2024年11月25日月曜日

自分の買い物行動を考えたら見えてくるもの

流通論を担当している本藤貴康です。

大学で学ぶ学問領域としてマーケティングというのは非常に人気のあるテーマです。東京経済大学にはマーケティングを深く学ぶために流通マーケティング学科が設置されていますが、本学ほどマーケティングを専門とする専任教員が多い大学も珍しいと思っています。グローバル・マーケティング、サービス・マーケティング、インダストリアル・マーケティング、流通、マーケティング・リサーチ、小売経営、流通史、消費者行動、広告と、マーケティングに関わる授業は多岐にわたります。

高校生や大学生がマーケティングに興味を持つときに、興味のあるコトバとして「広告」とか「ブランディング」あたりが挙がってくることが多いと感じています。

流通論の授業で「商品の売上を増やすために、メーカーはどのようなことを考えると思いますか?」という質問をすると、必ず「広告宣伝を積極的に行う」という意見が出てきます。アメリカでも著名なマーケターたちが広告宣伝をどれだけ投入するかに注目しており、広告宣伝は重要な販売促進手法として位置づけられています。

では、本当に広告宣伝量が増えればヒット商品を生み出せるでしょうか?

自分の買い物行動を考えてみてください。

あなたがテレビCMSNSの広告を見たとします。自分が目にした広告を見て欲しいと思うことはどれだけありますか?

仮に「欲しい」と思ったとします。そこですぐにお店に行って買うことはありますか?

しかも、広告はテレビCMSNS広告だけではありません。新聞や雑誌の広告もあります。様々なアプリを使っている最中にも多くの広告を目にすると思います。これだけ多くの広告宣伝が溢れ返っている日常生活のなかで、あなたが抱いた「欲しい」という気持ちはどれだけの時間あなたの頭の中にとどまっているでしょうか?

まず生活空間のなかで発信されてくる無数の広告のなかでその広告を目にするハードル。次にその広告で情報提供されている商品名や商品特徴などの内容を認知するハードル。それから、あなたがその商品を「欲しい」と評価するハードル。そこからその商品をお店に「買いに行く」ハードル。このハードルは即時対応するのはなかなか難しいですね。そのあとに売場でその商品を買い物かごに入れるといハードルがあります。隣に同じような商品があったり、さらに低価格の商品があったりするなかでの意思決定になります。最後にその商品を買い物かごに入れたままレジ精算するまでのハードルです。なかなか多くのハードルが存在するのです。

その商品のブランディングを考えると、初回購入から二回目、三回目とリピート利用してもらう必要があります。これは更に高くそびえ立つハードルとなってくるのです。

つまり、広告宣伝をしてもそう簡単に売上に結びつくものではありません。

 一般に広告宣伝は助成想起の役割を果たしていると言われます。

自分の反応を思い返してみても分かると思いますが、何かしらの広告宣伝を目にしても、それを買いにお店に直行する消費者は稀なのです。それでも、買い物行動は日常的に発生するので、売場に訪れることは数多くあるはずです。

そして売場を歩いている最中に、「あれ?これってこの前広告で見た商品かな」と売場で何かしらのきっかけがあって商品を思い出すことがあります。それを助成想起と言います。

広告宣伝は直接的というよりも間接的に売上を支援する役割を果たしていますが、企業側はそのために広告宣伝費に巨大な予算を充てているといえます。それほど消費者の頭の中にブランドを食い込ませていくことは難しいのです。

文責:本藤貴康

2024年11月18日月曜日

横須賀初上陸&後期の小木ゼミの活動(小木ゼミ通信 VOL.45)

  マーケティング論、ソーシャル・マーケティング論、消費者問題担当の小木です。 45回目のブログになります。メニューとして、横須賀初上陸(教員はこんなこともしています)とか、小木ゼミ通信(最近のゼミ活動の様子)を書き綴っていきたいと思います。


横須賀初上陸

 8月札幌、9月山形、10月京都などなど、それぞれ仕事で行ってきましたが、直近の11月は横須賀に高校への出張講義で初上陸しました。

 11月の初旬、人生で初めて横須賀(神奈川県)に行ってまいりました。メインは、高校への出張講義(マーケティング講義)でした。当該高校は芥川龍之介も教鞭をとったことのある由緒ある高校で、先生方にも大変お世話になり、当日は授業後の自主参加にもかかわらず、たくさんの高校生が講義に参加してくれました。生徒さんは90分間熱心に講義に耳を傾け、質問もしっかりとしてくれて、こちらも大変熱が入りました。とても嬉しくも楽しく講義ができました。高校生の皆さんの進路に少しでも役立っていればと思う由です(東経大を選んでくれたのなら、なお嬉しいです)。

