東京経済大学の本藤です。
今月の共通テーマは「月」ですが、ボクの主たる研究現場でもあるドラッグストアの店頭で、常日頃から目にする「月」と言うと、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか?
ボクは、この花王石鹸に代表される花王のロゴマークを思い浮かべます。
「月のマークの花王」というフレーズは、幼少期の頃からテレビCMからしばしば流れてきたフレーズです。
「月」のマークですが、歴史をたどると、今のデザインからは程遠いデザインだったことをご存知でしょうか?
花王のロゴマークに関して、花王のコーポレート・サイト「花王キッズ」の中で紹介されていました。「なまえとマーク」というページ(http://www.kao.co.jp/kids/yurai/)です。
「月」のマークですが、歴史をたどると、今のデザインからは程遠いデザインだったことをご存知でしょうか?
花王のロゴマークに関して、花王のコーポレート・サイト「花王キッズ」の中で紹介されていました。「なまえとマーク」というページ(http://www.kao.co.jp/kids/yurai/)です。
それによると、これが最初のロゴデザインで、花王創業者の長瀬富郎が考えたということでした。かなり個性的な“月のマーク”なのですが、ここには「高品質の象徴にしたい」という気持ちが込められているということです。ただ、ボクの感覚からすると、どう読み取ると「高品質の象徴」をイメージできるのか悩ましいデザインです(笑)。
その後、以下のようなデザインの変遷を経て、最後のデザインが現在のロゴデザインです。1890年 |
1897年 |
1912年 |
1925年 |
1943年 |
1948年 |
1953年 |
1985年 |
2009年 |
1925年から月の顔は笑顔になり、1943年から右向きだったデザインが左向きに変わります。これは、月の満ち欠けの法則を意識して、右向きの下弦の月はこれから更に欠けていくのに対して、これから満月に向かっていく左向きの上弦の月に変えて、花王の事業の成長を祈念しての変更のようです。
ロゴマークの変遷にも企業の歴史を感じます。
この花王の前身である長瀬商店では、外国製の日用品や文房具を扱っていたようなのですが、外国製の高品質な石鹸はとても高価で、日本製の石鹸は品質が低かったため、安くて品質の良いものを提供したいということで1890年の創業者の長瀬富郎が「花王石鹸」を開発しました。
当時は、洗濯用の石鹸を「洗い石鹸」と呼び、顔を洗うための石鹸を「化粧石鹸」とか「顔石鹸」と呼んでおり、「顔」をもじって「香王」や「華王」などと検討を重ねて、現在にまで流通している「花王石鹸」という名前になったとのことです。
そもそもは「顔石鹸」が端緒だった「花王石鹸」ですが、“安くて高品質な国産石鹸”と言いながらも、桐箱に三個入り35銭で発売されていました。当時は、米1升が6~9銭だったので、非常に高価だったようです。外国産の高級石鹸が30~50銭だったので、若干安い程度ですね。
この桐箱入りの花王石鹸の効能訴求は凄いんですよね。
肌にツヤが出る、ニキビが治る、タムシにも効いて、しもやけや湿疹など全てを治すというスグレモノです!
現代であれば、間違いなく薬事法違反として誇大広告で摘発されそうなオール・イン・ワンのオールマイティ製品ということになります(笑)
当時のおおらかな流通政策もうかがえるエピソードとも言えそうです。
そんな花王ですが、今ではコンプライアンス(法令順守)の意識が物凄く強い企業です。
社会的な信用を築くのは、コツコツと細かな事実を積み上げていく必要があります。当時、国産石鹸の最高峰にあった「花王石鹸」ですが、いまでは「洗顔料」というカテゴリーでトップシェアを持つ超大手メーカーに君臨しています。コツコツとブランドの信用を積み上げてきた成果が、花王のマークに込められた上弦の月と同様に、成長し続けることでしょう。
【参考】
花王株式会社「花王キッズ なまえとマーク」http://www.kao.co.jp/kids/yurai/
株式会社生活と科学社「石鹸百科 桐箱3個入り35銭の化粧石鹸」
http://www.live-science.com/honkan/soap/soaphistory03.html
本藤貴康(流通マーケティング入門、流通論、地域インターンシップ担当)