2025年9月8日月曜日

2026年4月~「アントレプレナーシップ養成プログラム」スタート!

 経営組織論やケース分析を担当している山口です。

 東経大経営学部では、2026年4月から「アントレプレナーシップ養成プログラム」がスタートします。これに伴い、8月16日に「アントレプレナーシップ養成プログラム創設記念カンファレンス」が行われました。


 今回は、カンファレンスに登壇して下さった、東経大OB・OGを含む3名のアントレプレナーの取り組みを具体例として取り上げながら、「アントレプレナーシップ養成プログラム」についてご紹介したいと思います。

 

1.アントレプレナーシップ養成プログラムとは?

 アントレプレナーシップ養成プログラムとは、新しいビジネスを創造できるアントレプレナー人材を育てるプログラムです。

 経営学部経営学科現代経営コースに所属する2年生~4年生のうち、選考を通った20名程度が受講できる少人数制のプログラムになっています。

 今回は、このプログラムについて、紹介したいと思います。

 まず、このプログラムの「アントレプレナーシップ」とは、「新たなビジネスの機会を見出し、リスクに挑みながら事業を創り上げるための能力・知識・マインドセットのことです。

 では、新しいビジネスを創造するのに、どのような①能力、②知識、③マインドセットが必要なのでしょうか?

 これについて、8月16日に行われた「アントレプレナーシップ養成プログラム創設記念カンファレンス」でパネル・ディスカッションをしていただいた、以下の3名のアントレプレナーの取り組みをみながら、考えていきましょう。


吉田一毅氏(合同会社CRIBE CEO):東経大卒業後、バリスタの仕事に惹かれ、バリスタの世界チャンピオンがプロデュースした「ポールバセット」で約2年間バリスタの修行をした後、学生時代を過ごしたゆかりの地国分寺にコーヒー文化を一から根付かせるべく、コーヒーショップ「Life Size Cribe」を開店。

久保田優氏(株式会社スリーパンズ代表取締役):東経大卒業後、ネパールにおけるフェアトレード事業だけでなく、全国200箇所以上の福祉事業所と連携した国内のフェアトレード「やさしさつながる福祉のマルシェ」を創設し、国内外のフェアトレードを推進。

菊地恵理子氏(タイガーモブ株式会社代表取締役):「次世代リーダーの創出」をミッションに、学生や社会人に海外インターンや世界の最先端を体験できるような短期海外研修を通して、あたり前を変える体験を提供。


(1)アントレプレナーシップとは?:①能力

 まず、アントレプレナーに必要な「能力」とは何か、考えてみましょう。

 アントレプレナーがビジネスを創り出すには、新しいアイデアを考え出す独創的な思考力や、アイデアを実現していく実行力が必要です。

 では、こうした独創的な思考力・実行力はどうやったら身につくのでしょうか?

 ここでは、「アントレプレナーシップ養成プログラム創設記念カンファレンス」で、パネル・ディスカッションをしてくださった、東経大OBのアントレプレナー吉田一毅さんの例を見てみましょう。

 吉田さんは、就職活動をするときに、初めは別の業界に興味があったそうですが、友人の「(吉田さんは)コーヒー好きだし、コーヒー業界も挑戦してみれば?」という何気ない一言と、東経大でダンスをやっていたときにできた仲間たちが集まれるダイニングバーを作りたいという思いで、ドトールコーヒーに就職したそうです。

 当時の社内別業態で「バリスタ」という職人の仕事に出会った吉田さんは、一瞬でこの仕事に惹かれ、「バリスタ」のキーワードをインターネットで検索しては、気になるコーヒーショップに足を運び続けました。その中で、鳥肌が立つくらい美味しいエスプレッソに出会ったのが、当時のバリスタ世界チャンピオンの店「Paul Bassett」でした。

 その後「Paul Bassett」で2年間バリスタの修行をした吉田さんは、2015年にLife Size Cribeというコーヒーショップを国分寺に開業しました。Cribeは「crib to live」という言葉から来ているそうで、「秘密基地、集いの場、生きていくための場所」を指しているそうです。

 こうして吉田さんは、コーヒーやダンスといった自分の好きなものを深く追求していく中で、「等身大のまま、仲間や大事な人たちが安心して集まることのできる場所で、職人的なバリスタが淹れた、飲む人にも無理のないニュートラルな味のコーヒーを楽しむ」、という唯一無二のコーヒーショップ「Life Size Cribe」を創造しました。

(出典:https://typica.coffee/ja/narratives/roasters/life-size-cribe/https://postcoffee.co/magazine/roaster/roasters-coffee-life-life-size-cribe/