 さて、初めての地でしたので、かなり早めに現地に向かい、高校の所在を確認した後、横須賀の街を散策しました。米軍基地もあるため、沖縄以上に街にはアメリカの方が多く見受けられました(体感的には、驚くほど多いです)。実際には3万人近くいるようです。DOBUITA ST.を抜け、軍港巡りもしてきました。日米のイージス艦が10隻、潜水艦、駆逐艦、戦艦などたくさん停泊していて、実に壮観な風景でした。そのなかで、おやっと思ったのが韓国の軍艦が3隻入港していたことです。これは大変珍しく、普段はみられない光景で、レアキャラを見られたようです(2日ほどしか停泊していないそうです)。かなり異空間に感じましたが、とても興味深い散策となりました。この日は、大変充実した日になりました。

横須賀港の風景


小木ゼミ通信

 このブログのサブタイトルにも小木ゼミ通信とありますように、毎回、最近の小木ゼミの活動報告をしております。以下、簡単に紹介させていただきます。

●9月に、小木ゼミ(約40名)は、秩父にて夏合宿(2泊3日)を行いました。
メニューとしては、4年生による就職相談会、アイディアコンテストの発表、深夜のSPI、花火大会、BBQ大会、スポーツ大会、そして伝統行事の出し物大会(4時間)と続き、最後の〆は愛のエプロン(料理対決&小木に食事を作る会)と、もう本当に盛り沢山でした。毎年、夏合宿後は、まじめに倒れます。いつまでできるか心配ですが、体が続く限り、頑張ってやっていこうと思います。

●TFTコラボですが、東経大生協×小木ゼミ×TFT(テーブルフォートゥー)で行う「健康ランチ」が、第1弾11月25日~29日、第2弾12月2日~6日に提供されます。(下記の写真のメニューとなります)。TFTプロジェクトは、TFT×東経大生協×小木ゼミの女子による企業コラボです(小木ゼミの女子は33名もいるので、必然的に女子イベントが多くなります)。当該ランチメニューを購入いただくと、1食あたり20円分をTFTを通じてアフリカの子どもたちの給食に寄付する取り組みです。小木ゼミは、このTFTランチのメニューの考案とプロモーションを手掛け、毎年、前・後期で実施しています。詳しくは、下記チラシ、大学生協食堂のPOP、立て看板などでもご確認ください(すべて小木ゼミ作成)。この機会にぜひ食べに来てください!

【後期 第1弾】11月25日㈪~29日㈮ 【サーモンポキ丼】シャキトロ!SKT丼

サーモンポキ丼 11月25日~29日



【後期 第2弾】12月2日㈪~6日㈮ 【トマトキーマカレー丼】真っ赤なトマトのキーマカレー ブロッコリーも載せちゃって

トマトキーマカレー 12月2日~6日



●11月20日 東京都の方から説明を受け、東京都に向けて、消費生活の新たなアイディア提案を行う予定です。

●11月27日 NAGAOKAへの新商品の提案を、長岡社長に対して3つのプレゼンを行います。オープンゼミにもなっています。1年生の皆さん、ぜひ小木ゼミにいらしてください。

●12月7日 経営学部ゼミ研究発表があり、小木ゼミも報告させていただきます。

●12月11日 アイディアコンテスト決勝戦に臨みます。

●12月14日 多摩大学アクティブラーニング祭に、小木ゼミが招待され、小木ゼミの企業コラボについて発表してきます。

●12月18日 Xmas会&幹部交代式で1年を締めくくります。

●1月18日 小木OBOG会を開催します。


2024年11月11日月曜日

先生、アイデアが浮かびません!:レポート・論文を余裕をもって仕上げる方法(2)

 経営組織論を担当している山口です。東経大経営学部では、12月7日(土)13:00~「経営学部合同ゼミ報告会」が行われます。この報告会は、経営学部の各ゼミが、1年間のゼミ研究の成果を発表するものです。高校生の皆さんも、聞いていただくことができます。(詳細は、こちらの東経大ニュースをご覧ください。https://www.tku.ac.jp/news/2024/2024-1111-021.html

 山口ゼミでも、現在、この合同ゼミ報告会に向けて3チームが研究を進めているところです。

 さて、ゼミ合同報告会に向けて、研究をプレゼンにまとめていく際に学生の皆さんが苦労するのが、「アイデアが浮かばない」「結論がまとまらない」ということです。

 このようなとき、「アイデアが降ってくるまで待とう」とか「気が乗ったときに書こう」と放置してしまうと、締切ギリギリに無理矢理書く「一気書き症候群」に陥ってしまい、結果的にいいプレゼンができなくなってしまいます。

 そこで今回は、「どうしたらよいアイデアが浮かぶのか」について、考えていきたいと思います。

 

1.「アイデアを考えてから書く」は間違い!?

