

 まず、生徒さんについては、調律に行くお客さんの中で、すぐピアノをやめてしまう人たちと長く続いている人たちには、どのような違いがあるのかをみるようにしました。その結果、長く続いている人には「小学校低学年からピアノを始めて、5~6年生、もしくは中学の早い段階で、ショパンやベートーヴェンなどの名曲を弾けるようになっている」という共通点があることがわかりました。

 次に、ピアノの先生については、ピアノ教室の発表会の調律に行く中で、小さい子供の生徒しかいない先生(つまり、生徒が大きくなるまで習い続けていない先生)と、子供から大学生・大人まで幅広い生徒がいる先生がいることに気づき、これらの先生の間の違いを調べました。その結果、小さい子供の生徒しかいない先生は、先生自身があまりピアノを弾いていない傾向があることがわかりました。

 このようなことがわかるにつれ、横山さんは「よくピアノを弾いていて、音楽的な良い音で弾ける先生を集めて、子供たちが長く続けられるピアノ教室をつくろう」と考えるようになりました(→手中の鳥の原則)


(3)ピアノ教室を開業した経緯(許容可能な損失の原則)

 そこで、まずはピアノショップの一角に防音室を作り、ヨーロッパ製のアップライトピアノを1台置き、ピアノ教室用の場所を確保しました(→許容可能な損失の原則)

 それから、ピアノの先生を募集する広告を出しました。1回目で50人ほどの応募者があり、履歴書で30人に絞った後、面接とピアノを実際に弾いてもらう試験を行いました。その際には、信頼できるピアノの先生に立ち会ってもらい、4人を採用しました。

 最初は生徒がなかなか上達しないなどの問題もありましたが、色々試行錯誤するうちに、1年目20人、2年目40人、3年目60人・・・と生徒が増えていき、店の片隅の一部屋ではレッスンが回らなくなったので、マンションの一室を借りてレッスン室を増やしました。25年たった現在では、ピアノ教室のための建物を借りて5つのレッスン室を設け、それぞれに異なるヨーロッパ製ピアノをおくようにしています。生徒も、神奈川・東京・埼玉・千葉はもとより、福島、滋賀県などの遠方からも来るようになり、全部で100人くらいの生徒が集まっているそうです。


(4)事例のまとめ

 この事例において、調律師だった横山さんは、ピアノの調律(メンテナンス)と、ヨーロッパのピアノを扱うピアノショップ、ピアノ教室を組み合わせることで、「生涯音楽を愛する子供が育っていくのをサポートする総合ピアノサービス」の新たな市場を作り出しました。

 ここでのポイントは、横山さんが最初から、「ピアノの調律とピアノショップ、ピアノ教室を組み合わせて、生涯音楽を愛する子供を育てるサービスをつくれば、儲かるだろう」と予測して、これらのビジネスを始めたわけではないということです。調律をする中での様々な顧客との出会いが、横山さんの「生涯音楽を愛する子供を育てるにはどうすればよいのか?」という問題意識を生み出し、進化させ、最終的にこのような独自の市場を作り上げたのです。


3.起業したい人が大学で経営学を学ぶ意義とは?

 さて、この事例を読んで皆さんはどのような感想を持ったでしょうか?「自分にできることを積み重ねることで、意外と手堅く起業できるんだな」、「問題意識をもって日々の仕事をすることが、起業につながることもあるんだな」と考えた人もいるかもしれませんし、中には「あれ?起業は、別に経営学を知らない調律師さんでもできるの?じゃあ、大学の経営学部で学ぶ意味は何だろう?」と思った人もいるかもしれません。

 確かに、起業自体は、特に資格が必要なわけでもないので、誰でもできます。しかし、起業を「うまく」行うためには、それなりの知識・スキルが必要ですこれは、エフェクチュエーションの研究で、何社も起業している熟達した起業家は、将棋のプロが勝つための定跡を習得しているのと同様、起業の定跡を身につけている、と指摘されている通りです。

