2019年12月9日月曜日

福岡でスマートレジカートを実用化した店舗を取材

流通マーケティング学科の丸谷です。33回目の執筆です。日本は米国や中国に比べ無人店舗の展開が積極的とはいえない状況ですが、実験的な取り組みは最近増えてきているようです。

身近なところでも東京経済大学の最寄の国分寺駅から3駅目の武蔵境駅構内のコンビニであるNewDaysが同チェーン初のセルフレジ専用キャッシュレス・無人店舗となっています。私のゼミは研究テーマを個人で決められるのですが、最近ロボットを利用した接客のあり方について研究するゼミ生も出てきています。
セルフレジのみで決済する武蔵境駅構内のコンビニNewDays
今回は日本の中では積極的に無人清算やスマートストアといった取り組みを行っている企業の取材のために福岡に行ってきたので、取材した内容を取り上げます。今回取材したのは九州福岡発のディスカウントストア大手のトライアルカンパニーの最新店舗です。

トライアルカンパニーは日経MJ掲載の18年度の小売業調査(第52回)では全国31位であり、35位の良品計画よりも上位であり、同じく日経MJ掲載の第47回日本の専門店調査の総合ディスカウントストア部門では、あのドン・キホーテに次いで第2位となっています。

しかし、出店が出身の九州中心であり(243店舗のうち91店舗)、店舗数に比べると知名度は高いとはいえません。関東地方も56店舗あるのですが、出店が北関東や千葉が多く、東京出店がゼロなためマスコミにも取り上げられにくいことも知名度の低さの原因かもしません。

20194月にAIITを活用したスマートストアとして改装した福岡県糟屋郡の「メガセンタートライアル新宮店」です。なお、同社の代表取締役会長永田氏が執筆された著作『リテールAI最強マネタイズ』(日経BP社、2018年)は、「リアル」と「AI」技術を融合した「リテールAI戦略」に関する同社の考え方が示されています。もし興味を持った方はkindle版もあるので合わせて確認すると理解しやすいです。

メガセンタートライアル新宮店がある福岡県糟屋郡新宮町は九州最大の都市福岡市に隣接することもあり、ベットタウンとしての開発が進む地域であり、マンション開発も活発なエリアです。 
店舗の駐車場に隣接するマンション
店舗が接する国道3号線(福岡の最北の門司から鹿児島まで西部九州を貫く幹線道路)は福岡へとつながっています。店舗近くでは道路に沿って、自動車販売店、紳士服量販店、百円均一店、ホームセンターなどが出店しており、典型的なロードサイドとなっています。この道路には福岡市の繁華街天神からのバスが定期的に走っており、私は天神からバスで30分程度で最寄りのバス停まで行き、そこから数分歩きました。

しかし、大部分の顧客は大規模駐車場がある自動車で訪れており、店舗の上や周りだけでなく、店舗の周りにも大型駐車場が配置されていました。

ロードサイド立地のメガセンタートライアル新宮店
同社はこれまで同じく福岡市に立地する大野城市に夜間完全無人店舗トライアルQUICK 大野城店を開店するなど、スマートストア(電子タグや人工知能などの技術によって流通課題を解決する店舗)を稼働させるための取り組みを行ってきました。


大野城の店舗がQUICKという名称通り、無人という以外には一般的食品スーパーという雰囲気なのに対して、今回取材したメガセンターは巨大駐車場がある2階には衣料、家電、住関連商品なども幅広く品揃えされている総合スーパータイプの店舗です。なお、1階のドラッグスストアは取り扱い商品が薬であることもあり、有人の別レジが設置されていました。 
店内レイアウト
店内に入ると、スマートレジカートと呼ばれる清算機能が付いたカート200台と、普通のカートの両方が常備されていました(クイックではスマートレジカートのみ)。スマートレジカートを利用すると最後にスマートカート専用レーンで決済し、店員に決済完了したことを示せば並ばずに退店できました。スマートカートには決済機能に加えて、お得情報を進める機能もありました。

子供が乗せれるスマートレジカートも
また、1500台設置されているというAIカメラが欠品や顧客の動向をチェックし、顧客に合った広告を顧客の近くのモニターに写したりしていました。売価変更が多い生鮮食品を中心に7000枚の電子プライスカードの導入も行っているそうです。

変化する店内モニター
食料品コーナーには多くの電子プライスカード

最後買い物が終わると出口でレジ袋の要不要を確認する

店員による退店前の確認

買い物が終わると出口でレジ袋の要不要(用なら枚数も選択)を確認した後、店員の簡単な確認を受けて退店します。お盆期間ということもあり、実際に店舗内の顧客の観察をしていると、スマートレジカートの利用に関しては、中年以下の買い物慣れたした主婦に多い程度でした。その浸透度合いはレジが少し混んでいても、有人の普通レジを利用するお客さんが多かったです。

非食品を品揃えする2階に関してはスマートレジカートを管理する店員さんが手持ち無沙汰なほどの状態で、ほとんど利用している人がいない状況でした。やはり新技術の普及には一定の時間と普及のための工夫が必要なようです。とはいえ、本格的に開始された取り組みは興味深く、トライアルカンパニーが提案する店舗の自動化や無人化は確実に進んでいくと考えられます。

私が海外で取材したウォルマートやイケアも、日本の流通を変えてきたユニクロ、ニトリ、ダイソーなど、流通の革新者は地方出身です。今後とも地方からの新たな流通革命の動向を追跡取材していきます。
              (文責:流通マーケティング学科 丸谷雄一郎)

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