 この吉田さんの起業の例からは、自分の好きな物事を深く追求することで、他の人とは異なる独創性が生まれてくることがわかります。

 アントレプレナーシップ養成プログラムで、2年生が履修する「ビジネスプランⅠa/Ⅰb」という授業では、自分の好きなことや身近な関心を掘り下げることで、あなたしか考えられない独創的なビジネスの種を発見していきます。

 ですので、アントレプレナーシップ養成プログラムでは、「アントレプレナーになりたいから、大学ではこのプログラムだけに集中するぞ!」と狭く考えていただく必要はありません。

 「自分が大好きなバスケをもっと広めて、就職してからも仲間とバスケができる状況を作りたいから、それを実現するためのビジネスの知識を学びたい」など、大学で好きなことや興味のあることに打ち込みながら、それを通じてよりよい世界を作りたい!と考える人を歓迎します!


 (2)アントレプレナーシップとは?:②知識

 次に、アントレプレナーに必要な「知識」とは何か、考えてみましょう。

 いくら自分の好きなことを起点にビジネスのアイデアを考えるといっても、それがビジネスとして成立するためには、資金調達、原材料の仕入れ、店舗の立地の選択、スタッフの雇用、製品ラインナップの決定、販売方法の決定など、「アイデアを事業化し、利益を出せるようにするための知識」が必要です。

 これについて、「アントレプレナーシップ養成プログラム創設記念カンファレンス」で、パネル・ディスカッションをしてくださった、東経大OGのアントレプレナー久保田優さんの例を見てみましょう(出典:https://waccel-sumitanitomohiro.hatenablog.com/entry/2024/10/28/123000

  

 久保田さんは、東経大在学中にイギリスへ留学し、フェアトレードの考え方に感銘を受けたことをきっかけに、在学中から起業を念頭に、フェアトレード学生団体を設立するなどして活動していました。
 起業後は、ネパールにおけるフェアトレード事業と並行して、福祉事業所でアルバイトをしていました。その時、福祉事業所の仕事とフェアトレードには、「商品開発が難しい点や資金が少ないこと、販路がないところが似ている」ということに気づきました。
 そこで、全国200箇所以上の福祉事業所と連携し、商品制作を依頼して、商品の作成から梱包までを障害のある方に行ってもらい、商品をオンライン・駅・商業施設でのポップアップ出店にて販売する、という事業も始めたそうです。
 「市場に受け入れられる商品と販路を作る」ことで、「お客様には良いものを買っていただき、障がいのある方がイキイキと働ける社会」を実現することができると考えたわけです。

 障害者の方々の様々な個性に合わせた生産方法で商品開発を進める必要もあるなど、困難なことも少なくないそうですが、従来「支援」の観点からとらえられてきた福祉事業所の活動を、「ビジネス」として成立させる方法を作り出したのが、久保田さんのアントレプレナーシップの神髄といえるでしょう。

 このような形でアントレプレナーシップを発揮するためには、アイデアをビジネスとして成立させるための「企業経営の専門知識」が不可欠です。

 アントレプレナーシップ養成プログラムが、経営学部現代経営学科の現代経営コースの学生を対象としたプログラムになっているのは、このように、企業経営全般にわたる専門知識を学ぶのが現代経営コースだからです。

 例えば、現代経営コースでは、重点履修科目の企業論、経営戦略論、経営管理論、経営組織論などで、企業とは何か、企業を経営するとはどういうことかについて学んだあと、人的資源管理論・生産管理論・経営財務論などで、ビジネスに必要なヒト・モノ・カネを管理するより具体的な方法を学んでいきます。

 こうした企業経営全般に関わる専門知識を現代経営コースで学ぶのと並行して、それらの知識を使って自分のアイデアを事業化する方法を考えることで、単なる「素人の思い付き」ではない高いレベルのビジネスアイデアの創造と事業化をできるようにしているのです。

 アントレプレナーシップ養成プログラムの受講を考えている皆さんは、より事業化可能性の高いビジネスのアイデアを生み出せるようにするためにも、ぜひ1年生の時から経営学の基礎科目をしっかり学習し、経営学の専門知識を身につけておきましょう!


