2020年3月9日月曜日

店頭に出ている分で全部です!

2010.03.09

 経営学部の本藤です。
 新型コロナの影響が、国民生活の様々なシーンに及んでいます。
 安倍内閣は新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案を国会に提出する見込み。
 安倍首相が「緊急事態宣言」をした場合、都道府県知事によって、外出の自粛から学校やイベント会場等の使用制限を要請することが可能となります。
 現時点では、まだイベント等の自粛要請を行ってはいませんが、テレワークや時差出勤の推進を「強力に」呼び掛けています。


 有名タレントのコンサート中止のニュースも多いのですが、大学でも様々なイベントが中止されています。また、海外渡航だけではなく国内旅行も自粛ムードが一段と強まり、不要不急の外出を控える人が急増してきています。多くの企業でもテレワーク利用の在宅勤務が進められつつあり、ビジネス関連のイベントも軒並み開催中止の連絡が飛び交っています。
 このように人の移動がなくなると、経済活動は一気に冷え込みます。特に、人の移動がなくなるので、航空業界や宿泊施設などの旅行に関わる業界は大きなインパクトを受けています。宿泊施設として、都内有名ホテルの価格が通常の半額レベルにまで落ち込んでいるところもあり、地方観光都市の高級旅館も事業継続を断念するところも出始めているほどです。
 同様に、外食チェーンや居酒屋チェーンなども軒並み前年同月比で20%以上の落ち込みを記録しているところも多く、例年送別会などの利用が集中していた3月から4月の前年同月比は厳しい状況になると思われます。


 その一方で、マスク不足や消毒用アルコール不足は深刻で、連日のように開店前のドラッグストアの店頭では、マスク購入のための行列ができています。ネット通販も、不当に高い売価で販売されており、中には売価は通常通りでも配送料金が通常の20倍もの設定で販売している悪徳業者も出てきています。このような転売業者などによる買い占めを防ぐために、政府による委託生産が多くの業界を巻き込んで進められており、政府が一括買取をして配付するというような対応を余儀なくされている状況です。
 ドラッグストア等の多くの小売業態では、通常でも非計画購買が75%程度発生するという調査結果がありますが、マスクを買いに来て、念のためティッシュやトイレットペーパーのような生活必需品をついで買いするという人も多かったのだと思われます。それが不足していないはずのペーパー類まで欠品状態に陥ってしまって、もはや小売店舗ではパニック状態です。


 そんななかドラッグストアの店員から顧客のクレームについて異口同音に聞かされる困ったケースは以下のようなクレームのようです。
「うちのおばあちゃんは体が弱くて、本当に必要だから何とかしてくれ!」
「開店1時間前から並んでいるのに1個しか売らないってどういうことだ!」
 この他にも、店舗のバックヤードに勝手に立ち入ってガサ入れする顧客がいるとか・・・
 更には、開店前から並んで、制限販売量を購入して、余計に1個売場の陰に隠して、あとで何食わぬ顔して買っていくとか・・・


 困りますよね。
 ドラッグストアをはじめとした小商圏型の生活業態は、安定的に生活必需品を供給する社会的商品流通を担っています。そこでは最近は発注業務はAIが行うところが増えてきており、これまでの実績値から適正量を発注しています。もはや2万アイテムもある商品を人間の手で発注する時代ではないのです。
 しかも、近年では店舗のバックヤードに在庫している商品は、特売商品などの一部の商品だけで、基本的には店頭在庫が店舗の全ての在庫であるケースがほとんでです。
でも、大量購入されるケースに備えて、小売業は各チェーンの流通センターに一定の在庫を保管しています。更に、中間流通を担う卸売業の流通センターにも在庫があり、必要に応じて小売業の流通センターに供給します。それでも不足している場合には、メーカーの流通センターから調達します。それまで欠品する状態をメーカー欠品と言われています。これだけ多段階に欠品を防止する社会的流通システムで対応しているにも関わらず、生活必需品が店頭から消滅するという事態が現在の状態で、ドラッグストアの売場で対応している店員では如何ともし難い状況なのを、生活者は十分に理解しなければなりませんね。



 マスクの生産については、シャープをはじめとして異業種メーカーも生産ラインを整えたというニュースがありました(精密機器を扱うメーカーは無塵状態のクリーンルームがあるため、その環境要件を備えているようです)。通常であれば、今月中にはかなりの供給状態になっていくはずですが、問題なのは海外でもネットを通じて買い漁られてしまうというマーケットになっているので予断を許しません。
 以前のマスク不足が深刻化した新型インフルエンザの際もそうでしたが、メーカー各社がフル稼働させてマスクを生産したのですが、その設備投資をマスクで回収する前にパニック状態が沈静化してしまったため、供給過剰になったマスクを店頭で処理しきれなくなってしまったことがあります。その結果、マスクの価格が下がりまくるという事態を招いてしまいました。通常、マスクは長期保管してからの利用も可能なので、今のパニック状態が終息したら、マスクの店頭需要が一気に冷え込んでしまうことが考えられます。


 WHO(世界保健機関)では、感染者にとって二次感染や三次感染を防ぐために必要ですが、感染予防のための科学的根拠はないと発表しています。


文責:本藤貴康(流通論、流通マーケティング演習、アカデミックコンパス担当)
本藤ゼミブログ(http://hondo-seminar.blogspot.com/