2024年5月20日月曜日

特別企画講義「鉄道で考える社会インフラ整備・管理の未来」のご紹介①

 経営学部の三和雅史です。
 管理工学、システム分析論等の科目を担当し、ゼミではオペレーションズ・リサーチ(各種問題の科学的解決法)を扱う等、工学分野を専門としています。

社会インフラとしての鉄道
  皆さんは「社会インフラ」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?社会インフラとは、電力,水道,通信,交通機関等の生活に不可欠な設備やサービスのことであり、「社会基盤」や「社会資本」,「社会インフラ」とも呼ばれます。社会インフラの整備は私たちの生活や文化を豊かにし、そして社会インフラはあって当たり前、使えて当たり前の存在になっています。そのため、ひとたび不具合が起きて使えなくなると、社会に与える影響は大きく、大ニュースになってしまいます。

  近年、この社会インフラの維持が難しくなりつつあります。社会インフラを構成する設備の多くで老朽化が進み、また人口減少により検査や補修に携わる人の確保が難しくなってきているためです。開業から150年を超える鉄道も、こうした状況にありますが、更にコロナ禍を経て利用者が減少し、鉄道会社は厳しい経営環境にあります。一方で、鉄道が今後も魅力的な移動・輸送モードであり続けるために、利便性を向上して新しいニーズを取り込む、或いは創造する整備事業がまちづくりと一体になって進められています。私たちには、これから30年後、50年後も社会インフラを持続、発展させる取り組みが求められています。
 
 こうした社会インフラの現状や課題、将来に関する話題は、担当科目の中でも時々採り上げていますが、短い講義時間の中での話なので、私の視点や解釈を経た一部の情報を伝えているに過ぎません。日本は鉄道が非常に発達した国であり、最高速度320km/hで走行する新幹線の他、都市部では1時間に約30本もの列車が運転され、また地方でも通勤,通学や観光等に利用されており、日本には何と200を超える鉄道会社があります。そのため、鉄道会社の課題とそれに対する戦略は各社で様々です。そこで、規模や地域、収益構造等が異なる色々な鉄道会社に設備の管理・整備の現状,課題と将来像を紹介してもらい、また監督・指導する行政にも登壇してもらうことで、受講生の皆さんが社会インフラの現状と課題の全体像を俯瞰的に認識し、課題解決策と将来を考える機会となるよう、特別企画講義「鉄道で考える社会インフラ整備・管理の未来」を1期(前期)に設定しました。この特別企画講義というのは、東京経済大学の独自の制度であり、毎年開講される科目とは別に教員がアイデアをめぐらせて考えたユニークな科目が、特定の年度に「特別」に開講されます。他の科目と同様に単位も付与されるので、各自の興味・関心に合わせて選択,履修でき、東京経済大学の特徴である幅広い学びの機会となっています。

特別企画講義の内容と実施状況
 設定した特別企画講義の各回の講義タイトルと講師の所属は以下の通りです。

  ・JR東日本の鉄道インフラメンテナンスの課題と今後のDX戦略(JR東日本)
  ・JR東海が取り組む経営体力の再強化(JR東海)
  ・地方における、持続可能な公共交通ネットワークの構築を目指して(JR四国)
  ・「競争から協調へ。」 ~モーダルコンビネーションを通じて持続可能な
   社会を目指す貨物鉄道の姿~ (JR貨物)
  ・わが国における鉄道建設プロジェクトの成果と課題解決の方向性
   (鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
  ・今、鉄道の現場が考えていること(京阪電鉄)
  ・地域ネットワークとしての鉄道の安全と事前復興の意義 ~南海電鉄を事例
   として~ (南海電鉄)
  ・安全・安心・快適の提供を目指して ~阪急電鉄グループの歩みを紐解く~
   (神戸電鉄)
  ・路面電車の広島駅前大橋ルート計画を通じた交通とまちづくり(広島電鉄)
  ・東急電鉄これからの100年を目指して(東急電鉄)
  ・東京に地下鉄が走ってもうすぐ100年… 昔も今もこれからも(東京メトロ)
  ・“絵葉書になる風景” 江ノ電の古さと新しさ(江ノ島電鉄)
  ・これまでの鉄道の技術基準と今後の方向性について(国土交通省)

 全ての鉄道会社の方に講義を頂くことは不可能なので、特色ある会社を中心に講師をお願いしました。いずれの講師も役員,管理職といった百戦錬磨のベテランで、鉄道の将来に対する熱いハートの持ち主ばかりです。受講生の皆さんには、講師陣の熱量をしっかりと受け止め、社会インフラの整備や維持管理に興味、関心を持ち、その重要性への理解を深めて欲しいと願っています。

  5/20の時点で、JR東日本、JR東海、JR四国、JR貨物までの講義が終わりました。講義の様子や概要については、次回以降の本ブログで報告したいと思います。