(3)アントレプレナーシップとは?:③マインドセット

 最後に、アントレプレナーシップのマインドセットについて考えてみましょう。マインドセットとは、私たちの物事の捉え方を決定づける心のフレームワークのことです。

 例えば、「この製品は売れるだろう!」と思って、そのアイデアを事業化しようとした時に、原材料がうまく手に入らなかったり、製品が全く売れなかったり、思い通りにいかないことがでてくると、多くの人はがっかりしてしまうと思います。

 ところが、経営学の研究では、何社も起業している熟達したアントレプレナーは、思い通りにいかなかったときにそれを「失敗」ととらえるのではなく、むしろ「チャンス」ととらえるなど、独特のマインドセットを持っていることが明らかにされています。例えば、「おいしいレモンがほしかったのに、酸っぱすぎるおいしくないレモンしか手に入れられなかったら、それでレモネードを作って、ただのレモンよりも高く売ればいい!」という考え方です!

 実際、「アントレプレナーシップ養成プログラム創設記念カンファレンス」で、パネル・ディスカッションをしてくださった、タイガーモブ株式会社ファウンダーの菊地恵理子さんは、「仕事で成功するために、もっとも大切なものは?」という質問に対し、このように答えています。

「変化を楽しみ、変化を起こすこと」です。環境も事業も自ずと変化するので、その変化を楽しんでしまうこと。そして安定せぬよう、わざと自ら変化を起こしていくことかと思います。

(出典:https://www.odyssey-com.co.jp/topics/essay/essay178.html

 

 「変化を楽しんでしまう」。このような考え方は、なかなか、普通の人には難しいかもしれません。

 そこでアントレプレナーシップ養成プログラムでは、2年生~4年生までの3年間、ビジネスプランコンテストなどにも応募しながら、ビジネスプランを繰り返し考え、つまずいてもそこであきらめずにブラッシュアップしていくことで、熟達したアントレプレナーと同じようなマインドセットを身につけていきます。

 2年次・3年次には、ビジネスプランの作成プロセスで起きる、このような「予想外の出来事」を、起業に興味を持つ仲間たちと一緒に考えることで、乗り越えていきます一方、自分のやりたいビジネスが明確に定まっている場合は、起業支援の専門家である馬込正特命講師に個別指導でサポートしてもらいながら、そのビジネスの事業化に向けた様々な課題を乗り越えていくこともできます

 このように、大学で学んだ経営学の専門知識を使って、ハイレベルなビジネスプランを、仲間と一緒に、あるいは専門家の個別サポートを受けながら、事業化できるようにしていくのが、アントレプレナーシップ養成プログラムなのです。


2.アントレプレナーシップ養成プログラムの履修方法

 では、アントレプレナーシップ養成プログラムは、どうすれば受講できるのでしょうか?

 このプログラムは、経営学部経営学科現代経営コースに所属する学生の中から、20名程度を選抜して行う少人数選抜制となっています。

 これは、起業支援の専門家である馬込正特命講師から、各自のビジネスアイデアを実現するための個別指導を受けながら、アイデアの事業化を進められるようにするためです。

 具体的な応募・選考方法は以下のとおりです。

・対象者:経営学部経営学科「現代経営コース」に所属予定の1年生

・定員:20名程度

・スケジュール:12月に説明会を実施→2~3月に応募受付・選考→3月中旬に選考結果通知(予定

・選考方法:エントリーシート(志望動機・意欲)/GPA(成績)/面接選考等(予定)


 アントレプレナーシップ養成プログラムの所定の修了要件を満たした人には、「アントレプレナーシップ養成プログラム修了」の認定証が出されます。


3.アントレプレナーシップは「起業」にしか役立たないのか?:幅広い仕事でアントレプレナーシップが必要とされる理由

 アントレプレナーシップというと、皆さんの中には「起業を目指す人がもつべきもの」というイメージを持つ人もいるかもしれません。

 しかし、現代企業が直面している、変化の激しい環境では、自分で起業したいという人だけでなく、企業に就職した人にも、既存事業を変化に合わせて変革したり、新規事業を創造したりする形で、アントレプレナーシップ(起業家精神)が求められます

 また、実家の家業を継ぐ場合でも、現代では、先代のやり方をそのまま引き継ぐのではなく、後継者が自分の考えに従って、受け継ぐべきものは受け継ぎつつ、環境の変化に合わせて家業をより発展させていく「ファミリー・アントレプレナーシップ」が重要になってきています。

 ですので、「起業するかはわからないが、新規事業に興味がある」「うちの事業を継ぐための知識・スキルを学びたい」という人にも、アントレプレナーシップは大いにかかわっています。アントレプレナーを「起業」という狭い意味でとらえずに、少しでも興味があればどんどん応募してみてください。

 アントレプレナーシップ養成プログラムは、究極のところ、東経大経営学部で学んだ経営学の専門知識を、ビジネスで「使える」実践的知識にしていきたい、という人のためのプログラムなのです!