 さらに、エフェクチュエーションの理論は、起業したいが何をすればよいかわからない、という人に対し、「儲かる機会」は「探す」ものではなく、自分の強みを活かし、今できることから行動を始めることで「作り出す」ものだ、という示唆を与えてくれますこれは常識的に考えていたのでは決して出てこない考え方でしょう。このような、起業を「うまく」行うための知識・スキルは、大学で学んでおいた方がよいと言えます。

 東経大の経営学部では、1年次では市場予測に基づいて戦略的にビジネスを計画していくオーソドックスな方法も学びますが、2年次以降は今回ご紹介したような、オーソドックスな方法の真逆を行くような最先端の方法も学びます(授業だけでなく、例えば私のゼミでは、ゼミ生の希望があればこのような理論を学ぶことができます)。これらの両極端の理論を含む様々な理論を学ぶことの意義は、それらを「手中の鳥」としながら、起業したい皆さんが自分で理論を組み合わせ、自分なりのビジネスのつくり方を確立していけるようになる、ということです。

  東経大の経営学部では、起業を「うまく」行うための知識・スキルを獲得できるようサポートするカリキュラムとして、2025年度から、アントレプレナーシップ養成プログラムが開講します。是非これを活用し、社会をよりよくするビジネスを作っていっていただければと思います。

 (東京経済大学経営学部准教授 山口みどり)

2025年2月10日月曜日

ゼミ選びのポイント(小木ゼミ通信 Vol.46)

 マーケティング論、ソーシャルマーケティング論、消費者問題を担当しています、小木紀親です。46回目のブログとなります。


 最近、消費者問題のなかで、金融教育を教えることもあり、株、株主優待、投資信託、不動産などを中心とした投資全般を実践しつつ(節税などを含めた税システムなども)、それを授業にも活かしております。結論的には、最終的にはタマ(資金)をたくさんもっている輩の方が勝てるんだなと身も蓋もないことを思うのですが、一般的に投資をしたい人は、まずは徹底的な節約で資金を貯めつつも長期的に運用するのが良いかなとひとりごちている由です(個人的見解ですので、そのあたりはご了承ください)。

 そんな中、24年末にスタートした「カブアンドピース」のビジネスモデルには、24年の中でもっとも唸った出来事のひとつでした(私は、すでにふるさと納税、電気、ガスなどで参加)。到ってシンプルなビジネスモデルだけど、やはりビジネスは行動力がものをいう世界だとM澤氏から学びました。たいへん勉強になりました。

 さて、今回は、季節柄、ゼミ選びのポイントを中心にお話しします。最後に、小木ゼミ通信も掲載します。


◆ゼミ選びのポイント

 そろそろゼミ選びの時期になってきましたね(経営演習・経済演習・総合教育演習は、本年度は3月17日、18日、19日が選考日で、エントリーはその前にあります。お忘れなきよう、自分でチェックして下さい)。コロナ時期には、小木ゼミのオープンゼミ(3回ほど開催)になんてほとんど来なかったのですが、今年になってゼミ連さんも頑張ってくれたからでしょうか、2020年~2023年の各5名ほどから、今年は15名ほどの1年生が来てくれました(別に個人面談は10名ほど行いました)。ようやく通常運転に戻ってきたような感じです。

 なんだかんだ言って、ゼミ選びはとても大切だと思います。おそらくこの記事を見ている1年生は問題ないのでしょうが、見ていない多くの無関心層にも是が非でもみてもらいたい!という想いを込めて、私が思う、ゼミ選びのポイントのベスト3を紹介したいと思います。


【第3位】:「やりたい(勉強したい)領域か、やりたい研究か」です。学生のゼミ選びをみていると、とにかくこれしか見ていないという感じです。この点は、とても大事ではあるのですが、私にとっては1・2番ではないですね。

【第2位】:「先生やゼミの雰囲気が自分にあっているか。耐えていけるか。」です。長くゼミを続けていくためには、先生との相性、ゼミとの相性はとても大事です。どちらかというとやりたい領域よりもはるかに大事かもしれません。だからオープンゼミや経営学部ゼミ研究発表会に行って自分の目で確かめることが重要なのです。

