流通マーケティング学科の丸谷です。30回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行っていくのか)を専門分野にしているので、海外に出張に行くことが多く、このブログでもインド、チリ、中国、ペルー、ブラジルの出張の模様をこれまで取り上げてきました。
昨年の10月のブログでは、2017年度より科学研究費を頂いて行っている「ネット小売普及以降の小売国際化現地化戦略モデル構築のための研究」というテーマの研究のために訪れた、アマゾンの有人店舗のうち、シアトルで訪れた無人コンビニ『アマゾンゴー』とアマゾンサイトで評価が高い本を販売する書店『アマゾン・ブックス』についてとりあげて好評だったので、今回は3月のニューヨーク出張で訪れた別の2形態の店舗『アマゾン・4スター』と『アマゾン・ポップアップストア』について取り上げます。
世界のネット小売を牽引してきたアマゾン・ドットコムは1994年米国ワシントン州シアトルにて創業し、現在も本部を昨年取材したシアトルにおいています。同社は米国以外にも現在14カ国向けにネット小売を展開しており、今回取材したニューヨークは世界経済を牽引する都市というだけではなく、地元住民の反対で撤回されましたが、ニューヨーク市クイーンズ地区ロングアイランドシティに第2本社を置くことを一度は決めたほど重要な拠点の1つです。
ニューヨークの絶景(最新穴場絶景ポイント:ブルックリン橋前の1ホテルより) |
アマゾン・4スター(Amazon 4-Star)は2018年9月にニューヨークのマンハッタン島の流行発信地区であるソーホー地区に初出店した業態です。店舗の周辺にはMOMA(ニューヨーク近代美術館)のデザインストアやベストセラー作家がイベントを行う有名ブックカフェがあり、世界最先端都市ニューヨークにおいてもトレンド発信基地になっている場所です。
ソーホーの隣ノリータの有名ブックカフェ |
業態としての特徴は、ネーミング通り、アマゾンの顧客がネット上で示しているカスタマーレビューで星4つ以上を獲得した商品を選定して取り揃えることにあります。
出入口では満足度測定器がお出迎え |
カスタマーレビューを利用するという点では、アマゾン・ブックスと同じですが、商品の種類が異なり、本も一部ありますが、同社が展開するアレクサなどのAIスピーカーやキンドルなどの電子書籍リーダー、ホームアンドキッチン商品及び玩具など実際に触れてみて良さがより伝わる商品を品揃えしています。
主要な商品であるホームアンドキッチン商品 |
主要な商品である玩具 |
特に重さが重要な鍋や調理家電、ちょっとした便利さを提供する調理器具などに関しては、いくら何キロと書かれていても、実際に現物を持たないと使い勝手が想像しにくいなと店舗で実際に展示されている商品をみて感じました。
また、実際の商品の使い勝手に関しては、微妙な声の反応が見たいスマートスピーカーやページのめくり心地が見たい電子書籍リーダーにもいえるので、こうした店舗はネット小売を補完する存在として今後も重要だといえます。ゾゾスーツが話題になった割にはうまくいっていないのも着心地といった微妙な感覚の問題があるといえ、ネット小売を中心に展開しているからこそ提案できる、実店舗(じつてんぽ) といえそうです。
微妙な感覚といえばヘッドホンも |
今回新たな業態ということでもう1つ訪れた「アマゾン・ポップアップストア」は予想よりもこじんまりしていました。こちらは上記の実店舗の強みをアマゾンが自社ブランドで展開する商品販促に使ったお店であり、販売ではなく期間限定の宣伝ブースという感じでした。取材した店舗はニューヨークの中心のマンハッタン島ではなく島からでた郊外のクイーンズのクイーンズセンターモール(Queens Center mall)の中の人通りが多い場所にありました。
アマゾン・ポップアップストア |
アマゾンも注目する世界の最先端都市ニューヨークには最新トレンドを反映したお店が多くあり、常に入れ替わっていきます。今回の取材は南米出張の時差調整もかねての短期間でのものでしたが、昨年9月に訪れた際に気になり、今回宿泊したブルックリンのウィルアムズバーグのホテル周辺にもスケッチブックプロジェクトと呼ばれノートサイズのスケッチブックを購入して、好きなデザインのスケッチブックを作り展示を頼めば展示してもらえるという参加型アートギャラリーやジーンと呼ばれるブルックリン・アート・ライブラリー、ジーン(ZINE)と呼ばれる小冊子を世界中から集めて販売するジーン専門書店、サクラブラマンジェなど和の要素を取り入れたデザートを出す専門店などが隣接してあり、とても刺激的な体験をできた。