(東京経済大学経営学部准教授 山口みどり)

謝辞 このブログ原稿の執筆にあたっては、吉田一毅様、久保田優様、菊地恵理子様、および馬込正先生にご協力いただきました。ここに記して感謝申し上げます。

2025年8月25日月曜日

「物流」を学ぶには映画やアニメから



経営学部で「物流論」や「流通情報システム論」を担当する宮武(みやたけ)です。

はじめまして。

専門は物流(特に宅配便など)や交通経済などです。


初めてブログを担当しますが、

私が担当する「物流」についてお話していこうと思います。




1.大学で学ぶ物流


ちなみに、大学で物流を勉強するの??

というのは、よく言われます。


物流に特化した学部や学科もいくつか存在しますが、

多くの場合、経営学・経済学・社会学・法学・工学などの領域で、

物流を研究の「対象」とした専門家が教えていたりします。



私の担当する授業は主に経営学部の学生が履修しているので、

主には企業の活動に注目してお話していますが、

交通との経済学的な関連、国の政策や法律、環境、情報やシステムに関連する内容も織り込んでいます。

(どうしても、理論より実際の動きなどに関係した話が多くなる分野かもしれません)




2.いろいろな作品で触れる「物流」


ただ、そもそも物流というのも実に多様な形があります。


荷物を運ぶ、保管する、積み下ろす、緩衝材や贈答用のラッピングで包む、さらに簡単な組み立てや詰合せなどの作業(機能)に注目したり、

取り扱う荷物の種類が何なのか(高価?、壊れやすい?、燃えやすい?、温度は?、においは?など)、

運ぶ手段はトラックなのか、鉄道なのか、船なのか、飛行機なのか、

さらに国内だけの話か、国外も含めた物流なのか、

これらの各要素や組み合わせで、物流と言ってもまったく違う仕事になります。



私が担当する「物流論」などでは、時間も限られるため、

これらを部分的に勉強するにとどまりますが、

ほぼすべての企業で何かしらの物流業務が存在しますし、

社会に出る前に勉強しておいて損はないと思います!(入学したら履修してね)


物流は身近な存在であることを広くPRするために、

政府も2分程度のこんなショート動画を作成しています。

(Youtubeの広告でさらに短いバージョンを見たことがある人もいるでしょうか)。

(物流魅力発信アニメ「あれも、これも、物流なんだ。」110秒ver
国土交通省 MLIT channel )


声優さんは、

「この素晴らしい世界に祝福を!」シリーズのめぐみん役などの高橋李依さん、

「SPY×FAMILY」のヨルさんや「鬼滅の刃」の胡蝶しのぶ役などの早見沙織さんですね。

(個人的には、高橋李依さんは「それが声優!」の一ノ瀬双葉、早見沙織さんは「甘々と稲妻」の飯田小鳥が好きでした)

(あと完全に余談ですが、堀江由衣さんが揃うと、何か魔法が使えそうですね)




また、昨年ヒットした映画の「ラストマイル」は、

ストーリーが見応えがあるだけでなく、

ネット通販の物流の現状を凄くよく表現していました。


周りの物流の専門家の方々の間でも評判になっていました。


「ラストマイル」予告映像  東宝MOVIEチャンネル)


ネタバレは書けませんが、ネット通販ビジネスの仕組みがトリック?

の要になっているところがいいですね。


満島ひかりさん、岡田将生さんの掛け合いも好きでしたが、

火野正平さんが演じられた請負の運送業者が好きでした。

(火野正平さんが昨年ご逝去されたので、本作品は結果的に映画としての遺作となってしまいました)


ドラマの「アンナチュラル」「MIU404」と制作陣が同じで、

世界観も共通のため、石原さとみさん、綾野剛さん、星野源さんらもゲスト的に出演しています。

こちらの作品が好きな方も是非ご覧になってください!



また、ドキュメンタリー番組などで扱われていれば、

より今の物流の問題などもわかるので、おすすめです。

(いわゆる経済バラエティでも良いと思います)


他にも、トラックドライバーの方々に焦点を当てたルポや映画などもありますが、

そちらはまた機会があれば紹介していきます。

橋本愛喜さん、トラックめいめいさんのルポやそれらを原案にしたドラマやマンガなど)



(文責:宮武宏輔)


2025年8月19日火曜日

訴求する相手は誰?

2025.08.19

経営学部の本藤です。

夏休み真っただ中ですが、最近の大学生はインターンシップが2年生の夏休み頃から始まる会社も増えてきて忙しそうです。


今回はマーケティングの考え方を少し紹介してみたいと思います。
みなさんは「この商品を売ろう」と考えた時に、最初に何を考えるでしょうか?