【第1位】:「自分が成長できるゼミか、自分を成長させてくれるゼミか」です。これは、2位とも連動する話ですが、自己成長が適うゼミをぜひ選んでほしいと思います。

2月末には各ゼミの入ゼミ試験方法がTKUポータルにアップされます。入ゼミ選考(面接など)は、各ゼミ3月17日~19日のどれかになりますが、小木ゼミは、毎年中日に行います。したがって、今年は3月18日(火)9:30~行います。応募者は、エントリーシート及び成績表のコピーを持参して来て下さい。のっぴきならない用事がある場合は、Zoomでの参加を許可するかもしれません。小木ゼミについては、シラバス、アカコンや経済学部ゼミ資料、流マ入門テキスト、さらにはXやインスタでも見ることができますので、いろいろと情報を集めて下さい。ちなみに、小木ゼミは、40名マックス(男子6名/女子34名)の大変元気なゼミです。

2月末 ゼミ選考方法 TKUポータルでアップ
3月中旬 TKUポータルで希望エントリー登録(これを忘れないように!)
3月18日㈫9:30~(教室未定:チェックのこと) 小木ゼミ 入ゼミ選考日

考える時間は残りあとわずかです。本当にゼミ大切です!春休みは、バイトや遊びだけで過ごすのではなく、十分に悩んでゼミ選びしっかりとして下さい。


◆小木ゼミ活動報告

この時期は、ゼミは基本オフですが幾つか活動成果があがっています。

国分寺物語

こくぶんじ写真コンクールの審査及び表彰式に参加します。

西こくぶんじ・お土産プロジェクト

12月末に、西国分寺駅にて、アンビー提供のお菓子を小木ゼミが販売するという試みを行いました。どうやら来年度からは、常設的な取扱いになりそうです。

東京都・消費生活への若者提言

東京都の依頼を受けて、東京都の消費生活への提言を、小木ゼミの2年生が都庁でプレゼンします。そのための活動をいまも進めております。こういうスポット的な活動も行います。


Xmas会、幹部交代式、OBOG会が開催

11月末はNAGAOKAプロジェクトの社長プレゼン、12月初旬は西武信金アイディアコンテスト本選、経営学部ゼミ研究発表、多摩大学AL祭招待ゼミ発表と行いました。

また、12月18日にはXmas会、1月18日役員交代式&OBOG会など、多くのイベントが開催されました。とりわけ、幹部交代式は、なかなか見ごたえがあり、さらにOBOG会は15名を超えるOBOGが参加してくれて、楽しく過ごせました。こうやってみると、ゼミ活動はかなり忙しかったですね。3月の卒業生追い出しと、ゼミ選考もありますが、1月中旬から3月中旬までは、しばしの充電・休息期間です。


小木


2025年2月5日水曜日

会計プロフェッショナルプログラム(会計PP)11月期選考試験を終えて

本学には、少数精鋭でより高度な資格や語学力の習得にチャレンジするプログラムである「アドバンストプログラム」があります。

「アドバンストプログラム」には、

各学部の学びと直結した「会計プロフェッショナル」「法プロフェッショナル」「金融キャリア」「PRプロフェッショナル」の4つのプログラムと、

語学力・異文化コミュニケーション力のレベルアップを図る「グローバルキャリア」「英語アドバンスト」の2つの言語系プログラムがあります。


ここから更に、会計PPは、

①監査・会計の専門家である公認会計士を目指す公認会計士コース、

②税務に関する専門家を目指す税理士コース、

③税金を賦課・徴収する国家公務員を目指す国税専門官コース

の3つのコースに分かれます。


自身の目標に合わせコースを選択し、会計PP選抜試験に合格すると、

提携専門学校の受講料を全額大学負担で、高度会計専門職の学習を進めてゆくことができます。


この選抜試験は、6月と11月にあり、

2024年12月4日に会計PPの11月期選考試験の合格発表が行われました。


私が担当している「会計PPへの入門講座」受講生からも例年並みの合格者を出すことが出来て、一安心しました。


ただ、選抜試験は簿記2級の点数と、学内で実施される記述式試験の点数で合否が決まるため、記述式対策がメインの「会計PPへの入門講座」を熱心に受講してくれていた学生でも、簿記の点数が振るわず残念な結果になったりということもありました。