 まず、「よい研究を、楽に、生産的に行う方法」について研究しているボイス先生の実験を紹介しましょう(Boice, 1990, pp.81-84)。

 彼は、論文を書き上げるのに苦労している大学教員を27人集め、9人ずつ以下の3つのグループに分けました。

 そして10週間にわたり、①毎日どれだけ論文を書いたか、②新しいアイデアを何日に1回思いついたか、を調査しました。

  • A:「よほどのことがない限り書いてはいけない!」と、執筆を禁止されたグループ
  • B:「気が乗ったときだけ書けばよい」と言われたグループ
  • C:毎日の執筆スケジュールが与えられ、「毎日3ページ書かないとペナルティを与える」と言われたグループ

 Aは、「論文を書くのを禁止すると、かえって書きたくなってアイデアが浮かぶはず!」という考えに基づいています。

 Bは、「アイデアが降ってきたときに一気に書けば、楽にたくさん書けるはず!」という考えに基づいています。

 Cは、「書くという作業を強制すれば、アイデアが浮かんで書けるはず!」という考えに基づいています。

 ですので、AグループやBグループの人たちは、「この条件だったらいいアイデアが生まれそうだ」と喜んで実験に参加しました。しかし、Cグループの人だけは「一応何か書けるだろうが、こんなふうに強制されて、クリエイティブなアイデアなど生まれるだろうか・・・」としょんぼりしていたそうです。


 さて、皆さんは、A・B・Cのどのグループが、一番多く書いたと思いますか?

 また、新しいアイデアを一番多く思いついたのは、どのグループだと思いますか?


 結果は、以下の通りです。 

                             (Boice, 1990, p.83)

 なんと、1日の執筆量が一番多かったのも、新しいアイデアを一番多く思いついたのも、Cグループでした!

 書かないとペナルティが与えられるCグループは、気が乗ったときだけ書くBグループの3.5倍、執筆を禁止することでアイデアを生みやすくしたAグループのなんと16倍の量を執筆していました。

 なぜこれだけ多く書けたかと言えば、Cグループの方が新しいアイデアが多く浮かんだからです。Cグループでは、新しいアイデアが1日1回浮かんだのに対し、Bグループは2日に1回Aグループは5日に1回でした!


2.書くことでアイデアが生まれる!

 以上の実験からわかるのは、「アイデアが生まれたから書く」のではなく、「書くことでアイデアがうまれる」ということです。

 「え!?」と思うかもしれませんが、学生の皆さんも、締切ギリギリになれば何か書けるのは、書かざるを得ない状況に置かれればアイデアは何とか生み出せる、ということではないでしょうか?

 ボイス先生は、なぜこのような結果になったのかについて、二つの理由を挙げています。

(1)Cグループは書くことについて常に考えていたのに対し、他のグループはほとんど時間を使っていなかったから。

 つまり、書くことが一番の関心事になり、いつもそれについて考えていれば、新しいアイデアも浮かびやすくなるというわけです(実際、Cグループは、毎日書くことを強制されていたのですが、3グループの中で最も楽しんで、苦労せずにアイデアを生み出していたそうです)。

(2)論文を書くことは、アートなど他のクリエイティブな仕事と同様、複雑なスキルを必要とするので、毎日繰り返し行わないと思考プロセスが向上しないから

 プロの画家は、毎日たくさんの絵を描くことで、絵を描くスキルを向上させ、独創的な絵を描けるようにしています。研究やビジネスでのアイデア創造も、それと同じで、毎日コツコツやれば上達する、というわけです。


3.アイデア創造力を高める方法=「毎日書くこと!」

 「え?研究者でもないのに、毎日論文を書いたりプレゼンを作ったりするの!?」と思ったかもしれません。

 実は、ノースカロライナ大学の心理学者であるシルヴィア先生は、「最初は、週4時間で十分」(Silvia, 2007, 邦訳14頁)と言っています。1日あたり30分ちょっとです。これなら、大学生の皆さんでも宿題をする感覚でできるのではないでしょうか?