メーカーがマーケティングを考えるとき、最初に「この商品は誰に評価されるのだろうか?」ということを考えます。これがマーケティング戦略の大前提となる「ターゲティング」です。
違う言い方をすれば、「この商品の価値を最も分かってくれるのは誰だろう?」ということです。つまり、売りたい商品の価値が伝わる人を明確にすることから始まります。
なかには、ありとあらゆる人類全員をターゲットととしているケースもあるにはありますが、それではお客様の気持ちに刺さるブランド・メッセージが考えられず、消費者を動かすことは難しいケースがほとんどと言っていいでしょう。
(みなさんも「みんな好きです」のうちの一人として愛を語られてもピンときませんよね。「あなたが好きです」と愛を語られるからグッとくるのではないでしょうか)


メーカーが発売する商品のターゲットを検討する際に、従来は単純に「使う人」を想定して検討されているケースが多かったのですが、近年ではもう少し厳密に考えるようになってきています。

みなさんの自宅にシャンプーは何種類ありますか?お風呂には、自分専用のシャンプーがありますか?
それとも家族みんなで1つのシャンプーを共用していますか?
家族でひとつのシャンプーであれば、きっとそのシャンプーを購入する人はお母さんであるご家庭が多いかもしれませんね。
つまり、「使う人」のひとりである母親が、家族を代表してドラッグストアで価格を見ながら商品選択を行って購入することになります。


でも最近は、それぞれの髪質やヘアスタイルに応じて、お風呂には家族一人ひとりのシャンプーが置かれるようになりつつあります。そうなるとシャンプーを購入する人は誰でしょうか?
母親が代理購買するケースもあれば、自分で選ぶという人もいるでしょう。
高校生であれば、部活や塾で忙しくて、「お母さん、私のシャンプーが終わりそうだから買っておいて」とお願いすることもありそうです。
となると、その依頼を受けたお母さんは、ドラッグストアに行って、「自分の子供に適したシャンプーはどれだろうか?」と考えつつ、価格表示を見比べつつシャンプーを購入するかもしれません。


つまり、使う人(ユーザー)と買う人(ショッパー)が異なることがあるのです。
そんな状況をメーカーは想定して、ショッパーに焦点をあてたマーケティングを検討しなくてはならないと考えるようになってきています。
ここで考えなくてはならないのは、その商品に添えるメッセージです。
例えば、「思春期男子の臭いを抑える!」というように代理購買をする人が気にしている問題意識に訴えかけるようなメッセージです。「朝のセットが楽になる」とか「死ぬほど傷んだ髪を1週間で修復する」というメッセージは、どちらかというとユーザーに対してのメッセージですから、ショッパーに伝えるべきメッセージとして工夫することも大切な視点になってきます。


最終的な購入者であるお母さんの意思決定を促せるように考えて、店頭で商品の紹介をすること。これが「ショッパー・マーケティング」と呼ばれるアプローチです。

このようなユーザーとショッパーが異なるケースは、意外と多かったりします。
乳児用紙オムツのエンドユーザーは赤ちゃんですが、ショッパーは赤ちゃんのママです。
シニア用紙オムツのエンドユーザーは要介護の高齢者ですが、ショッパーは介護する人です。
風邪で寝込んでいる母親のために、父親が風邪薬を買いに行くこともあるのですが、この場合は、ショッパーは看病をする人で、ユーザーは病気で寝込んでいる人になります。

その結果として、エンド・ユーザーが、「これは私のための商品だ!」と思ってくれれば、その後は商品指定しての代理購買になっていくかもしれません。
プロモーション(販売促進)を考えるにしても、ブランディング(ブランド育成)を考えるにしても、まずは、最初の購入をしてもらわなければ話が始まりません。そのために、どんなことを思案すべきか企業は常に考え続けています。

文責:本藤貴康

2025年7月28日月曜日

試験、成績評価と統計学の視点

 経営学部で企業金融論や経営統計を担当している木下です。


学期末には定期試験とその後の成績評価がありますが、試験や課題を作るときに(統計学を理解している)教員が何を考えているのか、をお話します。


理想的な成績評価とは、極めて優秀な学生、優秀な学生、そうではない学生をまんべんなく見分けがつけられるようなものです。そのため、難しい問題から簡単な問題を広く出題することになります。平均値、標準偏差、四分位点といった統計学のツールを使ってこれらをコントロールしているわけです(しようとしているが、完ぺきにはできない)。

また、時間制限のある定期試験だけではその日の調子次第でミスをすることもありますし、時間をかければ正しく解答できる能力と、時間制限内に速く解答できる能力の両方を評価する必要があるでしょう。そこで、日々の課題と期末試験の両方で成績評価を行うのです。