(もちろん、その逆もあります)


やはり1年生の時期に、色々な講義を履修しつつ、

簿記2級の勉強をし、同時に記述式の問題の学習を進めるのは、

タイムスケジュール的になかなか厳しいのだと思います。


入学後会計PPに入りたいと志望してくださる学生さんは、

会計PPの選抜試験は、1年生の6月と11月にあるということを念頭において頂き、

是非、入学前に簿記と記述の学習を進めておいてください


簿記は3級レベル、記述は解答の誤字脱字(つまり漢字)が無く、

正しい文法を用いることが出来るレベルに入学前に達していれば、

選抜試験に向けて余裕をもったスケジュールが可能になります。


会計PPに所属していれば難関資格に100%合格するわけではありませんし、

所属していない学生でも難関資格に合格している例はあります。

それでも、受講料を全学大学負担で賄える点や、バックアップ体制が整備されている点など、

会計PPに所属するメリットは大きいと思いますので、興味がある方はぜひチャレンジしてみてほしいと思います。


(本学の難関資格合格情報については、

詳細はCSCキャリア・サポートコースの合格情報

https://www.tku.ac.jp/csc/topics/exampass/index.html

などをご覧いただけるとわかりやすいかと思います。)

(文責:経営学科準教授 板橋雄大)

2025年1月27日月曜日

高校数学は何に使うのか?(3)

 経営学部で企業金融論や経営統計を担当している木下です。

今回は二次式の展開とリスク管理についてです。

世の中には様々な資産がありますから、それらを組み合わせることでリスクを抑えつつリターンを高める方法がないかを考えたくなります。

直観的には、同じような動きをする資産同士を組み合わせてもリスク分散にはなりませんね。

好景気が来た時に両方が儲かり、不景気が来たら両方が損失を出すのであれば組み合わせてもリスクは減らないわけです。逆に反対の方向に動く資産同士を組み合わせればリスクを減らせます。

こういった連動性を数値的に評価するために共分散や相関係数といった統計学での指標が必要になります。

では、組み合わせるとリスクはどうなるか、これは以下の式で書けます。


一見難しそうに見えますが、これは単なる二次式の展開


を応用して使っているだけです。中学高校の基本的な数学の基本を押さえておくだけで、リスク管理等の方法を効率的に学ぶことができます。

これらを応用してA株式とB株式を組み合わせたり、不動産と株式を組み合わせたりして最適な資産配分を考えることができます。例えば下図のように、株式インデックスと不動産投資信託インデックスを使って、「同じリターンならできるだけ小さいリスクの組み合わせ」を求めることができます。



ここまでの話は資産Xと資産Yを組み合わせる話ですが、当然N資産を組み合わせる方法にも拡張されていきます。

またファイナンス理論等では「みんなが最適行動を取ったらどうなるか?」といったことを考えます。現実では当然完全な最適行動を取っている主体はいないわけですが、誰もが自分や仲間のために自分なりに最適な行動を取っているわけですから、近似的には成り立つ気がするわけです。

理論とは異なる現象が現実で観測されたならば、誰かが最適行動を取っていないことになります。ということは何等かの超過収益のチャンスが存在するということになります。対戦相手の行動を考えながら自分の最適化行動を考えるには、数学のみではなく総合的な能力が必要になるのです。





2025年1月20日月曜日

 

こんにちは。経営学部教員の金です。

今日は金ゼミの活動について紹介したいと思います。

 

金ゼミでは企業が作成し開示する損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を含む開示情報をベースに企業活動を分析しています。財務諸表は膨大で複雑な企業活動が会計情報として集約されている資料です。企業の収益性を表す指標の一つとして最も広く知られている株主資本利益率(Rate of Return: ROE)は、当期純利益を株主資本で割って計算します。当期純利益は株主に帰属する利益であることから、ROEは株主から受け取った資本を持って株主に返せる利益をどの程度稼いだかを示していると言えます。そして、ROEを計算するために必要な当期純利益と株主資本は全て財務諸表から入手できる情報です。

