2015年1月4日日曜日

基礎セミナー2でアカデミック・ライティングの練習

皆さん、明けましておめでとうございます。
経営学部教員の柴田です。本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、新年第1回目のブログでは、1年生向けの科目「基礎セミナー2」について
ご紹介しましょう。(2015年度からは「フレッシャーズセミナー2」という科目名に
変更になります。)8月にご紹介した、前期開講科目の「基礎セミナー」は、
1年生全員が必ず履修するように、あらかじめ各自の時間割に指定されている
「履修必修科目」なのですが、後期に開講される「基礎セミナー2」は、あくまで
「選択科目」ですので、希望者のみが、希望する教員の「基礎セミナー2」に
申し込んで履修する、というかたちとなります。授業の内容も、「学生が主体的に
取り組んで、調査・分析や発表・報告を行う」という部分は共通しているものの
各教員の得意な分野や関心の高い分野を中心に開講しますので、それぞれの
クラスで内容にかなりの違いが生じます。

私の担当している「基礎セミナー2」では、一昨年から「論文・レポートにふさわしい
長文の書き方」に的を絞って演習をおこなっています。数年前から気になっている
ことのひとつに、「学生が、自分の考えをまとめた文章をきちんと書くことができず、
卒業論文の提出本数が減っている」という問題があります。この問題の背景には
小学校から高校までの間に、論理的な文章をまとめる訓練をほとんど受けて
来ないまま、大学に入って来る学生が多い、という事実があります。そこで、
1年生の後期に、自分で課題を設定し、資料を集めて整理・分析し、そこから得られた
結論を、論文・レポートとして、ある程度まとまった分量の論理的な文章にまとめる、
という一連の体験をしてもらう授業を進めているわけです。

「論文・レポートにふさわしい文章」とは具体的には以下のような特長を持つものです。
(1) 文体は、「である」調を用います。「です・ます」調や、「だ」調ではありません。
これは日常的に用いる話し言葉とは異なった、非常に堅苦しい書き言葉になります。
(2) 論旨は簡潔明瞭に述べ、あいまいさを避け、読み手に誤解なく伝わるように
しなければなりません。
(3) 筆者の感情や感想、思い入れなどを全て排除し、具体的事実に即して、内容を
論理的にまとめます。小学校の読書感想文とは異なり、「面白かったです」とか
「とても勉強になりました」などの感想は、本来論文・レポートに不要のものです。
(4) 筆者の考えは、全て「なぜそのように考えるか」という理由・根拠・証拠を示す
必要があります。学生に「自分の考えを述べる文章を書きなさい」というと、多くの
場合、「・・・・と考える。また、・・・・・・と考える。さらに、・・・・・と考える。」と文末に
「考える」と書き連ねておきさえすれば、それでもう「自分の考えをたくさん述べた」
ように錯覚(?)してしまうようなのですが、理由・根拠・証拠が示されていないと、単に
「ふと・・・・・と、思いついた。」だけに過ぎません。
(5) さまざまな資料やデータを集めることは、とても重要ですが、引用にあたっては
必ず出典、引用元を明示することが大事で、さらに読み手が元のデータにも簡単に
アクセスできるように、分かりやすく参考資料一覧を整理する必要があります。

2014年度の「基礎セミナー2」では、履修者の皆さんに、それぞれ自分が評価する外食
チェーン店を決めてもらい、そのチェーン店のどのような部分が他社より優れているのか
第三者にも分かるように論文・レポートにまとめてもらう演習を行いました。
以下の写真は、授業時間中に資料を調べ、原稿をまとめているところと、できあがった
ところです。




実は、本学の経営学部では、今年から優秀な卒業論文を表彰する制度をスタートさせる
ことになりました。このところ、卒業論文を提出して卒業する4年生が減っていて、教員と
しては、とても寂しく思ってきました。本来卒業論文は、「自分の考えを論理的な、堅苦しい
文章にまとめて発表する」またとない機会のはずですが、現実問題としては、卒業論文を
書くことに、これまで何のインセンティブもなかったわけです。そこで、優れた論文を表彰
することで、卒論提出者を増やし、1人でも多くの人に優れた論文を書いてもらおう、と
いう意図で、このような制度を発足させました。これが、良い論文を書く学生が増える
きっかけになることを願っています。

(文責:経営学部教員 柴田高)