平たく言えば、学生の学習成果が適切に反映されるような試験と評価方法を教員は考えているのです。成績評価を行った後に、100点の学生と0点の学生だけになってしまったら、それは学生の潜在的な学習成果を抽出するような試験にはなっていない、と考えられます。

ですが、一見いびつに見えてもそれが望ましい結果である可能性はあります。その理屈を後述します。


言うまでもないことですが、成績評価の分布以外の観点から重要な懸念事項があります。それは大学で学んだことや試験で出題された問題が、実社会において本当に有益な内容になっているかどうか、です。どのような能力が現代社会において有用なのか、ということは正確なところは誰も分かりません。実際に社会で生み出された価値を観測できれば、学習効果を測定できますが、そんなデータの収集は困難ですし、社会は変化しますから、再現性のある測定は不可能に近いものです。

データ分析においては、トレーニング用のデータとテスト用のデータを別で用意しなければ再現性に関して信憑性が薄れてしまう、という話があります。トレーニング用のデータに当てはまるようにモデルを作ったとしても、それは過剰当てはめの可能性があるのです。一方で、トレーニング用のデータとテスト用のデータに分けてしまうと、トレーニングに使えるデータが少なくなってしまってもったいないという見方もできます。そのため再現性とトレーニング効率にはトレードオフ(一方を重視するともう一方を犠牲にする)があるのです。これは理論上必ず生じるもので、統計学ではその調整方法が日々研究されています。

大学では、担当教員が授業内容を決定し、成績評価もその教員が行います。これは上記のデータ分析と同様の観点から考えると、特定の教員の授業内容に対する過学習が生じていて、それを評価している可能性があります。したがって、再現性という観点からは望ましいものとはいえないかもしれません。

さて、では何故このような方法が採用されているのか、を考えてみましょう。これは極めて簡単な理屈で、専門家である教員こそが授業内容と評価方法の両方に関して精通していると考えられるから、です。

ある試験において、ある問題の正答率がゼロだったとしましょう。これは、教員の作問や授業が悪いのかもしれませんし、学生の理解が悪いのかもしれません。

このときに、教員と学生のどちらが実社会に関する情報を持っているか、という観点に立つと、やはり教員の判断を重視することになるでしょう。では、授業を行う教員と試験を行う教員を別にする、という案はどうでしょうか。これにはやはり再現性とトレーニング効率のトレードオフ問題があります。これらの総合的な観点から、現状の大学ではトレーニング効率と教員の専門性が重視されて、担当教員に一任する、という方法が受け入れられていると考えられます。

学生から見ても、他の教員から見ても何が重要なのか分からない、専門性の高い(高いように見える)分野であるほど、教員が好き勝手できてしまう、という問題が生じてきますが、その話は専門家に譲ることにします。


制約のある問題では必ずトレードオフの問題が生じます。例えば、80点以上を合格、と決めてしまうと優秀な学生だけを採用できる一方で、採用できる人数が減少したり、不安定になったりします。また、数学の配点を上昇させると、それ以外の科目を相対的に軽視することになります。上述のような、授業と成績評価における再現性とトレーニング効率のトレードオフがあるように、最終的には上手くバランスをとるための程度問題の評価が重要になります。

こういったロジックは、有限の予算における投資における企業選択、企業の従業員の採用活動等においても同様に使うことができます。


このような様々な対象に関する評価方法、その裏側にある(損得に関する)人間行動のメカニズム、情報のやり取り、意思決定のロジックを学ぶのが経営学部の一連のカリキュラムです。身近なテーマの延長線上にあるロジックですが、落とし穴に落ちないための思考の訓練や、程度問題を適切に評価するための技術の習得によって様々な意思決定を有利に進めることができるのです。


                                      木下 亮




2025年7月14日月曜日

経験価値マーケティングを思い起こさせたパフェ体験

 流通マーケティング学科の丸谷です。70回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行なっていくのか)を専門分野にしていますが、流通マーケティング入門も担当しており、マーケティングに関する事例も収集しています。

 

美しいフォルムのパフェ

 私はケーキ屋さん巡りが趣味でしたが、コロナ禍以降はイートインのお店が減少したこともあり、出来立てのスイーツを食べられるパフェ屋さんを頻繁に訪ねるようになっています。コロナ前より通っている定期的に通ってパフェの奥深さをいつも感じさせてくれるアサコイワヤナギ、食べるときの演出も楽しい上野毛のラトリエアマファソン、関西発チョコですが東京でもチョコの奥深さを感じさせてくれる東京駅のショコラティエパレドオール、自宅から近く数回に一度なるほどとうなる組み合わせを堪能できる西荻窪のの台湾風パフェが有名な金木犀茶店、名店シンフラがある志木駅近くに最近開店したCOLOLIEまでかなり幅広い多様な個性のお店がパフェを提供しています。今回はこ数回訪ねている南砂町にあるKUNON Baking Factoryで最近再び注目を集めている経験価値マーケティングにまつわる体験をしたのでとりあげたいと思います。