 

この指標には、事業環境の変化が企業活動に与えた影響が明らかに投影されます。次の図表12010年度から2022年度までの上場企業(非上場企業含む)のROEの平均を示したものです。ROEの平均が急激に下がった2020年度(2020420213月)はCOVID-19の影響が企業活動に直撃した年度です。2008年度に世界経済を打撃を与えた世界金融危機(The Global Financial Crisis)から回復し、順調に収益性を確保して行った時点での出来事です。

 

図表1 株主資本利益率(ROE)の変化


Astra managerデータベースより作成(上場廃止企業を含む)。

 

しかし、COVID-19は全ての企業の収益性を低下させたわけではありません。収益性の分析を業種別に深めていくと異なる姿が見えてきたりします。たとえば、図表2は今年のROEから去年のROEを差し引くことで計算した、ROEの変化を業種別に平均としてまとめたものです(一部の業種のみ表示)。赤いほど去年より今年の収益性が高く、青いほど今年の収益性が低くなったことを意味します。これをみると、2020年度に百貨店やホテルおよび娯楽施設の収益性が前年度に比べて大幅に下落した一方で、スーパーは収益性がむしろ高まったことがわかります。緊急事態宣言に伴う移動制限で多くの人が外出を避け、自宅に止まったことがこの収益性によく表れています。同じく、空運の収益性が大幅に下落した一方で、大手海運や内航の収益性は上昇したこともわかります。飛行機路線が大幅に削減された中、人々の生活に必要な物流の多くを海運が担当したことはよく言われていることです。

 

図表2 ROEの変化


Astra managerデータベースより作成(上場廃止企業を含む)。

 

このように財務諸表は企業の活動を読み解くにあたって必要な情報がたくさん含まれています。金ゼミでは会計情報をどのように活用して企業の安全性や収益性および将来性を考えるかについて丁寧に学習しています。このような分析を私はよく企業の健康診断と言います。もちろん、精密検査をするためには、企業の戦略なども踏まえた深い分析が必要ですが、過去の自分や他の企業と比較することで、簡単な健康状態を知ることができます。このような分析手法を身につけることで、企業と業界そして社会を観る目を養うことができます。多くの学生はゼミでの学習内容をもとに、財務諸表から企業活動を分析する、会社決算書アナリスト試験(https://www.qepo.or.jp/exam.html)に挑戦し資格を獲得しています。

 

多くの仕事では様々なバックグラウンドや価値観を持つ人たちとコミュニケーションすることが求められます。そこで、金ゼミではグループワークにも力を入れています。学生には自主テーマを設定し、それに関する研究を行なってもらっています。研究テーマは、戦前企業の会計行動の研究といった過去を意識したものから、コロナ禍の人的整理や人的資本および日本企業のDX化に関する研究など、現在の社会が抱える課題についても積極的に取り組んでいます。

 

このような研究成果は年末の学内研究報告会や学外の大会で発信しています。たとえば、ここ数年は会計を勉強する全国の大学生のプレゼンテーション大会であるアカウンティングコンペティションに参加しています(コロナ禍ではオンラインで開催)。1980年から2020年までの40年間にわたった上場企業の決算期変更の実態とその理由について分析した研究は、この大会で高い評価を得て最優秀賞を獲得しました(http://accocom.com/アカコンホームページ/最優秀賞・優秀賞受賞チーム一覧/)。

 

今年の金ゼミでは、日本企業の低PBRといった課題に向き合ったもの、ゾンビ企業の実態、従業員持株会に関する研究、リース会計基準に対するコメントレターをテキストマイニングする研究など、ユニークな研究を実施しました。残念ながらアカウンティングコンペティションでは受賞には至りませんでしたが、1年間の活動は各自の成長に繋がり、来年の活動の種になったと確信しています。

