2015年6月22日月曜日

人名もグローバル化?

 流通マーケティング学科の北村です。
 前々回の柴田先生、前回の関口先生と、グローバル人材について書かれていましたね。今日はその流れで、人名における海外対応について記したいと思います。

 明治安田生命は毎年、保険加入者の子供の名前調査を実施しています。2014年の「読み方ベスト50」によると、男の子は「ハルト」が6年連続で1位、女の子は「メイ」ちゃんが4年ぶりの1位だそうです。

 このベスト50にランクインした名前の読み方を見てみると、外国人でも発音しやすそうで、覚えやすそうな名前が、それなりの数あります。ちなみに同社の保険加入者の国籍は不明ですが、ほとんど日本人だと推測されます。

 具体的には、男の子では、10位カイト、28位ルイ、32位タイガ、44位レオなどがランクインしています。さらに顕著なのが女の子で、上述の1位メイに加え、3位リン、5位リオ、10位ハナ、14位ミオおよびユナ、23位サラなどがランクインしています。こうした名前の場合、名字がなければ日本人とは思われないかもしれません。

 今回、このことが気になったのは、私もレポートやテスト等の採点のため、本学の学生の名前を見ていて、やはり外国人風の名前が少なからずあると感じていたためです。親御さんが子供に、国際的に活躍するグローバル人材になるよう期待を込めて、名付けたのかなと思っています。

 ところで、海外では、読み方は言語により多少異なるものの、ルーツを同じくする名前があることをご存じでしょうか?例えば英王室のキャサリン妃は英語読みですが、フランス語読みだとカトリーヌ、ロシア語読みだとエカテリーナです。その義父はチャールズ皇太子ですが、ドイツ語読みだとカール、スペイン語読みだとカルロスとなります。ちなみにキャサリン妃が先日出産した王女の名前シャーロットは、チャールズの女性読みです。

 また、特にキリスト教の普及している国では、聖人の名前に由来する命名がよく見られます。聖パウロに由来するポール(英語)、パブロ(スペイン語)、聖ペテロに由来するピーター(英語)、ピエール(英語)、ペーター(ドイツ語)、聖母マリアに由来するメアリー(英語)、マリー(仏語)などです。このようにルーツが共通の場合は、わざわざ外国人風の名前をつけなくとも、海外でも通用しやすそうですよね。

 しかし、日本人でも、外国とルーツを共にできるものがあります。そう、漢字です!中国、香港、台湾、韓国の方には、伝統的な日本人らしい名前でも、漢字で名前とその意味を伝え、理解してもらうことができます。

 ところが、ややこしい問題があります。発音です。
 私のゼミの卒業生に、香港出身のチョウくんという男性がいます。チョウという名字は漢字で書くと「周」です。チョウくんは来日後しばらく、剣道を習っていたそうなのですが、その師範が「シュウくん」と呼ぶので「僕はチョウです」と訂正したのに、何度お願いしてもその人はシュウくんとしか呼んでくれなかったそうです。日本人は「周恩来」を「シュウ」さんと呼ぶように、中国語の発音よりも日本語の読みの方がなじみがあるからです。(なお「周」は、北京語(中国の標準語)だと「ジョウ」さんになるのですが、チョウくんは香港出身なので広東語、よって発音は「チョウ」さんになるのです。)

 私は数年前に中国語を習っていましたが、名字の「北村」は北京語で「ベイツン」と発音するので、クラスではベイツンと呼ばれていました。しかし、チョウくんをシュウくんと呼ぶのも、キタムラをベイツンと呼ぶのも、固有名詞なのに発音を変えるというのは、考えてみればおかしな話です。

 というわけで、漢字圏の東アジア諸国ならば日本人らしい名前のままでも通用しやすいとは、必ずしも言えないかもしれません。そうなると、やはり名前そのものを外国人風の名前にしてしまうという発想も分かる気がします。

 ほかに、本名とは別に、外国人風のニックネームをつけるという手もあります。先のチョウくんは、実はリッキーという英語名も持っていて、皆こちらで呼ぶそうです。香港では、この英語名の方が日常的に使われるので、友達と知り合ってずいぶん経ってから、ふとしたきっかけで本名(中国語名)を知って驚くことも多々あると話してくれました。ジャッキー・チェン、ブルース・リー、レスリー・チャンなどもそうで、中国名の名字に英語名の名前を組み合わせています。チョウくんによると、香港では英語名のニックネームを本人が子供の時につけるそうです(よって、適当につけてしまう場合も多いとか)。台湾の人も同じく英語名のニックネームを持っていることが多いのですが(例えばテレサ・テン、ビビアン・スー)、私の台湾の友人は、中学の英語の先生がクラス全員に英語名をつけたと話してくれました。いずれにせよ、英語名をつけるのは親とは限らないのですね。

 本名自体を海外でも通用しやすくするのか、日本人ながらの名前のままで意味を説明するのか、あるいは本名とは別に海外でも通用しやすいニックネームをつけるのか。留学したり、海外で働いたりすることを希望する人ほど、考えることになりそうです。

文責:北村真琴(流通マーケティング学科 准教授)