経営学部では1年生向けに専門分野の入門編となる、基礎的な知識を身につけるための授業をいくつか開講しています。その一つに「会社入門」という科目があります。経営学で学ぶ、おもな対象となるのは、会社(ほとんどの場合、株式会社)の事業活動です。会社は、私たちの日常生活の中ですぐ身近なところにたくさんあるのですが、残念ながら小学校から高校まで、これについて「学ぶ」という機会は、ほとんどありません。また、大学の新入生の中で「正社員として会社で働いた経験がある。」という学生は、きわめて少ないのが現状です。そこで、東京経済大学の経営学部では、2017年度よりカリキュラムを修正して、1年生のまず最初の学期に、会社というものがどのような存在か、会社を取り巻く産業・市場・業界とは何なのか、会社を構成する株主や経営者とはどのような存在なのか、会社の中で働く人はどのような仕事をどのように進めているのか、会社の事業をうまく進めていくには何が必要なのか、などの事柄をしっかり身につけてもらおうと、「会社入門」という科目を開講することにしたわけです。
この「会社入門」では、通常の週は担当教員が説明を行う、ごく普通の授業形式なのですが、例年途中で2回、グループワーク形式によるビジネスゲームを行っています。これには日本証券業協会の証券知識普及プロジェクトから無償で提供して頂いている「ケーザイへの3つのトビラ」という教材を利用しているものです。今年の1回目のグループワークは、6月17日(月)の授業で、この中で最初に出てくる「ワールドトレジャーランド再生計画」というビジネスゲームを行いました。ここでは学生一人一人がテーマパーク「ワールドトレジャーランド」を経営する取締役の一人になったつもりで、経営者の意思決定のプロセスを学びます。近年、売上減少が続くこのテーマパークでは4人の担当社員が「設備投資を増やす」「スタッフの質を向上させる」「広告・宣伝を増やす」「無駄な費用を削減する」などの対応案を持ってきます。経営者の1人としては、まず4人の意見を分析して、その効果を自分なりに評価します。次に、3人から5人のグループを作り、これが「ワールドトレジャーランドを経営する取締役会のメンバーである」と想定して、各取締役の意見をもとに議論を行って会社としての一つの意見に集約する「取締役会」を開きます。以下の写真は、取締役会としてグループごとに話しをして、株主総会での発表を準備しているところです。
各グループでは、自分たちが選択した案をもとに、それを具体的にどのように進めていけば業績を向上させることができるかを考え、発表資料にまとめます。この発表資料に基づき、実行案をそれぞれのグループごとに代表取締役社長を務めるリーダーが発表します。これは株主総会での会社側の事業計画の提案に相当します。学生の皆さんは、今度は各自が株主の1人になったつもりで、自分たち以外のグループの中では、どのグループの発表内容がいちばん優れているか、評価シートに記入していきます。以下の写真は、グループごとに発表している様子と作成した発表資料です。
このようにして、会社における意思決定のプロセスを疑似体験してもらうわけです。終了後、学生の皆さんに感想を記入してもらうと、「経営をするのはとても難しく、話し合いが大変だったが、班のメンバー全員で考え、アイデアをだすということが楽しいとわかった。」とか「会社はたくさんの人から成り立っていて、株主がいて始めて事業できるとわかった。また会社の問題点から立て直す時、事業計画を一つに絞ってやっても必ずうまくいくとは限らず、一筋縄ではいかなくてとても難しいことだとわかった。」「一時期売り上げが伸びたからと言ってその案件がずっと有効とは限らない。お客さん側の欲求は目まぐるしく変わり、常にその欲求、要望に答えていかないと会社として生きてはいけないと分かった。」などの意見が集まりました。この場を通じて、教材を提供して頂いている日本証券業協会の皆様にも感謝の気持ちを述べたいと思いますし、新入生の皆さんも、ビジネスゲームを通じて会社というものの理解が進んだのではないかと思っています。
(文責:柴田 高)