2025年1月6日月曜日

チリの現状を明解に描く巨匠によるドキュメンタリー『私の想う国』

 流通マーケティング学科の丸谷です。68回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしているので、グローバル・マーケティングにおいて重要である海外事情について学習できる映画について紹介してきました。今回は授業でも毎年デモとりあげている南米チリの現状を描いた映画『私の想う国』をとりあげます。

本作は201910月に起こった大規模デモと従来の既存政党の支援を受けずに誕生したボリッチ政権誕生までを描いたドキュメンタリー映画です。チリは南米初のOECD加盟国であり、OECD加盟は先進国の仲間入りと言われる中で、新自由主義を採用した南米の優等生としてみられてきたチリの負の側面について描いた作品です。

デモに参加する女性たち

© Atacama Productions-ARTE France Cinema-Market Chile

巨匠パトリシオ・グスマン監督は19731990年のチリピノチェト軍事独裁政権を批判する作品をこれまで発表してきました(詳細は、経営学部ブログTKU Business Weekly Blog・・・東京経済大学経営学部ブログ: 映画『夢のアンデス』:チリ軍事独裁政権の遺した新自由主義の負の側面について描くを参照)。

精力的に作品を発表し続ける巨匠パトリシオ・グスマン

© Atacama Productions-ARTE France Cinema-Market Chile


『私の想う国』では、ピノチェット軍事政権後の30年間でたまった民衆の不満が巻き起こしたチリの女性たちの姿を描くことで、当事者間が薄れることで従来の彼の作品に比べて、目線が客観的となり、彼女たちへのエールを感じる、わかりやすい作品となっています。

熱狂の中誕生したボリッチ政権は映画で描かれる大規模デモの成果として設置された憲法改正のための制憲議会による憲法改正案が国民投票で2022年9月に否決されるなど、なかなか成果を出せていません。

しかし、家父長制という多くの中南米諸国において現前と維持されている状況を理解するのに有用な作品と言えます。グスマン映画の最高傑作はいうまでもなく、263分の超大作『チリの闘い』ですが、さすがに長尺かつかなりハードなシーンがあるため、少しハードルが高いかもしれません。

『私の想う国』は83分とコンパクトであり、内容も皆さんにとっても身近な地下鉄料金値上げといった出来事をきっかけとした学生や女性たちによるデモであったりして、グスマン作品の入門編として共感しやすく、良質な作品です。

(文責:流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)


2024年12月16日月曜日

特別企画講義「鉄道で考える社会インフラ整備・管理の未来」の受講生アンケート結果から見える東京経済大学の学生(後編)

 経営学部の三和雅史です.

 今回は,10/7のブログに続いて,特別企画講義「鉄道で考える社会インフラ整備・管理の未来」の終了後に行った受講生アンケートの結果と,そこから見える東京経済大学の学生の姿を考察した結果の後編を紹介します.

 この特別企画講義では,鉄道会社や国の機関からお招きした講師の方々に社会インフラとしての鉄道の現状や課題,そして未来への展望について,様々な観点から紹介して頂きました.講義終了後,受講生に講義に関するアンケートへの協力を依頼したところ,全受講生(178人)の77%にあたる137人から回答を得られました. 10/7のブログでは,「受講状況(受講者数,受講率)」の他,「①受講の動機」,「②受講して発見したこと」,「③関心をもったキーワード」に関するアンケート結果を紹介しました.後編の今回は「④印象に残った講義」,「⑤社会インフラ業界の仕事への関心」,「⑥現場見学会,講師との直接的な意見交換会への参加希望」に関するアンケート結果を紹介します.


〇アンケート結果の概要と分析

④印象に残った講義

 幾つかの選択肢から選ぶ形(複数回答可)で回答してもらいました.回答者割合が高かった6つの講義を図に示します.どの講義も様々な話題に触れられており,講義内容をワンフレーズで表すことは難しいため,図中の各会社名の横に示した()内の説明は主な話題を表しています.なお,アンケートには印象に残った理由を記載する自由記述欄を設けたので,以下では,その内容を踏まえて考察しています.


