2024年7月1日月曜日

なんでドラッグストアは新規出店が多いのか?

 2024.07.01

経営学部で流通論を担当している本藤です。
ボクの主な研究領域はドラッグストアなのですが、近年ドラッグストアの新規出店が止まりません。大型店出店する際には大店立地法の届出が必要になるのですが、毎月更新される届出情報を見ると、ドラッグストア業態が目立ちます。

なぜドラッグストアはこんなに新規出店するのでしょうか?

小売業態には最寄型小売業態としてグルーピングされているお店があります。
コンビニエンスストア、ドラッグストア、スーパーマーケットあたりです。
それぞれ商圏規模は違うんですよね。
各社の営業努力によって、必要な商圏人口は小さくなってきています。
コンビニエンスとアは4,000人、ドラッグストアは10,000人、スーパーマーケットは25,000人くらいまで小さくなってきているんです。逆に言うと、最低限これだけの人口を確保しないと商売が成り立ちません。

これらの小売業態は、最も近い店舗が利用される傾向にあります(だから「最寄型」なんですけどね)。多くの人にとって「最も近い店舗」というのは「最も多い店舗」を有するチェーンが利用されるということになります。だから「近さ」を追い求めて「多く」なってます。

このようなことを前提として、これらの最寄型小売業はエリア・ドミナント戦略として、特定地域に集中的に出店攻勢をかける企業があります。「地域一番店」を目指すことが競争優位につながるからです。

食品を拡充したメガドラッグストアとして、南九州エリアではコスモス薬品、浜松エリアでは杏林堂薬局、愛知・岐阜エリアではゲンキーが強固な地盤をつくっていますし、中規模サイズの店舗としては、門司エリアのサンキュードラッグ、いわきエリアのマルトなど地方都市ではエリア・ドミナントを築いているチェーンは多いのです。

最寄型小売業の業界では、コンビニエンスストアは上位集中が進み、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンなど超巨大企業になっていますが、ドラッグストアとスーパーマーケットはローカルチェーンがドミナント戦略を展開しながら存立基盤を形成している状態です。

しかし、この春に業界一位のウエルシアと二位のツルハが経営統合するというニュースが発表されました。ローカル主導だったドラッグストア業界とスーパーマーケット業界が今後どのような展開を見せるのか注視していきたいと思います。


文責:本藤貴康(東京経済大学教授)

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