東京経済大学の本藤です。
10月のお題は「ハロウィーン」です。
知恵蔵2015(コトバンク)によると、ハロウィーンは「毎年10月31日に行われる、ヨーロッパを発祥とする祭り。もともとは秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事で、11月1日の、カトリックの聖人の日である万聖節(All-hallow)の前の晩に行われる」とあります。馴染みのあるエピソードとしては、子供たちが仮装をして「Trick or Treat!」と言って近所にお菓子をねだりに回るアメリカの風習かもしれません。
とは言うものの、日本で隣近所に「Trick or Treat!」と言ってお菓子をねだり回る風習はほとんど見られません。
このハロウィーンで仮装する習慣が日本で広がり始めてから、そんなに年月は経っていないと思われます(少なくともボクの大学時代にはハロウィーン・パーティなどという企画は聞いた記憶がありません)。日本は、都市部では近所の人たちとオープンに交流する文化は薄れてきていますし、地方ではハロウィーンの風習がそもそも広まっていませんし、せいぜい町の商店街が飾り付けをする程度ですから、ハロウィーンは商業者か都市部の若者限定のイベントと言えそうです。
このハロウィーンの市場規模の推計を日本記念日協会は行っていますが、同団体による試算では、昨年(2014年)は既に約1100億円に達していると発表されています。ここでは「こどもから大人まで楽しめる多世代性。仮装という非日常性。パレードという同調性。パーティーという共感性。10月下旬という他に大きなイベントがない季節性。しかも“ハロウィーン”にはシンボルとなる魔女やカボチャがあり、そのイメージカラーの黒やオレンジがある。なぜ10月31日なのかという理屈よりも、その日にはひとつのテーマでみんなで楽しもうという空気が優先されることで気軽にその輪の中に入りやすい」と分析されています。
社会的風習としてマーケットを創造するという視点で考えると、より多くの人を巻き込まないと様々なビジネスが参入しづらく、結果的に市場が加速度的に膨張していきません。マーケティングの基本的な理論にプロダクト・ライフ・サイクルという考え方があり、そこでは導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つのフェーズに分割して市場を捉えています。この導入期(新たな市場を生み出す段階)では、競合企業であっても参入を促して「市場の拡大」を図る時期とされており、このハロウィーンも様々な業界が参入することは、先行企業にとってもメリットになってくる場合が多いのです。
日本記念日協会から指摘されていたように、特にこの10月という時期は、一般的にはイベントが不足する時期でもあり(大学では文化祭シーズンですが)、夏休みの後でクリスマスまで間隔が開くタイミングですので、国内需要の拡大に貢献するアイデアは大切ですね。
参考資料
一般社団法人日本記念日協会(http://www.kinenbilabo.jp/?p=228)
本藤貴康(流通マーケティング入門、流通論、地域インターンシップ担当)