 そうです。「プレゼン」とか「論文」と思うから大変なのであって、それらを「経営学の理論についての教科書の要約」、「ケースの分析」・・・などの「作業」に細分化すれば、やっていることはゼミの宿題と同じなんですね。ですので、宿題と同じように進めていけばよいということです。(この「大きな仕事の細分化」については、前回(9月2日)の私のブログも参考にしてください。(https://tkubiz.blogspot.com/2024/09/1.html))


 実際に「毎日コツコツ法」を実践してくれた東経大生の事例を紹介しましょう。

 先週の卒論指導のとき、山口ゼミで卒論を書いている4年生が、たった2週間ですごくたくさんの文献を読み、論文全体の構想をA4用紙5枚にわたりびっちりまとめてきてくれて、内容もずいぶんよくなっていたので、「どうしたの?」と聞いてみました。

 彼女は、前回の私のブログを読んで、「作業を細分化すればいいんだ!」と気づき、毎日少しずつやるようにしてみたのだそうです。彼女によれば、「特に苦労したつもりはなかったけれど、気づいたら研究が結構進んでいた」とのことです。彼女は、国立国会図書館まで文献を探し行ったそうで、そこでよい文献がみつかったことで、研究がグーッと進んだようです。

 東経大図書館の図書館で文献を探す人は多くても、国立国会図書館まで行って文献調査をする人はなかなかいません。これなどは、時間に余裕があるからこそできることであり、締切ギリギリでやっていたら、このように文献調査に時間をかける余裕もなく、限られた文献で書かなければならないので、余計に卒論を書くのが大変になるでしょう

 「毎日コツコツ法」だと、本当に「苦労した」という感覚なしに、よりよいクオリティの研究ができるのだなあと、実感させてくれた事例でした。


4.「毎日コツコツ法」でアイデア創造力を高めよう!

 現在の日本は、経済成長のために、イノベーションの創出だけでなく、他の国よりも低い生産性を改善すべく、既存事業の改革にも取り組む必要があります。

 イノベーションの創出にも、既存事業の改革にも、新しいアイデアは不可欠です。

 東経大にも、「将来は起業したい」とか、「就職してから新商品の開発の仕事をしてみたい」という学生さんがたくさんいます。しかし、その中には「ビジネスや、製品のアイデアを創造するのに、何から手をつけていけばよいかわからない」という人もいるかもしれません。

 そういう人は、まずはゼミに入り、ゼミでの課題をこなしながら、研究を進めていくとよいでしょう。東経大には、

(1)現在の日本社会・日本企業の問題点を分析して、自分なりの解決策を考えるゼミ

もあれば、

(2)優れた経営者がどのような戦略や組織を創造して、高業績を実現していったのかを、経営学の理論を使って分析するゼミ

もあります。

 (1)のゼミは、コンテストに応募したり、企業とのコラボレーションをしたりして、高い成果を上げており、人気があります。

 ただ、山口ゼミは、こうしたゼミとの差別化も考慮し、あえて(2)を行っています。

 将棋のプロが①「定石」を学び、②その知識をもとに偉大な先人の棋譜を分析することで、独創的な手を考え出す力を養うように、優れた経営者も、最初から自分で問題解決のアイデアを考えているわけではなく、①経営学の「定石」を学び、②その知識をもとに優れたビジネスモデルを分析することで、独創的な経営方法を考えているからです。

 大学生には、経営の「定石」(経営学の専門知識)をしっかり学び、それをもとに優れた企業のビジネスモデルの分析(ケース分析)をすることで、社会に出ても通用するアイデア構想力を身につけてほしい、というのが山口ゼミの考え方です。

 amazonが経済学の博士号を持った人を大量に雇ってデータ分析に基づく経営を進めているように、世界では、「素人の思いつき」ではなく、専門知識に基づく高度なビジネスの構想力が重要になっています。「定石(経営学の専門知識)」をしっかり身につけ、他の学部出身者にはない経営学部出身者ならではの、より高度なビジネスのアイデアを考える力を身につけることが重要です。

 2年生からゼミに入り、卒業までの3年間、毎日30分ゼミの課題を中心に、経営学の理論を学んでノートにまとめたり、成功した企業の事例についての文献を読んで要点をノートにメモしたり、論理的思考法の問題を解いてみたり、プレゼンをまとめたり、論文を書いたり・・・という作業を続けたら、経営学の専門知識や、それをもとにアイデアを生み出す思考力などが、ずいぶん向上するはずです

 もちろん、毎日30分で書く内容は、自分の目標に沿って決めても構いません。例えば、起業したい人だったら、ビジネスプランの立て方についての本を読んで内容をノートにまとめる、優れたビジネスプランを調べてその特徴をメモする、自分でビジネスプランを考えてみる・・・などでもOKです。読むべき本などを先生に相談してみるのもいいですね。

 たった30分ですが、その積み重ねは侮れません。

 東経大の皆さん、「毎日コツコツ法」でアイデア創造力を高めていきましょう!

(文責:経営学部准教授 山口みどり)

参考文献

Boice(1990)Professors as Writers: A Self-Help Guide to Productive Writing, New

   Forums Press. 

ポール・J・シルヴィア(2015)『できる研究者の論文生産術:どうすれば「たくさん」書

  けるのか』講談社.