 図から,「まちづくり」に関する講義への印象が深かった受講者が多いことが分かります.図中に示す広島電鉄,江ノ島電鉄,阪急電鉄の他,東急電鉄の講義にも「まちづくり」に関する内容が多く含まれていました.いずれの講義も,鉄道が「まちづくり」に果たしてきた役割や意義,「まちづくり」で重要な考え方等,「まちづくり」に関心のある受講生には大いに参考になる内容だったと思います.また,JR四国の講義も交通の利便性向上に関する話題が多く,「まちづくり」との関連性が強いものでした.特に,地方交通の今後の在り方を示唆するようなアイデアに富んだオリジナリティの高い内容は,受講生には大きな刺激になったようでした.
 JR東日本の割合が高いのは,身近で親近感がある鉄道会社であることに加え,特に保線(線路の維持管理)業務での課題に対し,様々な情報技術や新しいシステムの導入による解決事例,取り組みの紹介があり,将来の社会インフラの在り方を明確にイメージできたことが印象深かったようです.
 JR貨物については,走行する貨物列車しか見たことがない受講生には謎の会社だったようで,講義に大変多くの発見があったという感想が何件も見られました.何を,どこからどこへ運んでいるかという話から,各種輸送手段との連携による物流の効率化,高品質化,環境対策といった取り組みまで,どれも新鮮で印象深かったようです.

⑤社会インフラ業界の仕事への関心
 鉄道を例に社会インフラ業界の実情や未来を講義により知った上で,自らが将来仕事をする場としてどう捉えるか聞いてみました.
 まず,社会インフラ業界,鉄道業界の仕事を自分の将来の職業とすることへの考えを聞いた結果を表にまとめました.この表には,受講前後で関心に変化があったかを聞いており,「×」は将来の職業の検討対象として考えない,興味がないことを表しており,「〇」は将来の職業の検討対象になる,興味があることを表しています.「◎」については,受講前は「〇」であったのが,更に高まった場合を表しています.この表のデータを用いて受講前後の考えや興味,関心の変化を状態推移図としても示しました.


 受講前に将来の職業の検討対象分野でなかった受講生のうち,社会インフラ分野については約48%が,鉄道分野については約34%が,今後は検討対象にすると答えています.逆に,受講前には検討対象分野だったのが,受講後に対象外となったのは,社会インフラ分野では2.9%,鉄道分野では2.2%に過ぎませんでした.これらのことから,本講義は社会インフラや鉄道の仕事に関心をもち,将来の職業の対象として意識する機会になったと考えられます.また,技術の仕事への興味についても聞いたところ,受講前には興味がなかった受講生のうち,約45%が興味をもったと回答しました.社会が必要としている文理総合人材の育成という観点では,とても好ましいことだと思います.7/22のブログに書いたように,社会インフラのような技術と社会にまたがるシステムでの課題の解決や未来の創造には,技術開発だけでなく,開発された技術をどこでどのように運用するのか?といったように,多くの立場やアイデアが総合される必要があります.経営学部で学ぶ知識も勿論,社会インフラの持続可能性を向上するのに大きく貢献します.
 それでは,将来の仕事として検討する対象になった受講生は,どんなことに関心をもったのでしょうか?10/7のブログで全受講生を対象にして示したのと同じ図を,授業後に検討対象となった46人を対象に作成してみました.


 全受講生を対象とした図と比べるとグラフの形が少し異なっています.そこで,図中には,全受講生を対象とした図に比べて回答者割合が増えた項目については「+」,減った項目については「-」を付けました.「安全,安心」,「まちづくり」,「労働力不足」の割合が他に比べて際立って大きくなり,「まちづくり」が最も高い割合になりました.労働力不足に大きな課題を抱えつつある鉄道業界に身を置き,安全,安心なまちづくりに携わることに,自分の将来の姿を見出せたのではないかと思います.また,「DX(デジタルトランスフォーメーション),ICT」の割合が増えたのは,先に考察したような技術に対する関心,興味の高まりが現れた可能性が考えられます.一方で,「組織,社員,働き方の変化」についても割合が増えたのは,実際に自分が働くとした場合を想定し,自らの職として向き合ったことが現れたのではないかと考えます.
 以上の結果を鉄道会社の方に見て頂いたところ,社員が「自己肯定感とやりがいを持ち,働きやすい職場」を実現することの重要性を再認識できる,極めて納得感のある結果だというコメントを頂きました.