 

経験価値マーケティングの代表的研究者であるシュミットは、体験を意識的にデザインし、顧客価値を向上させることを提唱し、「経験」 を軸に企業がマーケティング戦略の構築や目標を定めるためのツールとして「戦略的経験価値モジュール(SEM)」を提示しました。このモジュールでは、経験価値の構成要素を、「SENSE (感覚的経験価値) , FEEL (情緒的経験価値)THINK(知的経験価値) , ACT(行動的/肉体的経験価値) , RELATE (関係的経験価値)」の5つに分類し、これらの要素を長沢・大津(2022)はキーワードや例をあげてわかりやすく示しています。

今回のパフェ屋さんでの体験から得られた経験価値を、上記の5つの価値に当てはめて私なりに考えてみました。

SENSEにあたるのが、パフェの美しさです。私の写真は技術が高いとは言えないですが、それでもパフェの写真を見ると、今回のパフェの造形が素晴らしいことはわかるはずです。パフェにとってインスタ映えすることは今や最重要なことかもしれず、素敵な写真をみるだけでいつも癒されてしまいます。

パフェのメイン食材クラウンメロン

FEELにあたるのが、素材の豪華さです。今回のメイン食材であるクラウンメロンは非常に高価な食材であり、店主の久野さんがその食材のすばらしさや豪華さについて教えてくれました。私はかつて愛知県の大学で勤務していた際に、静岡のメロン農家の息子さんがゼミ生だったので、クラウンメロンのすばらしさや豪華さについては個人的にも伺っていましたので、テンションがあがりました。

 THINKにあたるのが、店主さんの地元静岡の食材へのこだわりです。クラウンメロンだけではなく、店主さんは静岡の食材にこだわっており、前に伺った際にも出身地の食材にこだわってるのが非常に素敵だなと感じ、ファンになりました。

 

パフェの味を変化させる名脇役のワサビ

ACTにあたるのが、味変のトッピングとして用いるワサビを自身ですって適量トッピングする過程です。実際にワサビをするのは大変ですが、自身てすったワサビからは愛着も感じられますし、ワサビのすりかたやわさびのすった部分ごとの細かい味の違いが実感できました。

 RELATEにあたるのが、季節ごとに新たな経験をできる各回定員3人の限定した取り組みを継続的に行うことでこだわりパフェのコミュニティを構築しているといえます。

パフェの提供には1時間以上かかり、定員も各時間帯3名となっているため(前は4名だったみたいですが、今回3名でした)、予約が必須ですが、非常に魅力的な経験をできるお店でパフェを通じた素敵なコミュニティで楽しい時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。次回(7月12日から8月9日までの予定のようです)提供の「みしまマンゴーとスパイスのパフェ」も早速予約させて頂きましたが、素材を栽培する様子やパフェ提供過程を紹介するインスタグラムを拝見しながら楽しみにしています。


レトロな雰囲気が素敵な砂町銀座商店街

 お店自体は住宅街にありますが、すぐ近くにあるレトロな商店街である砂町銀座商店街も非日常的な空間で、有名なおでん屋さんもあり、お勧めです。

                  (流通マーケティング学科教授 丸谷雄一郎)

2025年6月30日月曜日

大学ってどんな場所?とある東経大教員の思い出話

 

こんにちは。東京経済大学経営学部の講師をしております,岩田聖徳と申します。


教員の日常を発信しよう!ということなので,ゼミの紹介と,「大学」という場所を伝えるための個人的な思い出話をしてみようと思います。


ゼミって何?

ゼミというのは,少人数で教員とともに研究をする授業のことを指します。


例えば私のゼミでは,「R」という統計ソフトを活用して,経営・財務に関するデータの分析を行っています。


経営学部では,ゼミ研究報告会というものが毎年開催されるのですが,今年もそれをターゲットにゼミ生と研究テーマを出し合っています。


現在の岩田ゼミは,私と4人の受講生で学習・研究を進めています。


数あるゼミの中では人数が少ないほうですが(※さらなる応募を歓迎します!)


