2016年8月8日月曜日

【学問のミカタ】販売会社ってなに?

経営学部の本藤です。
期末試験も終わり、最初のオープンキャンパスのイベントも終わり、夏休みに突入です。
大学教員の「夏休み」は「休み」ではありません。まとまった研究などの個別の活動ができる貴重な機会です。でも、研究に集中できるかとなると、学会を含めた学外の仕事が続々と入ってくるので、「休み」という響きからは程遠い生活です・・・(*´Д`)

今月の全学共通テーマは「会社」です。
このテーマは何でもトピックにできるのですが、今回は「販売会社」を紹介します。
大企業のマーケティングや営業などのブランディングを推進する流通機能を担っています。

ところで、ドラッグストアやスーパーマーケットなど日常的に利用しているお店の売場で、みなさんはブランドは認知していて選びますよね?
「ネスカフェがなくなったから買わなくちゃ」とか「そろそろフルグラを食べたいなぁ」とか・・・

例えば、シャンプー売場で買い物をしていて、商品棚に並んでいるのは、エッセンシャル、セグレタ、アジエンス、メリット、サクセスなど様々なブランドを目にします。


ここで挙げたブランドは、それぞれメーカー名を知っていますか?


ブランドは知っていても、メーカーを知らないケースは多々ありますよね。
「ペヤング ソースやきそば」の「まるか食品」だったり、「サッポロ一番 みそラーメン」の「サンヨー食品」だったり、メーカーの会社名を知らなくても、商品名やブランド名は知っているというものはたくさんあるのではないでしょうか。

メーカーの中には会社名の認知を広めるために広告宣伝するケースもありますが、多くのメーカーは売上につながるブランド認知を推進するために広告宣伝するケースが多いようです。
これらの商品やブランドの認知の多くは「店頭」で買われて、消費されて、評価されて、長期的に売場を確保して、繰り返し利用されることで、ブランディングを推進します。
そのために必要な企業活動が営業であり、その組織としての力が営業力です。
商品力があっても営業力がないために、まだ日の目を見ないブランドは無数に存在しています。
この営業力は、営業拠点や営業担当者の数によって強化されますが、その量だけではなく質も重要になってきます。
ですから、強力な営業力を有する大企業の方が、強いブランドを育てられるマーケティング機能を持っていると言えます。


先ほど挙げた5つのブランド(エッセンシャル、セグレタ、アジエンス、メリット、サクセス)は、すべて「花王」のブランドです。シャンプーというカテゴリーで、花王は30%近くのマーケットシェア(市場占有率)を獲得しており、低価格帯から高価格帯まで幅広く製品供給をしています。実は、花王は洗剤や柔軟剤では更に大きなシェアを持っていて、メイク落としや洗顔料でもトップシェアを誇っています。


これは、競争力のある製品開発をしているという側面もありますが、会社の営業力によってブランド力が築き上げられているという側面の方が大きく影響しています。
この花王の営業力は、花王カスタマーマーケティング(花王CMK)という販売会社が支えています。この花王CMKは、メーカーである花王株式会社の持ち株比率が100%の完全子会社で、花王が製造する化粧品などのビューティケア製品、歯磨きなどのヘルスケア製品、洗剤などのファブリック&ホームケア製品など、すべての花王製品を取り扱っています。

同社は、メーカー(親会社)から仕入れて、小売業に流通させる「卸売業」です。花王製品しか扱っていないにも関わらず、日用雑貨を扱う卸売業の中でも国内第2位に君臨する大企業です(直近決算で、上場している日用雑貨卸の第1位パルタックが約8600億円、第2位あらたが約6767億円に対して、花王CMKは約6955億円)。
日本橋にある本店の他に、全国8箇所(北海道、東北、首都圏、関越、中部、近畿、中四国、九州)に支社があり、全国に約90ものオフィスを備え、各拠点の営業担当者が、各地の小売チェーンやブランドを担当しています。
※花王カスタマーマーケティングHP(http://www.kao.co.jp/saiyo/cmk/gt/company/index.html)


このような「販売会社」をメーカーが設立するのは、営業やマーケティングに専門特化した部隊を効率的に効果的に育成・活用できるからです。ただし、国内にきめ細かく流通網を持つ既存の卸売業を活用せずに、独自の販売会社を持つことはメリットもデメリットもあります。競合企業であるライオンやP&Gは既存の卸売業を活用する流通戦略を採用しているように、会社によって流通戦略は異なります。このライオンやP&Gにも強いブランドがあることを考えると、販売会社の設置が絶対に正しいとは言い切れません。販売力だけを考えると、多くの卸売業に営業展開してもらった方が効果的であるとも言えます。ただし、販売会社による流通の最大のメリットとして、メーカーのマーケティング戦略を無視した乱売に巻き込まれづらくなるなどがあります。

このような販売会社は、「〇〇マーケティング」とか「〇〇販売」というような会社名がつけられていることが多く、メーカーとの結びつきを会社名に表現しています。

因みに、この花王にも花王CMKにも、本学からかなり多くの卒業生が勤務しています。
高校生のみなさんは、簡単に「広告」や「商品企画」などのクリエイティブな仕事に就きたいと口にする人が多いのですが、営業経験がある人の企画力は完成度が違います。やはり20代のうちは営業で現場を回る経験が、30代のポテンシャルを高めてくれます。営業で実績を積んでから企画系業務に行った方が遥かに仕事はやりやすくなりますし活躍できます。

営業というとネガティブなイメージを持つ人もいますが、どんな性格でも多種多様なお得意先があるので、ありとあらゆる人が活躍できるフィールドです。営業で自分なりの最適解を模索するプロセスで見えてくるものは、自分にしか実現できない成果(ゴール)でもあります。

大学時代も、自分のポテンシャルを模索する時代です。
20歳をまたぐ4年間は、社会人になるまでの助走期間ですから、どんな仕事に就くとしても営業に関わる勉強はやり過ぎということはありません。
東京経済大学の経営学部は実践力を意識しているので、流通やマーケティングを実践的に教えています。社会人への助走は大学を選ぶ時から意識してみてください。


【学問のミカタ】
他学部やセンターからも、同じ「会社」をテーマとしたブログがアップされています。
高校生の皆さんは、他の【学問のミカタ】に是非ともお立ち寄りください。
・経済学部ブログ「会社の利益は誰のもの?
・コミュニケーション学部ブログ「「会社」はコミュニケーションの宝庫
・現代法学部ブログ「世界で最初の株式会社って?
・センターブログ「「会社」=“Company”?

文責:本藤貴康(流通マーケティング入門、流通論、地域インターンシップ担当)
本藤ゼミナールBLOG http://hondo-seminar.blogspot.jp/