⑥現場見学会,講師との直接的な意見交換会への参加希望
 今回は実施できませんでしたが,本科目で鉄道の現場の見学会を将来企画した際の参加希望の回答結果を表に示します.参加希望者は全回答者の半数を超えましたが,具体的な見学先を提示することで,希望者は更に増える可能性はあると思います.将来の活躍の場となる大学の外側の社会を見られる機会は貴重なので,こうした機会があれば,分野を問わず是非参加して欲しいところです.鉄道を将来の職業の検討対象にすると回答した70人については,その74%が参加希望という回答でした.実際の職場や働き方を見て体験することは,職業選択に大いに参考となると考えます.
 講師と直接話ができるような意見交換会を将来開催した際の参加希望の回答結果を表に示します.全回答者の約半数が希望し,魅力的な開催方法を具体的に示すことで,希望者は更に増える可能性はあると思います.ここでも,鉄道という分野で捉えるのではなく,社会の第一線で活躍する方々に様々な問いかけができ,自分の将来に役立つヒントを得られる機会だと考えて,積極的に参加してもらえるとよいと思います.鉄道を将来の職業の検討対象にすると回答した70人については,その60%弱が参加希望という回答でした.見学会と同様,職業選択に大いに参考になると思います.一方で,開催にあたっての課題として,各学生が多くの講師と話せるように運営方法を工夫する必要があると考えています.アンケートの自由意見の中に,もっと気軽に質問したいという意見があったことから,講師・学生間のコミュニケーションの方法については,よく検討したいと思います.
おわりに
 3回にわたり,第1期に開講した特別講義について,その内容,開講状況,そして受講生アンケート結果を紹介しました.多くの大学生にとって大学の次のステップは社会に出て仕事をする,貢献する,或いは自分のやりたいことを実現するということになります.今回の講義が,その社会を理解するきっかけとなり,受講生の皆さんに何か残せたものがあればと願っています.
 本講義では,鉄道関係各社,組織の皆様に多大なるご協力を頂きました.アンケートの自由意見にあった「今まで履修した科目の中で一番楽しかった」,「本当にためになった」,「また開講して欲しい」,「講師の方々の熱心な講義を聞いて,鉄道業界を就職先として考えるようになった」という言葉は,講師の方々に向けられた賛辞だと思います.ご多忙な中,ご協力頂いたことに,この場を借りて改めて心から感謝を申し上げます.
 最後に,2024年は間もなく暮れますが,今年は例年に増して鉄道の脱線事故が多かった印象があります.一般に,鉄道の事故は社会へ与える影響が大きいため,特に発生直後は色々な報道がなされます.その内容は様々であり,時として不正確な情報が発信されることもあるため,情報の受け手の姿勢が重要です.事故が起きたことをけしからんと言い続けるのではなく,発生の直接的,間接的原因を理解・想像して解決策を考える必要があり,今回の講義は,そのための知識にもなったのではないかと考えます.過去の経験に基づいて様々な安全対策や検査等の技術,方法が開発,導入され,鉄道の安全度は過去に比べて格段に高まりましたが,それでも事故は起きています.事故情報は鉄道会社どうしの横のつながりの中で共有され,業界全体での安全性の底上げが図られますが,5/20のブログに書いたように日本には200を超える鉄道会社があります.各社が抱える問題,課題には,個別の事情によるものもあれば,各社共通的なものもあります.本講義の中でも何度か話題になりましたが,競争から協調の時代になった今,監督する国も含め,関係者が一体となって安全で便利な鉄道を支えていく取り組みが,今後はますます重要になると思います.東京経済大学経営学部も,その一端を担えるよう,これからも活動していきたいと考えています.