この規模だと教員に聞きたい放題,という状況なので,教員とガツガツ議論がしたい!という意欲的な学生さんにとってはむしろ都合がよいかもしれません(笑)




写真は,ゼミ生で研究テーマを持ち寄って意見を出し合っているときの風景です。


昨年から継続履修の上級生が新顔の2年生たちに背中を見せて議論してくれるので,大変頼もしく思っています。


大学ってどんな場所?

大学生活について,あまりピンと来ない受験生の方もいると思います。私も,高校生のときには大学がどういう場所なのか,全く分かっていませんでした。


受験勉強も,なんか沢山暗記しなきゃいけないし,模試の成績が良い友達を見ると焦るし,正直あまり好きな時間ではありませんでした。


強いて言えば,こういう人間が「もっと大学で研究したい!」「大学院行くからもう一回受験勉強する!」という180度回転をしたのが大学という場所であるということを,受験生の皆さんにお伝えしたいですね。


語弊を恐れずカンタンに言うと「興味あるものを好きにやったらいい」というのが大学の勉強です。


授業計画も大きなルールはありますが,数ある選択肢の中から何を選ぶかは皆さんの自由です。


この自由さが,大学1年生の岩田くんにはすごく刺さりました。


ある会社の経営戦略の話を深く聞きたければ専門の先生に質問に行けば教えてもらえるし,ふと法律の話を聞きたくなったらその授業を取ればいい。


先生方はご自身の専門の(※難解な)話をワクワクした表情で話されていて,大学というのは素敵な空間だなあと思ったのを覚えています。理解できたか否かは別の話ですが。


ゼミでの研究って?

また,「研究」という活動が楽しかったです。


誰も答えを知らないものを探しにいく,という知的作業に大学生の岩田くんはワクワク感を覚えました。


特に,東経大は2年生からゼミで研究活動に打ち込むという選択ができる,ゼミに特に力を入れている大学です。


これは一教員の感覚ですが,凄く良いことだと思っています。大事なことなので赤字にしてアンダーラインを入れました。


自分の考えたことを他の学生や教員と詳しく議論してみることで,自分の考え方のどこが他人と違うのか,説得力のある主張をするために何が足りないか,ハッキリ見えてきます。


学生さん目線でも,この体験があるか無いかで,学習意欲が一気に違ってくると感じています。


一教員として私が心掛けているのは,一人でも多くの学生さんに,なるべくなら1年生の最初の時点から,この知的作業のワクワク感や他者の考え方との違いによる「違和感」を感じられるように,講義やゼミを行うことです。


そのためには,教員である私自身の知識もアップデートしなければいけません。ちょうど近々,研究報告のために海外の学会に行ってきます。


そのあたりの話は次回更新にて。


(文責:経営学部専任講師 岩田聖徳)



2025年6月16日月曜日

2025年度も、経営学部ブログがはじまります!

こんにちは。

東京経済大学経営学部で教員をしている鴇田です。


今年度も、経営学部の魅力や日々の学びの様子をお伝えするブログを再開します。

2025年度は、二週間に一度、月曜日に更新予定です。どうぞよろしくお願いします!



このブログの目的は、「東京経済大学経営学部では、どんな学びがあるのか」「どんな雰囲気の中で学生たちが過ごしているのか」を、少しでもリアルに、高校生や受験生の皆さんに届けること、です。



大学案内のパンフレットやWebページにある情報だけでは伝えきれない、日常の風景や、学生・教員のリアルな声をお届けしていきます。



東京経済大学経営学部には、


🌸「経営」「マーケティング」「会計・ファイナンス」などの専門的なコースがあり、 


🌸学んだ知識を活かして考え、行動する「実践力」を身につける授業が数多くあります。  



たとえば、企業の経営者や実務家の方を招いての授業、ビジネスプランを練るグループワーク、実際に企業と協力して行うプロジェクト型の授業などもあります。  


私自身も、春からの授業を通して、学生たちのエネルギーにたくさんの刺激をもらっています。

新しいことに挑戦する姿や、ちょっと緊張しながらも手を挙げて発言してくれる姿に、毎回「これからが楽しみだな」と感じています。  


このブログでは、執筆を担当する先生の専門分野のお話や、ゼミでの活動、そして学生の頑張りなどを、

経営学部の教員がリレー形式で交代しながら投稿していきます!


「経営って難しそう…」 

「マーケティングってなにをするの?」

 そんなふうに思っている方にも、 

「ちょっと面白そうかも」「やってみたいかも」と思ってもらえるような内容を発信していけたら嬉しいです。  



次回からは、具体的な授業の取り組みや学生の声も紹介していく予定ですので、ぜひ楽しみにしていてくださいね。  



それでは、2025年度もどうぞよろしくお願いします!



  (文責:鴇田彩夏)